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読書ノート

2018-12-20

pp.195-7

 一九世紀後半にヨーロッパを席巻した思想に、優生学がある。(…)ナチのユダヤ人絶滅政策はこの政策模倣したことから始まった。その根底には階級的偏見や人種差別意識を抱えている。

 この優生学思想を生み出し、発展させたのはイギリスである。(…)

 ヨーロッパ人にとってみれば文明人たる自民族が優生種であることに疑いはないのだが、(…)国民国家の内部に「無軌道で低俗、不道徳な他民族」が蔓延し、自民族が社会的にも押され気味の現実を目の当たりにして、自民族の衰退を予感し始めた。(…)そこで、有能な人間を人工的に育種し、生きるのに不適格な人間は断種に処すべきという優生学が生まれることとなった。

(…)欠陥のある人間を生殖できないように管理して隔離するための施設がイギリスやアメリカで発展し(…)

アメリカでは一九世紀後半には犯罪者に対する懲罰的目的で州法が定められ、(…)「優生記録局」や「米国遺伝子協会」の活動も伝えられる。イギリスでも第二次大戦直前に自発的な断種を推奨する立法化の動きが盛り上がったが、戦争勃発とともに立ち消えとなったという(96)

(…)

 優生学がナチばかりでなく世界的に一世を風靡したのは、それが「道徳に適うもの」として、多くの知識人層が考えたことによる。

[根本正一『民主主義とホロコースト――ワイマール/ナチ時代のホワイトカラー』pp.195-7]

ISBN:9784768458334