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読書ノート

2014-02-11

p.117

歴史は、人の意志的活動によって構成されている。しかし歴史が人意のみで作られていると考えてしまった時、歴史観の問題がかえって人と人との対立、抗争をうみだす元となる。現状ですら思うようにできない人間が、過去は今の好みにあわせて構成できると考えている。

 だが、大きな歴史の流れには必ずや天意・地意というべきもの作用しており、片々たる人の意志が歴史を左右する割合はそれほど大きいものではない。(…)自分の至らなさと、時代が人間に課している制約を認めた上で、より広く、ゆとりとバランスのとれた人間観を基礎として歴史観を再構築する試みにすぎない。

 同じことは、人と人との相互理解にも適用できる。(…)相互理解の一形式にすぎない(…)「話せばわかる」を万能視することは、かえって「話してもわからない」人間関係を析出させてしまう。(…)人と人の心からなる相互理解は、(…)互いの知情意のすべてが働いている。(…)“sympathy”ではなく、“empathy”、孟子の(…)「惻隠」の情である。この時、人と人は「話さないでもわかる」。

[河原宏「素朴への回帰/国からクニへ」p.117]


ISBN:4409040499