大和但馬屋読書日記

この日記は

2005年08月31日水曜日

[][][][][]不思議使い (葛西伸哉,MF文庫J)

面白かつた。押へるべき点を丁寧に押へてゐるので読んでゐて淀みがない。トイレの花子さん三人娘にしてしまつたところが際立つオリジナリティか。ただ、その中の一人の菫子だけがあまりキャラが立つてゐなくて残念。他の二人は文句なしなだけに惜しい。

先日、友人と電話で駄弁つてゐる時に「君はホンマに三人娘が好きやなあ」と指摘されて初めてオレ自身の嗜好に気付かされたことがあるが、またその類例が出来たやうだ*1

あと、クライマックスでの主人公の啖呵もいいね。

*1:何の話をしてゐてそんな指摘をされたかは恥かしいので秘密だ

2005年08月29日月曜日

[][][][]裏山の宇宙船(笹本祐一,ソノラマノベルス)

裏山の宇宙船 (ソノラマノベルス)

裏山の宇宙船 (ソノラマノベルス)

SFといふより、やはりライトノベルだよな。これの元になつた文庫本の方は未読。

前半はかなり退屈。何故さう感じるかと考へてみるに、単に文章が拙いだけなのではないかと思つた。今勝手に「中トロ会話文」なんて言葉を思ひついたけれども、要するに「うる星やつら」の会話そのままの、しなくていいボケを延々と続けた挙句に「××だっちゅーとろーが!!」といふツッコミで締めるあのノリである。これが詰らなくて仕方なかつた。主人公の名前が「文(ふみ)」だし、キレて机を持上げたりするし、まあ世代的に「うる星」が底本になるのはある程度仕方ないのかもしれないが、十年前に書かれた本としてもセンスが古いし、まして今読むとなると相当に辛い。さらに、その会話文がプロンプトなしに延々と鈎括弧だけで続けられるから、場面に三人以上の人物が居る場合に一体誰が喋つてゐるのかが分らなくなり、これが読み辛さに輪を掛けてゐる。これは地の文で適当に説明を補つて然るべきだらう。そもそも会話として無駄なボケが多すぎるからかういふことになる。

そんな訣で一向に話の進まない前半を何とか読み進めて後半に入り、畳み掛けるやうに様々な要素が明かになつていくところから話は俄然面白くなつてきた。結末まで文句なし。気になるあれやこれやの描写も、少し物足りないくらゐが丁度いいのだ。同じ調子で前半をシェイプアップして文庫本一冊くらゐのボリュームに収めるくらゐが丁度良かつたのではなからうか。

挿絵は、やはりキャーティアだよなあ。猫型宇宙人の出てくる話の絵を今この時期に放電映像に依頼するといふのはどうなんだらう。まあそれはともかく、なんかキャラクターの絵ばかりで風景描写がほとんどなかつたのが残念ですよ。

[][][][][]あそびにいくヨ! 7 (神野オキナ,MF文庫J)

放電映像による今この時期の猫型宇宙人キャーティアの本、最新刊。裏山に落ちた方が再び宇宙を飛ぶのにあれほど苦労してゐるといふのに、こちらの方は相変らず能天気そのものでよろしい。

メインのおかずはアシストロイド艦隊のネタですか。アオシマとかウォーターラインとか、やはり受けた。

[][][][][]ホーンテッド! 4 (平坂読,MF文庫J)

ホーンテッド!〈4〉エンドレスラビリンス (MF文庫J)

ホーンテッド!〈4〉エンドレスラビリンス (MF文庫J)

ああ、最後まで酷い話だつた。どこまでが作者の狙ひ通りかは分らないけれど。

興味は表紙を開いて最初に目にする扉絵の描写にのみあつて、メインのミステリ紛ひも過去話もほとんどどうでも良く、ただラストだけを楽しみにしてゐたのだが、結局期待外れだつた。

といふわけで本巻の一番のクライマックスは扉絵。あと抹白さん。以上。

2005年08月19日金曜日

[][][][]邪馬台国はどこですか?(鯨統一郎,創元推理文庫)

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

歴史的に著名な事件を、一般的に知られてゐる文献資料等を材料にしてミステリ的手法で解明かし、通説とは全く異なつた結論に着地させてみせる小説

ミステリの論理展開による面白さを味はふには格好の本なのだらう。論理展開のための「お膳立て」が先に整へられ、その一要素として「人が殺されてゐる」ことが大前提となつてゐるステロタイプミステリの構造に反吐が出るオレでも、題材的には楽しく読めた。

しかし、論理的な読解き部分がどれだけ楽しくても、それを語る手法を、人物配置を、語り口を好きになれない。題材として取上げられる歴史的な人物や事件があまりマニアックすぎては読者がついてこられないから、できるかぎり俗流解釈に則つた一般論を提示してそれを引繰り返すといふ手法になるのは致し方ないところだらうが、その「俗流」の部分があまりに俗つぽすぎる。そのせゐかどうか、登場人物も悉くスノッブな思考と言動に終始してゐて、まづこれを読むのに相当な我慢が必要だつた。

歴史の俗流解釈についてもそのいくつかは「今時それはないだらう」としかいへないもので、論理展開ではなく題材選びそのものに無理矢理さを感じることがあつた。

この作品を「歴史トンデモ本だ」といつて批難するのは当らないと思ふ、オレもそんなつもりは毛頭ない。あくまでこの作品の醍醐味は「限られた文献資料を元にしたアクロバティックな論理的読解き」にあり、それがミステリの真骨頂でもあると理解した上で、そこは大いに楽しんだ。しかしミステリであるが故に「お約束」的に肉付けされたその他諸々の部分が気に入らない。だから、オレはやはりミステリを読まない。

同様の論理展開で、フィクションではなく歴史研究書として優れた考察をした本に例へば遠山美都男の「大化改新―六四五年六月の宮廷革命 (中公新書)」などがある。誰も読まないだらうけど、いい機会なので挙げておく。

[][][][]新・世界の七不思議(鯨統一郎,創元推理文庫)

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

以下同文。

題材がそれほど身近でない分、それから作者の語り口がよりミステリ的にこなれてしまつた分、「面白い」と感じる部分が相対的に減つてしまつた。つか、オチが弱い話ばかりだ。もういい。

[][][][]老ヴォールの惑星(小川一水,ハヤカワ文庫JA)

ハヤカワはかういふ作品をJAではなくてSFに分類したらいいのに、なぜ日本人作家を一緒くたに扱ふのだらう。書店だか取次だかの都合か? しらんけど。なんて要らぬことを考へてしまふくらゐ、素晴しいSFだつた。正直、小川一水がかういふものを書けるとは知らず、誰にとはなく恥かしく思つた。

SF作品がその魅力を存分に発揮するためには短編であるべきではないかと日頃薄々感じてゐる。もちろんそれは極論であつて長編にも面白い作品は山ほどあると知つてゐるつもりだが、でもやはりさう思ふ。著名な短編SF長編化された例はいくつもあるが、オレが読んだいくつかに限つていへばやはり短編の方が面白かつた。あるいは、長編化された方が好きであつても、その良さは短編時代の部分の面白さとは全く別のところにあつたりする*1

これまでメジャーに発表された小川作品とは毛色が全く異るが、それ故にこれを読んでますます小川一水から目が離せなくなつた。先が楽しみだ。

[][][][]アース・ガード-ローカル惑星防衛記(小川一水,ソノラマ文庫)

‥‥ごめん。コメントできん。ラノベとして普通に駄目。

まあ、ここからいくつもの階段を上つたからこそ今があるのだ。それはいいことだ。うん。

[][][][][]竜とイルカたち ―パーンの竜騎士9(アン・マキャフリイ/小尾芙佐訳,ハヤカワ文庫SF)

SF作品がその魅力を存分に発揮するためには短編であるべきだとは思ふが、大長編SFだつて面白いのである。例へば「パーンの竜騎士」がさうであるやうに。

前巻が出てから随分待たされたといふか、正直待つてゐたことすら忘れかねないくらゐだ。糸降り期が一回抜けたあとの城砦民達の気持ちがよく分るぞ。などと大長編ならではの語彙をつい駆使したくなるやうな作品は、オレにとつてはこれだけかもしれない。ガンダム語はまあ別として。特に初期三部作を繰返し読み、「竜の夜明け」に打震へた身としては、何年待たされても固有名詞に何の引掛りも感じることなく入り込めた。

前巻でひとつのクライマックスを迎へた後、やつと出てきた新刊のテーマがイルカときては「おいおい大丈夫か」とつい思つてしまつたが、まあ何とか大丈夫だつた。イルカの持つ超能力がパーン入植前からの遺伝子改造の結果といふことで、その設定がなかつたらちと受容れられなかつたと思ふ。ニューエイジ小説にならないかと心配だつたのだ*2

それにしても相変らず悪人が描けてないなあ、とは思ふ。トリク太守が間抜けに見えるのは彼以外の全ての人間が底抜けのお人好しだからなのではないかと。ある意味でもの凄く息苦しい社会なのではないか、惑星パーンといふ土地は。そこがどんなに過酷な環境と設定されてゐても結局は克服してしまふのだし(それが作品のテーマなのだから)、パーンは今やアメリカ的理想郷に向けて一直線に突進んでゐる。それを受容れて結末まで見届けるのもひとつの務めだから一刻も早い新刊の訳出を待ちたいところだが、一方でオレが好きなのは一巻二巻あたりの少し陰鬱な雰囲気であつたり、もつと遡つた「竜の貴婦人」のモレタの時代の雰囲気であつたりする。このやうな「中世的な風景の中に身を置きたい」といふ願望に忠実であらうとすればオンラインRPGなどにも少しは興味が出てくるのかもしれないが、まださういふ気はしないな。

‥‥もし「パーンの竜騎士オンライン」なんてゲームがあつたらどうしようか*3。既にありさうだな。いや、そんなのよりどちらかといふと火蜥蜴を飼ひたいのだけれど。竜よりも火蜥蜴。

そんなこんなで、もはやSF的にどうとかではなく、作品世界に耽溺するための環境そのものであり、さういふ意味では「吉永さん家」とかを読むのと動機は何一つ変らない。

つか、メノリ(それかい)。

*1:「エンダーのゲーム」を脳裏に浮べながら書いてゐる

*2:元からさうではないか、といふ指摘は聞こえない振りをする方向で

*3:因みに「ドラクエ」が海外で「DRAGON WARRIOR」となつたのは「パーンの竜騎士」のTRPGだかボードゲームだかがシリーズ第二巻「竜の探索」の名を関してゐるからだと昔どこかで読んだ気がする

2005年08月11日木曜日

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(7)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

七巻目は久しぶりに百色と梨々の話。少しシリアスさが増した感じかな。とにかく必死な梨々がいい。ただ、小学五年生の行動と考へるとあまりにも無茶が過ぎる気はする。まあ、そこは深くツッコむところではないにしても。

まあ、好きなシリーズだけど、そろそろ他のを読みたいなと思つた。

[][][][][]コッペとBB団 その1(田口仙年堂,ファミ通文庫)

コッペとBB団 その1 (ファミ通文庫)

コッペとBB団 その1 (ファミ通文庫)

他のを読みたいなと思つたら、たまたま新シリーズが始まつたのでそそくさと読んだ。

うん、素晴らしい。特撮ヒーローものの悪役をパロディ的に扱ふテーマの作品は時々出てくるけれど、所詮はパロディといふ感じであまり楽しめるものではなかつた。この作品も際どいところで、読み始めた時はかなり不安だつたのだけど。

いや、実に素晴らしい。コッペの能力をわざとらしく隠しておいて、クライマックスで嫌ボーンといふ展開になんかなつてたら読むのをやめるところだつたけど、そんな陳腐な話ではなくて。

新鮮味も手伝つて今は「吉永さん家」より続きが楽しみになつてゐる。もちろん「吉永さん家」の続きが読みたくないわけではないけれど、舞台を変へても面白い作品がいくらでも書ける力量のある人には、ひとつの世界に固執しすぎないでゐてくれた方が嬉しいかな、とも思ふ。

2005年08月09日火曜日

[][][][][]憐 Ren 錆びゆくココロと月色のナミダ(水口敬文, 角川スニーカー文庫)

憐 Ren 錆びゆくココロと月色のナミダ (角川スニーカー文庫)

憐 Ren 錆びゆくココロと月色のナミダ (角川スニーカー文庫)

表紙のコーヒー牛乳を吸ふ憐ちやんが可愛いと思ひました。まる。

前巻を読んだ後、これを紹介してくれた友人Kと電話で世間話をしてゐて、その話になつた。続きを読んだか? とKに問はれて「まだ。読みたいとは思つてるけどなー」と答へた。

「でも、あの話はもう終つてるから、続け様がなかつたと思はんか?」とK。オレはg:book:id:yms-zun:20050725:read050725isbn4044708010に書いた通り、全然話が終つてないと思つたのでその通り伝へてみた(Kはあまりネットを見ないといふか、オレと見てる範囲が全然違ふ)。

「いやだつて、あれは『ボーイミーツガール』だと思つてるからさー」「確かにあとがきにもそんなこと書いてあつたけど、『ボーイミーツガール』てのは話の発端であつて結末とちやうやん」云々。ライトノベルにどこまでSF的な読みを求めるかどうかの違ひなのだらうと指摘されたが、別にオレもSF的な整合性は全くどうでもよくて(タイムパラドックスとかは度外視してよいと判断)、単純に「憐が未来から現代にやつてきて、そこで幸せになりました」で終つたら「でもその先の未来は結局どうなの?未来そのものを変へないと気がすまんのとちやうか?」と思つただけなのだが。

などと長い前置きをして、さて本巻を読んだ。確かに、オレが望んだ方向の話に進まうとしてはゐる。が、なんだらうこの消化不良な感じは。何より「時の意思」の現れ方に驚いた。少しスケールが小さすぎないか? 憐自身の行動もさうだし、眞依の行動の動機や、前巻以来の未来世界の成立ちにしても同じで、やはり「それは無理がありすぎ」とツッコミを入れるしかない。そんな風に物語の屋台骨に不安があるからどうも引掛りを感じながら読んでしまふけれど、学園ものとしてはそれなりに面白い。ただ、ひとつの巻としてもう少し話をきちんと纏めて欲しい。クライマックスのシーン展開が(自ら認めてゐるやうに)前巻と全く同じといふのもいただけない。といふか。

表紙のコーヒー牛乳を吸ふ憐ちやんが可愛いと思ひました。まる。

[][][][][]憐 Ren -routine-(水口敬文, 角川スニーカー文庫)

憐 Ren ~routine~ (角川スニーカー文庫)

憐 Ren ~routine~ (角川スニーカー文庫)

シリーズ三巻目。本筋から少し離れた短編集

本筋から離れてゐる分、学園ものとして読めば楽しく読めた。話をきちんと纏めずに宙ぶらりんで終らせるのも、それはそれで味なのかもしれない。本筋にきちんとけりをつけてくれればそれでいい。

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(5)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

お祭り騒ぎ。相変らずの面白さだが、最後に桜を焼かうとするマッカチンの行動だけは「なんでそこでさうなるの?」と首を傾げた。自暴自棄とはいへ、同情のしやうもなくなるところだつた。縦列駐車には笑つた。

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(6)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

これまた面白いけれど、「吉永さん家」である意味は? と考へてしまつた。なんとなく、いいアイデアなのに勿体無い使ひ方をしてしまつたのではないかと思ふ。いきなり「おー、持ってけ持ってけ」と登場する双葉はカットイラスト込みで可愛いけれど(絵の絡め方が本当に上手いなこのシリーズは)、物語の中では異分子すぎてほとんど意味がないし、ガーゴイルにしてもそれは同じ。

まあ、この作者の引出しならいくらでもこのレベルの話は出てくると思ふので、「勿体無い」などとは要らぬ心配なのだらう。ところで、表紙の絵の意味が未だによく分らない。

2005年08月05日金曜日

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(2)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

一巻を読んで以降、続きを読まうと思つてから随分経つてしまつた。

その一巻は短編集の体だつたが、この巻は一冊分の分量の長編。一巻目の最終話を長くした様な展開。新キャラが出てきてガーゴイルと対決して負けてそのまま町に居つくといふ、週刊少年サンデーコメディ漫画のやうなパターンか。

イラストと相俟つて緩い雰囲気を維持しつつ、ところどころで締めてくれる。ぬるま湯最高。

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(3)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

ともすれば粗暴さだけが目立つ双葉の成長編。奇矯さを増していく敵役の描写が少し気に障るが、その辺も含めて少年漫画のお約束ではある。

ライトノベルの中でも文章とイラストの組合せ方がかなり上手いな、このシリーズは。文章の読み易さ等々含めて、読みながら想像力を全く動員しなくて済むといふのは、好き嫌ひは別にしてライトノベルのひとつのあるべき形だらう。

こいつはただのぬるま湯ぢやねえぜ、極上のぬるま湯だ。

[][][][][]吉永さん家のガーゴイル(4)(田口仙年堂,ファミ通文庫)

表紙を見て「また新キャラか」と思つたら。いや、この設定はかなりツボなんですが。

口絵漫画を見て「こんどは短編集か」と思つたら。本編全然関係ないやん!!

それはともかく、本編。舞台を変へて、まあ、所謂ひとつの過去話。SF的にタイムパラドックスをどうするか、といふことを一切考慮しなくて済む舞台の作り方が見事。「過去の終つた話」としての恋愛劇も、古典的ながらそこそこ読み応へがあつた。昔のちやんとした映画を一本観たやうな味はひ。あまり奇矯なキャラが出ないのもいい。

明日残り三冊を買つてこよう。

2005年08月02日火曜日

[][][][]徳川慶喜家にようこそ-わが家に伝わる愛すべき「最後の将軍」の横顔(徳川慶朝, 文春文庫)

十五代将徳川慶喜公の曾孫にあたる著者による随筆。将軍直系の家柄ながらもごく普通の社会人として世を過ごす筆者が極めて小市民的な感覚で綴る文章から、目立つて得られる知見はない。知見を得なければ読む意味がないといふ訣でもないけれど、あまりに普通すぎた。著者自身がさういふスタンスで書いてゐるので、特に批難の意味を込めてゐるつもりはない。

ただ、写真を趣味にしてゐたといふ慶喜が手づから撮つた写真が何枚か掲載されてゐて、これには大変興味を惹かれた。いい写真だ。できれば他の写真もぜひ見てみたいので、同じ著者が纏めた「将軍が撮った明治―徳川慶喜公撮影写真集」を読む機会をいつか作りたいと思つた。

[][][][]星屑エンプレス ぼくがペットになった理由(小林めぐみ, 富士見ミステリー文庫)

「殺人事件が起きた事」以外にどのへんがミステリなのか分らんが、オレはミステリに思ひ入れは全くないので問題はない。

まあ、実に手堅い。いくらでもシリーズ化できる構成だし、これつきりでも物足りなさは感じないし。読んだ感想として出てくる言葉が「手堅いなあ」といふのもどうかと思ふが。あだち充の漫画を読んだ時と似た味はひ。

[][][][][]疾走! 千マイル急行 (上)(小川一水, ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

疾走!千マイル急行〈上〉 (ソノラマ文庫)

毎度御馴染み小川一水の職業冒険もの。ただ、いつもの同系の作品と違つて主人公が職業人ではなく、乗客として乗込んだ少年テオ。彼にも一往事態の当事者としての役割は与へられてゐるが、この上巻に限つていへば物語を動かす役にはほとんど立つてゐない。一水作品としては珍しいパターンかもしれない。といふか、どちらかといへば、一昔前なら同じ少年でもテオでなくキッツが主人公になりさうなものだ。冒頭のシーンはいくらなんでも星野鉄郎すぎるだらうとは思つたが。

鉄道絡みのギミック描写は申し分ない。千マイル急行(TME)の相当な999つぷり(装甲車付き!!)も魅力的だし、フリーゲージトレインや船での渡航、ラックレールによる登坂など、一通りのツボは押へてくれる。欲を言へばタブレットやスタフによる閉塞区間通過の描写もどこかにあればよかつたが、瑣末すぎるのでカットされたのだらうな。軌間(ゲージ)の問題をフリーゲージトレインといふ大技でクリアしながらも車輌限界の問題には一言も触れないのはたぶん作劇上の都合といふものだらう。本当ならゲージと同等かそれ以上に深刻な問題となるだけに、触れない方が得策なのだ。

人物の方に立ち戻ると、主人公達四人の少年達と列車係員や軍人などの職業人はよいとして、少年達以外の大人の乗客について全く書割り程度の描写しかされてゐないことが少し気になつた。ただ一人名前を与へられた大人は早々に退場してしまふし。紙幅の都合なのかソノラマ文庫といふ媒体に合せたものなのかは分らないが、少し惜しい。

ともあれ、下巻ではテオが主役を張ることを祈りたい。

余談ながら、かういふのを「スチームパンク」などと称してさういふ枠組に組入れるのはあまり面白いことではないと思つた。つか、この作品についてはスチームパンクなどではないとオレは思ふ。

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