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読書ノート

2013-12-26

p.231

 今日の日本の鉄道を築いた先人たちも、(…)時には馬鹿呼ばわりされながらも、次の時代を見つめていた。(…)もし、こうした時代がなかりせば、日本は全く別の道を歩んでいたに違いない。(…)謙虚に学び、長い目で先を見通す姿勢は、鉄道に限らず、すべての領域において、今の日本人に求められていることのように思える。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.231]

ISBN:9784106037016

pp.226-7

 本書では、欧州の事例を引き合いに日本の問題点を浮き彫りにしてきたが、(…)

 唯一の違いは、日本の鉄道が、20世紀、鉄道事業者の積極的な投資と必死の努力によって、先進国の中でも稀に見る成功を達成したことである。この成功によって、鉄道は単体で採算が合うものという「常識」が創られ、(…)「鉄道はきちんと走って当たり前」という、あたかも水や空気と同じような感覚を鉄道に対して持つようになったのである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」pp.226-7]

ISBN:9784106037016

p.226

 2011年、日本で初となる「交通基本法」の法律案が閣議決定された。(…)そこでは、交通は「国民の自立した日常生活及び社会生活の確保、活発な地域間交流並びに物資の円滑な流通を実現する機能を有する」とされ、「交通に対する基本的な需要が適切に充足されなければならない」と明記された。

(…)鉄道についての具体的な条文はないが、(…)提出された背景には、(…)鉄道が次々と廃止に追い込まれ、人々の社会生活が困難になっている現状への反省に立って、策定されているのである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.226]


資料


ISBN:9784106037016

pp.224-5

海外では、運行サービス業者として(…)世界を席巻する勢いの企業もある。(…)グローバルオペレータと呼ばれ、国境を超えて活動している。フランスの企業は欧州を飛び出し、アメリカやオーストラリアにも進出している。

 また、インフラの建設や維持管理も、PPP(…)といったスキームを用いることもできる。これは、(…)公共事業という位置づけのまま、インフラの運営を民間に委託したり、資金調達に民間資金を活用したりする(…)。中でも、民間資金を活用して公的な事業を進める手法は、PFI(…)と呼ばれ、鉄道事業にも適用できる。(…)発祥の地であるイギリスでは、いくつかのLRTは、PFIを用いて建設された。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」pp.224-5]

ISBN:9784106037016

p.220

2011年に閣議決定された交通基本法の案文では、「政府は、交通に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない」とある。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.220]

ISBN:9784106037016

p.220

ともすると、「黒字」であれば、その「頑張り」を賞賛する風潮が日本にはあるが、(…)飲まず食わずでひたすら体力を温存しているだけの人を倹約家として褒め称える(…)のと同じことである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.220]

ISBN:9784106037016

p.219

 これまでの日本において、鉄道投資の目的は、大量輸送をいかに担うかという点にあった。しかも、そこから利益を稼ぎ出すことが当然視され、実際に、多くの鉄道事業で「黒字」を出すという世界でも稀な成功を収めてきた。

 ところが、今では逆にその成功体験が日本の足を引っ張っている。(…)鉄道への投資に対して通常の民間ビジネスと同様の採算性が求められ(…)バブル期における過大な需要推計などが問題視された結果、本来必要な投資までも滞るようになってしまったのである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.219]

ISBN:9784106037016

p.217

ドアツードアで、プライベートな空間を保ちながら移動できる自動車

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.217]

ISBN:9784106037016

p.214

合理化は必要である。ただ、(…)本当に理に適っているものかどうかの判断は、長い目で見る必要がある。(…)現在の日本は、企業のみならず社会全体が近視眼的になり、短期的に見える部分でしか物事を評価しないという問題に陥っている。つまり、リスクに対する評価ができていないのである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.214]

ISBN:9784106037016

pp.212-3

 東日本大震災では、東北地方に燃料を運ぶために貨物列車が日本海側を迂回するルートを走り、被災地を支えた。しかし、もし東北地方を横断するいわゆるローカル線がなければ、事はそう簡単ではなかったはずである。(…)非電化用の機関車はあるのか、貨物列車を運転できる者はいるのか、線路は貨物列車の重さに耐えられるのか、等々の問題を一つ一つ解決しなければならなかった。ちなみに、(…)奥羽本線は、(…)貨物列車が走れる狭軌の線路はなくなっていた。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」pp.212-3]

ISBN:9784106037016

p.209

数値化し難い効果として(…)

「集積効果」(…)が費用便益分析の政府マニュアルに含まれていないため、交通、とりわけ鉄道の効果が過小評価されている可能性は高い。例えば、(…)ロンドン・バーミンガムの間の高速鉄道は、集積効果だけで通常計算される便益の4割以上、(…)テルアビブのLRTで2割が過小評価されているという研究結果が出ている(1)

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.209]

ISBN:9784106037016

p.99

TGVの椅子が回転しないことに不快感を覚える日本人は多いが、むしろ、固定された向かい合わせの座席で、見知らぬ乗客との旅の会話を楽しんでいる人も多い。どうやら、そこは文化の差であって、質の差ではなさそうだ。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.99]

ISBN:9784106037016

p.97

中国や韓国は、移転された技術を自らのものにしたというプロセス自体をセールスの強みとしており、新たに高速鉄道を開発しようとする国々にとってもそこが魅力のようである。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.97]


ISBN:9784106037016

pp.94-6

オバマ大統領は、欧州を訪問した際に、「欧州の高速鉄道がうらやましい」と述べている(3)

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」pp.94-6]

ISBN:9784106037016

p.89

フランス・ベルギー・オランダ・ドイツを結ぶ高速列車の名前であるタリス(Thalys)という言葉は、意味を持たない造語である。特定の国に関わる言葉を用いると何かと軋轢が生じるためだという。欧州統合が進んだとはいえ、国境を越えた合従連衡には、各社ともかなり気を使っていることがわかる。

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」p.89]

ISBN:9784106037016

pp.74-5

 1992年、オランダで調印されたマーストリヒト条約は、欧州全体の運輸・エネルギー・通信のインフラを整備する「トランス・ヨーロピアン・ネットワーク」(…)計画を策定している。このうち、運輸部門(…)に関する計画は(…)「TEN−T」と呼ばれ、(…)その半分以上は鉄道関連に割かれている。大まかに言えば、主要幹線を国の垣根を超えて張り巡らせ、国境通過の際に生じるさまざまな障害を取り除き、(…)(相互運用性)を高めようというものである。(…)プロジェクトは、2020年までに5500億ユーロ(…)の投資額が必要とされる。

(…)これまで高速鉄道が整備されてきた西欧を起点に、主に中東欧とイベリア半島方面に向けてネットワークを広げる計画

[宇都宮浄人「鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」―」pp.74-5]

ISBN:9784106037016