雲上読記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-01-02 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

美女 (集英社文庫)

美女 (集英社文庫)

 初連城三紀彦

 十年近く前に刊行されたミステリ仕立ての短編集。そのあまりの完成度の高さに、政宗さんが絶賛した(id:mmmichy:20050927)ところ、いくつもの名うて書評系サイトがそれぞれに取り上げてやはり褒め称えた(id:mmmichy:20051028)。これが、いわゆる政宗効果と呼ばれるもの。秋山も遅ればせながら読んでみた。

 いや、素晴らしかった。秋山のひとつ上の世代の読書家曰く、その年代のミステリ読みにとって連城は絶対に通過する作者で、彼が今の若い人たちにまで届いていないのはおかしいとのこと。確かに、一読して納得。西澤保彦東野圭吾長編でやろうとしていることを、悠々と短編で成し遂げてしまっているのだ。ページを捲った次の瞬間、いかなる展開が待ち受けているか全く想像できず(してもいい意味で裏切られるから)予断を許さない。眠いときや頭が働いていないときなど、迂闊に読むと確実にしっぺ返しをくらうだろう。しかも文章が巧いのだ。もう、それはとにもかくにも巧い。惚れ惚れするぐらいに巧い。巧すぎると言っても差し支えない。

 気に入ったのは「他人たち」。十年も前にこんな作品が世に出されていたというのが既にしてひとつの脅威。そして「喜劇女優」。これは次のページどころか、次の行の展開すら読者の想像を絶している。いや、全くもって凄まじい小説を読んでしまった。これは『戻り川心中』も読まなくてはならないだろう。

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