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2004-08-01420-436

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霧舎巧 傑作短編集 (講談社ノベルス)

霧舎巧 傑作短編集 (講談社ノベルス)

 アンソロジィや雑誌に掲載された作品五編に一編の書き下ろしを加えた短編集。御手洗潔のパスティーシュとして書かれた「動物園密室」以外は、すべて《あかずの扉》シリーズの登場人物が登場しており、霧舎巧の彼らへの愛が感じられる。また霧舎は、よく分からないキャラ作りが注目されがちで、その本格指向が薄れがちだが、短編という形式においては、その短さゆえにミステリとして優れているのが分かる。

「手首を持ち歩く男」これは構成が面白い。犯行状況を描いたものをプロローグに配しており、それと全く同じ内容をエピローグにまた書いているのだけれど、本編を読む前と読んだ後とで、同じはずの描写がまるで違って見える。

紫陽花物語」これは今ひとつ。

動物園密室」これも今ひとつ……だと思っていたら最後のページで全ての評価が逆転。あとがきに、この作品は《意外な凶器》が隠しテーマですと書いてあったが、確かにこの凶器は凄まじい。ミステリの危険な魅力が最大限に発揮されていると思う。

「まだらの紐、再び」これは面白いと思った。『まだらの紐』を未読なので完全に楽しめているとは言いがたいが、ミステリとして謎も魅力的だし……と言うか密室大好き人間として、幾つかある脱出経路がひとつずつ潰されていく場面は、非常に楽しく読める。落ちも素晴らしかった。

「月の光の輝く夜に」これは異色。霧舎とは思えないほど幻想的で少女小説風味。途中まで面白かったので、最後の最後までこれを保ってほしいと思っていたら、ばっちり保ってくれたのが良かった。月を題材に挙げており、本当に美しく、本人の許可が得られれば、この一編を抜きだして完璧にデザインを仕上げて一冊、本を作ってしまいたい。

クリスマスの約束」創元推理的とでも言うか、これまでの短編は実は伏線に過ぎなかったというような作品。「月の光の輝く夜に」にも言及しているのだけれど、これは蛇足。とは言え、この謎解きが「月の光の輝く夜に」とは別に書かれている点はいいと思う。最後の落ちも悪くなく、もう《あかずの扉》シリーズの続きが出ることはないのかもしれないなと思った。

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