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2005-01-01513-524

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頼子のために (講談社文庫)

頼子のために (講談社文庫)

 一読して「なるほど、これが」と溜息をついた。

 ミステリだけでなく、ミステリの評論や解説を読んでいると、あの人は密室物ばかり書くだとか、あの人は叙述物ばかり書くだとか、その作家の作品を読んでいないのに知るはめになってしまう。そうした具合で、法月綸太郎がどういう系統の作品を多く書いているのか、どういう系統の作品を得手としているのか、知ってはいたが、具体的にそういった作品を読むには至らなかった。今までは。

 なるほど、この作品が法月綸太郎の真髄なのか。

 本書はある男の手記から始まる。その手記を書いた男は、十七歳の愛娘を殺され、娘を殺した男に復讐することを誓う。ある事情から警察を信用しないと決めた彼は、独自に推理を進め、ついに犯人に至り、鉄槌を下してしまう。しかる後に彼は服毒し、自殺を図る。しかし寸前のところで、彼は救われ生き返ってしまう。意識を失ってはいるが、もう危険な状態は脱し、数日後には目覚めるだろうと医師が判断したところで、名探偵法月綸太郎に依頼が舞い込む。この事件を洗いなおして欲しい、と。

 とにかく物語が魅力的なのだ。インパクトのある書き出しから、法月綸太郎ハードボイルドな私立探偵並に歩き回るところまで。新本格にありがちな、突飛で、現実味の薄い机上の推理を繰り返すのではなく、地道に歩き回って証拠をかき集め、その最中、えたいの知れない人物が浮かび上がり、走り回っているうちに誘拐され、とにかくイベントに富んでおり、話が躍動感に満ち溢れているのだ。ただ、純粋に面白い。そしてラスト。ラストも冴え渡っている。ついに意識の戻った男との対面、その直後……。ラスト二ページを読んで、即座に本につけていたカバーを外し、表紙絵を見る。「ああっ、ここにちゃんとあるじゃないか! しかもカバーデザイン辰巳四郎だし!」完璧に完璧に、これ以上はないという見事さで、本書は一個の物語として完結している。本当に素晴らしい。いやあ、上手いなあ。『誰彼』も良かったけど、『頼子のために』もいいなあ。法月綸太郎、格好いいなあ。うん、面白かった。

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