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2004-09-01437-454

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イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

 直木賞を受賞した『空中ブランコ』の前作となる、伊良部シリーズの一作目。本書も直木賞候補には挙げられたが、受賞はしなかった。オムニバス形式の短編集。毎回、一風変わった妙な病気を抱えた主人公たちが、伊良部総合病院の神経科の扉を叩くところから物語が始まり、伊良部によるとんでもない治療を経て、無事に完治するというのが基本的な構成。読みどころとなるのは、妙すぎる病を抱え心底、困り果ててしまっている主人公たちと、そんな彼らに接する伊良部の開き直った態度だろうか。テーマ自体は、ひょっとしたら真剣なものを取り扱っているのかもしれないが、筆致があまりに馬鹿らしく滑稽で、それが不思議な面白さを産んでいる。そう、本書を一言で形容すれば「面白い」に尽きる。

イン・ザ・プール」標題作となっている一編、身体の調子が悪くなり、それを克服するために運動……スイミングを始めた男の物語。初っ端からぶっ飛んでいる。傍目に見ても、泳ぐことに没頭するあまり、生活や人生がズタボロになっているのに、伊良部はそれを止めるどころか自らも水泳に嵌まり、主人公にそれを推奨してしまっているし。「なんなんだこれは」とはこのシリーズのためにある言葉か。

「勃ちっ放し」下品な題名ではあるが、内容を十全に表しているという点ではこれ以上にないタイトル。持続勃起症になってしまった男性が、どうにかして同僚の目を誤魔化したり、思いつく限りの工夫をして問題を回避していくのが面白い。他人事ではない。

コンパニオン」いもしないストーカーを感じ、重度の被害妄想に悩む女性が主人公。これは中々、面白かった。映画2LDK』が好きな人には、堪らなくお勧めな一作。素晴らしい。

フレンズ」これも素晴らしい。ケータイを手放せなくなり、一日に何百通も送らなくてはならない少年が主人公。色々と努力しているわりに友達とは上辺だけの付き合いだったり、目当ての女の子には歯牙にも掛けられず、ちょっと可哀想ではある。歪んではいるものの、努力をしている点は頑張っていると思うし、けして悪くはないと思う、辛いが。

「いてもたっても」煙草はちゃんと消してきたか、ガス栓はキッチリ閉めてきたか。家のことが気になっていてもたってもいられない男性が主人公。慌ただしい気配は伝わってくるものの、それは完全な杞憂なわけで、失笑が絶えない。この作品が本書に収録されている最後の作品なのだが、最後にちょっとした逆転があって、上手く締められていると思った。

 全体的にとにかく面白いのだ。基本的にはストレスを感じ、病というかたちになって現われ、ストレスが解消され病気がなおるというパターンなのだが、そのパターンをまるで感じさせないレベルの高い作りになっている。実に読後感が爽快である。

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