大和但馬屋読書日記

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2005年08月02日火曜日

[][][][][]疾走! 千マイル急行 (上)(小川一水, ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

毎度御馴染み小川一水の職業冒険もの。ただ、いつもの同系の作品と違つて主人公が職業人ではなく、乗客として乗込んだ少年テオ。彼にも一往事態の当事者としての役割は与へられてゐるが、この上巻に限つていへば物語を動かす役にはほとんど立つてゐない。一水作品としては珍しいパターンかもしれない。といふか、どちらかといへば、一昔前なら同じ少年でもテオでなくキッツが主人公になりさうなものだ。冒頭のシーンはいくらなんでも星野鉄郎すぎるだらうとは思つたが。

鉄道絡みのギミック描写は申し分ない。千マイル急行(TME)の相当な999つぷり(装甲車付き!!)も魅力的だし、フリーゲージトレインや船での渡航、ラックレールによる登坂など、一通りのツボは押へてくれる。欲を言へばタブレットやスタフによる閉塞区間通過の描写もどこかにあればよかつたが、瑣末すぎるのでカットされたのだらうな。軌間(ゲージ)の問題をフリーゲージトレインといふ大技でクリアしながらも車輌限界の問題には一言も触れないのはたぶん作劇上の都合といふものだらう。本当ならゲージと同等かそれ以上に深刻な問題となるだけに、触れない方が得策なのだ。

人物の方に立ち戻ると、主人公達四人の少年達と列車係員や軍人などの職業人はよいとして、少年達以外の大人の乗客について全く書割り程度の描写しかされてゐないことが少し気になつた。ただ一人名前を与へられた大人は早々に退場してしまふし。紙幅の都合なのかソノラマ文庫といふ媒体に合せたものなのかは分らないが、少し惜しい。

ともあれ、下巻ではテオが主役を張ることを祈りたい。

余談ながら、かういふのを「スチームパンク」などと称してさういふ枠組に組入れるのはあまり面白いことではないと思つた。つか、この作品についてはスチームパンクなどではないとオレは思ふ。

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