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2006-01-10

[][][]793 14:16 793 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 793 - 雲上読記 793 - 雲上読記 のブックマークコメント

みんな元気。

みんな元気。

『新潮』に掲載された短編四編に書き下ろし一編を加えた短編集。「矢を止める五羽の梔鳥」と「スクールアタック・シンドローム」だけ既読だった。

 表題作「みんな元気。」を読んで、思わず引用したくなってしまうぐらい印象的な科白があった。

「家族なんて入れ替え可能だっつうの」

 衝撃的である。「みんな元気。」はその題名どおり、とにかく元気いっぱいしっちゃかめっちゃかな内容だった。全力で両腕を振り回しながら大爆走しているようなイメージ。家族愛が根底のテーマとしてあって、家族の代替から物語が始まって、終盤には複数の可能性が同時に存在する状況下において、どの可能性を選択するかと主人公が迫られる場面がある。ここでエグいのが、三人の夫の中からひとりを切り捨てた瞬間、その夫との間になしていた子どもが血を噴いて倒れる。がしかし、僅か数秒で彼らに対する愛が主人公の中から失われ、子どもは代替可能だったと明かされてしまうシーン。勿論、その直後にそれに対するアンチテーゼもあるのだが、いやはやエグかった。

「Dead for Good」「我が家のトトロ」「スクールアタック・シンドローム」は、それぞれそれなりに楽しめた。「我が家のトトロ」の『となりのトトロ』考察は中々、興味深く、あのアニメが子どもに与える影響を考えるとちょっと恐くもある。「スクールアタック・シンドローム」は『新潮』で読んだときも思ったが、やはり素晴らしい。問題は「矢を止める五羽の梔鳥」。初めて読んだときは何かの続き物かと思ったが、この本の中でも特に続き物として扱われていないので、単独作品であるようだ。それなのにこの難易度の高さは何だ? 再読だったが、今ひとつ分からなかった、残念。

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2006-01-06

[][][]792 16:58 792 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 792 - 雲上読記 792 - 雲上読記 のブックマークコメント

好き好き大好き超愛してる。

好き好き大好き超愛してる。

 かつてあんなにも読みづらくて、文字を追うのが苦痛で苦痛で仕方がなかった舞城王太郎が、まるで浅い海をすいすい泳ぐように読めてしまった。しかも面白かった。とは言え、相変わらず物語はよく分からなかった。愛をテーマにした掌編集的中編なのだろうか。『ベルカ、吠えないのか?』風に表現するならば、「愛よ、愛よ。お前はどこにいる」。冒頭の部分だけ読み返し、もしかしたら本当の主人公は、各掌編の中で描かれているどの主人公でもなく、ただ全ての主人公、全ての登場人物、世界の全ての人たちが幸せに暮らせるように祈っているのではないのかと。過去について祈り、それを物語化しているのではないかと気づいた。だとしたら……素晴らしいね。

 同時収録の「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は、雑誌掲載時に読んだのだが、舞城の短編作品の中では好きなほうなので再読しようとしたが断念。単純に文字が読みにくすぎる。ファウストと同じく、作品によって印刷用紙や書体を変えているのだが、表題作の「好き好き大好き超愛してる。」が行間を広く取っており読みやすく作られているのに対し、「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は逆にぎっしり詰め込まれていて、しかも文字がやや掠れていて、ギャップも作用してか読めなかった。編集は猛省すべき。

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