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読書ノート

2014-01-08

p.45

 まさに近代世界が生みだした諸国の憲法も、その当初、人々の間にあえてタテマエに生きようとする情熱と活力が漲っている間は生命力を失わなかった。私はそのような情熱と活力を「志」と呼ぶ。活力とは、各人が目先の自己利益はひとまず措いて、他者の利益や主張をも包みこむ普遍的な立場に身を置こうとする自己抑制力のことである。

 今、どこまでも自己利益を主張することが個人の当然の権利とみなされ、「志」の失われてしまった現代に、憲法はホンネとタテマエが乖離した典型となっている。このことは同時に、世界史的に見ても近代国家がもはやその役割を終えようとしている時代の徴候かもしれない。

[河原宏「素朴への回帰/国からクニへ」p.45]


ISBN:4409040499