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読書ノート

2014-04-16

pp.58-9

低運賃の経営策を採る事業者の中には、企業内個人タクシーと称して違法な「名義貸し」営業を行い、(…)何らチェックが行われていない危険な経営が急速に勢力を伸ばしている。(…)安全確保のための運行管理や労務管理も放棄した(…)

でたらめな経営が横行するのは、(…)実際の運輸行政の監査指導体制が余りにも貧弱で、実効をあげていないことにある。(…)政策の破綻、失敗は明白である。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.58-9]

ISBN:9784000093651

p.54

近年、「累進歩合制」が増えている。(…)厚生労働省の通達では禁止されているが、労働行政の怠慢でまかり通っている。これが現在*1は、(…)「逆累進」とも呼ぶべき形態で、道路運送法で禁止されている「リース制」と同様の機能を果たしている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.54]

ISBN:9784000093651

pp.52-3

運賃・料金の多様化政策は、際限のない低運賃競争を勃発させてしまった。(…)国土交通省は、運賃多様化を名目にして、行政指導を通じて値下げ・低価格競争を誘導しながら、実際には運賃認可制を形骸化させてきた。その結果、(…)ダンピングに等しい運賃が、事業者の申請を鵜呑みにして次々と認可され、いまや値下げ・低価格競争は全国に拡大(…)

悪影響は、すべて運転者に押しつけられている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.52-3]

ISBN:9784000093651

pp.50-1

 タクシー事業の規制緩和は、一九九六年一二月に、当時の「行政改革委員会」が「運輸事業の需給調整規制の廃止」を打ち出し、これを受けて政府が一九九七年三月の「規制緩和推進計画」において、(…)方針を決定したことで始まった。(…)

二〇〇〇年五月に(…)道路運送法の一部改正が行われ、二〇〇二年二月からの改正法の施行をもって政府方針通りに規制緩和が実施された。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.50-1]


ISBN:9784000093651

p.49

タクシー事業の規制緩和がもたらしたものは、(…)最低限の生活さえも維持できない、遵法精神のあるまともな経営は立ち行かない、そして、交通事故が大幅に増えた、という現実である。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.49]


ISBN:9784000093651

pp.47-9

タクシー市場における競争は、(…)法人タクシーの場合、本来経営者が行わなければならない市場競争が、歩合給中心の刺激的な賃金体系のもとで個々の運転者に転嫁され、運転者間の水揚げ競争として発現している。(…)

 加えて、一日の水揚げ高の多寡が自分の収入に直結している個人タクシーの存在がある。(…)

停滞的な市場で過剰気味ともいえる四七万人近くもの人々が、限られたパイの配分をめぐって激しい競争を展開しているのがこの業界なのである。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.47-9]

ISBN:9784000093651

pp.40-2

日本の航空業界では、(…)一九八五年より規制緩和が始まった。規制緩和を推進する人たちは、「経済規制は緩和しても安全など社会的規制は緩和しない」などと主張していたが、実際には(…)安全規制も緩和されてきた。

(…)飛行間点検の委託化、海外整備委託の拡大、航空運航整備士制度の新設は、通達や航空法の改正=規制緩和があって初めて可能になったものである。

 さらに、国土交通省は、二〇〇三年八月に「航空事業経営基盤強化総合対策プログラム」を発表し、緊急融資などをテコに、「(…)収支改善及びコスト構造改革を推進し経営基盤の強化を図るよう適切に指導する」として、航空会社のリストラをあおると同時に、「国際基準関連を含め、コスト削減につながる規制の見直しを検討する」など、安全規制のさらなる緩和を進めようとしている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.40-2]

ISBN:9784000093651

pp.37-9

 航空機の定期整備は、期間の経過(…)に合わせて細部にわたり点検・整備を繰り返すもので、航空機の安全性を担保する基礎となる整備である。(…)点検間隔を延長すれば、整備回数が減少(工数減少)し、整備費が削減できる。(…)こうした点検間隔延長は航空業界全体で行われた。

(…)その人員も削られ、(…)整備予備部品をなるべく持たないようにしたため、修理をしようとしても部品がない(…)営業優先の風潮が強まる中で、(…)定時出発を求める圧力が強くなり、修理する時間を取れなくなっていった。(…)「人がいない、部品がない、時間がない」から、直せない「三ない整備」という言葉が生まれ(…)不具合の修理をせず「修理持ち越し」制度を利用する事例が目立ってきた。

(…)「三ない整備」の環境に置かれ、経営の苦しさ、収支改善の必要性に関して会社から常に言われ続ける中で、整備士の姿勢が変化し、最初から修理しようとせずに「持ち越し」を適用するような傾向も生じてきている。その結果、一部にはパイロットと整備士の信頼関係が悪化するという問題も起きている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.37-9]

ISBN:9784000093651

pp.35-6

 航空機の整備は、エンジン・部品整備、機体全体を細部まで整備する機体整備、日々の運航を維持するための運航整備に分類される。いずれの整備もほとんど機械化できず、人手がかかることが特徴となっている。

 整備費は、部品・材料費と人件費、外注整備費から構成される。(…)通常は事業規模の拡大に比例して整備費は増大する。

(…)一九九一年度までは事業規模の拡大とともに整備費も増えていたが、(…)一九九二年度以降、営業費用を削減するため、整備費が削られ始めたことがわかる。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.35-6]

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(出所)有価証券報告書.整備費=日航の事業費中の直接整備費と間接整備費,全日空の事業費中の整備費の合計. 有効座席キロ=提供座席数×飛行距離.

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.36 図5 日航・全日空の事業規模・営業費用と整備費の推移(指数)]

ISBN:9784000093651

pp.27-8

「収支改善・国際コスト競争力の強化」、「人的生産性の向上」などを目的に(…)年間・月間乗務時間制限(…)着陸回数における乗務時間・勤務時間制限延長(ならびに制限なし表4)、それに伴う乗務員編成や休日・休養時間の考え方の変更など(…)前後して強行された配車制度の改悪や客室乗務員編成数減(…)などの合理化(…)改悪にあたって会社は、「(…)職務に支障を生じない」ものであるための科学的検証をいっさい行っていない。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.27-8]


ISBN:9784000093651

pp.26-7

他の航空会社から外注の整備を引き受け、その一方で自社の航空機の整備は、中国をはじめとした海外、あるいは下請け会社に委託し安く上げる、すなわち「整備で儲ける」施策(…)一二三便事故が発生し、(…)社会的批判を浴び(…)「自社整備を充実させる」と表明した。しかし、事故後二〇年を経て、整備作業の多くは再び外注となり、自社整備体制はほとんど崩壊しかけている。(…)航空機の機数は二倍以上に増えているにもかかわらず、自社の整備員の数は約半分程度に大きく削減されている。

(…)ベテラン整備員が外れ、労働条件は大幅に切り下げられ、(…)下請け会社が安い賃金でアルバイトを雇い、(…)ライセンスを保持する整備員の監督下という名目で、ライセンスを保持しない人たちによる整備も行われている。次々と規制が緩和された結果、数々の整備規程違反や機材の不具合等、以前には考えられなかったようなトラブルが頻発している。

(…)地上支援部門の職場においても、(…)とくに労働環境において過酷な勤務が日常化している。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.26-7]

ISBN:9784000093651

pp.24-5

二〇〇〇年九月一一日の全日空機機長の乗務中の死亡事件(…)後、とくに循環器系の検査基準が厳しくなり、乗務できない運航乗務員が急増した(…)

一九六五〜二〇〇四年度の会社資料によると、日航の運航乗務員の在籍および退職後の死亡者の平均死亡年齢(一六〇名の統計)は五五・〇三歳、在籍死亡者の平均は四三・四六歳である。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.24-5]

ISBN:9784000093651

pp.20-3

 一九九三年一一月、日航経営陣は運航乗務員の勤務にかかわる全ての労働協約を一方的に破棄し、同時に協約とほぼ同内容を定めた運航乗務員就業規程等(…)を大幅に改悪した。(…)

一九九九年一一月の東京地裁、二〇〇三年一二月の東京高裁(…)、二〇〇四年三月の東京地裁(…)といずれも組合側全面勝訴の判決が下された。(…)

新たな就業規則改定(二〇〇五年四月一五日)によって(…)一部修正したが、その内容は当時の労働協約水準(…)を下回るものであった。

(…)異常運航の頻発は、旧運輸省を中心とした官と経営の癒着(事務次官、審議官や航空局技術部長等の多くの官僚が日航を含む国内各航空会社の役員として天下っている)による規制緩和に端を発したものであり、司法の判断にさえ従わないような経営姿勢がくしくも表面化したものである、と運航に携わる者の多くは感じている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.20-3]


ISBN:9784000093651

p.17

鉄道業界では、一九八七年に国鉄が分割・民営化され、一九九〇年代に入って参入・退出規制や運賃規制の緩和とならんで、安全基準の緩和が進められてきた。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.17]


ISBN:9784000093651

p.17

事故後、一部マスメディアで「過密ダイヤ」に事故原因の一つがあったとの報道がされていたが、福知山線のダイヤは決して過密とはいえず、問題なのはダイヤに余裕がなかったことである。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.17]

ISBN:9784000093651

p.15

JR西日本では慢性的な運転士不足から公休の買い上げが頻繁に行われており、収入が増えることから若い運転士の中には喜んで買い上げに応じるものが多いという。つまり、休日もとらず運転労働が続けられているのである。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.15]

ISBN:9784000093651

p.11

 国鉄の分割・民営化をはさんで前後約一〇年間、運転士、車掌などの現業社員の採用をストップしたため、図1が示しているように同社では三〇歳代の社員が極端に不足し(…)不足を補うために、JR西日本では国鉄時代と比べると運転士昇格までの期間を短縮するなど、(…)「促成栽培」的な養成が行われている。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.11]

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(出所)JR西日本『データで見るJR西日本 2004』166ページ.

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.11 図1 JR西日本の社員構成(2004年度)]

ISBN:9784000093651

pp.9-10

速度抑制のためのATSの地上子(…)導入計画は数年前からあったのに、それは数年間放置されていた。しかし、事故後は世論の厳しい批判に遭遇し、わずか一ヵ月の間に設置工事を完了させた。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 pp.9-10]

ISBN:9784000093651

p.5

 鉄道や航空に止まらず、タクシーやバス事業においてもここ数年、事故やインシデントが著しく増加している。(…)背景には、一九九〇年代に実施された交通事業における規制緩和の負の影響があると思われる。(…)第一は、(…)装置の性能の向上を理由に、(…)技術的な基準それ自体が緩和されたこと、第二は、(…)人減らしや労働条件の改悪、安全投資の縮減などの合理化が推進されたことによるものであると思われる。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.5]


ISBN:9784000093651

p.3

公共交通のサービス要件の中で、最も基本的なサービスはいうまでもなく安全の確保である。安全の確保が最優先されるべきという点で、交通サービスは製薬に例えることができる。(…)いくら効能が優れていたとしても、人命を奪ってしまうような薬は(…)使用に耐えうるものではない。交通機関も同様に、(…)速度や快適性といった効能よりも、まず安全の確保こそが重要なのである。

[安部誠治・濱田俊郎・信田夕美子・諏訪幸雄・待鳥康博『公共交通が危ない――規制緩和と過密労働――』安部誠治編 p.3]

ISBN:9784000093651

*1:2005年12月6日 第1刷発行