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読書ノート

2017-10-14

pp.250-2

自民党の地滑り的勝利をもたらした四年前の衆院選も、小選挙区における両党の得票率の差は、大きくなかった。(…)

二大政党というより、一党優位体制が交代しているに過ぎない。(…)

公共事業費の削減などにより緊縮財政を断行した小泉政権の構造改革は、デフレを引き起こし、地域社会を疲弊させた。ところが、民主党の主張もまた、公共事業費の削減や、政府支出の抑制などのデフレ政策である。

(…)衰退する社会では、現状維持が最善である。それゆえ、現状以外の選択肢は、現状より悪いものしかない。しかし、それでも現状を変えようという選択をするならば、事態は悪化するしかない。だから、衰退する社会では、変革は、やればやるほど衰退を加速化させることになる。

(…)時代の空気に敏感な政治家たちは、現状を「守る」ことこそが最善であることに気づいていたらしい。つまり、我が国が衰退の運命にとらわれたのだということに。

 ならば、政権交代を啓示した「民の声」=「神の声」の御意志とは、「日本は衰退せよ」ということなのか。

[中野剛志「民の声は、神の声か 歴史的選挙の歴史的意味」『反官反民 中野剛志評論集』pp.250-2]

ISBN:9784864880015


pp.247-8

 金融危機以降、欧米は大規模な公共投資を行っているが、それらは単なる需要刺激策ではない。インフラ不足という新たな先進国病を克服するための戦略だ。(…)オバマ大統領は、「国家インフラ再投資銀行」の創設を提唱している。(…)インフラ不足という新たな先進国病を一挙に克服し、短期の需要創出と同時に、中長期の成長基盤を再建しようというのだ。EUもまた、輸送やエネルギー関連のインフラの高度化を計画している。

(…)インフラ更新の際には、資源制約に備えて、資材の省資源化を進める。将来の労働人口減少に備えて維持管理費を縮減すべく、資材の長寿命化も進める。省資源化や長寿命化には、日本の技術力が活きる。要するに、二十一世紀先進国型インフラ投資戦略を実行する上で、日本は、欧米より優位にある。足りないのは、時代の潮流を見据えた大局的な戦略眼だけなのだ。

[中野剛志「二十一世紀の先進国病」『反官反民 中野剛志評論集』pp.247-8]

ISBN:9784864880015

2017-10-13

pp.244-5

 ヴェーバーは言う。官僚の本質は、「だれかれの区別をせずに公平・中立、没個性的に事務を処理するところにある。(…)また官僚の真骨頂は、個人的には間違っていると思われる命令であっても、あたかも自分の信念に一致しているかのように、それを執行する能力にある。行政機構の一部品で(…)命令者の責任において行動する(…)官僚とは対照的に、政治家に問われるのは、「責任倫理」である。(…)善に基づいて行動したかではなく、その行動がもたらした結果次第で、個人の責任が問われる。

(…)もし政治家が行政機構の一部品と化すようなら、彼は政治家ではなく官僚になり果てるだろう。

[中野剛志「「脱・官僚支配」指南」『反官反民 中野剛志評論集』pp.244-5]

ISBN:9784864880015

2017-10-11

pp.280-1

 「政治」は、「民主」が次から次へと噴き出す様々な矛盾を乗り越えて、一貫性のある決定を下す営為である。(…)建前上、その政治的決定は、世論の支持を得たものでなければならない(…)

みずからの決定が世論の支持を得られるように、国民を指導したり、説得したりしなければならない。(…)この「民主」と「政治」の矛盾を解消するためのリーダーシップや説得もまた、政治という営為の欠くべからざる要素である。

(…)まさにマックス・ヴェーバーが『職業としての政治』(’19年)において述べたように、(…)「どんなことに直面しようと「それにもかかわらず!」といえる確信のある人間、そういう人間だけが、政治を「天職」とすることができるのである」

[中野剛志「「民主」が滅ぼす「政治」 普天間基地移設問題をめぐって」『反官反民 中野剛志評論集』pp.280-1]


ISBN:9784864880015