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読書ノート

2017-02-25

pp.115-6

ヘーゲルが最も重視した解決策は、職業団体の活用であった。(…)

近代的職業団体の構成員は、国家によって(…)個人の自由と自律性を確保したまま、(…)国家(ステイト)の下で「ネイション」という共同体に再統合されるのであるが、個人と国家のに介在する中間組織が、この職業団体なのである。

 この職業団体という解決法は、(…)財政金融政策より根本的な解決策であるように思える。

[中野剛志「ヘーゲルの処方箋 中国経済の問題をどう解決するか」『反官反民 中野剛志評論集』pp.115-6]

ISBN:9784864880015

p.113

ヘーゲルは、過剰生産と疎外は、個人の頽廃の「結果」であるだけでなく、「原因」でもあると論じている。近代市場システムの中にあって(…)認められたいがために、経済的成功を求めてしゃにむに働く。しかし、(…)本質的に利己的なものであるからして、(…)社会的に真の意味で認知され、評価されることはあり得ない。そこで、(…)社会的認知を求めて、さらに経済的成功を目指して突き進むという悪循環に陥ってしまう。(…)過剰生産はさらに促され、疎外の問題はいっそう深刻化するのである。

[中野剛志「ヘーゲルの処方箋 中国経済の問題をどう解決するか」『反官反民 中野剛志評論集』p.113]


ISBN:9784864880015

pp.111-3

前近代社会であれば、個人の解放は単なる秩序の破壊でしかなかったであろう。しかし、近代社会あるいは「市民社会」においては、(…)秩序と個人の自由が両立するようになっている。(…)

近代の貧困は、単なる経済的な困窮ではなく、大規模な近代市場システムの中にいるがために、自分が共同体の一員であり、他者から認知されているという実感をも喪失してしまう状態、いわゆる「疎外」である。この孤立し、疎外された個人の集まりが大衆となって、やがては暴徒と化し、秩序を破壊するに至る。

[中野剛志「ヘーゲルの処方箋 中国経済の問題をどう解決するか」『反官反民 中野剛志評論集』pp.111-3]


ISBN:9784864880015

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2017-02-02

p.83

勢力均衡理論に基づく世界秩序の維持という現実主義理論の命題は、(…)アメリカという国家が現実の世界に存在する限り、成立し得ないということになろう。なぜなら、抑止戦略や勢力均衡理論は、理性的な国家を前提としているからだ。

[中野剛志「現実主義と保守主義」『反官反民 中野剛志評論集』p.83]


ISBN:9784864880015

p.81

湾岸戦争の抑止力は働かなかったのではなく、アメリカが働かそうとしなかっただけなのである。

[中野剛志「現実主義と保守主義」『反官反民 中野剛志評論集』p.81]

ISBN:9784864880015

pp.80-4

「攻撃的」現実主義者であるミアシャイマーは、国家は地域における覇権を追求するものであると主張する(…)

世界においては国家以上の権威は存在しないという前提(…)また国家の軍事力を中心とした勢力均衡理論を分析的枠組みとする(…)こうした世界観から、ミアシャイマーは世界の勢力均衡による秩序維持のため、核不拡散に反対し、物議を醸した。(…)いわゆる核抑止戦略だ。

(…)フセインの行動は、彼が報復を恐れて攻撃を控えるという、単純な抑止戦略によって容易に理解可能なのである。

 それだからこそ、かつてのアメリカはフセインを支援し、利用したのだ。(…)一九八九年、(…)アメリカは「合衆国とイラクの通常の関係は、我々の長期的利益に資するものであり、湾岸と中東の安定を促進するものである」と宣言していたのである。

(…)フセインは(…)蜜月だった両国関係の「歴史」から学び、アメリカは味方であるとの認識の下、クウェート侵攻を開始した。(…)しかし、(…)アメリカの予想外の(つまり非合理的な)反応を引き起こし、みずからの破滅を招いたのである。

[中野剛志「現実主義と保守主義」『反官反民 中野剛志評論集』pp.80-4]


ISBN:9784864880015

p.221

 シュペングラー、そして彼の同時代の西洋人たちは、自分たちの文明は没落する運命にあると悟った。しかし、彼らは、その運命を、むしろ積極的に引き受けることにしたのである。(…)

「明るい未来を信じて、日本人としての誇りと自信を取り戻そう」などという態度の、何とひ弱なことか。

 危機を克服するために必要なのは、客観情勢の如何にかかわらず、おのれのなすべきことをなそうとする精神である。それは、みずからの運命を自律的に欲する精神である。

[中野剛志「危機を乗り越える精神」『反官反民 中野剛志評論集』p.221]


ISBN:9784864880015

pp.211-3

「人間は、自分のことをすべて分かっており、自分の利益になるように合理的に計算して行動できる存在である」(…)

という人間観に立つ新自由主義のイデオロギーは破綻している。(…)情報が完全に入手できない場合は、(…)自由な労働市場などは、絶対にあり得ないということになろう。自分の労働に関する情報をいちばん詳しく入手できるのは、引退して労働する必要がなくなったときだからである。

[中野剛志「人はどうやって仕事を選ぶのか」『反官反民 中野剛志評論集』pp.211-3]


ISBN:9784864880015

2017-01-21

p.69

太平洋戦争をめぐる戦後日本の評価の歪みも、この*1封建道徳の「滅私」と関係しているように思われる。戦時中、戦争に賛成した者であれ反対した者であれ、国民として主体的に国の大事に関わった者は黙して語らなかった。そして、国民として主体的・自律的に戦争に関わらず、当時の政府の決定や軍部の命令に盲従した人々が、戦後になって、饒舌に自国批判を繰り広げ、結果として、戦後の歴史観の主流を形成したということではないだろうか。

[中野剛志「規律と道徳 自衛隊派遣の倫理学」『反官反民 中野剛志評論集』p.69]


ISBN:9784864880015

pp.63-4

軍人は上官の命令には「絶対服従」すべきものといわれている。しかし絶対服従というのは、自立性がまったく欠如した行為であるから、道徳的行為たり得ないのである。

(…)軍隊を、戦争遂行のための単なる手段として定義してしまった場合、そこに道徳の入る余地はまったくなくなる。それは軍隊そして軍人を単なる戦闘機械とみなすということだからである。

[中野剛志「規律と道徳 自衛隊派遣の倫理学」『反官反民 中野剛志評論集』pp.63-4]


ISBN:9784864880015

p.63

(国連決議に基づいたイラク復興支援のためであり、イラク国民に対する人道的な援助であるから、ルール上も道徳上も問題はないという方便は可能である。しかし、日本政府は実際にアメリカの侵略を支持したのである)

[中野剛志「規律と道徳 自衛隊派遣の倫理学」『反官反民 中野剛志評論集』p.63]


ISBN:9784864880015

*1:「組織の倫理と公の道徳の二律背反を解決するための」