大和但馬屋読書日記

この日記は

2007年07月17日火曜日

[][][][]人類は衰退しました(田中ロミオ,小学館ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

ガガガ文庫創刊前後に評判を目にして探したが既に書店からは払底してゐた。増刷分をやうやく手にして読了。まことに面白かつた。

文藝を「文章による藝術」とするか「文章の藝」とするかは人により見解が異るだらうが、後者の立場からみるとこれは実に優れた文藝作品だ。

「これはSFである」といふ評価を与へるとまるでSFとは優れたものであるといふ無言の前提があるやうで正直糞喰らへと思ふのだが、さういふこととは無関係にこれは実に優れたSF作品だ。

背景となる物語世界の構築とその上で起る出来事とそれを見届ける視点とそれを描写する文章表現に一切の無駄がなく、遊び心に溢れてゐて、要所に巧妙な仕掛けも含まれてゐる。ニヨニヨしながら読み終へてみると、全体が大きな風刺にもなつてゐることに気付く。小説とはかくあれかし。他の作品を何冊か読んでガガガ文庫は正直微妙かなと思つてゐたが、かういふものをきちんと含めるあたりが流石小学館と思つた。

著者は十八禁ゲームのライターが本職とのことだが、なるほど本文の語り口はその方面で培つた技術が巧く行使されてゐるのではないだらうか。

2007年07月10日火曜日

[][][]仏教と日本人(阿満利麿,ちくま新書)

仏教と日本人 (ちくま新書)

仏教と日本人 (ちくま新書)

一言、面白かつた。僅か四頁分の「はじめに」を読んだだけで元は取れた気がした。本文は言ふに及ばない。

今までも何冊となく本書の書名と似たテーマの本は読んできたが、それらはどうしても教科書に載る様な「大きな歴史」の解説に終始しがちであつた。もちろんそれはそれで知つておきたいことではある。本書の面白みは、それらの「大きな歴史」が如何にして日本人に受容され、市井の文化に組込まれていつたかについて徹底的に考察してゐるところにある。その根底として、柳田國男民俗学の影響が大きくみられるやうであり、そろそろ自分も柳田國男を読んでみたくなつてきた。

この種の本を読み、日本がどのやうな文化を育んできたかを考へれば考へるほど、ワシは「宗教」といふものが分らなくなる。分らなくなるといふのは、つまり簡単に割切つて切り捨てられなくなるといふことだ。自分が他の一般的な人々と同様に特定の宗教に深く帰依する可能性が今のところ殆ど無いからこそ、余計にさう思ふ。まさにその心情をテーマとした本が同じ著者により出版されてゐる様なので、そちらも是非「あはせて読みたい」。

2007年07月04日水曜日

[][][]「感動」禁止!―「涙」を消費する人びと(八柏龍紀,ベスト新書)

書店でタイトルだけに惹かれて買つた本。

通読した印象としては、なんだか散漫な内容だと感じた。それもその筈で、あとがきによると東大の自治会主催による自主ゼミの講義録を再編したものらしい。「消費社会」をキーワードとし、所謂「団塊の世代」が青春時代を過した学園紛争とフォークソングの時代から現代までを文化史的に切り取つて、時代の「気分」を再確認するのが本の主軸で、その中で「感動」といふものが商材として扱はれる様になつたことを思ひ出した様に批判的に論じてゐる。

ワシも少し前にダイアリーで感動なんてものはもはや経済を語る指標の一つにすぎないつてこつた などと吐き捨てたことがあつたから、本書の主旨に大きな違和感はない。しかし、一つの論として本書を眺めた場合、随分と論理が粗雑である様にも感じた。嘘は言つてないんだらうけど、それとそれを結び付けるの‥‥? とか、なんでそこだけクローズアップするかな? とか、そんなのが色々とある。一年前に大騒ぎした「シューティングゲームにおける戦闘美少女の歴史」関連ほどではないが、ある種それに似た種類のモヤモヤが。とりあへず「昭和二十八年生れの著者の視点による昭和・平成文化史」として捉へておくものとしたい。

それにしても、これほど扇情的な書名をつけ、帯の惹句に「小泉劇場」と例を挙げておきながら、あの「感動した!」発言について本文中で一切触れられてゐないのはどうしたことか。時代が醸成した気分が「感動」の大安売りとなつて顕れたそのひとつの象徴としての小泉発言を採上げないのは、わざとだとしたら意味が分らないし、忘れてゐたのだとするとそれこそ前段で挙げたワシの疑問を象徴的に顕してゐると思ふ。随筆としては読めるけれども、論としては随分と精度が低い。

表紙の帯とAmazonの商品説明だけを読めば本書の内容としては十分で、それ以上の理解や情報を得られる訣ではないので、読んで損したとまでは思はないけれど、他に思ふこともないかな。

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