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読書ノート

2019-03-20

pp.240-1

 ハッキリと言っておきたいのは、逆進性があるために消費税は悪税であると断定するのは、まちがっているということだ。

(…)逆進性があるとしても、税収を適切に給付に向ければ格差は小さくなる(…)

 むしろ問われるべきは、(…)その他の税をどのように組み合わせていくのかという点にある。

(…)

 税は社会の公正さへの考え方を映し出す鏡である。(…)そこに政党の思想が表れる。(…)財源論とあるべき社会の姿を各政党が論じ合い、競い合う時代をめざさねばならないのである。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.240-1]

ISBN:9784480071927


pp.221-8

問題としたいのは、(…)僕たちが「当然にあるはずだ」と信じているものの存在、そしてその存在の危うさだ。

(…)言葉はそっくりリアリティを失ってしまう。

(…)当たり前の共通善について、なぜそれが必要かと説明せねばならないうえに、その必要性が伝わるどころか、かえって社会の対立を深める。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.221-8]

ISBN:9784480071927

2019-03-19

pp.198-212

 「職業の再建」は、「生活の再建」にもつながる。普通の働き方が広がれば、家庭に配慮した生活も可能になるからだ。

(…)

 藤田がいうソーシャルワーク実践*1とは、(…)満たされるべき必要を社会に確定する取り組みである。それが「生活の再建」だといえよう。

(…)それを「どのように満たすのか」は、「職業の再建」にかかっている。(…)

 持続可能な労働条件の実現を求めるだけでなく、職業を通じて社会の再生産に寄与し、自らの存在価値を実感できるような状態。働く者の尊厳が、そのようにして回復されることこそが、「職業の再建」にほかならない。

(…)井手英策のいう(…)

「ベーシック・サービス」*2を実現するための最大の社会的勢力こそが、「職業の再建」の担い手でもある一般労働者*3たちだ。年功賃金が得られない一般労働者たちは、ベーシック・サービスを不可欠とし、なおかつ社会のボリュームゾーンをなす社会階層だからだ。

 だから、「保障の再建」のカギを握るのも、実は一般労働者たちによる労働運動だといっていい。

(…)

 「企業に守られた正社員」から「一般労働者」へと転化している現代日本の(…)労働運動は、(…)「中間団体」の形成を目指すべきである。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.198-212]


ISBN:9784480071927

pp.197-8

 介護をはじめ、多くのサービス業では「職種」が共通している。実はこのことが、労働問題を解決するうえで潜在的に有利な条件となっている。

(…)「保育士の賃金はこのくらいであるべきだ」というように、社会的に広がりのあるものとして労働の問題を考えやすいのである。

(…)つまり、人びとのニードを守ると同時に自分たちの仕事も守る(…)

 最近は旧来型の企業でも、職務を切り出して「限定正社員」として採用することが増えている。そこには、年功賃金を与えなくて済むように、差別された雇用を作り出そうとしている側面もあるが、別の面からみれば、ますます「職種」が見えやすくなっているともいえる。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.197-8]

ISBN:9784480071927

p.195

 日本政府は、経済成長ができるなら、何でもいいと考えているかのようだ。しかも、その成長のために社会を犠牲にしようとしている。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』p.195]

ISBN:9784480071927

p.188

「属人給」制を放置したまま(…)BIのように定額の金銭給付をすると、賃金が簡単に下がってしまう(…)

 労働規制なき金銭給付が賃金を下落させるということは、労働規制が確立する以前の19世紀イギリスにおける、スピーナムランド制(貧民救済を目的とする現金給付制度)の経験でもすでに明らかになっている。

 また、ほかの社会保障の脆弱さをそのままにして一定額の金銭を給付されても、(…)BIと「低くなった賃金」で暮らせ、ということになるだけで、(…)BIの代わりにほかの社会保障費を削減するなど、もってのほかだ。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』p.188]

ISBN:9784480071927

pp.182-4

「働き方改革」にどれだけ期待できるだろうか。(…)

労働時間の上限規制が(…)厚労省の過労死認定基準を超えている。

(…)年収1075万円以上の「見込み」がある労働者を対象とする(…)労働法適用除外(…)

残業代の支払いが実質的には免除されている(…)裁量労働制の求人を僕(今野)が調べてみたところ、実に70%が最低月給20万円以下だった。

(…)これまで以上の滅私奉公を強い(…)

 賃金が増えないなかで、政府が奨励しているのはなんと「副業」と「借金」である。(…)

日本の奨学金は実質的には「ローン」である(…)(しかも半数以上が利子付き)(…)それが、大手銀行の優良な投資先になっている。

(…)消費者金融の規制が適用されないことを利用し、銀行カードローンがサラ金化し(…)年利が10%を超えることが一般的で、(…)貸付残高はすでに消費者金融のそれを追い抜いており、自己破産も増加に転じている。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.182-4]

ISBN:9784480071927

pp.169-73

 児童養護施設も生活協同組合も、(…)年金制度、医療保険制度、雇用保険制度なども(…)先人たちが仲間とともに、(…)行動してきたその結果(…)

税や保険料が充てられることになった。(…)

 強調しておきたいのは、政治や政策の力によって、(…)ではない、ということだ。政治や政策に先立って、常に(…)人びとが議論し、賛同して行動するなかで、税や保険料を拠出して支える仕組みができてきた。

(…)実践活動や市民の要求が先なのである。(…)

 現在の社会保障、社会福祉制度では、ソーシャルワーカーの実践も、政府や自治体が定めた枠組みに押し込められてしまい、(…)

「お金に換算できること」を中心にニーズを聞き取り、支援体制を構築しているだけである。(…)福祉専門職もソーシャルワーカーも無力化させられている。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.169-73]

ISBN:9784480071927

p.163

 家計管理を徹底すれば子育て世帯の支出は抑えられるといった主張が一部でなされ、ファイナンシャルプランナーなどが助言や指導に奔走している。

 だが、問題の本質は(…)恒常的な収入不足であり、その範囲を超える必要や需要の拡大である。節約や自助努力では解決しがたいのであり、公的な支出を拡大することでしか改善できない場合が多いのである。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』p.163]

ISBN:9784480071927

pp.151-67

 近年では社会保障費の削減傾向が続くなか、優先順位が低いと行政に見なされた場合、(…)それが支給されないということが起きている。(…)

選別主義を全面的に採用しており、(…)社会福祉を狭く捉えることが(…)

支配的な規範意識であり、一般的な見方なのだ。(…)

 自民党が「日本型福祉社会」(自由民主党「研修叢書8 日本型福祉社会」1979)を掲げた際にも、(…)

福祉国家を社会病理として捉え(…)甘えて堕落した市民が生み出されかねないと(…)

税や保険料を低く抑えることが優先され、再分配機能が弱いことのメリットが強調されていた。(…)

 景気が低迷して以降は、(…)市場を適切にコントロールしようとせず、再分配機能を強化しないまま現在に至っているのだから、人びとの苦しい生活は、人為的に作られたものだといっても過言ではない。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.151-67]

ISBN:9784480071927

p.133

勤労が権利であるだけではなく、義務とまで憲法に書き込まれている国は、欧米には存在しない。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』p.133]

ISBN:9784480071927

pp.130-1

戦争が終息した19世紀になると、軍事費が抑えられ、財政規模全体は緊縮されながらも、生活ニーズの提供範囲は次第に広げられていった。

(…)だれから税を集めるのかを決め、実行する組織がもとめられ(…)議会や官僚組織がととのえられていくようになった。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.130-1]

ISBN:9784480071927

pp.126-8

 もともと「くらしの場」と「しごとの場」とは、同じ場所をさしていた。(…)

「経済の時代」になると、「はたらく場」で手にした賃金が、生きるため、暮らすための手段となる。(…)

「場」が二つに分離したことによって、「共通で社会的なニーズ」をあたかも「私的で個人的なニーズ」のように(…)

「欲望充足」と「必要充足」の双方を(…)

賃金によって、自助努力でみたすようになった(…)

 ニーズが個人化され、それが賃金によってみたされる。これを「ニーズの市場経済化」とよんでおけば、この市場経済化は、当然だが、人間の共同行為を弱らせることとなる。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.126-8]

ISBN:9784480071927

*1:pp.169-

*2:pp.141-

*3:「非正規雇用でフルタイムで働き、生活費を自分で賄っている労働者」「正社員でありながら、比較的単純な労働に長時間従事させられて使いつぶされる、ブラック企業の社員」「これまでの終身雇用・年功賃金の正社員や、主婦やアルバイトからなる非正規というカテゴリーには含まれない」「個別の企業にとらわれていない」「日本の労働者の中核をなしている」(p.181)

2019-03-18

pp.108-10

「保育の技術」じたいが、一部の株式会社によって書き換えられている(…)

 実質的な身体拘束状態にして子どもを管理する技術。ある種の「虐待」にも近い状態ではあるが、低コストでの運営が可能になる。(…)

少人数のスタッフで子どもを効率的に管理するために(…)

経験の乏しい保育士たちが、(…)新しい方法を編み出そうとしている(…)「エプロンテーブルクロス」も、柵で囲う保育も、(…)現状にあわせて作り出したやり方なのだろう。

(…)もはや「職業」そのものの変質さえ伴って(…)

利益効率に支配された保育の広がりは、それ自体、次世代への「爆弾」なのだ。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.108-10]

ISBN:9784480071927


pp.099-100

 低成長時代の勤労主義の行きつくところは、(…)「勤労」じたいの劣化であり、労働の不効率と不幸の拡大なのである。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.099-100]

ISBN:9784480071927


pp.082-97

日本型雇用の中にいれば、生きていける。だが、その外に一歩でも出てしまえば、(…)

将来にわたる生活保障を丸ごと失うことを意味する(…)

だから、会社の中で、どんな過酷な命令にも従わざるを得ない。(…)

 裁判所も「人事権」の名のもとに、企業の広範な命令権限を認め(…)

「無限の指揮命令権」を使用者に与える雇用慣行(…)

国が法律で定めた制度ではなく、労使の交渉によって作られた労使慣行であり、(…)

50年代、60年代には(…)多くの血が流され(…)労働者が「勝ち取った」はずの(…)

賃金決定方式は、(…)「属人給」である。(…)

労働者の会社への貢献従順度や労働者の属性で評価がなされ、「仕事」の評価という歯止めがない(…)企業が労働者の人生や生活にどこまでも介入し(…)

会社とともに自分のアイデンティティを確立する(…)

自社にとって都合がよければ、多少の社会悪は仕方がない(…)

他人のことはどうでもよくなり、社会やだれかのために働くという、労働本来の倫理観は奪われていった。

(…)

 大手企業の研修を請け負う研修支援会社の(…)新入社員研修には学生のアイデンティティーを奪う「はく的社会化」、現在のアイデンティティーは否定せずにルールを教える「付的社会化」の2つのアプローチがあるという。(…)(日本経済新聞、2011年10月12日)

 若者の「アイデンティティーを奪う」ことがビジネスとなり、一つの産業として成り立っている。(…)

 このような状況にもかかわらず、(…)時代錯誤な(…)社会意識が、求人詐欺や洗脳研修といった戦略を有効にし続けている

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.082-97]

ISBN:9784480071927


pp.079-81

派遣労働者の賃金は、(…)「物品費」として扱われる。(…)

2008年にリーマン・ショックが起こると、彼らは真っ先に職場から放逐された。(…)

 厚生労働省が2008年11月以降、2009年2月18日時点まで、約2万1千人の雇用状況を調査したところ、雇用が継続していたのは登録型派遣が5・8%、常用型派遣の有期雇用では11・8%(1年以上の勤続者)、無期(派遣会社の正社員)でも21・0%に過ぎなかったのだ。

[井手英策・今野晴貴・藤田孝典『未来の再建─暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』pp.079-81]

ISBN:9784480071927