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読書ノート

2014-04-17

p.27

結局、日本の金融システムは、独立性の高いシステムに転換してわずか八年で、そのモラルの源泉の崩壊に至った。そして、そのことに気がついていながら、(…)政治家たちは政局安定のため、金融関係者は自分の権益保持のため、エコノミストたちはよく考えもしないで、「こんなことはたいしたことではない」といってみせた(…)

ツケはこれから国民が払わされることになるだろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.27]


ISBN:9784166605453

pp.25-7

国民が選んだわけでもなく、また、国会で人選を決定したわけでもない。内閣が任命すればほぼ決まってしまい、(…)任期中の総裁罷免権はない(…)そんな人が、国民生活を大きく左右してしまう金利を決め、通貨の発行量をコントロールしている(…)

金融自由化を進めれば進めるほど、中央銀行の独立性は高くなり、その総裁の地位は(…)巨大な権力を持つだけでなく、シンボリックな権威が伴うものとなる(…)

 中央銀行総裁の権威と権力は、日常の感覚では理解することがかなり困難なので、(…)陰謀論が次から次へと生れる。(…)

それほど中央銀行総裁の地位というのは怪しげで微妙で強大なものなのだ。

(…)この不思議で巨大な権力が正当かつ正統であることを主張するには、総裁に就いた人物が「神の如き」振舞いをするしかない。任務において完璧を期すとともに、普段の言動においても批判の余地のない公明正大さを示さねばならない。つまり、中央銀行総裁は金融システムの中立性のシンボルでなくてはならないのである。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.25-7]


ISBN:9784166605453

pp.15-6

八九年に発覚した貯蓄貸付組合*1問題(…)金利の上昇によって逆ザヤ(…)レーガン政権は、貯蓄貸付組合に商業銀行に認められていない債券や不動産への投資を許可して救済を試みた。

(…)政府の保証までつけたものだから、(…)一千二百四十六億ドルもの公的資金がつぎ込まれた空前の不良債権事件を引き起こすことになる。

(…)信用の低い企業のくずのような社債を、法外な高利回りで投機目的に買わせる(…)安く買収した破綻寸前の貯蓄貸付組合に、あたかも資産があるように見せかけ(…)「再建した」貯蓄貸付組合を通じて乱脈融資を行ない、うまくいけば億万長者、破綻したら政府に保証してもらうという手口を、アメリカの野心家たちに考えるなと言うほうが無理だっただろう。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.15-6]

ISBN:9784166605453

pp.11-4

速水優総裁時代、(…)日銀はブラインド・トラストを勧めている。(…)福井総裁だけが、ぬけぬけと解約も委託もしないでいられた(…)

 各種の世論調査でも、約八割は福井総裁のファンド投資に批判的で(…)約七割が辞任を求めていた。そのなかで、ゼロ金利政策は正式に解除された(…)総裁が、これほどまでに国民の信頼を失ってからも居座る姿は、どう考えても異様だった。

[東谷暁「金より大事なものがある」pp.11-4]

ISBN:9784166605453

p.10

 マスコミはその間、もっぱら(…)「庶民」の嫉妬を(あお)っただけ(…)金融関係者は自分たちの商売に「影響」が出ることを恐れて事が穏便に推移することを願い、経済の得失に国民の目を向けようとした。

[東谷暁「金より大事なものがある」p.10]


ISBN:9784166605453

p.82

 グローバリゼーションはしばしば均質性への傾向と同一視される。これもまた、グローバリゼーションとは何でないかを示す一例である。資本と生産が国境を越えて自由に移動するグローバル市場が機能するのは、まさしく地方と地方、国と国、地域と地域の間に違いが存在するからである。賃金、技能、インフラストラクチャー、政治的リスクが世界中で同じだったとしたら、世界市場の発展は起こらなかっただろう。(…)グローバル市場は、各国経済の間にある相違の故に栄えるのである。グローバリゼーションへの傾向がこれほどのとどめようもない力を持つのは、これが一つの理由である。

[ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」石塚雅彦訳 p.82(傍線=傍点)]


ISBN:4532147565

*1:「貯蓄貸付組合(S&L)とは住宅ローンのために発達した米国独特の金融機関」