雲上読記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2004-07-01397-419

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鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)

鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)

 見晴は夏休みが明けると同時に遠く離れた、友達のいない土地に転校しなければならない。残された僅かな猶予期間、彼は近所の鉄塔に「武蔵野線75-1」と書かれた番号札を見つける。――オレたちは鉄塔を辿っていけば、絶対に秘密の原子力発電所まで行けるんだ。二歳下の友人を誘い、彼は家を遠く離れ武蔵野線を遡っていく。

 第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。あらすじを読んでも絶対にファンタジィだと思えなかったが、読み終えたら分かる。なるほど、確かにアドベンチャしてるし、ファンタスティックな内容でもある。本書は素晴らしい。何が素晴らしいかと言うと、まず本書が少年時代を経て大人になった作者が、当時を回想して描き出しているという点にある。夏の終わりという、えたいのしれない焦燥感や、世界が大人向けに作られていることが如実に見てとれる子供の不自由感や疎外感が、実に客観的にそして自覚的に描かれているのだ。主人公たちが追い求めている鉄塔が、普通の人(大人だけでなく子供も含む)には見えていても認識しないものであるのも特筆すべきだろう。言わば、彼らは一般的にはどうでもいいものを、どうでもなくないものとして追い求めているのだ、それも夏の終わりと転校しなければならないという焦りに終われて。その上、鉄塔を追うごとに、日も暮れていく、相棒も疲れ果てていく、大人には拒絶される、なんて厳しい道のりだろう。そして結末。あるいは本書がファンタジィなのは、このエンディングが果てしもなく優れているからかもしれない。なんて鮮やか、なんて美しい、そしてなんて夢のある。最高だ。

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