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読書ノート

2014-10-17

pp.142-3

 第二次世界大戦後の四十数年間は、二つの啓蒙イデオロギー(…)の間の世界的抗争に費やされた。両方とも(…)古い西欧の伝統から流れ出た(…)西欧イデオロギー間の身内のけんかだった。

(p.142)

 冷戦の終わりから出現している世界は、啓蒙思想哲学のレンズを通してはっきり見ることができない。啓蒙思想の希望に基づいた政策を採用している国は、(…)啓蒙思想後の世界における歴史の回帰にまったく備えができないままだろう。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.142-3]


ISBN:4532147565

pp.294-5

啓蒙思想とは世界が最終的には普遍的文明に統合されるという信念である。(…)西欧文明を前提にしたもので、結局西欧による世界の支配を想定している。このような啓蒙思想は第二次世界大戦において連合国が枢軸国を破ることにより生き残り、冷戦時代を経て共産主義に対しても勝利を収めた。しかしグレイのみるところ、共産主義とリベラリズムの戦いは同じ西欧啓蒙思想同士の身内の戦いだった。(…)

 そして冷戦後は、普遍的自由市場の形成が啓蒙思想のゴールとなった(…)グレイによれば、自由市場は民主主義と相容れないのであり、「民主的資本主義」とは人を惑わす言葉でもある。

(…)グローバル化という名のもとの画一化の強要(…)近代性、自由市場、アメリカの制度の全世界への普及が同義語になってしまったところに現代世界の問題がある。

(…)グローバル資本主義、グローバル自由市場主義は個々の社会や文化の相違を無視し、自らを貫徹しようとする思想なのである。世界共産主義がそうだったように

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.294-5]


ISBN:4532147565

p.289

流れを逆転させようとするラッダイト*1や原理主義者は、彼らが拒絶すると主張している近代世界の大きな特色の一つを見せつけている。それは人類の病理は意志の力によって治すことができるという信念である。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.289]


ISBN:4532147565

pp.288-9

無秩序なグローバル経済の一つの帰結は、武器であふれかえる世界であることがわかった。(…)

ワシントン・コンセンサスが国家の弱体化を積極的に促したおかげで、これら開放的世界秩序の予期しなかった帰結は複合的になっている。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.288-9]


ISBN:4532147565

p.284

社会のまとまりを守り育てる上での国家の(…)責任に基づく政策は、(…)様々に異なった諸国民の文化的伝統、それらの人々が実践する資本主義のタイプに従って変化するのである。

 文化、体制、資本主義のタイプの間にある相違は、(…)たいした重要性を持たないと片付けるのがワシントン・コンセンサスだが、(…)これらの相違は決定的なのだ。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.284]


ISBN:4532147565

p.279

多国間組織が認知する所有権が執行され得ないような世界経済は、自由市場ではない。それはアナーキーである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.279]

ISBN:4532147565

p.275

経済への政府の介入を最小化することを奨励する政策の現実の帰結は、市場だけでなく生存そのものがかかる競争の中で主権国家が身動きがとれなくなることである。(…)

 現在、グローバル市場は社会をばらばらにし、国家を弱体化させるように作用している。非常に有能な政府、あるいは力強く強靭な文化(…)がない場合には、国家崩壊するか効率性を失い、社会はコントロールできない市場の力によって荒廃させられてしまった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.275]


ISBN:4532147565

pp.274-5

アジア地域に出現している独自の種類の資本主義は、アメリカ型の自由市場を再現する意図で作り出された枠の中には収まりきれない。これらの国々の政府は、その経済を親である文化から根こぎにし、コントロール不可能にしてしまう影響を持つ政策を受け入れはしないだろう。

(…)それは多くの中心を持つ世界の始まりになり得る。複数の異なった文化や体制が支配や戦争によることなく互いに影響し合い、協力し合えるような世界である。(…)グローバル市場は、世界の諸国民が平和に共存することを許さない。各国民は資源を節約する方法を確立させないまま、資源をめぐる競争者にされてしまうのである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.274-5]


ISBN:4532147565

*1:[機械化反対者]

2014-10-16

p.263

 中国の国家組織は、経済自由化の副作用として弱まっている。(…)人民解放軍を含めあらゆる組織が公式あるいは非公式に商業化し(…)ほとんどすべての物には値段がついている(…)おかげで、命令系統は弱まってしまった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.263]

ISBN:4532147565

p.262

 イデオロギーの面では、今の中国には空洞化した体制しかない。(…)経済成長の低下が地域間の格差や環境危機と相互作用を起こす時、現体制に一貫したイデオロギーが欠けていることが不安定性の源になるかもしれない。

(…)中国独自の資本主義を基礎にして近代化を進めようとすれば、毛の近代化失敗(…)中国の伝統的文化の多くが根絶やしにされてしまったこと(…)に直面せざるを得ない。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.262]


ISBN:4532147565

p.261#a

中国の改革者が他の国から教訓を学んだとしたら、それはシンガポールと台湾である。韓国や日本からも前二者ほどではないが、かなり学んでいる。西欧諸国はモデルとしては使われなかった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.261#a]


ISBN:4532147565

p.260

外国資本への接近が簡単だという理由で選ばれた(…)帝国主義時代の条約港(…)経済特別区というアイデアは広東省出身の二人の党役員が鄧小平に吹き込んだもののようである。しかしこの提案の実現を取り仕切ったのは鄧自身だった可能性が強い。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.260]


ISBN:4532147565

pp.259-60

中国に巨大な市場を期待する人々は、中国における環境悪化をちょっとした不便くらいにみなし、近代化の進展を全面的にストップさせ得る脅威とは見ていない。

(…)中国指導部はこの代価がどれほど高くなるかについての(…)楽観論には与していない(…)指導者たちは、中国が決して経済超大国になることはないだろうということに気がついている。

(…)

 毛の近代化の失敗は、中国のその後の近代化を一層困難なものにした。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.259-60]


ISBN:4532147565

p.258

韓国では経済はチェボルと呼ばれる企業集団によって支配されている。上位十のチェボルが韓国の輸出品の半分以上を生産し、上位三十のチェボルが国民総生産の四分の三を占める46。(…)家父長的な組織で、創業者一族が意思決定の地位にとどまっている。しかしこれらは、市場の独占あるいは寡占を目指す協力関係が、一族をはるかに超えて広がっている企業である。

 変化し始めてはいるが、(…)全体的な戦略は政府によって枠組みが作られることが多い。これら企業集団では世襲的な経営が行き渡り、報償や報酬は(…)どのような仕事をしたかよりも、どれほどうまく仕事をしたかを上役がどう判断するかによって左右される。これら企業体の間には門閥や地域間の競争意識がある。またほとんどの韓国企業では終身雇用制は採用されておらず、約束もされていない47

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.258]


ISBN:4532147565

pp.257-8

西欧の社会学者が(…)展開した標準的(…)通説によれば、資本主義はその母体となる社会から自らを切り離すことによって発達するのである。

(…)中国の資本主義に関しては、これはほとんど手がかりにならない。(…)

日本の封建時代と近代でも、アングロ・サクソン世界の個人主義社会でも顕著だった、家族を超える信頼と義務の関係(…)強力な企業文化と忠誠心を持ち、(…)高度の自立性を示す巨大な多国籍企業は、日本の資本主義の特徴であるが、これに相当する企業は中国のビジネスには存在しない45

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.257-8]


ISBN:4532147565

p.253

 バングラデシュとエジプトを別にすれば、中国はどの開発途上国と比べても耕作面積が少ない。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.253]

ISBN:4532147565

p.251

大躍進以前、一九五七年の中国では死亡年齢の中間値は十七・六歳だったが、一九六三年には九・七歳になった。(…)死亡した者の半分は十歳以下の子供だったのである32

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.251]


ISBN:4532147565

p.250

 中国に封建主義が存在しなかったことは、(…)鄧小平の経済改革が総じてうまくいったことの根本的な原因の一つである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.250]


ISBN:4532147565

p.249

日本とは対照的に中国では近代化はほとんどいつも西欧化を意味した。(…)西欧化をどこまで進めるべきか、そしてその導きとなる哲学は何か(…)近代的になるということが西欧的価値の採用を意味することを疑った中国人はほとんどいなかった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.249]

ISBN:4532147565

p.247

毛沢東主義の全体主義は中国の歴史に前列のないものだった。サイモン・レイズが論じたように、「(…)スターリン主義やナチズムなどその外国のモデルに驚くほど似ている23のである。(…)国家の役割が比較にならないほど強圧的で干渉的(…)

中国の歴史において毛体制ほど束縛的な体制はなかった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.247]


ISBN:4532147565

pp.246-7

毛(沢東)はソ連の先達たちにしたがって、中国経済を近代化するためには農業を工業化しなければならないと信じ(…)モデルは(…)十九世紀の資本主義工場だった。

(…)環境に対してプロメテウス的な(…)技術の仮借ない利用と、(…)教条主義的マルクス理論の結果、天然資源の過度の開発とソ連をも上回る環境破壊を招いたのである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.246-7(括弧内引用者)]


ISBN:4532147565

2014-10-15

p.232

 短いショック療法の期間に輸入された(…)ネオリベラルの信条とレーニン主義との大きな相違点は、政策の目的をめぐるものではなく、手段をめぐるものだった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.232]

ISBN:4532147565

p.231

 ソ連時代から徐々に育っていたロシアの中産階級は、ショック療法に続く混乱と欠乏によって弱体化された。しかしながら皮肉なことに、ソ連時代の(…)機略縦横さと技能の取得というブルジョワ的伝統(…)が若い中産階級の人々に新しい環境に適合し、(…)この意味では、彼らはグローバル市場の無秩序さに十分備えができている。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.231]

ISBN:4532147565

p.227

 ユーラシア運動は一九二〇年代にさかのぼる。その頃、亡命ロシア人思想家たちが声明を発した。(…)今日のユーラシア人は、コンスタンチン・レオンチェフのような十九世紀ロシアの思想家の影響を受けている80

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.227]

ISBN:4532147565

p.225

ヨーロッパ人にとっては、歴史は共産主義の崩壊で終わったわけではない。歴史は半世紀に及ぶ中断の後、再び始まったのである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.225]


ISBN:4532147565

pp.221-2

「(…)非常にありそうなことだが、ロシア国民はだれでもよいから一番気前のよい約束を口にする煽動家を歓迎するだろう74」(ジム・ロジャース)

(…)

 もっとあり得る展開は、もう一つの「困難の時代」――十六世紀末の混乱と内戦の時期で、この歴史的記憶はいまだにロシアの民謡や民話に生き続けている――の恐れがロシア国家を強化する触媒として作用することである。今日のロシア資本主義の犯罪化は、エリツィンが始めた強大な大統領権限の体制をさらに拡大せよとの要求を誘発するだろう。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.221-2]


ISBN:4532147565

pp.220-1

 ロシア政府は武器輸出を促進して国防産業の低落に歯止めをかけようとした。(…)アメリカ議会調査サービスによると、一九九六年夏には、ロシアは発展途上世界に対する最大の武器輸出国になり、中国が最大の顧客だった72

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.220-1]

ISBN:4532147565

p.216#b

 国家と組織犯罪との共生は(…)つねにソビエト体制の中心にあった。ソビエト国家は無法だった。(…)法体系は国家に事実上無限の裁量的権力を許し(…)権力者の決定は何であれ法になることを意味した(…)

腐敗は問題ではなかった。そうでもなければ機能しない経済システムにとっての解決策だったのである61

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.216]


ISBN:4532147565

p.216#a

巨大で、多くの場合独占的な企業と一体となって活動する国家主導の資本主義こそが二十一世紀ロシアの経済発展のモデルとなるように思われる。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.216]


ISBN:4532147565

p.213#c

多くの観察者は、ソビエト国家の崩壊は西欧の民営化政策の勝利だと考えたようだが、そうではない。その帰結がはっきりするまでには数十年、おおらく百年はかかるような世界史的な出来事だったのである。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.213]


ISBN:4532147565

p.213#b

法治はロシアには一九一七年以来存在したことがなかった(…)国民の多くは市場交換に不安を持ち、それが搾取につながるのではないかと恐れた。このような一般大衆の偏見は、商業に対して昔からロシアにある猜疑心の表現だった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.213]

ISBN:4532147565

p.213

アダム・スミスの自然的自由システムは、法治を含む有効な国家を前提にしていた。そのような背景がなければ、市場交換が有益であるとしてそれに依存することはできない。それどころか、それはもう一つの搾取システムになってしまうのだ。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.213]


ISBN:4532147565

p.210

「(…)ソ連の工業化地帯で環境上の危険から逃れられる場所はほとんどない。(…)国土全体の面積の一六%で何らかの形の過酷な生態状況が生じている47

 フェッシュバックとフレンドリーが実証する環境公害は、自然に対するボルシェビキの態度の遺産である48

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.210]

ISBN:4532147565

pp.209-12

一九八九年以降、ロシアの公式統計上の経済規模は半分に縮小した。大恐慌期間中のアメリカ経済の縮小よりも大きな下落で(…)一九九一年以降の経済活動の縮小は四〇%近くに達した41

(…)労働年齢の男性の自殺は一九八九年から一九九三年の間に五三%増加した44。(…)

出生率は一九八五年以降、ほとんど半減(…)死亡率は出生率を一・六倍の割合で上回っており、今や人口は毎年ほぼ百万人ずつ減少している53。(…)前列のない人口の激減である。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 pp.209-12]

ISBN:4532147565

p.204

 経済的自己利益が政治的にもっとも重要だという準マルクス主義的信念がロシアにおけるショック療法政策の知的基盤だった。(…)

ジェフリー・サックスのような経済学者(…)たちは、アメリカ資本主義をあらゆる場所の市場経済のモデルとみなしている。(…)アメリカ流の自由市場体制が普遍的になれば世界の繁栄が促進されるだろうと信じている。彼には、ロシアがこのような定義の例外であるべき理由が理解できないのである29

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.204]


ISBN:4532147565

p.203

「歴史の必然性というカール・マルクスの理論は、新しい種類の社会工学者たちに取り上げられ、国際通貨基金、アメリカ国務省、西欧諸国の政府、そしてほとんどの西側の主要新聞の編集局に身をおさめている26」(ジョナサン・スティール)

 これらの理論の絶えざる特徴は経済合理主義である。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.203]


ISBN:4532147565

p.201

経済構造改革(ペレストロイカ)と政治的自由化(グラスノスチ)(…)の主たる支持者は、つねに西側諸国の世論形成者たちだった。(…)

 ゴルバチョフの政策がさらけ出させたのは、その正当性があまりにも薄れ(…)[特権高級幹部]でさえ、抑圧に訴えてそれを守る意欲を失ってしまっていたような体制だった。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.201]


ISBN:4532147565