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読書ノート

2018-01-15

p.252

太平洋軍司令官は昔から植民地総督のような存在(略)最もましなときでも外交政策と軍事政策の境界線を曖昧にしてしまい、最悪の場合は両方の政策をぶち壊しにしてしまう傾向があった。誰が司令官になろうが、それは変わらなかった。これは太平洋軍司令官という役職にずっとつきまとっている問題だろう」(『ライス回顧録』集英社

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』p.252]

ISBN:9784062884396

pp.240-4

ポツダム宣言には、占領の目的が達成されたら「占領軍はただちに撤退する」と明確に書かれている(…)大西洋憲章以来の「領土不拡大」という大原則にもとづく条項なので、マッカーサーといえども、それを根拠なく撤回することはできません。

 一方、アメリカの軍部は、日本に基地を置き続ける保証がない限り、平和条約を結んで日本を独立させることには絶対に賛成しない。

(…)ダレスがすばやく考えだし、マッカーサーに教えた基本方針が、(…)「国連憲章の43条と106条を使ってクリアする」(「6・30メモ」)

 というもの(…)

 国連憲章43条というのは、結局は実現しなかった「正規の国連軍」についての、もっとも重要な条文です。(…)

 一方、106条というのは、そうした国連軍が実際にできるまでのあいだ、安保理の常任理事国である五大国は、必要な軍事行動を国連に代わって行っていいという「暫定(ざんてい)条項」です。(…)

 つまり、「国連加盟国は、国連軍に基地を提供する義務を持つ」という43条を、106条という暫定条項を使って読みかえることで、日本は国連軍ができるまでのあいだ、「国連の代表国としてのアメリカ」に対して基地を提供することができるというのです。

(…)国連憲章43条が加盟国に(…)基地などの便益(ファシリティーズ)だけではなく、兵力(アームド・フォーシズ)援助(アシスタンス)の提供も同じく義務づけているので、最終的にアメリカは日本に対して、あらゆる軍事的な支援や兵力を提供させて、それを米軍の指揮のもとに使う法的権利を持っているということになります。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.240-4]

ISBN:9784062884396

pp.239-40

 とにかくアメリカでは国務省の官僚だけでなく、大統領から将軍たちまでがつねに「法的正統性」についての議論をしています。もちろんそれは「法的公平性」の意味ではなく(…)

 他国の人間を二四時間、銃を突き付けて支配することはできない。けれども「国際法→条約→国内法」という法体系でしばっておけば、自分たちは何もしなくても、その国の警察や検察が、都合の悪い人間を勝手に逮捕してくれるので、アメリカはコストゼロで他国を支配できる。戦後世界においては、軍事力ではなく、国際法こそが最大の武器だというわけです。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.239-40]


ISBN:9784062884396

pp.196-209

「戦時に米軍司令官が日本軍を指揮する権利」というのは、(…)旧安保条約の草案にすでに条文として書かれていたもので、その後もずっと交渉のなかで要求し続けていたものでした。

 しかし、日本国民の目にみえるかたちで正式に条文化することはついにできず、結局独立後に(…)密約を結ぶことになったのです。

(…)

 旧安保条約と同じく「吉田・アチソン交換公文」もまた、事前には日本国民にいっさいその内容が知らされない「事実上の密約」として結ばれた(…)

占領を終えるにあたって、米軍の駐留継続(旧安保条約)や、米軍への軍事支援の継続(吉田・アチソン交換公文)を交換条件とすることは、ポツダム宣言にも国連憲章にも違反する(…)日本が、あくまで自由な意志に従ってそれらの取り決めを結ぶというフィクションが、アメリカ側の交渉責任者であるダレスによって作られ(…)

 その後の日米交渉のなかで、この取り決めはさらに改悪され、「朝鮮」という地域的な限定も、「国連」という国際法上の限定も、ほとんどなくなってしまいました。

 その結果、現在に至るまで日本は、米軍への戦争協力を条約で義務づけられた世界で唯一の国となっているのです。

(…)

 米軍自身が書いた旧安保条約の「原案」(一九五〇年一〇月二七日案)(…)

の「第14条 日本軍(ジャパニーズ・アームド・フォーシズ)」という箇所(…)には一九五二年から、二〇一五年の安保関連法の成立にまで至る、六三年間の日米の軍事的関係の歴史が、すべて予言されているのです。

(1)「この協定〔=旧安保条約〕が有効なあいだは、日本政府は陸軍・海軍・空軍は創設しない。ただしそれらの軍隊の兵力や種類、編成、装備など、あらゆる点についてアメリカ政府の助言と同意があり、またその創設計画がアメリカ政府の決定に従う場合はその例外とする

(2)「戦争の脅威が生じたと米軍司令部が判断したときは、すべての日本の軍隊は、アメリカ政府によって任命された最高司令官の指揮のもとに置かれる

(3)「日本軍が創設された場合、日本国外で戦闘行動を行うことはできない。ただし前節の〔アメリカ政府が任命した〕最高司令官の指揮による場合はその例外とする

(以上、同14条の第3節から第5節の要約。(…)http://history.state.gov/historicaldocuments/frus.1950v06/pg_134100

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.196-209]

ISBN:9784062884396

2018-01-14

pp.162-81

降伏文書の受け入れから、(…)いちおうの独立を回復するまで、日本政府や昭和天皇が自分だけの判断にもとづいて、何か重要な文書を作成したり、発表したりすることなどまったくなかった(…)

戦闘行為は終わっているものの、(…)法的に決着するまでは、(…)まだ「武器を使わない戦争」が続いている状態なわけですから、日本に決定権がないのは当然のことなのです。

(…)もっとも重要な文書が、日本国憲法であることはいうまでもありません。(…)

「日本国憲法の草案は、本当は日本人が書いた」というのは、

「戦争は、八月十五日に終わった」

 というのと同じ(…)

草案を書いたのは百パーセント、占領軍(GHQ)でした。何月何日に、誰がどの条文を、誰とどのように相談しながら書いたかまでわかっている。そこに日本人が書いた条文の話など、いっさい出てこないのです。

 しかもGHQは、(…)

「GHQが憲法草案を書いたことに対する批判といっさいの言及

を検閲の対象として、メディアで報じたり、手紙に書くことをすべて禁じました。

(…)憲法9条や憲法前文について少しでも論じようとするなら、それらの条文が、(…)それぞれどこにルーツをもっているかについて、まず調べる必要があります。

(…)「戦後世界」(…)のすべてのスタート地点となった「大西洋憲章」は、日本ではあまり知られていませんが、非常に重要な文書なのです。

(…)大西洋憲章の理念を(…)具体的な条文にしたのが、国連憲章の原案である「ダンバートン・オークス提案」でした。(…)安全保障は国連軍を中心に行い、米英ソ中という四大国以外の一般国は、基本的に独自の交戦権は持たないという、戦後世界の大原則が定められました(第8章・12章)

 これはまさしく日本国憲法9条そのものなんですね。(…)

日本国憲法は国連軍の存在を前提に、自国の武力も交戦権も放棄したということです。

(…)

 ところが現実は(…)この段階で想定されていたような正規の国連軍は、ついに一度も編成されることはありませんでした。(…)いくつかの例外条項が、朝鮮戦争をきっかけに猛威を振るい始め、現在まで続く戦争の絶えない「戦後世界」が出現してしまったのです。

(…)

 そもそも「平和を愛する諸国民」という言葉は、(…)「大西洋憲章」の第8項に登場し(…)

米英の基本的な世界観がはっきりと示されているのです。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.162-81]


ISBN:9784062884396

pp.135-50

同じ島(沖縄本島)のなかで、人権が守られている人間(米軍関係者)と、守られていない人間(日本人)がいる。

 また、同じ地域(東日本)のなかで、人権が守られている人間(東京都民)と、守られていない人間(福島県民)がいる。

(…)現在の日本には、国民の人権を「合法的」に侵害する不可解な法的取り決め(「適用除外条項」他)が、さまざまな分野に存在している(…)

 人権を侵害する適用除外条項など、絶対に認めてはならないはずの日本国憲法が、なぜ機能していないのか。

(…)一九五九年の「砂川裁判・最高裁判決」。

 憲法の機能停止という問題については、この出来事を徹底的に検証しなければならないことだけは、よくわかっていたのです。

(…)公電*1を詳しく読むと、砂川裁判において彼(マッカーサー駐日大使)が設定していたゴールが、

(…)

安保条約は日本国憲法の上位にある
 ことを判決として確定する
ところにあったことがわかります。

(…)

「安保条約のような重大で高度な政治性を持つ問題については、最高裁は憲法判断をしなくていい」

(…)

 この判決により、「安保条約は日本国憲法の上位にある」ことが、最高裁の判例として、事実上、確定してしまったわけです。

(…)

 このとんでもない判例によって、その後私たち日本人は、(…)さまざまな政府の違法行為や、国民への人権侵害について、法的に抵抗する手段を失って(…)

 結果として(…)米軍とその関係者だけでなく、エリート官僚を含む日本の支配者層もまた、法的なコントロールの枠外へ出てしまうことになりました。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.135-50]

ISBN:9784062884396

*1:「在日アメリカ大使館発 11月5日 国務長官宛 極秘公電」(p.144)

2018-01-13

pp.122-5

米軍と日本の官僚の代表が日米合同委員会で協議し、そこで決定された方針が法務省経由で検察庁に伝えられる。報告を受けた検察庁は、自らが軽めの求刑をすると同時に、裁判所に対しても軽めの判決をするように働きかける。裁判所はその働きかけどおりに、ありえないほど軽い判決を出すという流れです。

 ジラード事件のケースでいうと、遊び半分で日本人女性を射殺するという悪質性にもかかわらず、検察は(…)障害致死で起訴し、「懲役五年」という異常に軽い求刑をしました。

 それを受けて前橋地方裁判所は、「懲役三年、執行猶予四年」という、さらに異常に軽い判決を出す。そして検察が控訴せず、そのまま「執行猶予」が確定。判決の二週間後には、ジラードはアメリカへの帰国が認められました。(…)

長く「戦後政治史における最大の汚点」と目されてきた指揮権の発動。それが米兵犯罪については日々つねに「発動」されている(…)

日米合同委員会の決定が司法の判断を日常的に、しかもダイレクトに左右するという、戦後の日本社会の大きな歪みがつくられていくことになったのです。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.122-5]

ISBN:9784062884396

pp.110-1

日米合同委員会を取り上げた「報道ステーション」の特集のなかで、外務省(北米局日米地位協定室)の担当者がこの裁判権放棄密約について、

「否定するものがないので、いまも効力がある」

というコメントを出していた(…)

もはや隠すつもりもない、完全な「法治国家崩壊状態」ということなのでしょうか。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.110-1]

ISBN:9784062884396