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読書ノート

2017-02-22

pp.168-71

こうした*1世界においては、すべての人間的行動は「生産」か「交換」か「消費」に分類される。その中で「交換」は(…)利潤を求める人間の「理性的本性」に駆動されたものとみなされる。消費は人びとが自らのアイデンティティを確立する方法となる。(だが生産については、できる限り議論が回避される)。(…)この市場の論理が深く内在化された挙げ句、(…)人がすることは、仕事でなければすべて「消費」なのだ。(…)この意味で人類学者と世界マーケティング・エグゼクティヴの視点は、ほとんど区別不可能となってきている。(…)

人類学者たちは用心しないと、世界アイデンティティ生産機械の歯車のひとつになってしまうだろう。地球規模の機構となったこの制度は、過去十年ほどの間、地球の(支配階級以外の)すべての居住者たちに、今や(…)唯一可能な政治的主張は、自分が属すグループの「同一性(アイデンティティ)」を明示することのみであると、巧妙に告げている。(…)

われわれが「アイデンティティ」と呼ぶものは、多くの場合、人びとに対して押しつけられたものである。アメリカ合衆国において(…)黒人と同定される者は、存在している間一秒たりともそれを忘れることを許されていない。(…)個人や集団の自己形成、あるいはあらゆる自己創造のための試みは、この極端に暴力的な抑制の内側でなされなければならない(…)。

[デヴィッド・グレーバー『アナーキスト人類学のための断章』高祖岩三郎訳 pp.168-71]

ISBN:9784753102518

*1:「ことに「創造的消費」という修辞法(レトリック)が、新たな世界市場のイデオロギーになっている」