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2006-02-28

[][][]869 23:21 869 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 869 - 雲上読記 869 - 雲上読記 のブックマークコメント

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

 お・も・し・ろ――――ッッ!!!!!!

西洋骨董洋菓子店』がドラマ化されたこともあり、以前やっていたドラマ『大奥』の原作なのかと思っていたら、某氏に「違うよ、アッキー」と指摘されました。ドラマは全く関係なく、男女の比率が一対四だったらという、『BG、あるいは死せるカイニス』のような架空の世界における大奥を舞台とした漫画だった。つまり、ときの女将軍一人に対し美男三千人を集めた女人禁制の男の城が舞台なのだ!

 一巻の大半は、巧みに世界観を描きつつ、水野という大奥入りした青年を主人公に、彼がいかに上様にお近づきになるかを描いている。これが、また妙にリアリティがあって面白い。問題は水野編とも言えるパートが終わり、主人公が徳川吉宗に移ってから。彼女はある慣習に疑問を唱える。どうして彼女は女の身でありながら男の名前を持ち、男のような格好をするのだろうか、と。この慣習に意味はあるのか、誰がこの慣習を作ったのか。もう、192ページからの4ページの展開が熱すぎる。まるで世界の謎に迫る謎ハンターではないか。ちょっともう二巻が楽しみで仕方がない。超絶面白かった。

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2006-02-13

[][][]847 18:39 847 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 847 - 雲上読記 847 - 雲上読記 のブックマークコメント

戻り川心中 (光文社文庫)

戻り川心中 (光文社文庫)

 果たして人情は、人を、殺人に至らしめるのか。

 読み手の心すら切り裂きかねない、極上の小説を読んでしまった。

「花葬シリーズ」と呼ばれる八篇の短編小説が収録された短編集。舞台や登場人物などが共通しているわけではなく、ミステリと恋愛というテーマと、どの編にもガジェットとして菊や菖蒲などの花が使われている点が共通している。30代以上のミステリ読みがベスト10などを挙げるとするならば、本書は必ずや上位にランクインするだろう。聞いて回ったわけではないので、推測ではあるが、その筋の人の言によると、まず間違いないだろうとのこと。聞きしに勝る、傑作であった。

 特にどれが素晴らしいとは挙げづらい。実に優劣がつけにくいのだ。よしんば面白くない作品があったとしても、著者が連城三紀彦でなければ、傑作と言えてしまうのだ。だが、それでも敢えて、敢えて一作だけ挙げるとすれば「花緋文字」だろう。あまりに凄惨、あまりに凄絶である。

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2006-02-10

[][][]841 23:04 841 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 841 - 雲上読記 841 - 雲上読記 のブックマークコメント

アリスの不思議なお店

アリスの不思議なお店

 こーれーは、素晴らしい!!

 絵本として秋山が考えている、ふたつの重大な要素を備えているのがとても好印象。

 ふたつの要素とは「親から子へ、物語るのに向いている」「字の分からない子どもが、絵を見るだけでも楽しめる」である。画家にして絵本作家である著者が、娘の誕生日プレゼントのために作ったのだが、評判になり出版、ボローニャ国際児童書展ラガッツイ賞を受賞したという作品。夢のカタログと宣伝されており、その名の通り、空想の雑貨が紙面に展示されているのだ。文字を追わずにイラストを見ているだけで楽しい。挿画ひとつで物語が頭の中に浮かんでくる。

 本を読むことは、本に書かれている文章を読んで、その文章によって著者が綴った物語を、頭の中で再構築することだと秋山は考えているが、それを本書はイラストでやってのけている。受動的に読書している人間には難易度が高いかもしれないが、そうでない人にはうってつけだろう。素晴らしかった。

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2006-02-05

[][][]828 19:41 828 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 828 - 雲上読記 828 - 雲上読記 のブックマークコメント

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)

 最ッ高に面白かった!

 ホストクラブの女オーナーが店に舞い込むトラブルを、男の子たちと一緒に解決していく、ドラマ版IWGPみたいな連作短編なのだが、実に痛快で面白かった。展開自体は事件と遭遇して、捜査して、解決するというテンプレートに添っているのだが、そこで活躍する主人公やホストたちが活き活きと描かれているのだ。それもテレビでよく描かれるような、スーツで決めていたり、胸元をはだけているような男ではなく、DJやダンサーのような男の子なのだ。スーツの代わりにだぼだぼなパンクで身をかためたり、特技がキックボクシングやナンパであったり。そしてそんな中でひとり、王道派ホストスタイルを取る憂夜さんの正体が気になりまくり。もうとにかく面白かった。

 TBSは『夜王』なんてやってないで、早く加藤実秋とコンタクトを取って、本書をドラマ化すればいいのに強く思う。

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2006-02-01

[][][]819 10:42 819 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 819 - 雲上読記 819 - 雲上読記 のブックマークコメント

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

 予想通り! 面白かった!!

 いやはや。正直なところ、何処の奈須きのこですか? それとも西尾維新ですか? もしくはうえお久光ですか? あるいは葉山透ですか? 的な世界観なのだが、他のどの作家が作った世界よりも、片山憲太郎のこの世界が一番しっくり来る。しかも読んでいて純粋に楽しい。キャラクタ小説としては極上の一言。どの女の子も可愛いし、緩急のつけ方も絶妙だし、『電波的な彼女』とのクロスオーバーもあるとのことで、あちらの二巻目以降も俄然、読みたくなってきた。

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2006-01-26

[][][]808 20:47 808 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 808 - 雲上読記 808 - 雲上読記 のブックマークコメント

終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)

終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)

 全七巻=十四冊(ふつうの文庫本だったら二十冊分相当ぐらいだろう)という巻数から構成される川上稔の創る壮大なシリーズの中の、AHEADシリーズの中の、終わりのクロニクルというひとつのシリーズの完結。川上稔の技量と彼の作品内世界観が持つ魅力の全てが凝縮された素晴らしい作品だった。もう途中から感覚が麻痺してしまい、果たして十全に楽しめたのかどうかは不確定だが、いやいや、凄まじかった。

終わりのクロニクル』は読んだけど都市シリーズは迷っている、都市シリーズは好きだけど『終わりのクロニクル』は迷っているという人に、ひとつ取り返しのつかないネタバレをさせてもらおう。

「つまり、冥府も天界も輪廻転生も、破壊と再生も、ありとあらゆることが現実となる。武神はきっと人のものとなって神の字を失い、機竜達も空行く船として宇宙までを縦横するようになるだろう。そして――、人々は文字や絵を力とし、多種族が共存する世界になるのだよ」

 彼は悠然とした口調で、言葉を続けた。

「この世界に不死はない。しかし今後、輪廻と遺伝の概念に導かれ、私と新庄君や他の皆は、いついかなるときでも出会っていくだろう。テキトーに記憶や意思を引き継ぎ、テキトーに忘れ、世界をもっとよく進化させていく。――必要ならば敵に回ることだってあるだろう」

(1056ページより)

 ありとあらゆることが現実となり、佐山や新庄その他大勢が出会っていく話が都市シリーズであり。まだ何もかもがありでなく、そこに至るまでがAHEADシリーズなのだ。

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2006-01-25

[][][]808 20:47 808 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 808 - 雲上読記 808 - 雲上読記 のブックマークコメント

終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)

終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)

 全七巻=十四冊(ふつうの文庫本だったら二十冊分相当ぐらいだろう)という巻数から構成される川上稔の創る壮大なシリーズの中の、AHEADシリーズの中の、終わりのクロニクルというひとつのシリーズの完結。川上稔の技量と彼の作品内世界観が持つ魅力の全てが凝縮された素晴らしい作品だった。もう途中から感覚が麻痺してしまい、果たして十全に楽しめたのかどうかは不確定だが、いやいや、凄まじかった。

終わりのクロニクル』は読んだけど都市シリーズは迷っている、都市シリーズは好きだけど『終わりのクロニクル』は迷っているという人に、ひとつ取り返しのつかないネタバレをさせてもらおう。

「つまり、冥府も天界も輪廻転生も、破壊と再生も、ありとあらゆることが現実となる。武神はきっと人のものとなって神の字を失い、機竜達も空行く船として宇宙までを縦横するようになるだろう。そして――、人々は文字や絵を力とし、多種族が共存する世界になるのだよ」

 彼は悠然とした口調で、言葉を続けた。

「この世界に不死はない。しかし今後、輪廻と遺伝の概念に導かれ、私と新庄君や他の皆は、いついかなるときでも出会っていくだろう。テキトーに記憶や意思を引き継ぎ、テキトーに忘れ、世界をもっとよく進化させていく。――必要ならば敵に回ることだってあるだろう」

(1056ページより)

 ありとあらゆることが現実となり、佐山や新庄その他大勢が出会っていく話が都市シリーズであり。まだ何もかもがありでなく、そこに至るまでがAHEADシリーズなのだ。

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2006-01-15

[][][]800 10:58 800 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 800 - 雲上読記 800 - 雲上読記 のブックマークコメント

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

 本ミス・このミス・文春ミス、三冠を達成し、2005年末の話題をかっさらったミステリと言えば本書に相違ないだろう。その為か、実に意気込んで読んでしまったのだが、読んでいる最中は、それほど面白くなかった。ある母娘が犯した殺人を隠蔽するために天才数学者が骨を折るのだが、警察は彼の術中に嵌まってしまい、彼らの代わりに天才物理学者が容疑者Xのトリックを暴こうとするという倒叙の変形……なのだが、天才同士の激しい舌戦もなければ、論理の応酬もない。もうとにかく地味なのだ。著者が東野圭吾であったり、話題になっていなかったら途中で投げていた可能性もなくはない、それぐらい地味なのだ。が、勿論、最後には全てがひっくり返り凄まじいことになる。

 特筆したい点はふたつ。作中に「凡人はトリックを積み重ねることで問題を複雑にするが、天才はある一点に手を加えることで問題を飛躍的に複雑化させる」というような科白があるのだが、まさにたったひとつのことをすることで事件の構造を完璧に覆い尽くしているのだ。さらにトリックのスライドも素晴らしい。ミステリを読んでいる人間ほど、このずらしには騙されるだろう。柳生新陰流風に表現するなら転の術理である。

 容疑者Xの献身は純愛物とも謳われているらしい。確かに340ページの3行を目にした瞬間、涙が溢れた。その後も度々、泣いてしまったが、考えるまでもなくこの感動は『水の迷宮』の延長線上にあるもの。『水の迷宮』において浪漫こそが真犯人だったならば、『容疑者Xの献身』においては愛こそが真犯人だったのだろう。

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2005-12-06

[][][]771 17:05 771 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 771 - 雲上読記 771 - 雲上読記 のブックマークコメント

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)

 本格ミステリベストにランクインしていて、かつ手元にあったので早速、読んでみたところ、大感激した。これは、たいへん素晴らしい。積みの中では比較的、優先順位が低く、本ミスに入っていなければ、当分、読まなかっただろう。素直に感謝したい。

 サブタイトルにある通り、本書はお茶が趣味の宇佐見博士を主人公とした連作短編集である。絵画を鑑賞していたところ、その絵画の中の世界に迷い込んでしまったり、お茶を飲んでいたら時を四百年ほど遡り、ある男の精神と同化してしまったり、著者の想像力は尽きるところがない。だからと言って、本書をファンタジィと表現することはあまりに不可能だ。あらゆる可能性を模索し、端から潰してゆく推理。お茶を飲みながら、話を聞くだけで、真相を看破してしまう鋭い論理。どこまでも忠実に、己を律するように、本書は本格ミステリなのだ。まったく、恐れ入った。森博嗣の持つ詩的さと奥泉光の持つ余裕を兼ね備えた上でのミステリとでも言うのだろうか。本当の本当に素晴らしい、この世にこんなにも幻想的なミステリがありうるのかと感動した。傑作。

 蛇足ながら、もう少し付け加えておこう。人によっては最初の三作は難易度を高く感じ、途中で投げてしまうかもしれない。硬質な文章が苦手な人は、表題作になっている「ゴーレムの檻」と「太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)」を続けて読んでもらいたい。他三作に比べ若干、分かりやすく、作品を包む幻想もより詩的で素晴らしいからだ。

 それにしても192ページの演出が憎い。素晴らしすぎるではないか。

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2005-11-15

[][][]749 18:34 749 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 749 - 雲上読記 749 - 雲上読記 のブックマークコメント

 悲惨、陰惨、凄惨。どれだけ言葉を重ねても、この過酷な終焉は表現不可能だろう。

 まず、何と言っても世界観および展開が最高に素晴らしい。「夏の区界」と呼ばれる仮想リゾートでAIたちは、ただのひとりのゲスト=人間の訪問も迎えないまま千年を過ごしてしまう。ある日、蜘蛛のかたちをした謎のプログラムが現われ、永遠に続くと思われていた夏休みに翳りが差す――という出だしから始まり、物語の大半はAIと蜘蛛の交戦で構成されている。だが、ああ、なんてことだろうか。その必死の抵抗は無意味なのだと、行間を読めばすぐに分かってしまう。夏の区界の暗部と、蜘蛛たちの不気味な統率者とがちらつき、中盤に散見されるAIたちの勝利は、一時のものでしかないと、どうしようもなく読めてしまうのだ。

 ある種、ステレオタイプな終末風景。死を目前にした最後の、美しく官能的な情交。視覚から侵入し、読者の痛覚を刺激してくる死と破壊。そして全てを許してしまう、頬を撫ぜる夏のそよ風。淫靡なる幻想と透明の破壊に彩られた、極上の冒険小説だ。

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