大和但馬屋読書日記

この日記は

2007年07月04日水曜日

[][][]「感動」禁止!―「涙」を消費する人びと(八柏龍紀,ベスト新書)

書店でタイトルだけに惹かれて買つた本。

通読した印象としては、なんだか散漫な内容だと感じた。それもその筈で、あとがきによると東大の自治会主催による自主ゼミの講義録を再編したものらしい。「消費社会」をキーワードとし、所謂「団塊の世代」が青春時代を過した学園紛争とフォークソングの時代から現代までを文化史的に切り取つて、時代の「気分」を再確認するのが本の主軸で、その中で「感動」といふものが商材として扱はれる様になつたことを思ひ出した様に批判的に論じてゐる。

ワシも少し前にダイアリーで感動なんてものはもはや経済を語る指標の一つにすぎないつてこつた などと吐き捨てたことがあつたから、本書の主旨に大きな違和感はない。しかし、一つの論として本書を眺めた場合、随分と論理が粗雑である様にも感じた。嘘は言つてないんだらうけど、それとそれを結び付けるの‥‥? とか、なんでそこだけクローズアップするかな? とか、そんなのが色々とある。一年前に大騒ぎした「シューティングゲームにおける戦闘美少女の歴史」関連ほどではないが、ある種それに似た種類のモヤモヤが。とりあへず「昭和二十八年生れの著者の視点による昭和・平成文化史」として捉へておくものとしたい。

それにしても、これほど扇情的な書名をつけ、帯の惹句に「小泉劇場」と例を挙げておきながら、あの「感動した!」発言について本文中で一切触れられてゐないのはどうしたことか。時代が醸成した気分が「感動」の大安売りとなつて顕れたそのひとつの象徴としての小泉発言を採上げないのは、わざとだとしたら意味が分らないし、忘れてゐたのだとするとそれこそ前段で挙げたワシの疑問を象徴的に顕してゐると思ふ。随筆としては読めるけれども、論としては随分と精度が低い。

表紙の帯とAmazonの商品説明だけを読めば本書の内容としては十分で、それ以上の理解や情報を得られる訣ではないので、読んで損したとまでは思はないけれど、他に思ふこともないかな。

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