2006-02-28
■ [小説][★][浅井ラボ]859


追憶の欠片―されど罪人は竜と踊る〈6〉 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 浅井ラボ,宮城
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/12
- メディア: 文庫
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『ザ・スニーカー』に掲載された四編に書き下ろし一編を加えた連作短編。
ついに面白い! と叫べるほどに面白くなってきた。
実にドラマと問題提起に溢れているのだ。今までのバトルシーンやアクションシーンは、難解な物事を力技で解決しようという雰囲気だったが、ここに来て戦うことに現実味が出てきた。と言うか、争いは悲しみと憎しみしか生まないのだね……。
また、普段はライトノベルを読まないSF読みの人が、このシリーズだけは読んでいて、ようやくその人がこのシリーズを追っている理由が分かった。アンドロイド問題や宗教問題、自己犠牲に戦争……SFかもしれない。
最高に気に入ったのは「覇者に捧ぐ禍唄」。特に94ページから105ページまでの展開が至上。その後の展開には思わず「なんてことだ……」と呟いてしまった。人はどうしてか弱く、不安を感じてしまう存在なのだろう。
■ [小説][★][浅井ラボ]860


まどろむように君と―されど罪人は竜と踊る〈7〉 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 浅井ラボ,宮城
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/06/30
- メディア: 文庫
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『ザ・スニーカー』に掲載された三編に書き下ろし二編を加えた連作短編。
前巻に引き続き、高いレベルの短編集。もうどの作品を取っても不満はない。持ち上げては落とし、持ち上げては落とし、持ち上げては落とす……と見せかけて幸福のままに終わったり。著者の掌の上で踊らされている感が否めないが、面白いのだから仕方がない。「黄金と泥の辺」には、あまりにもあんまりな結末に唇を噛み。「しあわせの後ろ姿」には、現実的過ぎる恋人の別れ方に身が引き裂かれる思いを感じ。「三本脚の椅子」には、芸術の門を敲くものの孤高と孤独を知り。「優しく哀しいくちびる」には、涙が出るほど大爆笑した挙句、279ページに感動して秋山号泣……までは行かなかった。秋山嗚咽、ぐらい。「翼の在り処」は、まあ、どうでもいいや。
刊行ペースを見ると、そろそろ八巻が出てもいい頃合い。楽しみだ。
■ [小説][高殿円]861


- 作者: 高殿円,エナミカツミ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2004/12
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主人公その他の内面描写にページを割きすぎているから、展開が冗長で、物語が遅々として進まない上に、一冊でひとつの物語が終わっていない。しかも前巻の引きを放り投げてるし……伏線を忘れないうちに続きを読もうと思ったけれど、これはもう四巻以降は読まないだろう。プルートとキサラがちょっとだけいいキャラだったけれど、物語を牽引する程の力は持っていない。残念。
■ [小説][★][支倉凍砂]862


- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/02
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今年の電撃小説大賞で銀賞を受賞。こんなに面白くて銀賞とは、今年の電撃大賞はどれだけレベルが高いんだ!
もうとにかく賢狼のホロが魅力的なのだ。狼耳を持った少女の姿に老獪な口調と、分かりやすくも捻った萌えを持っているのだけれど、そんな見せ掛けに頼らなくても十二分に魅力的(こう書くと『GOSICK』のヴィクトリカが連想されるが、ああ言った分かりやすいツンデレではない)。老いているが故に、非常に老練で頼りがいがあり自信に満ち溢れ、そして自分をいかに魅力的に見せるかも知り抜いているのだ。もう骨抜きにされざるを得ない。しかも、存分に賢狼として彼女を立たせた上で、長命な生き物につきものの孤独を描く。堪らないだろう、これは。
物語も悪くない。主人公が何の後ろ楯もない行商人であるため、明日には全財産を失っている可能性もあり、自らは攻撃に転じることができず、耐えず警戒していなくてはならないという緊張感が凄まじい。戦いのシーンもあるにはあるが、アクセント程度だし。面白かった。最後の一行で明かされるタイトルの真意も素敵だ。
難点を挙げるなら、前半と後半とでやや物語が有機的に繋がっていないのと、編集の力不足。誤字脱字誤用は目立つし、口絵にするべきでないシーンを口絵にしてしまっていたり、挿絵のタイミングもずれているように感じた。
■ [小説][三田誠]863


- 作者: 三田誠,双龍
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2004/12
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三田誠は複数のレーベルで複数のシリーズを展開しており、かなりの腕前を持ったライトノベル書きと見て手に取ってみたのだが、びっくりするほどステレオタイプなドタバタコメディで逆に驚いた。主人公はヘタレなのにモテ体質で、彼の身内は全員なんらかの能力を持っていて、変身すると強くなり、設定だけでお腹いっぱい。物語もステレオタイプにステレオタイプを重ねたもので残念。
一通り他のシリーズも読んでみようと思っていたけれど、とりあえず代表作であると思われる『レンタルマギカ』を見て検討したいと思う。
■ [小説][住本優]864


- 作者: 住本優,おおきぼん太
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2004/12
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第4回電撃hp短編小説賞の最終選考に残り、そこから連作短編でデビュー。あとがきを見る限りでは、本書と応募作はタイトルと世界観だけが共通しているらしいので、そのままではデビューさせられず、編集の手が入ったと言うことだろう。
舞台は戦争に投入させられるはずだった「遺伝子強化兵」という、17歳の夏までしか生きられない学生たちが生活する学園。線の細いイラストと相まって終末感が演出されているが、『ウィザーズ・ブレイン』や『アンダー・ラグ・ロッキング』と比較すると弱い。全体に世界観は悪くないが、感動物としてもキャラ物としても弱く今ひとつ。しかし、三巻まで出たところを見ると、上達しているのかもしれない。
■ [小説][倉知淳]865


- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09/06
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あまり評判が良くなかった作品だが、著者が倉知淳なので期待するようなしないような、曖昧な姿勢で臨んだところ、可もなく不可もなくといった具合に面白かった。
猫丸先輩シリーズとしては『日曜の夜は出たくない』『過ぎ行く風はみどり色』『幻獣遁走曲』『猫丸先輩の推測』に続く五作目(外伝として『ほうかご探偵隊』を取り上げてもいいかもしれない)。『メフィスト』に掲載された五編に書き下ろし一編を加えた短編集。主人公はバラバラだが、猫丸先輩なる謎の人物が探偵役を負っている点が共通している。語り口は「さすが倉知淳!」と叫んでしまう引き込ませるものだが、肝心のトリックが今ひとつ。いずれの短編においても謎が魅力的(毎朝ベランダに水の入ったペットボトルが置かれている、呼ばれたタクシーが次から次へとやってくる、など)なのに対し、トリックがちょっとこじつけや過ぎないかと首を傾げてしまうのだ。
なお、収録されている短編は、いずれも某ミステリ作品の題名をもじったもので、以下のページで苔丸さんが元ネタが推理されている。
■ [小説][七飯宏隆]866


- 作者: 七飯宏隆,池田陽介
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/06
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第11回電撃小説大賞の大賞受賞者による売れ線を狙ったであろうの一作目。古臭さを感じるイラストに古臭さを感じるロゴ、古橋秀之の『タツモリ家の食卓』みたいな感じかなあと読み出してみたら、そうでもなかった。基本は超能力系学園ドタバタコメディなのだが、そこは大賞受賞者の誇りか、ステレオタイプに陥ることなく、上手く新しい目の要素を取り入れている。具体的には『学校を出よう!』や『悪魔のミカタ』。メインヒロインであろう未麟は元より、アクの強い電波系キャラが何人も登場し、ぐいぐいと物語を引っ張っていくのがやはり魅力だろう。そして主人公が主人公とは思えないぐらい手抜きイラストで、その平凡っぷりが十全に発揮されているのが笑える。
しかし、最も味のあるイラストがイラストレーターの後書きとはいかに。
■ [小説][友桐夏]867


- 作者: 友桐夏,水上カオリ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/11
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実に評価に困る作品だ。仕掛け自体は中盤で気づけるのだが、最後まで読ませる力を持っているし、その見せ方も上手い。また、前作『白い花の舞い散る時間』を読んだときも思ったが、少女たちが随所随所で放つ科白の斬れ味が凄まじいのだ。「おめでとう。オリジナルはあなたのほうよ」なんて科白には二重の意味でドキリとさせられた。しかし、面白いかどうかと問われると素直に頷けない。近々、新刊が出るらしいので、それも読んでみたいとは思うが、あるいは秋山には向いていないの作家なのかもしれない。
■ [小説][★][綾守竜樹]868


- 作者: 綾守竜樹,しなのゆら
- 出版社/メーカー: キルタイムコミュニケーション
- 発売日: 2005/02/01
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えらい面白かった。
一ページ目から柳田國男を引用し、読者をサトリや座敷童が現実に存在する伝奇空間へと誘い、人間と妖怪の間に起こった問題を解決する鎮守府審神機構(さなどころ)の一等官*1である主人公に存在感と説得力を持たせているのだ。この世界観があれば、それなりのライトノベルはすぐに書けるだろう。雰囲気としては『腐り姫』や『朝霧の巫女』だろうか。最後の一行で明かされるタイトルの本当の意味も含め、とにかく世界観と語り口が素晴らしかった。
ジュブナイルポルノとしては、肉体的に痛々しいシーンが少ないのが好印象。全体的に羞恥系や焦らし系のSMプレイが多いだろうか。主人公が相手の心情を手に取るように理解できるサトリではあったが、露骨に感情移入するわけではなく、一歩離れた地点から冷静さを持って観察しているようなので、読んでいて気持ちが悪くはならなかった。ラストもなあなあで終わらせるのではなく、きっちり締めてくれたし、良作。
■ [漫画][★★][よしながふみ]869


- 作者: よしながふみ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2005/09/29
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お・も・し・ろ――――ッッ!!!!!!
『西洋骨董洋菓子店』がドラマ化されたこともあり、以前やっていたドラマ『大奥』の原作なのかと思っていたら、某氏に「違うよ、アッキー」と指摘されました。ドラマは全く関係なく、男女の比率が一対四だったらという、『BG、あるいは死せるカイニス』のような架空の世界における大奥を舞台とした漫画だった。つまり、ときの女将軍一人に対し美男三千人を集めた女人禁制の男の城が舞台なのだ!
一巻の大半は、巧みに世界観を描きつつ、水野という大奥入りした青年を主人公に、彼がいかに上様にお近づきになるかを描いている。これが、また妙にリアリティがあって面白い。問題は水野編とも言えるパートが終わり、主人公が徳川吉宗に移ってから。彼女はある慣習に疑問を唱える。どうして彼女は女の身でありながら男の名前を持ち、男のような格好をするのだろうか、と。この慣習に意味はあるのか、誰がこの慣習を作ったのか。もう、192ページからの4ページの展開が熱すぎる。まるで世界の謎に迫る謎ハンターではないか。ちょっともう二巻が楽しみで仕方がない。超絶面白かった。
■ [小説][小川一水]870


- 作者: 小川一水,長澤真
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 2005/07
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うーん、面白くない……。
列車を舞台にした小説は『TRAIN+TRAIN』『バッカーノ』『アリソン』とライトノベルでしか読んだことがなかったが、そのいずれも面白かった。限定的とは言え、閉鎖環境内で繰り広げられる人間ドラマと旅をしている感じが好印象。本書はどうかと言うと、今ひとつ。列車好きは楽しめるのであろうトリビアがちょっと多いのと、何処で盛り上がればいいのか今ひとつ分からない展開に、そして妙にライトノベルが意識されているキャラクタ作り。ローラインなんて、ツンデレのテンプレート。下巻に期待。
■ [小説][小川一水]871


- 作者: 小川一水,長澤真
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 2005/09
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残念ながら最後まで物語に入り込むことが出来なかった。と、言うか本書の在り方を勘違いしていた。結局のところ、表の主人公テオと裏の主人公キッツが主軸に、新しい国が出来るまでを描いたものなのかな。てっきりこのふたりに、ローラインとアルバートを加え四人を主人公に「一夏の」的な気軽な冒険小説が繰り広げられるのかと思いきや、よく分からない、もっと重々しい方向へと物語が流れてしまい首を傾げてしまった。なんだかなあ。
■ [その他][大森望][三村美衣]872


- 作者: 大森望,三村美衣
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2004/12/07
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想像していたのとはちょっと違っていた。めった斬りにしていると言うより、「ライトノベル30年史」と称し、ここ30年のライトノベルに繋がっていそうな作家や作者を、ふたりが思い思いに話し合っているというような感じに近い。楽しみ方としては、「ああ、こういう本があったねえ」と、二人の思い出語りに頷くことだろうか。秋山の場合、PART3の1990年代の半ばぐらいから、題名しか聞いてことのない本から読んだことの本の語りに変わったので、そこから楽しむことが出来た。
重宝すべきは1978年から1999年までのブックガイドではないだろうか。いかなる経緯を経て、現在のライトノベルに繋がっているか、その流れが見て取れる。
公式サイトにて各種データが公開されている。
■ [漫画][ヒロユキ]873


- 作者: ヒロユキ
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2005/12/26
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はっはーっ! くっ…………だらねええええ。だが、そこがいい! 大同人物語を劣化して劣化して、黒い萌えを追加して、しかし夕陽に向かって後ろ向きに全力でムーンウォーク! 何処から来たのか、何処へと行くのか、その名はドージンワーク! 全く持って分からない。がしかし。この秋山は全肯定する! それが俺のジャスティス!!
以下、著者本人による紹介ページ。
■ [小説][長森浩平]874


タイピングハイ! さみしがりやのイロハ (角川スニーカー文庫)
- 作者: 長森浩平,橘りうた
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10/29
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第9回スニーカー大賞で優秀賞を受賞した作品。
表紙と口絵を見て外れだと確信したが、ライトノベルにおいては作風とイラストが一致していないことは往々にしてありうるので、一応、読んでみた……がしかし、やっぱり外れだった。何処のエロゲー好きの妄想垂れ流しかと、小一時間問い詰めたい。頭のゆるいヒロインが登場するようなエロゲーを選考委員がやっていないから、新しいと錯覚して選んでしまうのか。久しぶりの壁本。酷すぎる。
(追記)……と思っていたのだが、『このライトノベルがすごい!2006』のレビューや、タニグチリウイチさんの評を読むと、良作のように思える。秋山の読み込みが足りなかったのかも……いや、でもなあ……うーん。
■ [その他]875


- 作者: 『このミステリーがすごい!』編集部
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2005/11/26
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2004年10月1日~2005年9月30日に刊行された作品を対象に行った2005年度版のランキング。作品・シリーズとしてのランキングの他に、男性/女性キャラクター部門や、くまざわ書店グループとコミックとらのあなの売り上げランキングなども発表。
個人的に良かったデータは2004年~2005年に発表された17の新人賞と刊行された45の受賞作を紹介している点。その年の新人を読みたい人には、かなり便利だろう。次いで、ジャンル別にカテゴライズされた196作のレビューからなるブックガイドも、読みたい本を探している人には便利。他には、まあ、よくあるアンケートやコラムなど。
■ [小説][★][高田崇史]876


- 作者: 高田崇史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03/08
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『メフィスト』に掲載された五編に書き下ろし一編を加えた連作短編。シリーズ四作目。三編既読だった。
うーん、堪能した。
心なしレベルが下がっている気がしないでもないけれど、このシリーズはやはり落ち着くね。パズルや謎々、机上で楽しむ頭を使うゲームを物語に絡めてしまう、日常の謎の亜流。ちょっと頭を使う系のパズルが大好きな秋山としては、随所随所で出題される問題に、つい読む手を休めて頭を捻ってしまう。答えが出せたときは微笑んで、出せなかったときは巻末の解答を見て膝を打つ。いやあ、善哉善哉。
また、ここに来てぴいくんの本名にまつわるヒントが大放出されている。どうしても気になる人は、「ぴいくんand本名」でググれば出てくるだろう。本当だよ。
■ [漫画][荒井チェリー]877


三者三葉 (1) (まんがタイムKRコミックス) (まんがタイムきららコミックス)
- 作者: 荒井チェリー
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2004/06/28
- メディア: コミック
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四コマ。つまらないわけではないけれど、秋山向きではなかった。常時ハイテンションで大食い・食べるものにも困っている一人暮らしの元お嬢様・委員長ルックだけれど腹ドス黒い、この三人が主な登場人物なのだが、大抵は腹黒委員長がブラックに落とすので、読んでいて素直に笑えない。絵、と言うか間の取り方もちょっと微妙だし。しかしまあ、及第点は越えているレベルだとは思う。
(追記)そう言えば、この作品は四コマの頭にタイトルがついていない。普通は四コマ部分の上にタイトルがあって、四コマを読み終わり、くすっと笑ってから、タイトルを見て「おお、なるほど」と頷いたりするのだが、最初のうちはタイトルがないので肩透かしを食らったように気分になる。
■ [漫画][高津カリノ]878『WORKING!! 1』


- 作者: 高津カリノ
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: コミック
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各所で面白いと評判だったので読んでみたが、期待しすぎて読んでしまったためか、もしくは秋山にファミレスでのバイト経験があったためか、想像していたほど面白くはなかった。残念。
レベル自体は高いと思う。ただ、笑いのポイントがロリであったり百合であったり刀であったりするので、そういうちょっとずれているのが好きな人向けと言えるだろう。四コマの中では、それなりに難易度が高い方だろう。したがって、ワンパターンな落ちに飽き気味な人ほど面白く読めるのかもしれない。
著者のサイトでは内容は全く別物だが、同名のファミレス四コマ漫画が連載されている。雰囲気は似ているような似ていないような。
■ [小説][★][道尾秀介]879『向日葵の咲かない夏』


- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11
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絶句。
なるほど、確かに本書は凄まじい。一部のコアなミステリファンが注目するのも道理。
雰囲気は麻耶雄嵩『神様ゲーム』を読んだときに感じたものに近い。何処か捻くれた、暑い夏の夕暮れと夜の狭間、実に不気味で居心地の悪い黄昏時が全編を覆い尽くしているような感じだ。描写そのものはふつうでも、次の瞬間に、実に嫌な、神経を逆なでするような、否応なく生理的嫌悪感を催させるシーンが待ち受けているのではないかという、嫌な予感が始終つきまとうのだ。
問題は結末だ。何だろうこの、舞城王太郎と乾くるみを足して二で割ったような邪悪な結末は! 救いも望みもないわけではなく、それがあるかどうかすら分からないのだ。ああ、気持ちが悪かった。寒気がする。しばらくは悪夢を見るのではないだろうか。節足動物にも近寄れなくなりそうだ。ぐええ。
■ [小説][かたやま和華]880『楓の剣!』


- 作者: かたやま和華,梶山ミカ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/01/07
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第5回富士見ミステリー文庫大賞佳作受賞作。
今年は大賞がなく、佳作が一つに奨励賞が二つ、最終選考作が三つと、何とも微妙なラインナップに加え、一番、面白いであろう佳作の本書も今ひとつな評判で戦々恐々と読んだのだが、意外や意外、面白かった。……期待値が低かったせいかもしれないが。
特筆すべきは100ページから始まる、主人公と幼馴染の婚約者の修羅場だろう。デレの殆どないツン同士の喧嘩! なんて、リアリティ溢れる「強情VS意地っ張りの図」だろうかと読んでいて膝を乱打してしまった。物語自体はテンプレに添って進むので先の先の先まで読めてしまうお約束の嵐なのだが、爽快感はある。主人公が強すぎないというのも好印象。もう主人公が最強で、覚醒しさえすればボスを倒せるというのはうんざり。中々、面白かった。
■ [小説][真嶋磨言]881『憂鬱アンドロイド』


- 作者: 真嶋磨言,珈琲
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/05
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第11回電撃小説大賞最終選考作。
四編の短編から構成されている連作短編。シリーズとしての主人公は表紙に描かれているふたりだろうが、短編ごとに主人公は異なる。それぞれに悩みを抱えた主人公が、アンドロイドと人間のふたりに出会い、光を見出すような感動物。
全体的に若いなあという印象が拭えない。悩みもそれに対する回答も陳腐、そして安易。けれど、全編に漂っている明るいとも暗いとも言えない中立の雰囲気は著者独自のものだし、「戯言だけどね」ぐらいのニュアンスで「ぼくはアンドロイドだから」と繰り返す少年に、「君は充分に人間だよ」と答えてあげる少女が身近にいるという設定はかなり落ち着く。イラストはいいし、化ける可能性も大有りなので続きを読もうと決めたのだが、なんとこの著者、デビュー作を出したまま沈黙してしまっている。電撃なのにも関わらず続きが出ないということは、相当、売れなかったのだろうか。残念極まりない。
■ [小説][小林めぐみ]882『食卓にビールを3』


- 作者: 小林めぐみ,剣康之
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2005/02
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いやあ、面白かったなあ。
脱力系日常SFのシリーズ三作目。ファンタジアバトルロイヤルに掲載された二編に書き下ろし六編を加えた連作短編。このシリーズの一作目を読んだときは、何処がSFなのか、何が面白いのかあまり分からなかったが、つまり、この何処までも続くゆるーやかで、おだーやかで、ここちよーいテンションを楽しむ作品なのだと気づいた。それに各所に散りばめられている小ネタらしきものは、きっとSFファンなら分かるものなのだろう。こういう小説が書きたい!
■ [小説][小林めぐみ]882『食卓にビールを4』


- 作者: 小林めぐみ,剣康之
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2005/09
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ファンタジアバトルロイヤルに掲載された四編に書き下ろし四編を加えた連作短編。
思ったのだが、いわゆるSF女子(今、考えた)は日々こういった妄想を展開しているのではないだろうか。BL回路を内臓している人が、可愛らしい男の子が手を繋いでるのを見たり、秋山真琴×スズキトモユと聞いてコーヒー吹くように、SF回路を内臓している人は、どうってことのない日常からSF現象を連想したり空想するのではないだろうか。とかなんとか。
■ [小説][長谷川昌史]883『ひかりのまち』


- 作者: 長谷川昌史,Nino
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/02
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第11回電撃小説大賞金賞受賞作。
ファザコンとブラコン、そして童貞卒業。中村航の単行本のような表紙から、青春物をイメージしていたのだが少し違った。文章自体はけして下手ではないのだが、著者の自意識が随所随所で見えて、やや気持ちが悪いのだ。後書きや著者紹介も少し痛々しいし。と言うか、村上チルドレンなのではないだろうか。よく電撃からデビュー出来たと思う。それぐらいライトノベル離れしている。そもそも、父親が登場したり、初体験を描いてしまう作品が少ないし。二巻も出ているようだが、手を伸ばすのはやや躊躇われる。
■ [小説][西野かつみ]884『かのこん』


- 作者: 西野かつみ,狐印
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2005/10
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第1回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。「彼女はごんきつね」を略して「かのこん」だと思ったが、応募時のタイトルが「彼女はこん、とかわいく咳をして」だそうなので、それを略したのかもしれない。
いわゆるドタバタ系ラブコメ。転校初日に美人の狐ッ娘に見初められ、キスすると同化して強くなるという典型的な変身物。ヒロインの源ちずるがデレのみであったり、主人公が地名的なほど鈍感ではないので、何とか読むことができたが、他のキャラクタはことごとくが魅力的でない。ストーリーテリングは上手いけれど、キャラクタ作りが今ひとつだった。
■ [小説][★][石持浅海]885『アイルランドの薔薇』


- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/09/10
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石持浅海という作家について秋山が持っているイメージは、『月の扉』でミステリファンにその名を知られ、『扉は閉ざされたまま』で一躍、有名になったという感じだ。本書は彼の初期の作品で、アイルランドのとあるB&B(いわゆる庶民向けホテル。ベッドと朝食だけを提供する)が舞台で、登場人物は全員カタカナ名で、やや社会派であるという評を聞いて、どうも手が伸びなかった。しかし、ミステリ読みとしてやはり読んでおかなければならないだろうという、謎めいた強迫観念に晒され読んでみたのだが、――面白かった!
確かに登場人物の名前はカタカナで覚えにくく辛かった。北アイルランドと南アイルランドの政治的要素が絡んできて、理解しにくい部分もある。がしかし! この舞台設定と人間ドラマは秀逸過ぎだろう! 悲しいかな、背景が込み入っていて、それを説明できるほど秋山は理解できなかった。したがってこの場では、とにかく面白いのだと連呼することしかできないのが悔やまれる。面白かった面白かった面白かった、ふう。
これで石持作品はデビュー作の『暗い箱の中で』を除いて全部読んだことになる。長編だけで順位をつけるならば『水の迷宮』→『アイルランドの薔薇』→『月の扉』→『扉は閉ざされたまま』→『BG、あるいは死せるカイニス』→『セリヌンティウスの舟』かな。
*1:さなどころのいっとうかん、略して審神官=さないち