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読書ノート

2014-05-12

pp.209-10

教育とその成果との間には複雑な関係がある。(…)未来の先取り教育が、いかに難しく虚しいか(…)

 日本語の「読み書き」と、算数レベルの「ソロバン」をしっかり身につけさせる(…)だけでも実は大事業(…)余裕があれば、社会の「信頼」の大切さと金融の「信用」とのつながりを、噛み砕いて教えてあげればよいのである。私たちが子供たちに何を教えるべきかの順序は、私たちが何を大事にすべきかの順序でもある。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.209-10]


ISBN:9784166605453

p.207

米国では八〇年代から宗教組織が復活(…)各種の調査や研究は、新しい宗教組織は個人的救済には関わっても、政治献金組織として機能することが多く、地域社会への積極的な参加には結びついていないことを示している。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.207]


ISBN:9784166605453

p.206

ジンメルは、(…)

金融の仕組みが発達すると、ますますお金が目的化してゆき、生活だけではなく社会の制度すらもお金を中心に作られていってしまうという(…)人びとは、お金と豊かな資産と複雑な制度を持っているが、いつも自分が自分自身の支配者でなく、誰かに支配されているような気持ちがつきまとい、他人との関係も間に何かが挟まっているような、よそよそしいものになるのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.206]


ISBN:9784166605453

pp.203-5

「カネがカネを産む」とはいっても、カネが真空のなかで自己回転することはできない(…)

カネを回転させる仕組みと、その仕組みを守って維持する人間が必要だ。仕組みを守って維持する人間は、(…)マネーゲームからは生まれない。そもそも(…)信用創造は銀行業界という一種のコミュニティの正常な維持(…)

彼らが生み出す「信頼(トラスト)」が、複雑な商取引を円滑に進めるための前提となっている。

(…)信頼が確立していない社会ではゲームすら成り立たないのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.203-5]


ISBN:9784166605453

p.202

「内規にないから問題ではない」と答弁する中央銀行総裁がふんぞりかえる(…)経済が法律になり、法律が倫理になった社会では、(…)「お金儲け、悪いことですか」などといっていれば、うるさいマスコミも(…)「よくやった」と拍手してくれるだろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.202]


ISBN:9784166605453

pp.196-7

善悪の判断のさいにも「市場原理」に基づくことが解決法なのだと主張した(…)

リチャード・ポズナー教授は、アメリカ法曹界の重鎮で、裁判官でもある

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.196-7]


ISBN:9784166605453

p.194

 中年以上の日本人の多くにとって、自分の価値観にぴったりくるのは、ウェーバーの説だろう。(…)しかし、いまの三十歳代以下の若者たちにとって(…)少なくとも現実はゾンバルトの勝ちである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.194]


ISBN:9784166605453

p.190

アダム・スミスにまで遡れば、アメリカは「富」をそれほど生産していないことになる。なぜならスミスにおける国富とは、生活を支える財のことだったからだ。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.190]


ISBN:9784166605453

2014-05-11

p.185

 宮内が進めようとした市場化テストは、(…)新しい金融融合型ビジネス市場を開拓するための道具ではないかと疑われても仕方ないだろう。

(…)こうした人物が、村上世彰の後ろ楯であったのは、けっして偶然ではない。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.185]

ISBN:9784166605453

pp.183-4

 アメリカの場合(…)市場化テストを(…)

実施されたケースのほとんどが国防総省に集中している。(…)

冷戦時代に肥大化した国防総省が、民間へのアウトソーシングを推奨し(…)クリントン政権時代に行われた軍縮で加速され、さらに、ブッシュ時代のイラク戦争にいたる(…)

イラク戦争で最も多くの外注を獲得したハリバートン社の元会長リチャード・チェイニーが米副大統領(…)献金で政府を動かすより、政府内の有力者になった方が、この種の商売には効果的なわけである。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.183-4]


ISBN:9784166605453

p.178

 ともすれば忘れられてしまうことだが、オリックスの中心的業務はリース業であり、リース業とはれっきとした金融ビジネスだということである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.178]

ISBN:9784166605453

pp.177-8

構造改革特区によって農業への株式会社参入が認められると、オリックスは某食品会社と提携して、農業分野への金融サービスに乗り出したことも知られている。なかでも、多くの疑惑を掻き立てたのが、医療の規制緩和に関する取り組みだった。

(…)アメリカがその規制緩和を強く要求していることでも注目された。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.177-8]

ISBN:9784166605453

pp.175-7

 規制緩和に関する、宮内会長のもう一人の「師匠」は、(…)AIGの元会長のモーリス・グリーンバーグだったといえる。(…)

規制緩和小委員会の委員だった宮内会長は、(…)AIGの国際顧問として、グリーンバーグにどのようにアドバイスしたのだろうか。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.175-7]

ISBN:9784166605453

pp.174-5

エンロンの発展史の第二幕(…)規制緩和を先取りするという名目で、まだ規制のある地域の市場をバラバラに分離して、自社がこれから行う金融ビジネスを作り出すために、盛んにロビー工作を展開する(…)「市場創造」とか「アンバンドリング(事業分離)」と呼ばれた(…)

 さらなるエンロンのターゲットは、海外に求められた。(…)インドのダボール(…)

日本の四国電力(…)アメリカ政府を通じて市場開放を迫ると同時に『日本電力市場の改革への提案』を発表(…)

国内側からサポートしたのが、誰あろうオリックスの宮内義彦会長だった。(…)エネルギー売買とデリバティブが一体になったビジネスを持ち込む予定だったのだ。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.174-5]

ISBN:9784166605453

pp.171-2

福井日銀総裁が「公」でありながら「民」のような言動を見せるのにたいし、宮内オリックス会長は「民」なのに「公」の権力を行使しつづけてきた。

(…)十一年余にわたり、政府の中枢に入り込んで(…)「公民混同」を続けてきたのだ。その方法論上の「師匠」たちもまた、アメリカに見出すことができる。その一人はほかでもない、(…)元エンロン会長のケネス・レイである。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.171-2]


ISBN:9784166605453

p.170

 この十数年を振り返れば、八〇年代のバブルを引き起こした腐敗に激しい批判が行われるいっぽうで、バブル後の不況を克服すると称されたものに対しては驚くべき利益供与と特権が許されてきたのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.170]

ISBN:9784166605453

p.166

 イギリスの場合は、防衛策を認めない代わりに、もし敵対的買収を始めたら、全部の株式を購入しなくてはならない。また、そのための資金はすべて現金という「シティ・コード」がある。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.166]

ISBN:9784166605453

p.165

この手法(LBO)が横行した時代のアメリカ産業はひどく疲弊した。それでも企業は生き残りをかけて株高経営にしがみついたので、株価だけは上昇した(…)

投資銀行や投資ファンドが暗躍し、LBOが盛んになり、産業全体の技術開発力と労働生産性は下落するにもかかわらず、株式市場だけはバブル化していく(…)馬鹿ばかしい事態を避けるため、日本企業および日本政府は真剣に対応策を練る必要がある。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.165(括弧内引用者)]


ISBN:9784166605453

pp.163-4

投資銀行や投資ファンドがM&Aを繰り返す(…)アメリカの「国策」ともいうべきもの(…)

に翳りが見えるとすれば、それはアメリカが資本市場の自由化を考え直すとき

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.163-4]

ISBN:9784166605453

pp.162-3

アメリカでは、ストック・オプションとM&Aが常態となることで「経営」と「社長」も分離してしまった。(…)

M&Aの隆盛は日本企業のマネジメントに対する挑戦であるだけでなく、文化的および組織的なレベルでの挑戦にもなることに、経営者は本当にどこまで気がついているのだろうか。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.162-3]


ISBN:9784166605453

p.157

思い出していただきたいのは、九〇年代を通じて、日本経済新聞や会計監査法人が「日本は時価会計にすればバブル崩壊のさいのような不正は起こらない」と盛んに宣伝し(…)企業はその言葉を真に受けて、本来関係のないような中小企業まで早々と時価会計を導入した。さて、その結果はどうだったろうか。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.157]

ISBN:9784166605453

p.152

一つの原理で組み上げられた制度というものは、その一つの原理が崩れれば総崩れになるだけのことなのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.152]

ISBN:9784166605453

pp.151-2

最高経営責任者が取締役会会長を併任している企業が上場企業の約八割(…)社外取締役のほとんどは最高経営責任者の友人たちで、他企業の最高経営責任者や社外取締役との掛け持ちがほとんど(…)

最高経営責任者が自分で決める報酬はストックオプションを含めると平社員の数百倍にまで膨れ上がっていた。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.151-2]

ISBN:9784166605453

pp.148-9

横井英樹(…)ホテルニュージャパンの(…)乗っ取り後に十分な追加投資を行わず、同ホテルが火災事故に見舞われ、スプリンクラーの不備で多くの死者を出したときには、賠償金を出し渋って「守銭奴体質が出た」と冷笑されたものだった。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.148-9]

ISBN:9784166605453

p.148

 来るべきM&A時代に備えると称して、経済産業省と法務省は『買収防衛策に関する指針(ガイドライン)』を提示し、経済産業省の企業価値研究会が『企業価値報告書』を発表したが、あまりにアメリカ本位の考え方が貫かれていて関係者を驚かせた。

(…)制度をろくろく比較考量することもなく、ともかく小泉・ブッシュ合意に基づく「日米経済パートナーシップ」順守すべく、アメリカ型M&A制度を導入することに邁進(まいしん)してきた(…)アメリカと歩調をあわせれば、買収側が有利な制度になるのは当然だろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.148]

ISBN:9784166605453

p.141

日本国内でも、M&Aは件数・金額ともに急激に伸びている。(…)

 この背景には「資金の提供に積極的な金融機関の存在」があると同紙(ワシントンポスト)は指摘する。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.141(括弧内引用者)]

ISBN:9784166605453

pp.139-40

ラジャンとジンガレスの本*1によれば、(…)不幸なエンロン・ワールドコム事件によって、(…)資本市場が大衆の嫉妬や憎悪で制約されるようになれば、また暗黒の時代がくるという(…)

暗黒時代としている五〇年代、六〇年代のアメリカは、(…)製造業が発達し消費が急伸して未曾有の繁栄を誇った。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.139-40]

ISBN:9784166605453

pp.137-9

野村が王子製紙を駆り立てて、(…)

北越はクレディ・スイスという、M&A騒動のたびに名前が登場する外資の証券会社に頼んで、対抗戦略を練ることになった。(…)

追跡したジャーナリストの五十嵐卓が、(…)述べている。

M&Aは大きな周辺ビジネスを抱え(…)コンサルタント、弁護士事務所、証券会社、投資銀行、信託銀行などがM&Aを仕掛ける側にも防衛する側にもついて、手数料や成功報酬を荒稼ぎしている。(…)主幹事でありながら野村證券は(…)北越を攻撃する側に回った。(…)手数料稼ぎのために、立場も忘れ、企業にM&Aをけしかけている面は否定できない。

 否定できないどころか、アメリカの事例を検討すれば、それがいかに多くあり、ほとんど常態と化していることがわかる。(…)

次から次へと出版されるM&A入門書の類は、(…)

ほとんどが、投資銀行関係者、証券関係者、投資ファンド関係者、コンサルタント、法律事務所関係者などの執筆であるのも、ひとつの特徴だろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.137-9]

ISBN:9784166605453

*1:「『セイヴィング・キャピタリズム』」

2014-05-09

pp.130-4

性急で強欲な性格は、スピードと貪婪(どんらん)が要求された八〇年代以降のアメリカ経済に見事に合致していた。(…)

 だが、そのために篤い忠誠心と高いモラルを誇りとするGEは消滅し、利益を求めて狂奔するウェルチ*1の会社が登場した(…)

「富」の生産をマネーに急激にシフトしていったアメリカ経済の縮図であり、そしておそらくは日本の回避すべき未来像なのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.130-4]

ISBN:9784166605453

p.119

 九三年、(GEは)兵器部門を売却して軍事産業からは全面的に足を洗った。(…)冷戦が終結したため、軍備の縮小が不可避(…)しかし、決定的だったのは、原子力関連事業での不祥事であるといわれる。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.119(括弧内引用者)]

ISBN:9784166605453

p.116

GEは家電メーカーでもなければ、「モノ作り」を主体とする製造業の企業でもない。(…)世界最大の「ノンバンク」であり、収益の圧倒的な部門は金融サービスなのだ。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.116]

ISBN:9784166605453

p.113

現在進行している起業の金融化は、(…)「起業家精神」や「アニマル・スピリッツ」を、(…)イノベーションよりも、怪しげな「仮の成功」を目指すマネーゲームに向けさせる可能性が高い。

(…)その限界が、(…)いまは合法と違法との境界として現れてしまっている。証券会社、投資銀行、投資ファンド、会計監査法人、法律事務所、コンサルタントにとって好ましい経済政策とは、この境界をかぎりなく違法を少なくするように引くこと(…)称賛していられるのは、モラル感覚が麻痺した人間だけだろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.113]


ISBN:9784166605453

p.112

「赤字」をどこかに移動させて時間を稼ぎ、「黒字」になるまでごまかして成功を演出しつづける。(…)

金融化されたシリコン・バレー型経済(…)「失敗」というババを分散して引かされているのは、(…)膨大になった個人投資家たちである。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.112]

ISBN:9784166605453

pp.103-4

シュンペーターは「新結合」を生み出すのは起業家たちの才覚(…)、本物の起業家を見つけ出し融資するのは銀行家の見識だと考えていた。(…)

いってしまえば、事後的に経済発展の全体を説明するさい、便利だから(…)述べただけなのである。誰が本物で誰が偽物かの判断基準は、シュンペーターにも明らかではなかったといってよい。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.103-4]

ISBN:9784166605453

pp.102-3

シュンペーターの「創造的破壊」という言葉(…)が最初に登場する一九四二年刊*2の(…)結論が、資本主義が終焉を迎えるというものだったことを知って使っていた人は多くないだろう。

(…)起業家として登場してくる者たちが、最初からアブク銭だけを目指し、起業家を盛り立てるべき人々が、彼らを単なる投機の対象としか考えなくなれば、起業家はたちまち似非(えせ)起業家となり、創造でなく破壊だけを旨とするようになるだろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.102-3]

ISBN:9784166605453

*1:「ジャック・ウェルチ」

*2:「『資本主義・社会主義・民主主義』(東洋経済新聞社