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読書ノート

2018-12-14

p.99

フロムはナチズムに走った下層中間層の特性として、「強者への愛、弱者にたいする嫌悪、小心、敵意、金についても感情についてもけちくさいこと、そして本質的には禁欲主義(77)を挙げている。ホワイトカラー層にとって権威に従属するとは、上位の命令に唯々諾々と従う消極性だけではない。上位の権威を利用して下位の人間を上手く動かし、それによって自らの地位を高めることに血道を上げる積極性をも持ち合わせている。*1

[根本正一『民主主義とホロコースト――ワイマール/ナチ時代のホワイトカラー』p.99]


ISBN:9784768458334

p.97

 民族抹殺は絶対的な統合である。人間が画一化されるところでは、どこであれこの絶対的な統合が用意されている。……純粋な同一性は死であるという哲学的命題の正しさをアウシュビッツは証明している(73)

(T・アドルノ)

[根本正一『民主主義とホロコースト――ワイマール/ナチ時代のホワイトカラー』p.97]


ISBN:9784768458334

pp.94-5

 イーグルトンはイデオロギーの特徴として六項目を掲げており、その一つ「合理化」(=ratioalizing)の過程がここ*2に生ずる。「支配的イデオロギーは、わたしたちがそれを疑っているという事実をまえもって察知し、あたかも、それにあわせてディスクール*3を調整している(67)と、いかがわしい論理であっても、もっともらしい高尚な言語を弄して矛盾を糊塗すべく努力を重ねる。そして、「支配され、抑圧された階級はまた、自分たちの状況を、自己欺瞞といえるまで合理化し、自分たちは不幸ではないと、自分自身に言い聞かせることだってある(68)と、その「合理性」はイデオロギーの発信者と受信者の双方に働きかける。そこから、支配階級による「正当化」(=legitimation)というプロセスも生まれる。

 イデオロギーの次の特徴は、その構築された理念にって、行動を求めるところにある(「行動を志向」=action oriented)。イデオロギーはまた第一に、一つの集団や階級に統一的なアイデンティティー課すことであり(「統一化」=unifying)、それによってその主唱者が変えたいという現実社会がある。そこで、動機や規範を植えつけることで、理論的支柱を求める現代人は新たな目標を掲げて生き続けることができるのだ。理論と実践が対となり、凝り固まった頭が早急に身体に働きかけるパターンの温床となる。

(…)「自然化」(=naturalizing)、「普遍化」(=universalizing)は、さらに危険性をはらむ。「自然化」とは成功したイデオロギーは自明の理、当たり前の論理と思われるところにあり、それが他のイデオロギーに対する排他性を生み出す。他者との差異化による厳格な二項対立がそこにはあり、自己反省的な態度はみられない。「普遍化」は「価値なり利害が、ほんとうは、ある特定の場所や特定の時代に固有のものにすぎないのに、それらを、人類全体の永遠の価値や利害にみせかけること(69)という。

[根本正一『民主主義とホロコースト――ワイマール/ナチ時代のホワイトカラー』pp.94-5]


ISBN:9784768458334

pp.89-92

「水晶の夜」にベルリン郊外で(…)ユダヤ人経営の菓子店の窓が破られ、その窓から子供たちが菓子袋を盗み出していた。周囲の大人たちはその光景を傍観しているだけだった。成り行きを見守っていたある老人(もちろんアーリア系)が、傍に控えている親たちを「子供たちに盗みを教えるのか」と諭した。慌てた親たちは子供から菓子を取り上げ、引きずるよう(に)連れ帰ったという。

 これは、第二次大戦後、アメリカのジャーナリストであるM・マイヤーがドイツの一般市民にインタビューを行い、『彼らは自由だと思っていた――元ナチ党員十人の思想と行動』というタイトルの著作で語っているエピソードである(58)。(…)

人びとはワイマール期には自由がなく、自由を希求したがためにナチズムに行き着いたのであり、しかもナチズムに少なくとも当初は自由を感じていた。(…)ナチ体制下は、(…)アメリカ流のライフスタイルが浸透していった時代であり、(…)

「個人が業績本位で昇進できたし、余暇を大切にして楽しむことができた。各人は個人本位の態度をとって家族生活へと退却した。教会や労働者を囲む特有の環境などからくる伝統的な束縛はゆるんできた」部分があったのは確かだ。

[根本正一『民主主義とホロコースト――ワイマール/ナチ時代のホワイトカラー』pp.89-92]

ISBN:9784768458334

*1:p.110・図1-d

*2:「経済成長を促し、失業を減らし、各階層に喜ばれる救済策をさまざまに施し、その意味ではドイツ国民にとって(…)公共の利益に資する存在に思えた」であろうナチ党の諸政策

*3:discours…言語学用語「言説」「言述」とも。一つのメッセージを形成する言語表現の総体。(ディスクールとは - コトバンク)