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読書ノート

2018-01-12

pp.88-100

日米合同委員会でもっともおかしなことは、本会議と三〇以上の分科会の、日本側メンバーがすべて各省のエリート官僚であるのに対し、アメリカ側メンバーは、たった一人をのぞいて全員が軍人だということです。

(…)軍人でない人物というのは、アメリカ大使館の公使(…)

どんな国でも、相手国の政府と最初に話し合うのは大使や公使といった外交官に決まっている。そして、そこで決定した内容を軍人に伝える。それが「シヴィリアン・コントロール(文民統制)」(…)

「日米合同委員会がそうなっていないのは、ようするに日本では、アメリカ大使館がまだ存在しない占領中にできあがった、米軍と日本の官僚とのあいだの異常な直接的関係が、いまだに続いているということなのです(「アメリカ外交文書(Foreign Relations of the United States)」(以下、FRUS) 1972年4月6日)

(…)

「在日米軍の法的地位は変えず」

「軍事面での占領体制がそのまま継続した」

半分主権国家(ハーフ・サヴァラン・ステート)

として(…)

の「本当の姿」を日本国民に隠しながら、しかもその体制を長く続けていくため政治的装置が、一九五二年に発足した日米合同委員会なのです。

 ですからそこで合意された内容は、国会の承認も必要としないし、公開する必要もない。ときには憲法の規定を超えることもある。(…)

占領時代から続く基地の使用権や治外法権など、米軍が持つ巨大な特権を、どうすれば日本の国内法のもとでトラブルなく維持していくかの調整機関で(…)

最終決定権は米軍側が握っています。(…)

 なかでも法務省から合同委員会のメンバーとなる大臣官房長は、その後、かなりの確率で検事総長に就任しています。(…)「砂川裁判・最高裁判決」というひとつの判決によって、(…)

最高裁が機能していない中で、検事総長を出す権利を握っているわけですから、日本の法的な権力構造のトップには、この日米合同委員会が位置しているということになる。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.88-100]

ISBN:9784062884396

2018-01-11

pp.70-80

特定の場所を基地として提供する取り決めではなく、どこにでも米軍を「配備」できることになっている。これを「全土基地方式(ぜんどきちほうしき)」といいます。

(…)旧安保条約・第1条を根拠として、米軍が日本の国土のなかで、日本の憲法も国内法も無視して、

「自由にどこにでも基地を置き」

「自由に軍事行動をおこなう」

 ことを可能にする法的なしくみが、(…)

「旧安保条約」⇒「行政協定」⇒「日米合同委員会」

 という三重構造をもつ、「安保法体系」(…)

重要なポイントは、(…)米軍を「配備する」ことを許された場所が、

「日本国内およびその周辺(in and about Japan)」だったということです。

(…)米軍が「日本の国境を越えて自由に軍事行動できる権利」という意味(…)

憲法9条のもとで私たち日本人は、世界一戦争をよくする米軍に対して、
「国内に自由に基地を置く権利」
「そこから飛びたって、自由に国境を越えて他国を攻撃する権利」
を両方与えてしまっている
のです(…)

「在日米軍」などという言葉や概念は、安保条約や地位協定のなかには、いっさい存在しないのです。(…)

日本がこれまで安保条約や地位協定によって巨大な特権を与え続けてきたのは、

「日本の基地に駐留している米軍」

だけではなく、

「一時的に日本の基地基地に立ち寄った米軍」や、

「たんに日本の領空や領海」

など、すべての米軍に対してだった、ということ(…)

それが日本の領土や領空内に「存在」している限り、安保条約や地位協定によって大きな特権があたえられるということです。

(…)

 一九六三年、彼(小田実)は「国境感覚マヒ」というテーマのエッセイを書いています。

 朝鮮戦争以来、在日米軍の兵士にとって日本と韓国のあいだに国境などはなく、(…)日本が基地で、韓国が前線であることでしかない。それは軍人だけでなく、アメリカの政府関係者すべてがそうなのだと。

(…)エッセイに出てくる韓国と台湾(中華民国)だけは、やはりアメリカとの間で「米軍を国内およびその周辺に配備する権利」を与えるという条約を結んでいたのです。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.70-80]

ISBN:9784062884396

2018-01-10

pp.45-59

米軍は何かを返還するとき、ただ自分たちの権利を損なうようなことは絶対にやりません。(…)見栄えのよい行動のウラ側で、自分たちの「権限の強化」や「訓練機能の強化」をしたたかに実現しているケースがほとんどなのです。

 たとえば、危険な普天間基地を閉鎖する代わりに、日本側の予算で辺野古に巨大な新基地を建設するという計画などがその典型と言えるでしょう。

(…)

 「今回、〔北部訓練場の〕全体の五一パーセントにあたる使用できない土地を日本政府に返還するが、その代わりに、新しい訓練施設を使った非常に効率的な訓練が可能となる」(米海兵隊「戦略ビジョン2025」)

(…)第一章で述べた通り、米軍機に航空法の最低高度の規定は適用されません。(…)訓練マニュアルでは、オスプレイ(MV22)は最低高度六〇メートルでの訓練が想定されており、すでに高江では、それ以下の超低空での訓練飛行が日常になっているのです。

(…)まだ沖縄が占領されていた一九六四年、米軍がベトナムでのゲリラ戦の訓練をするために高江につくった「ベトナム村」とよばれる軍事演習施設で(…)

ベトナム人の格好をさせられてベトコン役を演じていたのが、ほかでもない高江の住民だったのです(「標的の村」三上智恵監督 二〇一二年)

 「この訓練〔模擬ゲリラ戦〕には乳幼児や五、六歳の幼児をつれた婦人をふくむ約二〇人が徴用(ちょうよう)され、対ゲリラ戦における南ベトナムの現地部落民の役目を演じさせられた。作戦は海兵隊一個中隊が森林や草むらにしかけられたワナや落とし穴をぬって「ベトコン」のひそむ部落に攻め入り、〔敵兵を〕掃討するという想定のもとにおこなわれた」(「人民」一九六四年九月九日)

(…)私たち日本人が知らなかっただけで、米軍はずっと以前から、こうした軍事演習を日本中で行っているのです。

(…)

 「いくつかの米軍機の事故報告書から、低空飛行訓練は対地攻撃(たいちこうげき)〔敵の地上部隊や地上施設への攻撃〕と一体になった訓練であることが分かっている。敵のレーダー探知を避けるために、地形に沿って〔低空〕飛行し、目的地の手前でポップアップ〔急上昇〕してから急降下して爆撃する。これが戦闘攻撃機の低空飛行訓練の実態だ」(「リムピース」HP)

 ですから高江の住民のみなさんが、いままさに日々、実感しているように、米軍機の低空飛行訓練とは、つねに具体的な「標的」の存在を前提とした訓練なのです。

(…)

 二〇一六年一二月、辺野古の対岸にある安部(あぶ)という岬の浅瀬に、訓練中のオスプレイが墜落し、大破した(…)

 墜落の原因は、例の大きなプロペラ(ローター)が給油中のホースに接触したことだといわれていますが、その訓練がどの地域の上空で行われていたかはまったくわかっていませんし、そもそも給油訓練ではなく、暗視装置を使った夜間の超低空飛行訓練だったという話も出ています。

 さらには乗組員の一人が死亡したらしいというアメリカからの未確認情報もあります。要するに、事故の原因や実態について、たしかな情報はなにもないということです。

(…)墜落現場の周辺は米軍が黄色いロープ(英字表記)を張って封鎖し、日本人の立ち入りを禁じ(…)外側では日本の警察が、やはり黄色いロープ(漢字表記)を張って、関係者以外の立ち入りを規制しました。

(…)知事も市長も外務官僚も、誰も入ることができませんでした。(…)

ロープが取り払われたのは、米軍がすっかり事故の処理を終え、立ち去ったあとのことで(…)米軍が持ち去った事故の証拠物件が、日本側に手渡されることは、ついになかったのです。

[矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』pp.45-59]


ISBN:9784062884396