雲上読記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2004-09-01437-454

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 村上春樹リスペクトしている官能小説家による恋愛小説――『ノルウェイの森トリビュート小説東京町田にある大学四年生の主人公は、他の学生たちのように怠惰な生活を過ごすことはできなかった。かと言って、真面目に就職活動する気も起きず、どうしようもなく中途半端で宙ぶらりんな生活を送っていた。そんな中、彼女は学生寮の二〇九号室にカフェバーを作ってしまった、年下のヒロくんと出会う。意味深な言葉を呟くヒロくんには、二股を掛けていたことが発覚し自殺してしまった彼女がいたという噂があり、その真偽を疑いながらも、彼女はヒロくんに惹かれていってしまう。

 これは傑作、素晴らしい。一人称文体で語られるのだが、ヒロくんがとても魅力溢れる男性として描かれているのだ。非常に好印象で、裏表のない、夢を持ちそれを一生懸命に追いかけていて、つい応援し傍で励ましてあげたくなるような、年下なのにしっかりしていて頼れてしまう人物なのだ。これは惚れない訳がない。彼の詩的な科白、意味深な科白、一挙手一投足が魅力に溢れているのだ――が、問題は終盤。ヒロくんのあざとさや、いかに主人公を裏切っていたかが凄まじい勢いで暴露されてゆくのだ。そして当然のように訪れる破局。それも主人公の精神世界を崩壊させ、世界を引っくり返し、読者をも巻き込んで――それこそ「嘘! ヒロくんがそんな酷い男性だなんて、信じられない! 私はここに書いてあることより、ヒロくんを信じる」などと叫んでしまうぐらいに真に迫っているのだ。やがてヒロくんと別れたことによるショックから立ち直り、見事に自活を始める主人公……それもヒロくんとの恋愛を描いた小説家として。

 とにかく展開と人物の内面を描く力、そして構造が上手すぎる。上のははっきり言ってネタバレもいいところだが。ネタバレされた上でも十二分に楽しめる。傑作中の傑作。

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