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2004-08-24(Tue)

『はてなの本』

[][][][] 田口和裕・松永英明・上ノ郷谷太一『はてなの本』  田口和裕・松永英明・上ノ郷谷太一『はてなの本』 - 香雪読書録 を含むブックマーク

田口和裕(d:id:tagkaz)・松永英明(d:id:matsunaga)・上ノ郷谷太一(d:id:NiPeke『はてなの本』翔泳社、NEXT TRAVELERS 200Xシリーズ第一弾、2004.8、ISBN:4798107042
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55字内容紹介…「はてな」を「コミュニケーション増幅装置」としてとらえて魅力を腑分けする一冊。はてな代表3万字インタビューも。

本は両表紙Wフェイス仕様という凝った体裁の二部構成で、「SIDE A 横書きサイド」は「はてなダイアリー&はてなアンテナ究極ガイドブック」。「SIDE B 縦書きサイド」では「はてなダイアリーのコミュニティと運用」を明らかにしようとし、ユーザーに人気のはてなダイアラーd:id:kowagariさんによる冒頭コラムで端的にユーザーから見たはてなの楽しさを伝え、さらに近藤淳也はてな代表30,000字インタビューや歴史からその魅力・活用方法まで延々語る「はてなの語り部」ともいうべき章でしめくくる。

『はてなの本』はとても読み応えのある本である。

自分としてはSIDE Bが面白かった。近藤さんのインタビューはこれまでのインタビューで読んだことのある内容も一部あったが初めて知った裏話的なものもありとても興味深かった。どういう理念や設計思想で開発されたシステムであるか、ということがわかって、はてなを面白がって使っているユーザーとしては自分たちが何を面白がっているかの正体が少し分かった気がしてうれしくなるのだろうと思う。また、キーワード議論などはてなについて突っ込んだ話をしたいユーザーはこのレベルまで知っておいたほうがいい。必読といっていいだろう。

その他の部分も自分の歩みを改めて振り返ることが出来たり、外から眺められたりなどしている感じで大変面白かった。はてなのことをいろいろ言いたいはてなのヘビーユーザーはぜひ読むべきだと思ったし、はてなのことを知りたい人にも薦めたい。

いっぽうのSIDE Aのほうにも便利なカタログが満載で、それを見てわくわくする人は多いと思う。ただ、初心者に薦めるのはどうか、と思われるテクニックやちょっとした間違い箇所がわずかにあるのが気になって(p.57、p.58など)、そういうレベルのミスがほとんどなかった先行はてな本二冊(『はてなダイアリーガイドブック『[はてな]ではじめるブログ生活』)と比べるとマニュアルとして量的には優れていても質的にはやや遜色があるように感じられる。

このように読み応えある本にもかかわらず初歩的な段階で不適切な説明があることが残念でならない。神経質なようだが、マニュアルという側面がある以上、せっかくの本でも気になる箇所が初心者向けの箇所であればあるほど、何かいい加減にあしらわれているような気になってがっかりきてしまう。たとえば「ホームページ」を作ったことのない友人ががはてなをはじめたい、というときなんかにはこの本を安心してぽんと渡してしまうのは少し怖い。本当にとても残念なので、ぜひ今後の修正を望む。

あとちょこちょこと、本の中に自分のIDは出てはいないけれども編集や作成に携わったキーワードが登場しており(写真日記花、はてなダイアリーTips、はてなダイアリーFAQ、はてなダイアリーガイドなどなど)、キーワードがこのように立派に出版物にその名を刻んでいることがひそかにうれしかったりこそばかったりした。

★★★☆(SIDE Aは★★★、SIDE Bは★★★★★) 間違い箇所に気づける人には★★★★☆

[] はてな本三冊について  はてな本三冊について - 香雪読書録 を含むブックマーク

  • マニュアルとしては、わたしは質的には『はてなダイアリーガイドブック』(レビュー:id:yukatti:20040527#p1)を高く評価する。誠実な本である。
  • 初心者の友人に安心して薦められるのは、画像の出し方などの解説が細かだったり、はてなに関する内容がほぼ正確でHTML, CSSの適切なテクニックを紹介していたりなど、そういった小さなことがきちんとしている点で、ライトには『[はてな]ではじめるブログ生活』(レビュー:id:yukatti:20040526#p1)であり、ヘビーには『はてなダイアリーガイドブック』である。
  • はてなのことを知った気になりたい人(良い意味で)、今風のブログの体裁をさっさと整えたい人には『はてなの本』がぴったりだろう。
  • 機能マニュアル・カタログであるSIDE Aに書かれているようなことは知ってるヨン、というヘビーユーザーでも、近藤さんのインタビューがたっぷり読めて、はてなダイアリーのコミュニティについてとことん語られてもいるSIDE Bには刮目するだろう。それだけでも『はてなの本』は買い。

『はてなダイアリーガイドブック』+『はてなの本』『[はてな]ではじめるブログ生活』+『はてなの本』で完璧、かな。

apple-eaterapple-eater2004/09/01 16:56秋の新企画を立ち上げてみました。夏のアレの件は… ……とととりあえず、終了企画に移行しました。

yukattiyukatti2004/09/01 17:23読書シーズンです。ありがとうございます。企画取りまとめ(というか参加)なかなか出来なくてすみません。夏のアレも追い追い。

2004-08-07(Sat)

『夏への扉』ハインライン

[][][][] ロバート・A・ハインライン『夏への扉』夏に読みたいこの一冊 ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(夏に読みたいこの一冊) - 香雪読書録 を含むブックマーク

id:yukatti:20040727#summerbooksの続き。

ロバート・A・ハインライン『夏への扉』?福島正実訳、ハヤカワ文庫SF345、1979.5、ISBN:4150103453
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原題:The Door into Summer by Robert A. Heinlein, 1957
55字内容紹介…1970年12月、友人と恋人に裏切られた発明家は牡猫ピートと30年後の「未来」へ飛ぶため冷凍睡眠の扉を叩く…。

……わたし自身がそうだったのだが、夏に「夏への扉」(The Door into Summer)というタイトルに惹かれてひょいと手に取る人も多いのではないかと思うのだ。そして、多くの人は手に取ったことを満足するだろう。わたしもそのひとりだ。

ほぼ半世紀前に書かれたSF小説『夏への扉』は名作である。作品中に出てくるタイムマシンのように、この作品も時を超えて21世紀にもなお名作として残っている。それはなぜだろうか。

ひとつめには、SFらしい筋書きや小物の楽しさ、不思議さを味わえるからだろう。現在の水準の科学技術――かなりの人が当たり前に持っている携帯電話!――、そこから敷衍して到達しているSF的な諸芸術、諸作品の華麗さ――CGやSFXがあたりまえになった映像美もほんの数年前には大騒ぎだったはずだ――から見ればここに描かれているSFガジェットは牧歌的で素朴である。しかし、素朴さ故の力強さと、原理の美しさがある。タイムマシンとはこういうものだったのだ、ということだ。冷凍睡眠とは、こういうものだったのだ、と。そこにはそれらのタイムトラベル技術を欲した人間の要求が書かれている。

ふたつめには、SF要素を離れて普遍的な人間の心理を描いた物語としても楽しめるからだろう。生き方が下手で挫折した人間の、失敗し挫折していく過程と、もういちど自分の生活を取り戻すべくがんばる姿が描かれる。不幸と幸せ。失敗と成功。ちょっとしたことでそれらはくるりと入れ替わる。そして青春物語として、愛情物語として、きゅんとくる物語がそこかしこにある。ちょっとサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に似ているような気がする、少女への一途な愛情。彼女を求めて主人公の発明家ダニイは駆け回る。

そう、要求である。仕事の成功、名声、冨、愛情、といった人間としての要求。科学への尽きせぬ心の動き。ダニイの発明品「文化女中器」――家事を取り仕切るロボット、これは今でも実現出来ていない難技術だ。家事? それは誰かにやってもらえたら楽なこと。地に足が着いていて平凡で、だけど切実な、実はとても難しいことを人間はこなしていたのだ、ということがわかるもの。この作品のトータルトーンはこれだ。地に足の着いた、現実と結びついた、平凡な、だけど難しく、切実な。人間の切なる欲求、要望。この作品には人間の、とりわけ主人公の心の動きが細かく書かれている。切実な望みが、この作品を突き動かす。現実から離れず、しかし現実の縛りを超えて希求する心がこの作品を突き動かす。それにわたしも共振させられるのだと思う。

ダニイがタイムトラベルで飛ぶのは30年だ。想像の範疇であり、たぶん、無事に行けば生きていられる間のことだ。これもまたこの作品が巧妙に地に足をつけているところだ。「そんなことありえない」と思わせない巧妙さ、なのである。確かにこれは未来の話だが、とかつての読者は思っただろう。そして今のわたしたちは、確かにこれは過去の話だが、とノスタルジックに読んでしまうのだけれども、それでも気になることはたぶん一緒だ。自分が生きてるだろうこれから先の30年後はどうなっていると思う? 30年前ってどうだったかな? あの人はどうなっているだろう……そういったことが気になって、だからこの小説がページから繰り出す魔法からわたしたちはさめない。がっちり作品世界の範疇の中に読者の心を閉じこめる仕組みのたくみさよ。そして30年を飛ぶのであれば、人間はたぶん少し慣れれば生きていけるのだ……。しかし、そこに本当は自分と一緒にいるはずの愛する者がいるかどうかで心は大きく変わってくる。

人生の「夏」をこの小説は描いているのかもしれない。自分や自分の家族を愛するのみだった「春」。やがて季節は巡り、草木が育つがごとく人間も大人となって成熟し、「夏」には他人と出会いその人を愛することができるようになるだろう。人生の「夏」を謳歌する。人を愛し、愛に気付き、精一杯仕事もする。やがて秋へ、冬へ。

★★★★★

summercontrailsummercontrail2004/08/06 23:21yukattiさんのレビュー、楽しみにしています!自分の拙い文で紹介するよりも良さそうなので。

yukattiyukatti2004/08/07 13:08あわわわわわ、恐縮です、でもむっちゃ重圧で焦るっ! 軽く書くつもりですし軽い気持ちでお待ちくださると幸いです(来週まで書けないので)。というか、summercontrailさんの紹介も読みたいです!

summercontrailsummercontrail2004/08/07 13:42あはは、そんなに気になさることないのに。じつは私も、お薦めの本リストを作りかけている途中です。まだ掲載するかどうかわかりませんが…。
『夏への扉』についてはyukattiさんが書かれたらリンク張ればいいか、と横着なことを考えていましたが、わかりました、私も(yukattiさんのレビューを読む前に)ローカルで書いてみます。いい作品ってただ「いい」と言ってもよさが伝わらないのがもどかしいですよね。

yukattiyukatti2004/08/07 14:10リスト>なるほどそういうことでしたか。でもレビューありがとうございます、わーい♪ それぞれのレビューで違う角度から作品をいろいろ見ることができる、教えていただくことができるのが面白いですよね。
それにしても「いい作品」だと黙ってただ「いい」「素敵だった」とかため息だけついていたいときあります。かえって何か語るのは難しいときが。無粋になっちゃう気もして。

summercontrailsummercontrail2004/08/11 19:25こんばんは。『夏への扉』、レビュー書きました! http://d.hatena.ne.jp/summercontrail/20040810#doorです(なぜかトラックバックに失敗してしまうのでコメントで失礼します)。
引用ばかり多くて大事な所に少ししか触れていないレビューになってしまいましたが、お知らせまで…。

yukattiyukatti2004/08/13 13:03遅くなってすみません。拝読しましたよ! 「仕掛けの面白さは面白さとしても、この小説の一番の見どころは他に」というご指摘、まさにそうだそうだっ。だいたい同じような感想を持っていたとこもあって意を強くしました(いちおうその路線でわたしも書くつもりでした……来週になりそうですが。で、きっと内容かぶっちゃいますがすみません~、ひ~)。「ターミネーター2」気になります。そのせりふに注目して見直したくなりました。

yukattiyukatti2004/08/13 13:04後日また改めて日記文中から紹介させていただきます。

summercontrailsummercontrail2004/08/15 00:58文中から紹介してくださるんですか、ありがとうございます!結びに入る重要なところに「ターミネーター2」という他の作品の引用を使うのが、自分ではちょっとどうかと思いますが…アハハ。内容がかぶるのはむしろ光栄なのでお気になさらず。

yukattiyukatti2004/08/17 22:58『夏への扉』、タイムマシン、30年、現実的、をキーにちょともやもやとまとまりつつあるのですが、まだ取りかかれてません……しょぼしょぼ……(;_;)

2004-08-06(Fri)

[] 個別キーワード試験的解禁(メモ)  個別キーワード試験的解禁(メモ) - 香雪読書録 を含むブックマーク

今月いっぱい試用期間。

あれこれ試してみたいところですが、野暮用(……正確にはマンドリン関係の用)で今晩から来週にかけてはあまりアクセスできない予定です。あーもう自分の間の悪さったら。残念。

2004-08-05(Thu)

城山三郎『湘南』

[][][][] 城山三郎『湘南 [[城山三郎]]『湘南』 - 香雪読書録 を含むブックマーク

城山三郎『湘南? 海光る窓』(文春文庫、1997.1、ISBN:4167139227
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  • 初出…「諸君!」昭和59年1月号より63年12月号までに連載
  • 単行本…1989年3月 文藝春秋
55字内容紹介…「海の見える家」に住みたくて茅ヶ崎に移り住んで40年。窓からの「光る海」の風景や風俗を爽やかに描くエッセイ集

著者・城山三郎氏は茅ヶ崎の駅そばにあるマンションに仕事場を構えていると聞く。そのマンションからは相模湾が手に取るように眺められるはずだ。おそらくその光景を、このエッセイで書いておられるのだと思う。その他、湘南の風俗、東京や横浜、鎌倉などに出かけた時の思い、人との交流などを穏やかに、時にユーモアを漂わせた爽やかな筆で軽くつづってある。湘南をいとおしむ気持ちが伝わってくる楽しく穏やかに読める一冊である。

わたしも氏と同じように、神戸の坂の街に住んでいたころに眺めくらした目の前やや離れて広く遠く輝く海(と、できれば山も)をまた見て過ごしたくて湘南にやってきた。だから、城山氏が海の眺めを愛する気持ちはとてもよくわかる気がする。いま海から2キロ強に建つマンションであるわたしの部屋からは、海はほんの数ミリ幅で見える程度。だがたったそれだけでも毎日、海と空は深くにも浅くにも、静かにも荒くにも眺めを変え、まったく見飽きることがない。

 さて、日毎、窓から海を眺めるようになってまず感じたのは、「海は光る」ということである。一日中、海面は光りながら、東から西へとゆっくり移って行く。
 海は平らで巨大な発光体になって、横滑りして行く。黄金にまぶされて海が動いて行く、という感じである。城山三郎『湘南』から「黄金の海」p.14~15より)

(中略)

 弱い人間としては、その黄金に目もくらむ思いで、トルストイのように「光ある中に光の中を歩め」と、自らを励まし、次の一歩、次なる一日へとふみ出して行く他はない。(同p.16より)

★★★☆

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