雲上読記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-02-13

[][][]848 23:23 848 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 848 - 雲上読記 848 - 雲上読記 のブックマークコメント

ラインの虜囚 (ミステリーランド)

ラインの虜囚 (ミステリーランド)

 田中芳樹が面白い! 信じられない、こんなにも面白い小説を書く人だったなんて。『創竜伝』と『薬師寺涼子の怪奇事件簿』を読んで「はあ、こういうのを書く人なのね」と思っていた。完全に誤解。『銀河英雄伝説』も『アルスラーン戦記』も読むつもりはなかったが、食わず嫌い以外の何物でもなかったと気づいた。それほどまでに本書は傑作! 素晴らしい!! だって、もう読んでいて大興奮。勇気以外なにも持ち合わせない少女が、祖父に認められたい一心で頑張るのを、それぞれ特徴ある大の大人三人が守りながら一緒に旅をし、お互いに成長してゆくのだよ? ちょっと、もうどうすればいいの。本書を最高傑作級と呼ばずして何を最高傑作級と呼ぶのだろう。ああ、他のシリーズも読もう。絶対に読もう。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060213

2006-01-24

[][][]807 12:57 807 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 807 - 雲上読記 807 - 雲上読記 のブックマークコメント

 秋山大号泣。

 四編の短編から構成されている短編集。『第六大陸』を読み、『導きの星』と『復活の地』に少し手をつけ、本書に収録されている最初の作品「ギャルナフカの迷宮」と「老ヴォールの惑星」を読み、小川一水のテーマというのは「未開の領域に人間社会を創造すること」ではないのかと少し思った。「ギャルナフカの迷宮」は優れた冒険小説でもあり、読んでいて非常に興奮した。そのテンションで表題作である「老ヴォールの惑星」に取り掛かったら、あまりの難易度の高さに目眩を感じた。それでも何とか読み終え、続く「幸せになる箱庭」で再び打ちのめされそうになった。前者はガチガチのハードSF(ではないかと思われる)、後者はありったけのSFを詰め込んだ辛味の効いた短編だった。では、最後の「漂った男」がいかなる感動を届けてくれるかと期待したところで、冒頭の一行に戻る。大号泣、である。想像を絶する孤独と時間。最後の、文字通り全てを畳みかけるかのような熱い展開。これは素晴らしい。アニメ化するなら是非、古屋兎丸で。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060124

2006-01-03

[][][]791 00:39 791 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 791 - 雲上読記 791 - 雲上読記 のブックマークコメント

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

 狩人の生活。学はないものの自然の中に暮らし、その脅威と恩恵を肌で感じているからこそ、言語と知性でもってそれを継承した人間たち以上にそれを知っている。それとは、つまり根っこの部分のことである。物語の根幹、人間の来歴、世界の真理。論理の対極に立っているかのような文体は、荒々しく押し付けるように語りかけるものであり、ときに心を打ち、ときに読みにくい。しかし確実に伝わってくる、それが。

 読むのが僅かに遅かったなと悔いた。二度、その読みにくさから投げてしまっていたのだが、あのときに最後まで読んでいたら必ずや2005年のトップテンに入れていただろうと思う。また、この文体は何処となく舞城王太郎のそれと似ているように思う。あるいは今、舞城をもう一度、手に取ったら面白く読めるかもしれない。古川を経ることで、舞城を面白く読めるステージに進めたかもしれない。

 読了後、どうしてこの作品がこのミステリーがすごい! に含まれているのかと少しだけ思い悩んだ。つまり、ベルカの血統にまつわる部分がミステリなのだろうか。あの四頭のうちいずれかを祖に持つイヌ、或いはあの四頭とは全く関係のないイヌ、もしくは四頭全てを祖に持つイヌ。もしかしたら、そういったところをミステリだと考えた人がいたのかもしれない。が、秋山は、そこは看過すべきポイントだと思う。イヌは家系図を持たず、イヌの祖を気にするのは人間だけだということ。文学として楽しんだ。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060103

2005-11-10

[][][]741 20:35 741 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 741 - 雲上読記 741 - 雲上読記 のブックマークコメント

黒い時計の旅 (白水uブックス)

黒い時計の旅 (白水uブックス)

 本当に、瞠目すべき幻視力、である。スティーブ・エリクソンには二十世紀同士の戦いや、時間と空間とを超越する意志や存在が見えているのだろうか。多重に絡まりあい、複雑な様相を呈しているこの物語には、驚嘆を隠せない。仮にドイツが負けず、A.H.が死んでいなければ――かつてにおいてこれと同じように幻想を抱いた作家は多いが、エリクソンほどにその不安定さや不安感さを描きえただろうか。また、エリクソンでなければ、この物語をしてただの男の女(彼と彼女、夫と妻、父と娘、息子と母)の物語とさせてしまっていたかもしれない。本当に、もう、何なのだろうかこれは。怪物か。いや、もう大きすぎて怪物なのかどうかさえ分からない、名状し難い。それでも敢えて言葉にするならば、そう。

 並行して進行する複数の可能性を同時に描きながらも、あらゆる世界に共通する、何もかもをあるがままに流しさってしまう時間を巡る物語だろうか。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20051110

2005-07-31687-689

[][][]クドリャフカの順番「十文字」事件 クドリャフカの順番「十文字」事件 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - クドリャフカの順番「十文字」事件 - 雲上読記 クドリャフカの順番「十文字」事件 - 雲上読記 のブックマークコメント

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

 傑作。人物を消化しきれてないのと、ラストが今ひとつだったけれど、エンタテイメント的には究極。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20050731

2005-07-09657-662

[][][]たかみち画集 たかみち画集 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - たかみち画集 - 雲上読記 たかみち画集 - 雲上読記 のブックマークコメント

たかみち画集

たかみち画集

 素晴らしい。どうして、絵を見るだけでこんなにも心が落ち着くのだろうか。視界から飛び込んでくる情報が、脳を暖かく包み、まるで自分が心地のよい温度に保たれた大洋にたゆたっているような気分になる。とても良い。

[][][]Spirit of Wonder Spirit of Wonder - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - Spirit of Wonder - 雲上読記 Spirit of Wonder - 雲上読記 のブックマークコメント

Spirit of Wonder (KCデラックス モーニング)

Spirit of Wonder (KCデラックス モーニング)

 なんだこれは、なんなんだこれは。眩暈を感じるほどに素晴らしい。ここまで物語している、ここまでSFしている漫画を読むのは初めて。ある種の感動さえ感じた。鶴田謙二が一部の人に熱狂的に支持されているのは知っていたけれど、確かにこんな本を出している人ならば、熱狂的な支持を受けないほうがおかしい。いやあ、凄まじかった。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20050709

2005-05-04598-601

[][][]学校を出よう!6 VAMPIRE SYNDROME 学校を出よう!6 VAMPIRE SYNDROME - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 学校を出よう!6 VAMPIRE SYNDROME - 雲上読記 学校を出よう!6 VAMPIRE SYNDROME - 雲上読記 のブックマークコメント

学校を出よう! (6) VAMPIRE SYNDROME 電撃文庫 (0996)

学校を出よう! (6) VAMPIRE SYNDROME 電撃文庫 (0996)

 おおおおおおおお、何と言うことだ、何と言うことだ。これは許されるのか。ここまで書いてしまうことが許されるのか。ここまで迫って、ここまで迫っておきながら。ああっ! なんだ、谷川流。一体、何者なんだ。かーっ!

 思わず、うろたえてしまうくらい、本書は傑作。凄まじい。到底、及びつかない。メタ好きであれば、このシリーズは最早、正しく必読の領域だろう。読んで死ぬか、読まずに死ぬか、である。

 それにしても、ダブルブリッド悪魔のミカタもそうだったが、どうして電撃の吸血鬼が出てくる作品は、こうも凄絶なのだろうか。はあ。溜め息しか出ないぜ。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20050504

2005-02-05531

[][][]水に眠る 水に眠る - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 水に眠る - 雲上読記 水に眠る - 雲上読記 のブックマークコメント

水に眠る (文春文庫)

水に眠る (文春文庫)

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20050205

2004-12-01501-512

[][][]リピート リピート - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - リピート - 雲上読記 リピート - 雲上読記 のブックマークコメント

リピート

リピート

 くあああああああ、激上手ッ! 大・快・作!!

 四次元殺法ッ、メビウスの環! 限りなく本格に近い……思考実験の罠が読者を待ち受ける。『リプレイ』プラス『そして誰もいなくなった』割る一の奇跡。もはや、乾くるみは、傑作しか書かないのか! 秋山絶賛。

 さて、本書はいわゆる時間物である。その中でもループ物と言われる、いわゆる主人公が時間を遡って前とは異なる選択肢を選べるというかたちのもの。この話は風間というリピーターを名乗る謎の男と、主人公たち男女九人からなる十人のゲストが軸となっている。リピーターと九人のゲストは、十ヶ月ほどの時間を遡り、短期間ながら第二の人生を送ることができる。が、何故か選ばれた九人に続々と不可解な死が訪れて、やがて最後には……といったもの。帯に「限りなく本格ミステリに近い」と謳われているように、物語は極めて論理的に進められるし、現実的なものから夢物語としか思えない推理まで乱発される。またリピートの謎や、リピーター殺しの動機も理不尽でなく、悲しくて悲しくて涙を流すほどに、残酷なまでに冷徹に証明される。一寸の過不足もない、最後の最後まで抜かれていない手が、一切の容赦なく読者を切り捨てる。このキレ味の鋭さ、快さ。素晴らしい、これこそ大快作、大傑作。

 とにかく素晴らしい。『イニシエーション・ラブ』のときは最初から最後の二行にどんでん返しが来ると分かっていたから、警戒して読んだ。が、騙された。今回は帯のあおり文句と乾くるみという作者名から、最後の最後に至るまで努々、気を抜かずに全力で挑んだ。しかしっ! それでもっ! 乾くるみは読者の想定したラインを軽々と越え、予定調和的に完璧な一点に物語を収束させ、これ以上はないと言わんばかりの(了)を作ってしまう。素晴らしい、いっそおぞましい程に素晴らしい。

 幾つか文句をつけるならば、主人公の心理が気に喰わないこと(個人的だなあ)と、最後の三行がまだまだ行けるはずだということ。実際、もう少し彼女との関係性に文字数が裂かれていれば、ラストの諦観に満ちた独白は、切々と深々と読者の中に降り積もるのではないだろうかと思う。

 それにしても素晴らしい。全てのテーマが、全てのモチーフがとても好きだ。『イニシエーション・ラブ』のときは伏線が見事だった。全編是即ち伏線と言わんばかりの伏線が圧倒的で、再読しないことを許さない完成度があった。しかし、この場合、やはり再読時に真価が現われることが多い。言わば、後からこみ上げてくるような驚きだ。そういう酩酊感も悪くないが、やはり自分は本書のような伏線もあり、本格ミステリもあり、SFもありな作品が好きだ。欲張りと言われようが何と言われようが、好きなのだから仕方がない。そして自分の嗜好に答えくれるのが乾くるみ、その人である。

 実を言うと彼の著作で『匣の中』と『塔の断章』は未読だ。『匣の中』を読むために『匣の中の失楽』を読んだのに、筆致が苦手で放り出してしまったのだ。考えてみれば麻耶雄嵩もそうだ。デビュー作を読んで筆致が気に入らず、目を離していれば傑作ばかり出す作家になっていた、と言うような。それにしても素晴らしかった。2004年乾くるみ麻耶雄嵩、後は谷川流の年だったということでいいや。何か、異議ある?

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20041201

2004-10-01455-482

[][][]イニシエーション・ラブ イニシエーション・ラブ - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - イニシエーション・ラブ - 雲上読記 イニシエーション・ラブ - 雲上読記 のブックマークコメント

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

 震撼した、何なんだこれは――!!

 帯には次のような挑戦文が編集部から送られている。

「今年最大の“問題作”かもしれません/ぜひ、2度読まれることをお勧めします。

 目次から仕掛けられた大胆な罠、全編にわたる絶妙な伏線そして最後に明かされる真相――80's苦くてくすぐった恋愛ドラマはそこですべてがくつがえり、2度目にはまったく違った物語が見えてくる」

 問題作、その名の通り本書はネットにおけるミステリファンの間でちょっとした物議をかもした。本書を手放しで大絶賛する声から、正直わけが分からなかったという声まで。自分はその評判を見聞きする最中、誤って「最後の二行までは普通の恋愛小説なんだけれど、最後の二行を読んだ途端、本書が普通の恋愛小説ではないことに気付く(……)つまりヒロインは二股を掛けていたってことなんだけれど、それにしても女性は恐い」というような評を読んでしまった。読んでしまった途端、ガックリ来たが、真に傑作と呼ぶに相応しい作品はネタバレさせてもその真価を全く損なわない、という持論を持っている自分は恐る恐る手を出してみた。読んでみて分かったが、確かに帯にある通り、80年代を予期させる苦くてくすぐった恋愛ドラマである。王道の常道を行き、定石を打ちこれ以上はないというぐらいに冗長に普通の恋愛が進む。はっきり言って、これの何処が傑作なのかと、これの何処が問題作なのかと悔やむ気持ちを抱えつつ読み進めた。――が、最後の二行に至り震撼した、何なんだこれは――!!

 小説内世界を認識し、頭の中に構築していた物語がその瞬間、完全に瓦解した。まるでこの世のものとは思えない秘剣を受け、自分でも知らないうちに斬られていたことに、本書を読み終えてはじめて気がついたと言わんばかりの衝撃である。完敗した。ネタバレされていたにも関わらずこの衝撃である、果たして帯を目にせず本書が問題作であることを知らず、巧妙に張り巡らされた伏線に気付かず、作者のミスディレクションにまんまと嵌められた読者は、最後まで本書が普通の恋愛小説だと思って、その本性に気付かずに通過してしまうのではないだろうかと危惧してしまうぐらいの斬れ味である。

 読了するや否や自分は本書を放り出すと、コンピュータを立ち上げ書評Wikiアクセスし、登録されているレビュー群に端から目を通していった。ネタバレしているレビューの中で特に優れていたのは、氷川透のもの。ほぼ全ての謎とそれに対する解が明らかにされている。謎の大半が、恥ずかしながら自分には全く見抜けなかったもので「ああそう言えば、そんな記述もあったかな」ぐらいのものであった。

 しかし、それにしても素晴らしい。張られていた伏線を把握したく、それらの前後を再読したのだが、本当にさりげなく、巧妙に張られている。しかも、それらひとつひとつが自分の中に入ってくるたびに、本書の評価がどんどんと上がってしまうのだ。それと同時に本書が持っている悪辣さも浮かんでくる。いや、まっこと恐ろしい。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20041001