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2006-02-28

[][][]859 17:17 859 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 859 - 雲上読記 859 - 雲上読記 のブックマークコメント

追憶の欠片―されど罪人は竜と踊る〈6〉 (角川スニーカー文庫)

追憶の欠片―されど罪人は竜と踊る〈6〉 (角川スニーカー文庫)

ザ・スニーカー』に掲載された四編に書き下ろし一編を加えた連作短編

 ついに面白い! と叫べるほどに面白くなってきた。

 実にドラマと問題提起に溢れているのだ。今までのバトルシーンやアクションシーンは、難解な物事を力技で解決しようという雰囲気だったが、ここに来て戦うことに現実味が出てきた。と言うか、争いは悲しみと憎しみしか生まないのだね……。

 また、普段はライトノベルを読まないSF読みの人が、このシリーズだけは読んでいて、ようやくその人がこのシリーズを追っている理由が分かった。アンドロイド問題や宗教問題、自己犠牲に戦争……SFかもしれない。

 最高に気に入ったのは「覇者に捧ぐ禍唄」。特に94ページから105ページまでの展開が至上。その後の展開には思わず「なんてことだ……」と呟いてしまった。人はどうしてか弱く、不安を感じてしまう存在なのだろう。

[][][]860 00:31 860 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 860 - 雲上読記 860 - 雲上読記 のブックマークコメント

ザ・スニーカー』に掲載された三編に書き下ろし二編を加えた連作短編

 前巻に引き続き、高いレベルの短編集。もうどの作品を取っても不満はない。持ち上げては落とし、持ち上げては落とし、持ち上げては落とす……と見せかけて幸福のままに終わったり。著者の掌の上で踊らされている感が否めないが、面白いのだから仕方がない。「黄金と泥の辺」には、あまりにもあんまりな結末に唇を噛み。「しあわせの後ろ姿」には、現実的過ぎる恋人の別れ方に身が引き裂かれる思いを感じ。「三本脚の椅子」には、芸術の門を敲くものの孤高と孤独を知り。「優しく哀しいくちびる」には、涙が出るほど大爆笑した挙句、279ページに感動して秋山号泣……までは行かなかった。秋山嗚咽、ぐらい。「翼の在り処」は、まあ、どうでもいいや。

 刊行ペースを見ると、そろそろ八巻が出てもいい頃合い。楽しみだ。

[][][]862 18:01 862 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 862 - 雲上読記 862 - 雲上読記 のブックマークコメント

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

 今年の電撃小説大賞で銀賞を受賞。こんなに面白くて銀賞とは、今年の電撃大賞はどれだけレベルが高いんだ!

 もうとにかく賢狼のホロが魅力的なのだ。狼耳を持った少女の姿に老獪な口調と、分かりやすくも捻った萌えを持っているのだけれど、そんな見せ掛けに頼らなくても十二分に魅力的(こう書くと『GOSICK』のヴィクトリカが連想されるが、ああ言った分かりやすいツンデレではない)。老いているが故に、非常に老練で頼りがいがあり自信に満ち溢れ、そして自分をいかに魅力的に見せるかも知り抜いているのだ。もう骨抜きにされざるを得ない。しかも、存分に賢狼として彼女を立たせた上で、長命な生き物につきものの孤独を描く。堪らないだろう、これは。

 物語も悪くない。主人公が何の後ろ楯もない行商人であるため、明日には全財産を失っている可能性もあり、自らは攻撃に転じることができず、耐えず警戒していなくてはならないという緊張感が凄まじい。戦いのシーンもあるにはあるが、アクセント程度だし。面白かった。最後の一行で明かされるタイトルの真意も素敵だ。

 難点を挙げるなら、前半と後半とでやや物語が有機的に繋がっていないのと、編集の力不足。誤字脱字誤用は目立つし、口絵にするべきでないシーンを口絵にしてしまっていたり、挿絵のタイミングもずれているように感じた。

[][][]868 21:27 868 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 868 - 雲上読記 868 - 雲上読記 のブックマークコメント

 えらい面白かった。

 一ページ目から柳田國男を引用し、読者をサトリや座敷童が現実に存在する伝奇空間へと誘い、人間と妖怪の間に起こった問題を解決する鎮守府審神機構(さなどころ)の一等官*1である主人公に存在感と説得力を持たせているのだ。この世界観があれば、それなりのライトノベルはすぐに書けるだろう。雰囲気としては『腐り姫』や『朝霧の巫女』だろうか。最後の一行で明かされるタイトルの本当の意味も含め、とにかく世界観と語り口が素晴らしかった。

 ジュブナイルポルノとしては、肉体的に痛々しいシーンが少ないのが好印象。全体的に羞恥系や焦らし系のSMプレイが多いだろうか。主人公が相手の心情を手に取るように理解できるサトリではあったが、露骨に感情移入するわけではなく、一歩離れた地点から冷静さを持って観察しているようなので、読んでいて気持ちが悪くはならなかった。ラストもなあなあで終わらせるのではなく、きっちり締めてくれたし、良作。

[][][]876 22:58 876 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 876 - 雲上読記 876 - 雲上読記 のブックマークコメント

パズル自由自在 (講談社ノベルス)

パズル自由自在 (講談社ノベルス)

メフィスト』に掲載された五編に書き下ろし一編を加えた連作短編。シリーズ四作目。三編既読だった。

 うーん、堪能した。

 心なしレベルが下がっている気がしないでもないけれど、このシリーズはやはり落ち着くね。パズルや謎々、机上で楽しむ頭を使うゲームを物語に絡めてしまう、日常の謎の亜流。ちょっと頭を使う系のパズルが大好きな秋山としては、随所随所で出題される問題に、つい読む手を休めて頭を捻ってしまう。答えが出せたときは微笑んで、出せなかったときは巻末の解答を見て膝を打つ。いやあ、善哉善哉。

 また、ここに来てぴいくんの本名にまつわるヒントが大放出されている。どうしても気になる人は、「ぴいくんand本名」でググれば出てくるだろう。本当だよ。

[][][]879『向日葵の咲かない夏』 22:24 879『向日葵の咲かない夏』 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 879『向日葵の咲かない夏』 - 雲上読記 879『向日葵の咲かない夏』 - 雲上読記 のブックマークコメント

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

 絶句。

 なるほど、確かに本書は凄まじい。一部のコアなミステリファンが注目するのも道理。

 雰囲気は麻耶雄嵩『神様ゲーム』を読んだときに感じたものに近い。何処か捻くれた、暑い夏の夕暮れと夜の狭間、実に不気味で居心地の悪い黄昏時が全編を覆い尽くしているような感じだ。描写そのものはふつうでも、次の瞬間に、実に嫌な、神経を逆なでするような、否応なく生理的嫌悪感を催させるシーンが待ち受けているのではないかという、嫌な予感が始終つきまとうのだ。

 問題は結末だ。何だろうこの、舞城王太郎乾くるみを足して二で割ったような邪悪な結末は! 救いも望みもないわけではなく、それがあるかどうかすら分からないのだ。ああ、気持ちが悪かった。寒気がする。しばらくは悪夢を見るのではないだろうか。節足動物にも近寄れなくなりそうだ。ぐええ。

[][][]885『アイルランドの薔薇』 23:16 885『アイルランドの薔薇』 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 885『アイルランドの薔薇』 - 雲上読記 885『アイルランドの薔薇』 - 雲上読記 のブックマークコメント

アイルランドの薔薇 (光文社文庫)

アイルランドの薔薇 (光文社文庫)

 石持浅海という作家について秋山が持っているイメージは、『月の扉』でミステリファンにその名を知られ、『扉は閉ざされたまま』で一躍、有名になったという感じだ。本書は彼の初期の作品で、アイルランドのとあるB&B(いわゆる庶民向けホテル。ベッドと朝食だけを提供する)が舞台で、登場人物は全員カタカナ名で、やや社会派であるという評を聞いて、どうも手が伸びなかった。しかし、ミステリ読みとしてやはり読んでおかなければならないだろうという、謎めいた強迫観念に晒され読んでみたのだが、――面白かった!

 確かに登場人物の名前はカタカナで覚えにくく辛かった。北アイルランドと南アイルランドの政治的要素が絡んできて、理解しにくい部分もある。がしかし! この舞台設定と人間ドラマは秀逸過ぎだろう! 悲しいかな、背景が込み入っていて、それを説明できるほど秋山は理解できなかった。したがってこの場では、とにかく面白いのだと連呼することしかできないのが悔やまれる。面白かった面白かった面白かった、ふう。

 これで石持作品はデビュー作の『暗い箱の中で』を除いて全部読んだことになる。長編だけで順位をつけるならば『水の迷宮』→『アイルランドの薔薇』→『月の扉』→『扉は閉ざされたまま』→『BG、あるいは死せるカイニス』→『セリヌンティウスの舟』かな。

*1:さなどころのいっとうかん、略して審神官=さないち

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2006-02-14

[][][]849 16:41 849 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 849 - 雲上読記 849 - 雲上読記 のブックマークコメント

痙攣的

痙攣的

 読みながら何度も吹き出してしまった。もう何と言うか、色々とやりすぎ。収録されている五編の連作短編のうち、最初の三編は、まだ寒蝉主水(ひぐらし・もんど)なる謎めいた人物が様々な架空の芸術家や芸術作品を批評し、それなりに楽しむことが出来たが、四編目から何だかよく分からない、筆舌に尽くしがき、名状しがたき世界に突入するのだ。ちょっと、もう図を見た瞬間に笑ってしまった。いかにすれば、あんな狂った物語が思いつくのだろう。最後までミステリという形式を取ってはいるが、どちらかと言うと幻想奇想に近いだろう。鳥飼否宇、超最高!

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2006-02-10

[][][]842 23:20 842 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 842 - 雲上読記 842 - 雲上読記 のブックマークコメント

レモネードbooks 1 (バンブー・コミックス)

レモネードbooks 1 (バンブー・コミックス)

スミレステッチ』『委員長お手をどうぞ』で有名な山名沢湖。前々から読みたいなと思っていたものの、自分でマンガを買って読む習慣がなく、周りに買っている人がいなかったので読めなかったのだが、魔王14歳さんのレビュー(id:Erlkonig:20060206)を読み、一念発起して買ってしまった。マンガを買うのは、三年ぶりである(最後に買ったのは『G戦場ヘヴンズドア』)

 簡潔に言えば、歯がゆい少女漫画。現実にはちょっとないだろうなと思いつつ「わはー」とか変な笑い声を上げながら読んでしまった。面白い。そして読書が趣味の男性諸君で、彼女が欲しい人は心して読んだ方がいいかもしれない。好きな店の好きな本棚の好きな本がいつまでもそこにあるとは限らないように、ある女性の心がいつまでも自分に向いてくれているとは限らない。まあ、逆も言えることだけど。

 そう言えば、平山白さんが作中に顔を出した本をリストアップしています(id:hirayama46:19000101)。

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2006-02-03

[][][]823 18:38 823 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 823 - 雲上読記 823 - 雲上読記 のブックマークコメント

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

 最高に面白かった。

 常野と呼ばれる人の姿をしていながら人ならざる力を持った一族をめぐる連作掌編集。常野という土地から来たから常野と言うのか、それとも「常に在野にあれ」という意味をこめて常野を名乗っているのか、それは明確ではないが、この不思議な一族は、一様に慎み深く穏やかで、読んでいて実に心地よい。収録されている十の掌編は、いずれも未完成で大河小説並の長さを誇る長編小説の一部を抜粋したかのよう……と言えば悪くないが、実際は断片的すぎて話にならない。設定を積み込みすぎで、常野というキーワードがなければとてもじゃないが一冊の本にまとめることは出来なかっただろう。と言うか、常野というキーワードで一冊にまとめているけれど、ちょっとこれはいかがなものかという気がしないでもない。それでも何故、本書が傑作かと言うと。

 本書が、萩尾望都ポーの一族』を彷彿とさせるからだ。

 社会の中に埋もれるように暮らそうとする常野一族。しかしその異能ゆえ、どうしても浮き彫りになってしまい、ときに人に狩られ、ときに人から逃げだし。それでもひっそりと生きながらえようとする。その生き方が実に素晴らしいのだ。『ベルカ、吠えないのか?』風に表現するならば「常野よ、常野よ。お前はどこにいる?」。

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2006-01-29

[][][]814 20:21 814 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 814 - 雲上読記 814 - 雲上読記 のブックマークコメント

ビリーバーズ 1 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 1 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 2 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 2 (ビッグコミックススペシャル)

 何もかもが夢幻。何がリアルで何がアンリアルなのか、最早その区別をつける必要性すら感じさせず、だからと言って自分が望み自分の見る世界こそが本物の世界などという、程度の低いメタに落ちてしまっているわけでもない。これは虚構の中で、虚構性を認めつつも他者と共有できる現実に存在する世界を信じようとする物語だろう。

 それにしても暴力的であった。文字で埋め尽くされたコマや、惰性で延々と繰り返されるエロシーンに、唐突な場面転換とメタとネタ。もう少し若いときに読んでいたら、あまりにも鮮烈な夢想に打ちのめされていたかもしれない。

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2006-01-15

[][][]801 22:29 801 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 801 - 雲上読記 801 - 雲上読記 のブックマークコメント

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

町田康の書いた『ラス・マンチャス通信』」を西尾維新が代わりに書いてみました、とでも言うか。非常に幻視色、幻想色が強かった。しかし、秋山がそう感じたのは、やはり大正を感じさせる装丁やデザインに、画数の多い漢字が潰れてしまうことさえ辞さないほどの掠れさせているフォントに依るところが多いだろう。雑誌掲載時に読んだとしたら、ただ単に幻想小説の真似事かと思っただけだったかもしれない。

 最近になって幻想や不条理を何作か読み、それらに耐性がついていたので本書を読むのはそれほど苦でなかった。むしろ、西尾維新の新しい境地を感じさせたし、未だ幻想を完全にものにしていないがゆえに生じる、初々しく瑞々しい筆致を楽しむことさえできた。本書は西尾維新をキャラで読んでいる人には論外、幻想小説に馴染み深い人からすれば低レベルとなるだろうが、秋山は評価したいと思う。中々に面白かった。

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2006-01-10

[][][]793 14:16 793 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 793 - 雲上読記 793 - 雲上読記 のブックマークコメント

みんな元気。

みんな元気。

『新潮』に掲載された短編四編に書き下ろし一編を加えた短編集。「矢を止める五羽の梔鳥」と「スクールアタック・シンドローム」だけ既読だった。

 表題作「みんな元気。」を読んで、思わず引用したくなってしまうぐらい印象的な科白があった。

「家族なんて入れ替え可能だっつうの」

 衝撃的である。「みんな元気。」はその題名どおり、とにかく元気いっぱいしっちゃかめっちゃかな内容だった。全力で両腕を振り回しながら大爆走しているようなイメージ。家族愛が根底のテーマとしてあって、家族の代替から物語が始まって、終盤には複数の可能性が同時に存在する状況下において、どの可能性を選択するかと主人公が迫られる場面がある。ここでエグいのが、三人の夫の中からひとりを切り捨てた瞬間、その夫との間になしていた子どもが血を噴いて倒れる。がしかし、僅か数秒で彼らに対する愛が主人公の中から失われ、子どもは代替可能だったと明かされてしまうシーン。勿論、その直後にそれに対するアンチテーゼもあるのだが、いやはやエグかった。

「Dead for Good」「我が家のトトロ」「スクールアタック・シンドローム」は、それぞれそれなりに楽しめた。「我が家のトトロ」の『となりのトトロ』考察は中々、興味深く、あのアニメが子どもに与える影響を考えるとちょっと恐くもある。「スクールアタック・シンドローム」は『新潮』で読んだときも思ったが、やはり素晴らしい。問題は「矢を止める五羽の梔鳥」。初めて読んだときは何かの続き物かと思ったが、この本の中でも特に続き物として扱われていないので、単独作品であるようだ。それなのにこの難易度の高さは何だ? 再読だったが、今ひとつ分からなかった、残念。

[][][]794 20:35 794 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 794 - 雲上読記 794 - 雲上読記 のブックマークコメント

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

 舞城に引き続きブローティガンを読むと、何故だか、この世の色々なものが愛おしく思う。

 読んでいる間に感じたのは、男性的な包容力。包み込むような優しさや暖かさ、穏やかさを感じたのだが、それは母性的であったり女性的であったりするものではなく、もっと朴訥としていて、ときにぎこちなく、でもそれ故にやさしいもの。訳者あとがきでは、文体がかもし出す感覚的な柔らかみという意味で官能的だと評されていた。なるほどと感銘を受けた次第。

 リチャード・ブローティガンという作家を知ったのは、中央大学学術連盟文学会が主催した仲俣暁生氏の講演会の最後の質疑応答のとき。ある女子大生がブローティガンを卒論で取り扱おうとして云々と言っていて、そのときのやり取りが興味深かったので帰宅後に検索し、実際に読んでみたのだ。

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2006-01-06

[][][]792 16:58 792 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 792 - 雲上読記 792 - 雲上読記 のブックマークコメント

好き好き大好き超愛してる。

好き好き大好き超愛してる。

 かつてあんなにも読みづらくて、文字を追うのが苦痛で苦痛で仕方がなかった舞城王太郎が、まるで浅い海をすいすい泳ぐように読めてしまった。しかも面白かった。とは言え、相変わらず物語はよく分からなかった。愛をテーマにした掌編集的中編なのだろうか。『ベルカ、吠えないのか?』風に表現するならば、「愛よ、愛よ。お前はどこにいる」。冒頭の部分だけ読み返し、もしかしたら本当の主人公は、各掌編の中で描かれているどの主人公でもなく、ただ全ての主人公、全ての登場人物、世界の全ての人たちが幸せに暮らせるように祈っているのではないのかと。過去について祈り、それを物語化しているのではないかと気づいた。だとしたら……素晴らしいね。

 同時収録の「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は、雑誌掲載時に読んだのだが、舞城の短編作品の中では好きなほうなので再読しようとしたが断念。単純に文字が読みにくすぎる。ファウストと同じく、作品によって印刷用紙や書体を変えているのだが、表題作の「好き好き大好き超愛してる。」が行間を広く取っており読みやすく作られているのに対し、「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は逆にぎっしり詰め込まれていて、しかも文字がやや掠れていて、ギャップも作用してか読めなかった。編集は猛省すべき。

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2006-01-01

[][][]789 21:44 789 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 789 - 雲上読記 789 - 雲上読記 のブックマークコメント

 全12G一堂に会しての大会議。そしてTop-GとLow-Gの一対一×五。ヒロインとのエロシーンがあって、次に味方キャラがひとりずつそれぞれの問いに答えを出すかのように敵とタイマンでの戦闘。都市シリーズお馴染みの構造がようやくやってきて、前半の会議シーンも面白かったし、川上稔の本領発揮だった。唯一の不満はエロシーンだろうか。何だあの薄さはと。今回の主人公は、青江・正造に匹敵するエロさを持つ佐山・御言なのだ。それが! それが! あんなんでいいのかと小一時間問い詰めたい所存。しかも一組分しかないし。

 しかし、最後のあの卑怯な引きの前では、全てが薙ぎ倒され、許そうという気になってしまうからとても不思議。また、五の下巻に続き驚愕の新事実が明かされ、色々なことに決着がつきそうな気配がする。都市シリーズにおいて、人や吸血鬼が共存しておりそのことに何の違和感も抱いていない理由であるとか、新伯林の伝説であるとか、隻腕であるとか、剣であるとか、翼であるとか、槍であるとか……であるならば、何故、警部の正体はあれなのかとか、何故、炎を連想させる武器を戸田・命刻がではなくハジが持っているのかとか、もうありとあらゆる設定が秋山を引きつけて離さない。読み終えるまでは川上稔スレがとてもではなく恐くて読めないが、そこで展開されているあまりに濃くてあまりに深い考察が早く読みたいと、身体が欲して止まない。

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2005-12-17

[][][]781 10:39 781 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 781 - 雲上読記 781 - 雲上読記 のブックマークコメント

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

 秋山号泣。

 著者の小路幸也にはお会いしたことがあるのに、デビュー作の『空を見上げる古い歌を口ずさむ』しか読んでおらず、次にお会いできる機会に恵まれたときのために読んでおこうと手に取った。とても面白かった。心なしミステリ・フロンティアに多い気がする「ふたつの事件を平行して描き、最後に交錯する」という構造を用いているのだが、それはあまり成功していない。そもそも、事件の片方があまり面白くなく、謎も魅力的でないのでリーダビリティに欠けている。しかし、本書の主眼はあくまで、感動的なところと若い人向けに書かれているものだと思う。感動的であることはさておき、もっと若い読者に読んでもらいたいと思った。だって、作中に登場するある能力は、『ジョジョの奇妙な冒険』における使い勝手の悪いスタンドにしか思えないからだ。終盤、この能力が真価を発揮する場面は熱すぎる。ハーートビーーーート!!*1

 読了後に表紙を見返して、そこに注意して見ないと気づかないような書き込みを見つけてしまい、また涙がこぼれてしまった。

*1:こんな科白はない。

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