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2004-10-01455-482

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イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

 震撼した、何なんだこれは――!!

 帯には次のような挑戦文が編集部から送られている。

「今年最大の“問題作”かもしれません/ぜひ、2度読まれることをお勧めします。

 目次から仕掛けられた大胆な罠、全編にわたる絶妙な伏線そして最後に明かされる真相――80's苦くてくすぐった恋愛ドラマはそこですべてがくつがえり、2度目にはまったく違った物語が見えてくる」

 問題作、その名の通り本書はネットにおけるミステリファンの間でちょっとした物議をかもした。本書を手放しで大絶賛する声から、正直わけが分からなかったという声まで。自分はその評判を見聞きする最中、誤って「最後の二行までは普通の恋愛小説なんだけれど、最後の二行を読んだ途端、本書が普通の恋愛小説ではないことに気付く(……)つまりヒロインは二股を掛けていたってことなんだけれど、それにしても女性は恐い」というような評を読んでしまった。読んでしまった途端、ガックリ来たが、真に傑作と呼ぶに相応しい作品はネタバレさせてもその真価を全く損なわない、という持論を持っている自分は恐る恐る手を出してみた。読んでみて分かったが、確かに帯にある通り、80年代を予期させる苦くてくすぐった恋愛ドラマである。王道の常道を行き、定石を打ちこれ以上はないというぐらいに冗長に普通の恋愛が進む。はっきり言って、これの何処が傑作なのかと、これの何処が問題作なのかと悔やむ気持ちを抱えつつ読み進めた。――が、最後の二行に至り震撼した、何なんだこれは――!!

 小説内世界を認識し、頭の中に構築していた物語がその瞬間、完全に瓦解した。まるでこの世のものとは思えない秘剣を受け、自分でも知らないうちに斬られていたことに、本書を読み終えてはじめて気がついたと言わんばかりの衝撃である。完敗した。ネタバレされていたにも関わらずこの衝撃である、果たして帯を目にせず本書が問題作であることを知らず、巧妙に張り巡らされた伏線に気付かず、作者のミスディレクションにまんまと嵌められた読者は、最後まで本書が普通の恋愛小説だと思って、その本性に気付かずに通過してしまうのではないだろうかと危惧してしまうぐらいの斬れ味である。

 読了するや否や自分は本書を放り出すと、コンピュータを立ち上げ書評Wikiアクセスし、登録されているレビュー群に端から目を通していった。ネタバレしているレビューの中で特に優れていたのは、氷川透のもの。ほぼ全ての謎とそれに対する解が明らかにされている。謎の大半が、恥ずかしながら自分には全く見抜けなかったもので「ああそう言えば、そんな記述もあったかな」ぐらいのものであった。

 しかし、それにしても素晴らしい。張られていた伏線を把握したく、それらの前後を再読したのだが、本当にさりげなく、巧妙に張られている。しかも、それらひとつひとつが自分の中に入ってくるたびに、本書の評価がどんどんと上がってしまうのだ。それと同時に本書が持っている悪辣さも浮かんでくる。いや、まっこと恐ろしい。

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