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2004-09-01437-454

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ライオンハート (新潮文庫)

ライオンハート (新潮文庫)

 17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀パナマフロリダ。時空を超え、幾たびも巡り会ってはまた別れを繰り返す恋人の物語。「エアハート嬢の到着」「春」「イヴァンチッツェの思い出」「天球のハーモニー」「記憶」の五編からなる連作短編で、それぞれ同名のイラストが扉絵に配されている……と言うか、恐らくは著者が好きな絵を見ながら着想を得たり、絵を題材にして物語を構想したのだろうと思われる。輪廻転生の時間もので、結ばれない恋愛とすれ違いという、これ以上は望むべくもない魅力的なテーマを取り扱っているのだけれど、十全に楽しむことができなかったと言うのが正直な感想。恩田陸の著作を読むのは『六番目の小夜子』に続き、これが二冊目になるが、多分、次に読む恩田陸も、その作品世界に浸れないだろうと予感する。

 相性の問題だろうか。取り扱っているテーマも、特異な発想も、外装に関して言えば何もかもが自分の趣味とぴったり合致するのだ。しかし実際に読んでみると、どうもしっくりこない、何かが足りないように感じてしまう。掴みとして充分な「エアハート嬢の到着」、二重の虹という幻想的なシーンにラストの驚きを持っている「春」、思い入れのあり大好きな絵を使った「イヴァンチッツェの思い出」、思わず震えてしまった「天球のハーモニー」、ようやく結ばれたふたりを祝福すると同時にエピローグに深く溜息をついてしまった「記憶」。いずれも素晴らしいことには素晴らしいのだが、何故か「素晴らしい!」と声を大にして賞賛するには、はばかれる。

 いずれ。恩田陸作品を十全に楽しめる日が来ることを、願って止まない。

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