2006-01-18
■ [小説][恩田陸]803


- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2004/06/11
- メディア: 単行本
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東京郊外の大型商業施設で発生したとある事故(事件?)を巡る質疑応答集。質問とそれに対する答え、つまり会話だけで構成されているような小説。「これぞ小説! 質問と答え(Q&A)だけで物語が進行する、リアルでシリアスなドラマ。謎が謎を呼ぶ〈恩田陸ワールド〉の真骨頂。」と壮大な売り文句が帯に書かれていて、逃げ惑う人々のイラストと共に目を引く。ネットに目を転じたら、抜群の宣伝効果により多くの人が手に取ったらしいが、結末に不満という声が一様にして見受けられた。しかし、会話の中に謎が生まれたり、その場の場景が想像できたり、読んでいる間は楽しめるだろうと判断して最後まで読んでみた。
結論として、この結末で良かった。読み始める前は、ひとりの人物に対しインタビューをするだけだと思っていたが、実際は複数の人にインタビューをしていたし、インタビュー以外のQ&Aも後半になるにつれ増えていった。中盤まで読んでいて感じたのは、これが戸梶圭太のように悪趣味な笑いや悪意を描いたものではないかという嫌な予感。幸い、この予感は外れた。悪趣味であることには変わりないが、悪意はなかったというように思う。また、そうでなくともこの結末は、この質問と答えを取り扱った作品に相応しいように思う。会話文だけしかないという、不自然な形式が、最後の最後で生まれる物語に絶妙に絡み付いている。
■ [小説][東野圭吾]804


- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/01/17
- メディア: 文庫
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shakaさん(id:shaka)が東野作品の中では随一とおっしゃっていて、貸してくださったので読むことに。秋山は他人の悪意を苦手とする人間なので、推薦がなければ、まずタイトルに負けてしまい手を出さなかっただろう。読んでいる最中も嫌な予感は付きまとっていたが、最終的に不条理さや無意味感はなく、悪意という人間の持つ感情に真っ向から立ち向かっているように思えた。
構造からして、法月綸太郎『頼子のために』を連想してしまい、それを頭に思い浮かべたまま読み進めたのだが、いい意味でミスリードになった。裏表紙に「超一流のフー&ホワイダニット」とあったが確かにその通り。この動機は『姑獲鳥の夏』や『すべてがFになる』でミステリ読者に投げられた「描かれている動機(あるいは描かれていない動機)」に対する答えなのかもしれない。