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読書ノート

2018-03-01

p.70

経済主体の行動が、費用―便益を考慮した結果ではなく、社会的な行動規範暗黙のルール――経験則――によって引き起こされる場合、これまでの標準的な結論の多くはもはや通用しなくなる。ほんの二つほど例を挙げると、サンク・コスト*1の非妥当性や金銭的コストと機会費用*2の等価性は、完全には合理的でない場合には成立しない。

[ダニ・ロドリック『エコノミクス・ルール 憂鬱な科学の功罪』柴山桂太・大川良文訳 p.70]


ISBN:9784560095980

pp.65-6

モデルを生み出す思考方法には帰納的な要素が多く含まれている。そして、モデルは特定の経験的事実を説明するために具体的に考案されたもので(…)それ自身が最初に理論を構築する動機になったものであるため、その理論を検証するために用いることができないのだ。

 さらに、演繹的な仮説検証アプローチに正しく従ったものでさえ、経済学者が生み出した研究の多くは、厳密に言うと実際に検証可能ではない。(…)多くの学術活動が、様々なモデルに対して実証的な支持を与えることを目的として行われている。(…)その結果、専門家の人気を集めるモデルの変遷は、事実の存在そのものよりも、一時的なブーム流行、あるいは適切なモデル構築のやり方についての嗜好の変化によって起こる傾向にある。

(…)経済学では、状況がすべてなのだ。

[ダニ・ロドリック『エコノミクス・ルール 憂鬱な科学の功罪』柴山桂太・大川良文訳 pp.65-6]


ISBN:9784560095980

pp.48-52

 厚生経済学の第一定理という仰々しいタイトルをつけられた定理は、(…)前章で述べた「完全競争市場モデル」*3の基本的な意味合いを示す数学命題に過ぎない。(…)競争市場経済は効率的で(…)仮定の下では、市場経済はすべての経済体制の中で最大の経済的成果を実現できる(…)このような効率性の定義*4は、公平さやその他の実現可能な社会的価値には全く注意を払っていないことに注意してほしい。(…)

今日、われわれが市場と聞いてすぐに効率性を連想するのは(…)二世紀以上にわたって市場経済と資本主義の便益について教え込まれたことが大きい。(…)

 厚生経済学の第一定理は、見えざる手の定理として経済学者の間で広く知られている。(…)

全くの仮想世界について考えられたものであり、現実の市場がそうであるといっているわけではない

[ダニ・ロドリック『エコノミクス・ルール 憂鬱な科学の功罪』柴山桂太・大川良文訳 pp.48-52]

ISBN:9784560095980

*1(すでに払われており取り戻すことのできない費用)

*2(実行されなかった選択肢がもたらす価値)

*3:「おなじみの供給―需要モデル(…)この人工世界は、経済学者が「完全競争市場」と呼ぶもので、消費者と生産者が無数にいる。全員が経済的利益を追及しており、誰も市場価格に影響を与えることができない。このモデルはたくさんのことを捨象している。(…)しかし、このモデルは現実の市場経済の単純な働きを解明してくれる」(p.20)

*4:――イタリアの博学者であるヴィルフレド・パレートに因んでパレート効率性と呼ばれる――