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読書ノート

2016-12-08

pp.22-6

 東西冷戦の終結によって、(…)ヨーロッパでは、(…)アメリカに拮抗する勢力を形成することが、ここ十数年、世界秩序上の最重要課題であったのである。(…)

ヨーロッパの安全保障がアメリカ抜きで可能か、という重い問題もある。(…)

これは日米関係と同様なのであるが、ヨーロッパ各国においても、軍事には手を染めたくない、防衛費比率を上げたくないという世論が根強く、軍事力行使という一点に関してだけは、アメリカに依存したいという御都合主義がある。アメリカは軍事力が強大なだけでなく、先進国中唯一、教育・社会福祉費を減らして軍事費を増やすことのできる貴重な存在というわけだ。(…)

 アメリカは、冷戦終結で用済みになったフセイン政権を排除したいという「走狗を煮る」戦略で動いているが、みずからも煮られる「走狗」なのであることに気づいていない。

(…)

 ブッシュ政権の(…)

選んだ戦略がこの「新現実主義*1」だとしたら、皮肉としか言いようがない。軍事力と経済力を中心に考えるというのは、かつての仇敵ソ連の公式イデオロギーであった唯物論の考え方だからである。この一点をとっても、現在のアメリカのあり方は、冷戦後の新たな秩序の担い手どころか、その逆に、片づけられなければならない冷戦の残滓でしかないということが言える。

[中野剛志「マキャベリズムのすすめ 対米自立への第一歩」『反官反民 中野剛志評論集』pp.22-6]


ISBN:9784864880015

*1:「世界を、軍事力や経済力によって動く国家間のパワーゲームとみなす思考」

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