雲上読記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-02-07

[][]833 17:14 833 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 833 - 雲上読記 833 - 雲上読記 のブックマークコメント

誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

 昨年の半ば、鞘鉄トウさん(id:sayatou)がサイトで取り上げていて、山本タカトのある種、不気味とも言える表紙の魅力に取りつかれた。しかも本書は書き出しが凄い。

 推理小説に禁じ手などあるのだろうか。

 おそらく、ありはしない。

 面白ければそれでいい。

 なんて挑戦的なんだろうか。これはちょっとやそっとの自信がなければ書けないだろう。しかし、飛鳥部勝則の著作には必ず、知識の偏向した登場人物が己の知識をひけらかすようなシーンがあるらしく、それが苦手な秋山は、やや手を伸ばしづらかった。と、そうこうしているうちに盗作疑惑が書評系サイトを席巻し、原書房は本書を絶版にすると同時に回収を始めた。だが、そこで返って話題を呼び、売れてしまうのも皮肉な話だ。

 本編に関しては、まあ、面白かったかな。知識の披露は苦ではなかったが、それぞれの主張を叫びあうシーンには、やや嫌悪感を感じた。仕掛けられている「禁じ手」と作中作の外のトリックの両方も何処かで見たことのあるもので不満が残らないわけでもない。とは言え、ミステリをそう読んでいない人ならば、充分に驚ける範疇である。もう少し古ければ、驚愕を持って迎えられていたかもしれない作品。

(追記)盗作絶版回収に関して、やや間違っていました。詳細は以下をご覧ください。

http://mystery.adam.ne.jp/index.php?no=r28

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060207

2006-02-06

[][]830 13:14 830 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 830 - 雲上読記 830 - 雲上読記 のブックマークコメント

 桜坂洋の代表作であろうシリーズの一作目にしてデビュー作を読んでみた。このシリーズは後半になるほど面白いという評を聞いていたので、一作目は期待できないんだろうなあと思いながら読んでみたところ思っていたより面白かった。確かに、多くの人が言っているようにキャラ造詣は意図的にライトノベル風に作られていて気持ちが悪い。しかし、物語が進むにつれ違和感は少なくなってゆくし、まあ、面白く読めた。デウス・エクス・マキナの代替になっているのであろう、たらいの扱い方や、どう見ても2ちゃんねらーです本当にありがとうございました的なキャラなど、小ネタも面白かった。

[][]831 20:31 831 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 831 - 雲上読記 831 - 雲上読記 のブックマークコメント

 前作と比較してだいぶこじんまりとした印象を受けた。舞台は渋谷に限り、作中時間も半日に満たない。たった一日の事件を引き伸ばして長編に仕上げたような感じである。だからと言って、薄い訳ではない。各キャラクタもしっかり書かれているし、後書きで著者が悲鳴を挙げている恋愛要素もしっかりと機能しているように感じられた。と言うか……面白くなってる! 確かに一作目と二作目を連続して読んだら後者にこそ軍配を挙げたくなるだろう。この調子で上手くなっていくのだとしたら、最後の方は確かに面白くて仕方がないことになる。楽しみだ。

[][]832 22:44 832 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 832 - 雲上読記 832 - 雲上読記 のブックマークコメント

fの魔弾 (カッパノベルス)

fの魔弾 (カッパノベルス)

 装丁が『ゴーレムの檻』に似ていたので、幻想的な色合いを持つ作品かと思いきや、真っ当な本格ミステリで逆に焦ってしまった。いきなり射殺体の傍らで意識を取り戻すという謎の多い現在パートと、旧友の無実を証明すべく奔走する過去パートが交互に続くのだが、カットイン・カットバックの多用で物語世界に入りにくかった。過去パートも場所が目まぐるしく移り変わるので、事態を把握するのに時間が掛かってしまった。

 本格ミステリ的なお約束は、全て果たされておりその点においては満足できると思う。特筆したいのは、現在パートと過去パートが繋がる瞬間。熱すぎる。絶望的な密室が崩される瞬間が、本当に白熱するのだ。面白かった。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060206

2006-02-05

[][]827 01:21 827 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 827 - 雲上読記 827 - 雲上読記 のブックマークコメント

れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)

れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)

 素敵な日常の謎でした。

 東京創元社らしい、連作短編という形式を取っているのだけれど、人間の心の闇を抉るように描いているわけでも、最後まで読むと実は長編小説だったというわけでもなく、慎ましく、基本に忠実な作品だった。図書館が舞台というのも好印象。かつて図書館でバイトしていた秋山は、書店よりも図書館が好きで、特に本書の舞台になっている図書館は、地方の来訪者の少ない図書館で、その静けさが実に丁寧にさりげなく描かれていたように思う。

 続きが読みたいと思わせてくれる作品だった。

[][][]828 19:41 828 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 828 - 雲上読記 828 - 雲上読記 のブックマークコメント

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)

 最ッ高に面白かった!

 ホストクラブの女オーナーが店に舞い込むトラブルを、男の子たちと一緒に解決していく、ドラマ版IWGPみたいな連作短編なのだが、実に痛快で面白かった。展開自体は事件と遭遇して、捜査して、解決するというテンプレートに添っているのだが、そこで活躍する主人公やホストたちが活き活きと描かれているのだ。それもテレビでよく描かれるような、スーツで決めていたり、胸元をはだけているような男ではなく、DJやダンサーのような男の子なのだ。スーツの代わりにだぼだぼなパンクで身をかためたり、特技がキックボクシングやナンパであったり。そしてそんな中でひとり、王道派ホストスタイルを取る憂夜さんの正体が気になりまくり。もうとにかく面白かった。

 TBSは『夜王』なんてやってないで、早く加藤実秋とコンタクトを取って、本書をドラマ化すればいいのに強く思う。

[][]829 22:53 829 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 829 - 雲上読記 829 - 雲上読記 のブックマークコメント

蟲と眼球と殺菌消毒 (MF文庫J)

蟲と眼球と殺菌消毒 (MF文庫J)

 タイトルを「新本格残虐少女グリコ」に変えればいいと、読みながら思った。

 前作よりもコメディ分が減り、アクション分とシリアス分が増えたのではないだろうか。正直、もう少しお気楽に進めてほしい気がしないでもないが、そうしてしまうと他のシリーズとの分離が進まなくなってしまうので、現状のバランスがやはり正しいのかもしれない。

 敵を現してみたり、著者のシリーズ化させようという意識が端々に見えたので、一作限りの作品かと思いきや、意外に続くかもしれない。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060205

2006-02-04

[][]825 17:32 825 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 825 - 雲上読記 825 - 雲上読記 のブックマークコメント

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

 フェミニストが読んだらどう思うのだろうか、と思った。生まれてくる子どもはみな女性で、出産を経験した女性の四分の一が男性化するという世界で発生した、レイプ事件を描いたもの。

 石持浅海と言えば、複数人物が閉鎖空間に集まって、限られた証拠を手に事件の真相を喧々諤々と議論させる作品が多く、またその経緯が石持作品の魅力だが、本書は珍しいことに主人公の女子高生が探偵活動を行っていた。不思議な世界観と相まって、面白く読むことができたし、終章のもたらした衝撃は大きかった。舞台が現実世界ではないので、ある意味でファンタジィミステリやSFミステリと呼べるかもしれない。面白かった。

[][]826 23:34 826 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 826 - 雲上読記 826 - 雲上読記 のブックマークコメント

監督不行届 (Feelコミックス)

監督不行届 (Feelコミックス)

 んー、これは!

 残念ながら、思っていたほど面白くなかった! というのが本音。考えてみれば、庵野秀明という人物に特別な感情も印象も抱いていないし、安野モヨコも格別、好きな作家ではなかったというのが最大の間違いかもしれない。でも、同居人にオタクがいたら、こういう困った事態になるんだろうなあ、あはは的な笑いはありました。

 むしろ、ふたりの幸せな夫婦生活を、微笑ましく見守ってしまうような楽しみの方が多いです。幸せなんだなあ、と。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060204

2006-02-03

[][]821 00:04 821 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 821 - 雲上読記 821 - 雲上読記 のブックマークコメント

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

 秋山大爆笑。

 様々な方が本書について語るとき言葉を濁しているときに気づいた。まさか地雷なのではないか、と。もしそうならば、この秋山こそが読まなくてはならないだろう、と何故かそう思った。

 読了間際、明かされたあまりにもくだらないトリックに思わず噴出してしまった。最高である。一本取られたと言うか、一本取られたけどこれっぽっちも悔しくないと言うか。この手のバカミスは秋山が先に書きたかったと、むしろそういう意味で悔しい。あー、それにしても面白かった。笑った笑った。え、本編に関して? ううん、いいんじゃない!

[][]822 11:24 822 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 822 - 雲上読記 822 - 雲上読記 のブックマークコメント

ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

 面白かった。ミステリーランドの中では数少ない真っ当にミステリしていて、子ども向けに書かれている、骨のあるしっかりとした作品だった。冒険物ではなく探偵物であるのも好印象。伏線やトリックがきれいに機能していて、大人はもちろん子どもでもかなり満足のゆく作品。格別、いい話、という訳でもないので積極的に子どもに読ませたいわけではないけれど、完成度や満足度で言えば読ませたいなと思う。

 倉知淳を追っているファンへのサービスも、「巧いなあ、憎いなあ」という程度にあって、ファンなら必読だろう。

[][][]823 18:38 823 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 823 - 雲上読記 823 - 雲上読記 のブックマークコメント

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

 最高に面白かった。

 常野と呼ばれる人の姿をしていながら人ならざる力を持った一族をめぐる連作掌編集。常野という土地から来たから常野と言うのか、それとも「常に在野にあれ」という意味をこめて常野を名乗っているのか、それは明確ではないが、この不思議な一族は、一様に慎み深く穏やかで、読んでいて実に心地よい。収録されている十の掌編は、いずれも未完成で大河小説並の長さを誇る長編小説の一部を抜粋したかのよう……と言えば悪くないが、実際は断片的すぎて話にならない。設定を積み込みすぎで、常野というキーワードがなければとてもじゃないが一冊の本にまとめることは出来なかっただろう。と言うか、常野というキーワードで一冊にまとめているけれど、ちょっとこれはいかがなものかという気がしないでもない。それでも何故、本書が傑作かと言うと。

 本書が、萩尾望都ポーの一族』を彷彿とさせるからだ。

 社会の中に埋もれるように暮らそうとする常野一族。しかしその異能ゆえ、どうしても浮き彫りになってしまい、ときに人に狩られ、ときに人から逃げだし。それでもひっそりと生きながらえようとする。その生き方が実に素晴らしいのだ。『ベルカ、吠えないのか?』風に表現するならば「常野よ、常野よ。お前はどこにいる?」。

[][]824 22:04 824 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 824 - 雲上読記 824 - 雲上読記 のブックマークコメント

蒲公英草紙―常野物語

蒲公英草紙―常野物語

『光の帝国』に続く常野シリーズの第二作。読み始めてびっくり。まさか戦前の話だとは思わなかった。と言うか、うっかり三作目の『エンド・ゲーム』と内容を勘違いしていて、いつ話が現代に飛ぶのかと待ち構えてしまった。さらに常野一族の物語かと思いきや、常野一族は物語に彩りを与えている存在以上の価値はなく、むしろ桜庭一樹が書く小説のように、主人公と聡子というふたりの少女を巡る小説のように思われた。そういった訳で、とにかく意表を突かれた。

 話自体は及第点を越えるほどに面白かった。常野一族が読みたかった秋山としては、不満がないでもないが、やはりただの小説としてみれば十二分に面白いと言えるだろう。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060203

2006-02-02

[][]820 16:26 820 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 820 - 雲上読記 820 - 雲上読記 のブックマークコメント

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

 これは、どうしたものか。久々に感想に迷う本を読んだ。

 まず、ミステリとしては、いかがなものかと異議がある。自殺と判断された女性がいて、その友人たちが集まって、彼女がどのように死を選んだのか議論するのだが、そこに着目すると、ミステリの中でも実に悪趣味な部分が集まっている。加えて「ひょっとして、彼女は自殺したのではなく、殺されたのではないだろうか」という問いに発展しないのもミステリ的でない。登場人物が全て彼女の親友であるということを考えるとリアリティはあるが、ミステリ的にはどうだろうかと思うのだ。しかし自分で使っておいて何だが、このミステリ的という表現にも問題はある。本書は長編本格推理と銘打たれているが本当にミステリなのだろうか? そもそもミステリとは何だろうか?

 そういった話をここでするつもりはないが、もし、著者が本書をミステリとして書こうとしたならば、もっともっと短く出来たはずである。ネタだけを抽出すれば短編向きのものだからだ。しかし、敢えてここまで長くしたり、太宰治の『走れメロス』と関連付けたのは*1、著者に人の死や人の繋がりを真剣に考えようという意識があったからではないだろうか。

 ミステリとしては不満が残るが、小説としてはそうでもなかった。石持浅海の新しい境地を感じた。

*1:タイトルになっているセリヌンティウスとは、メロスの友人で彼の身代わりになった男の名前

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060202

2006-02-01

[][][]819 10:42 819 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 819 - 雲上読記 819 - 雲上読記 のブックマークコメント

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

 予想通り! 面白かった!!

 いやはや。正直なところ、何処の奈須きのこですか? それとも西尾維新ですか? もしくはうえお久光ですか? あるいは葉山透ですか? 的な世界観なのだが、他のどの作家が作った世界よりも、片山憲太郎のこの世界が一番しっくり来る。しかも読んでいて純粋に楽しい。キャラクタ小説としては極上の一言。どの女の子も可愛いし、緩急のつけ方も絶妙だし、『電波的な彼女』とのクロスオーバーもあるとのことで、あちらの二巻目以降も俄然、読みたくなってきた。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060201

2006-01-31

[][]816 00:47 816 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 816 - 雲上読記 816 - 雲上読記 のブックマークコメント

超妹大戦シスマゲドン (1) (ファミ通文庫)

超妹大戦シスマゲドン (1) (ファミ通文庫)

 高橋メソッドで作られた宣伝(http://www14.plala.or.jp/funore/tmethod/)を見たときから「どうして古橋は、あれとかあれとかあれの続きを書かず、こんなシリーズを始めてしまうのだろうか。これ、絶対、著者が古橋でなかったら駄作だよなあ」という嫌な予感があったのだが、的中するだけでなく貫通。著者が古橋でもこれは面白くない。酷い、酷すぎる。

 ただし、極めて自覚的に特撮好きを狙って作られた『デモンベイン』のファンは、楽しめること請け負い。また「わが妹エリカの流法はネコミミ!」という科白に込められた元ネタが両方とも分かるような、コアな趣味を持った人間も楽しめるだろう。

[][]817 17:30 817 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 817 - 雲上読記 817 - 雲上読記 のブックマークコメント

ぐるぐるまわるすべり台

ぐるぐるまわるすべり台

 1969年の男性で、文藝賞を受賞してデビュー、著作が二度芥川賞候補作に選ばれ、野間文芸新人賞を受賞。この経歴とセピア調の表紙で中身はだいたい類推できてしまうのではないだろうか。本読みの中での評判がそう高くなかったので、どんなものかと思って読んでみたら、想像していたよりかは面白かった。

 てっきり思春期の主人公が壁にぶちあたって……というような内容だと思っていたのだが、むしろ絲山秋子に近いような。読了後に、本書が『リレキショ』『夏休み』に続く「始まりの」三部作の完結編であることを知りショックを受けた。前二作もいずれ読みたいと思う。

[][]818 17:45 818 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 818 - 雲上読記 818 - 雲上読記 のブックマークコメント

安住の地 1 (BIC COMICS IKKI)

安住の地 1 (BIC COMICS IKKI)

ビリーバーズ』においてキーワードとされた「安住の地」がタイトルで、「みんな」や「リアルマン」など『ビリーバーズ』を訪仏とさせる語句はあるが、特に繋がりはないように思える。

 それにしてもエロシーン率が高い。山本直樹は何だかんだ言って騙したり、逸らしたり、誤魔化したりしているような気がするのだが、ここまでセックスばかりしているシリーズも珍しいのではないだろうか。うーん、面白かった、かな。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060131

2006-01-30

[][]815 15:13 815 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 815 - 雲上読記 815 - 雲上読記 のブックマークコメント

忘れ蝶のメモリー (講談社文庫)

忘れ蝶のメモリー (講談社文庫)

 さとるさん(id:jasper)が大好きな一作で、読ませてくださいと頼んだところ非常に嫌がられたけれど読了。

 村上春樹にファンタジィ色を濃くしたような内容と聞き及んでいたが、まさしくその通り(個人的には樋口有介に近い)。記憶を一日に二日分ずつ忘れていってしまう彼女は二十歳の誕生日に全ての記憶を失ってしまい、それは何と明日である! と裏表紙にあって、てっきり彼女の記憶の喪失を食い止める内容かと思いきや、そういう訳でもなく、進んでいるのかいないのか、よく分からないまま謎めく挿話を交えながらも進む冒険小説だった。「きっと昔の私は、あなたのそういういい加減そうなところが好きだったのかもしれないわね」という科白があるのだが、実際、いい加減とも言える軽妙なタッチが気に入るかどうかだろう。

 ちなみに秋山はと言えば、たいへんに気に入った。特に209ページ以降。『ぬ』に全力を注いだであろう浅暮三文を、ここからの数ページは軽く凌駕している。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060130

2006-01-29

[][]813 12:45 813 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 813 - 雲上読記 813 - 雲上読記 のブックマークコメント

うそつき―嘘をつくたびに眺めたくなる月 (新風舎文庫)

うそつき―嘘をつくたびに眺めたくなる月 (新風舎文庫)

 日日日の書く小説から面白い部分を抽出するとするならば、それは「キャラクタ」という一言に収斂される。その事実が克明に明かされてしまった一作。はっきり言って、本書は日日日著作の中では群を抜いて面白くない。恐らくその理由は、キャラクタの凡庸さが理由だろう。キャラクタに魅力がないだけで、こうも小説として面白くなくなるものかと驚愕した。

 思うに、この小説は一般小説として書かれたのではないだろうか。レーベル新風舎であることも少なからず影響しているかもしれない。故に、破天荒でいかにもライトノベル的なキャラクタ性は排されたのかもしれない。しかし、だとすれば本書はコバルトやホワイトハートにある良質な恋愛小説の足元にも及ばない。やはり、或いは、まだ。日日日ライトノベルという領域においてしか光り輝くことができない。

 ただ、このタイトルは日日日著作の中ではベストである。

[][][]814 20:21 814 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 814 - 雲上読記 814 - 雲上読記 のブックマークコメント

ビリーバーズ 1 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 1 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 2 (ビッグコミックススペシャル)

ビリーバーズ 2 (ビッグコミックススペシャル)

 何もかもが夢幻。何がリアルで何がアンリアルなのか、最早その区別をつける必要性すら感じさせず、だからと言って自分が望み自分の見る世界こそが本物の世界などという、程度の低いメタに落ちてしまっているわけでもない。これは虚構の中で、虚構性を認めつつも他者と共有できる現実に存在する世界を信じようとする物語だろう。

 それにしても暴力的であった。文字で埋め尽くされたコマや、惰性で延々と繰り返されるエロシーンに、唐突な場面転換とメタとネタ。もう少し若いときに読んでいたら、あまりにも鮮烈な夢想に打ちのめされていたかもしれない。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/sinden/20060129