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2004-12-01501-512

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本格推理委員会

本格推理委員会

 冒頭からミステリとは論理であると幾度も主張し続けるだけあって、事件が明晰な論理によって解体される本当のミステリだった。さらに主人公以外の主な登場人物の大半は女性で、しかもキャラクタライズされていて、正しく萌えミステリの融合体と言えるだろう。霧舎巧ほどではないが「ここまでやるか」と唸ってしまうほどに、登場人物のひとりひとりを事件に関係させている点、自分の好みとは外れるが、それでも嫌いなわけではない。本書を熱心に勧める人、多いことだろう。

 物語運びとしては米澤穂信の『氷菓』と『愚者エンドロール』を強く思い出した。どちらも主人公が驚異的なまでに論理的な思考を持つ学生であるということと、主人公と親しい女子学生が事件を引っ張っていくこと、青春性を多く含めており優れた青春小説としても読める点が共通している。自分は『氷菓』が大好きな人間だが、あの作品では本題となる事件の前に、主人公のポテンシャルを読者相手に提示する小事件とも言うべきものがジャブ程度に存在する。しかしそういった小事件がこの『本格推理委員会』にはない。主人公は終盤まで徹底して推理することがなく、決定的な場面においても傍観者たろうとする。その、主人公が推理すること&事件に関わろうとすること=本格推理委員会の一員になろうとすることを、ひたすら避けようとしている姿勢が『愚者のエンドロール』的と言えなくもないのだが……もう少し「普通の高校生」と自称し続ける主人公がそうでないところをアピールしても良いのではと思う。……どうでもいいが『クビキリサイクル』では最も一般人らしかったいーちゃんは、『クビシメロマンチスト』では一般人から最も遠かった。

 ミステリのひとつのジレンマとしては、謎解き以外の場面が冗長で退屈だというのがある。探偵役ないしは読者が事件を推理するに充分な情報を提示するのに、結構な分量が掛かるわりに解決編が短いのだ。まあ、その短さが作品の持つキレを生み、それが面白いと言えなくもないだが、文章に牽引力がなければついつい読み飛ばしてしまうことがある。そのジレンマを克服するのに、つまり読み飛ばしがちになってしまう解決編以外の文章を、読者に読ませるために萌えを導入した作家がいる。まあ、その作家が誰か何て言うのはどうでもいいとして、本書の著者である日向まさみちもその一人であることは間違いないだろう。ミステリとして事件を追いつつ、魅力的な先輩や同級生、妹もしくは先生に萌えてみたり、あるいは熱血だったり冷静だったりする男友達に萌えてみたり、真っ当な青春小説として読み込んでみたり、とにかく多様に楽しむことが出来るのだ。――よい作品だった。

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