2015-06-07
pp.208-9
「事実の真理*1」は、それが集団や国家に歓迎されないとき、タブー視されたり、それを口にする者が攻撃されたり、あるいは事実が意見へとすりかえられたりという状況に陥る。(…)「理性の真理*2」とは異なり、人びとに関連し、出来事や環境に関わり、それについて語られるかぎりでのみ存在する。それは共通の世界の持続性を保証するリアリティでもあり、それを変更できるのは、「あからさまな嘘」だけであると言う。「歴史の書き換え」や「イメージづくり」による現代の政治的な事実操作や組織的な嘘は、否定したいものを破壊するという暴力的な要素をふくんでいる、とアーレントは指摘した。そして、現代では、ナチズムやスターリニズムの時代のイデオロギーとは異なり、回答ありきの問題解決パターンや「イメージ」こそが、エリートたちから大衆にいたるまでの無思考性や判断の欠如を促していると考えた。
(…)
現実、すなわちリアリティを欠いたまま歴史が進行していくことは、人間がみずからの尊厳を手放すことでもある。ところが、「問題解決家」と称するエリートたちによって、彼らの「理論」を優先する「イメージづくり」が熱狂的におこなわれた。事実や現実は無視されたのである。
[矢野久美子『ハンナ・アーレント/「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』pp.208-9]
- 日本思想史新論,p.076
- 東電を解体せよ,p.9
- 〈特殊〉の存在理由,p.36
- 閉された言語空間,pp.267-8
- 日本の古代道路を探す,p.45
- 女性皇太子の誕生,p.125#b
- 素朴への回帰,p.108
- ある明治人の記録,pp.160-1
- 異議あり!新国立競技場,p.17
- 日本人の「戦争」,p.94
- 〈生物多様性〉入門,p.44
- TPP亡国論,p.251
- 文明の災禍,p.13
- 文明の災禍,pp.72-82
- 文明の災禍,p.113
- 文明の災禍,p.119
- 社会の再発見と社会の防衛,pp.20-1
- 戦争という仕事,p.16
- 戦争という仕事,p.18
- 戦争という仕事,p.44
- 戦争という仕事,pp.230-2
- 戦争という仕事,p.311
- 日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか,p.51
- 日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか,p.134
- 日本民族の自立と食生活,p.181
- 対米従属の謎,pp.227-33
- 記憶の未来,pp.100-1
- はじめての構造主義,pp.130-1
- 時間についての十二章,pp.298-9
- 経済と国民,p.114
- 男が痴漢になる理由,pp.98-101
- 民主主義とホロコースト,pp.94-5
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