大和但馬屋読書日記

この日記は

2005年08月02日火曜日

[][][][]徳川慶喜家にようこそ-わが家に伝わる愛すべき「最後の将軍」の横顔(徳川慶朝, 文春文庫)

十五代将徳川慶喜公の曾孫にあたる著者による随筆。将軍直系の家柄ながらもごく普通の社会人として世を過ごす筆者が極めて小市民的な感覚で綴る文章から、目立つて得られる知見はない。知見を得なければ読む意味がないといふ訣でもないけれど、あまりに普通すぎた。著者自身がさういふスタンスで書いてゐるので、特に批難の意味を込めてゐるつもりはない。

ただ、写真を趣味にしてゐたといふ慶喜が手づから撮つた写真が何枚か掲載されてゐて、これには大変興味を惹かれた。いい写真だ。できれば他の写真もぜひ見てみたいので、同じ著者が纏めた「将軍が撮った明治―徳川慶喜公撮影写真集」を読む機会をいつか作りたいと思つた。

[][][][]星屑エンプレス ぼくがペットになった理由(小林めぐみ, 富士見ミステリー文庫)

「殺人事件が起きた事」以外にどのへんがミステリなのか分らんが、オレはミステリに思ひ入れは全くないので問題はない。

まあ、実に手堅い。いくらでもシリーズ化できる構成だし、これつきりでも物足りなさは感じないし。読んだ感想として出てくる言葉が「手堅いなあ」といふのもどうかと思ふが。あだち充の漫画を読んだ時と似た味はひ。

[][][][][]疾走! 千マイル急行 (上)(小川一水, ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

毎度御馴染み小川一水の職業冒険もの。ただ、いつもの同系の作品と違つて主人公が職業人ではなく、乗客として乗込んだ少年テオ。彼にも一往事態の当事者としての役割は与へられてゐるが、この上巻に限つていへば物語を動かす役にはほとんど立つてゐない。一水作品としては珍しいパターンかもしれない。といふか、どちらかといへば、一昔前なら同じ少年でもテオでなくキッツが主人公になりさうなものだ。冒頭のシーンはいくらなんでも星野鉄郎すぎるだらうとは思つたが。

鉄道絡みのギミック描写は申し分ない。千マイル急行(TME)の相当な999つぷり(装甲車付き!!)も魅力的だし、フリーゲージトレインや船での渡航、ラックレールによる登坂など、一通りのツボは押へてくれる。欲を言へばタブレットやスタフによる閉塞区間通過の描写もどこかにあればよかつたが、瑣末すぎるのでカットされたのだらうな。軌間(ゲージ)の問題をフリーゲージトレインといふ大技でクリアしながらも車輌限界の問題には一言も触れないのはたぶん作劇上の都合といふものだらう。本当ならゲージと同等かそれ以上に深刻な問題となるだけに、触れない方が得策なのだ。

人物の方に立ち戻ると、主人公達四人の少年達と列車係員や軍人などの職業人はよいとして、少年達以外の大人の乗客について全く書割り程度の描写しかされてゐないことが少し気になつた。ただ一人名前を与へられた大人は早々に退場してしまふし。紙幅の都合なのかソノラマ文庫といふ媒体に合せたものなのかは分らないが、少し惜しい。

ともあれ、下巻ではテオが主役を張ることを祈りたい。

余談ながら、かういふのを「スチームパンク」などと称してさういふ枠組に組入れるのはあまり面白いことではないと思つた。つか、この作品についてはスチームパンクなどではないとオレは思ふ。

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