大和但馬屋読書日記

この日記は

2005年10月31日月曜日

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(8)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

出た。読んだ。なんだか、好物のトマトジュースを一缶五秒も掛らずに飲干した時のやうな感覚だな。特に今作は、一冊分のボリュームがあるにも関らず短編集の一篇を読んだだけのやうな感じが残つた。詰らない訣ではないし、内容がスカスカな訣でもないとは思ふのだが、いつものやうな多少無理矢理な盛上りがなかつたためにさう感じたのだらう。後書きに「原点に戻つて双葉とガーゴイルの話」とあるが、あまり双葉は関係なかつた気もする。いろいろあつて「痛み」を覚えたガーゴイルといふのは後々の話に効いてきさうなので、その辺を楽しみにしておかう。

この「ガーゴイル」もアニメ化らしい。まあ、アニメ向きだとは思ふ。キャラが揃つてゐるからエピソードはいくらでも作れるだらうし。「でじこ」みたいな感じで観られれば楽しいだらう。ファミ通文庫繋がりでいへば「ぺとぺとさん」みたいにはならないで欲しい。アニメしか観てゐないが、あれはいただけない作りだつた。

2005年10月23日日曜日

[][][][][]灼眼のシャナ(高橋弥七郎, 電撃文庫)

灼眼のシャナ (電撃文庫)

灼眼のシャナ (電撃文庫)

誓つていふがアニメを観て読み始めたわけではない、といふのはタイミング的に空しすぎるか。近々アニメ化されるとは知つてゐたが、購入して読み終へた週にアニメの放映が始まるとは思はなかつた。観てないけど。とりあへず小説の方を楽しみたいのでアニメは最後まで観ないつもりだ。

全体的に質の高い予定調和で事が進む。文章に力があるので読んでゐて淀みがない。先の展開まで読めてしまひさうな錯覚に陥るが、現時点で十巻を超える冊数が出てゐるのだからそれなりに紆余曲折はあるのだらう。それを見届けようといふ気にはさせてくれる第一巻だつた。

ところで、脇役の人物名はどれも首相の捩りなんだな。あと、「坂井」と「平井」で対比させてゐるのは気付いたがどういふ意味かまでは分らない。といふか主人公の名前からはゴジラ模型の造形家を思ひ出してしまふな。

[][][][][]灼眼のシャナII(高橋弥七郎, 電撃文庫)

灼眼のシャナ〈2〉 (電撃文庫)

灼眼のシャナ〈2〉 (電撃文庫)

二冊目。

脇役である主人公の友人達を事件に巻込む話だが、その核心との距離の取り方が絶妙だと思つた。これが安易な物語であれば、巻込むだけ巻込んでおいて最後に記憶操作で忘れさせるなんてことになり兼ねない。とはいへ、よく考へてみれば「トーチ」といふ設定自体がそれにあたるので、あまり手放しに褒められる訣でもないのだが。ともあれ今後、主人公の「正体バレ」も物語のイベントに組入れられるのだらうと予想。

相変らずの確かな描写で、敵味方問はず登場人物が魅力的に描かれてゐるのがいい。

2005年10月15日土曜日

[][][][][]疾走! 千マイル急行 (下)(小川一水, ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈下〉 (ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈下〉 (ソノラマ文庫)

上巻で物足りなく感じた部分をすべて払拭し、結末まで一気に駆け抜けた。お見事。テオは主役たらんと自分の足で立上り、周囲の大人がそれを支へていく。それでいい。

存分に楽しんだけれども、まあ何だ、鉄道で戦闘を行ふといふのが如何に有得ないことかもよく分つた。宇宙空間で艦隊戦を行ふのと荒唐無稽さで争つてみればなかなか甲乙付け難いのではないかと思ふ。片や空間が一次元の軌道上に限定されすぎるし、もう一方は空間が全方位に広がる割に「天体(宇宙戦艦のことだ)」の運動はやはり重力の制約を受けた限定的な軌道に縛られるはずで、大海原を自由に航行するやうにはとてもいかない。もちろん、だからこそ想像の仕様によつていくらでも面白くできるわけだが。その点で小川一水はよくやつた。

あとがきについて。「そんなに気楽に電車に乗るなよ! 」は、成程これがアイチ圏*1の人の感覚なのだらうな、と思つた。首都圏と関西圏ではまたそれぞれに感覚が違ふし、地方に行くほどその意識の格差は拡がるばかりだらう。京阪間の衛星都市出身の自分にとつては、鉄道とは私鉄VS国鉄の激しくも華々しい激戦のフィールドといふ感覚が強い*2。子供心にも理解できるほど目に見えて向上していく過剰なまでのサービス合戦、それ故に贔屓の電車に乗つて感じた奇妙な優越感やライバル線に乗つて感じた微妙な羨ましさは、この小説でアルバートが抱いたものとたぶん同質のものだつたのだらう。結局そのサービス合戦に在阪各社は疲弊しきつてしまひ、悲劇的な象徴として例の事故が起きたことを、オレは忘れないやうにしようと思ふ。でもそれは、オレ達利用客が求めた利便性の結果なのだよ。作中でドラグストン機関が求めたものと、少しも変らない。

[][][]はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室(長沢工, 新潮文庫)

はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室 (新潮文庫)

はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室 (新潮文庫)

なんだか小川一水小説みたいなタイトルだな。まあ、「現場モノ」の雰囲気を出すには丁度いいのだらう。

国立天文台広報普及室に勤務してゐた著者のエッセイ。面白いことは面白いのだが、読み進めるうちに若干もにょもにょしたものを感じた。あれだ、昔サポセン系サイトを読んだ時に感じたやつ。ああしたものに何の屈託も感じない人が読めば文句なしに面白いのかもしれないが、生憎オレはさうではなかつた。

オレが期待したのはもつと天文台の研究とか運営そのものに寄つた内容であつて、しかしこの本の主題はあくまで電話を通じた相談者とのやり取りであり、そのやり取りの大半は言葉は悪いがしやうもないものなのだつた。なんだか天文学に興味を持つより先に門前払ひを喰つたやうで、なんともやりきれない読後感がある。

ドキュメンタリではなくエッセイなのだからそんなものといへばさうなのかもしれない。でもやはり、過剰なロマンチシズムに満ちた内容である必要はないにしても、「なんか知らんが凄いことをやつてるぞ」といふ期待感くらゐは持たせてほしいぢやないか。的外れかつ高望みなのかな。

*1:「YATATA WARS」て分るかな?

*2:この気分を見事に描き出したのが同人漫画の「電車でD」だ

2005年10月12日水曜日

[][][][][]銃姫 (5)(高殿円,MF文庫J)

本編から少し寄り道した中短篇集。酸鼻を極めた前巻から一息ついた後日談が二篇に、少し時間を遡つたセドリックとアンの物語。後日談の方は単純な息抜きとして読める。レース織には笑つた。最初はただのウザキャラだつたティモシーの成長ぶりもよい。

それにしても、最後の話はひでえよ。よくあるパターンだけどさ、つか最初からみえみえだけどさ。

あと、現代ものならともかくかういふ雰囲気の話で「真逆」とか地の文で使はれると萎える。

[][][][][]彼女はミサイル2(須堂項, MF文庫J)

新キャラ登場。んー、今ひとつ。

物語の根幹を為すネットアイドルのシステムが、その発想自体に今更感が拭へないのと、特にシステムを生かした筋立てにもなつてゐないのとでどうも乗り切れない。もう少し児童向けマンガのエッセンスを採り入れた方が良いのではないか。

続きに期待する理由もないのでこのシリーズはもう追はない。

2005年10月11日火曜日

[][][][]神様ゲーム カミハダレニイノルベキ(宮崎柊羽,角川スニーカー文庫)

神様ゲーム カミハダレニイノルベキ (角川スニーカー文庫)

神様ゲーム カミハダレニイノルベキ (角川スニーカー文庫)

この手の「神様コメディ」を読むたびに一体その「神様」てのはなんやねんといふ疑念が付きまとふ。

この作品の場合、「創造主的な神様」と「地祇的な神様」の二種類が登場するが、そのことにあまり意味があるやうには思へなかつた。作品に奇妙な二重構造がある割に、それが上手く働いてゐなくて単に流れをややこしくしただけのやうな。尚、表題の「神様ゲーム」を仕掛けたのは前者の「神」で、表紙イラストに描かれてゐるのは後者の「祇」の方。妙にえちい絵だが、内容とはほとんど関係がない。

神様云々はさておいて、個々のエピソードは「自分探し」系。それぞれがそれぞれに自分探しをしてゐて、それぞれ勝手に癒されておしまひ。最後は主人公も「神様」も癒されて万万歳。「ゲーム」が解明かされる過程を楽しみに読めるものではなかつた。そこが残念。

キャラは羽黒が鈴木真仁的に良かつたのだけど如何にも取つて付けた様な位置付けでしかなく、あとがきにある「当初居なかつたキャラ」は絶対にこいつだと思つた。設定といふか、背負つてるものとキャラ造形が全然釣合つてない。でもそこがいい。といふか、全般的にキャラの描き方が上手いのだな。上手いといふか、ヘタウマ?

2005年10月05日水曜日

[][][][]くるくるリアル(羽田奈緒子,MF文庫J)

くるくるリアル (MF文庫J)

くるくるリアル (MF文庫J)

同じ作者のデビュー作「世界最大のこびと」(感想)の同工異曲。異世界から来た少女が何らかの理由で元の世界での居場所を失ひ、主人公の家に押し掛け、散々騒動を起した末に元の世界に帰るといふ基本的な構造もさうだし、主人公の身近にゐる人物が実は脱いだら凄かつた(違)といつた辺りも含め、全く同じ話と言つていい。

そして、こびとのパウエルなら許されてゐた騒動が、今作のフィーナでは今ひとつ許す気になれない。物語の発端から解決に至るまでのキャラクター達の行動の動機づけが甘く、最後まで読んでも納得できなかつた。どこかで見たやうなキャラばかりだし。

主人公の住む世界(所謂「我々の世界」)は異世界の住人によつて作られたものであるといふ粗筋を見たときは「奥さまは魔法少女」と設定が被つてゐると思つたが、読んでみると全然そんなことはなかつた。といふか、その前提について作者自身あまり興味も思ひ入れもなかつた様で、読者の世界認識を揺るがせるところまで行つてゐない。軸足を常識の範囲内に置きすぎてゐるのではないか。

デビュー作が良かつただけに、どうも後が続かないのが惜しい。

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