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2004-07-01397-419

[][]わたしを認めよ! わたしを認めよ! - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - わたしを認めよ! - 雲上読記 わたしを認めよ! - 雲上読記 のブックマークコメント

わたしを認めよ! (新書y)

わたしを認めよ! (新書y)

「まじめ」であることが愚弄される社会――まじめに仕事をする男より要領のいい男や上司に受けのいいお調子者が認められ、バリバリ仕事をする女よりも可愛いだけの女や結婚に幸福を見出す女が優遇され、しっかりと勉強するより不良っぽい少年の方がもてたり評論家にはまじめな子ほど危ないと言われ――要するに「まじめ」な人間は認められない。では、どうするか?

 本書は、誰からも「理解されたり、認められたり、必要とされない」人間が自分の生きる意味を見つけだす方法論について語っている。宗教色はない。古典的承認(家族、性、社会)・現在的承認(金、セックス、自己)・反承認(自分)、以上の三層七種類の承認の形を説明し、これらの承認と否認の図式を丁寧に解説し、そして他人の毀誉褒貶に翻弄されない、自己承認を究極の解決策として語っている。自分を不安に思っている人や、自分に自信が持てない人には一読の価値があるだろう。

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ヴぁんぷ! (電撃文庫)

ヴぁんぷ! (電撃文庫)

 成田良悟が描く“この世でいちばん吸血鬼らしくない吸血鬼”の物語。

 本書のあらすじを書くのは難しい。相変わらず一冊に投入するのが惜しまれるぐらいに作られたキャラクタが、ところ狭しと駆け回るのに加え、本書ではそれが順序だてて語られるのではなく、一気になだれ込んでくるので、前半までは一体何が起こっているのか、どういう物語なのかまるで見えてこないのだ。逆に後半からはようやくそれぞれの立場が見え、吸血鬼の城――にして観光地――という舞台に集まり俄然、面白くなる。とは言え、本書のメインは吸血鬼や人間同士の戦いで、つまりはそれぞれの特殊能力を駆使したバトルだけしかないと換言できないこともない。ところで本書の主人公だと思われる吸血鬼にして子爵のゲルハルト・ファン・バルシュタインの正体はちょっと面白い。中盤に明かされてしまう程度の謎なのだけれど、明かされてから表紙や口絵を見てみれば、しっかりと登場していることに笑ってしまう。「こういう小細工は悪くないね」とまあ。

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 隠し持っていたエロ本のコレクションが見つかってしまった戎崎。里香と仲違いしてしまった彼は、なんとか彼女と仲良くするために策を練るのだが裏目に出るばかり。病気が進行し残された時間が削られていっているのに里香と戎崎はすれ違ってばかり。里香の主治医による意地悪も重なって……。

 ある意味で凄いとさえ思ってしまった。エロ本が見つかって、喧嘩して、仲直りする。ただそれだけの話で、一冊の本を作ってしまうのだから。この内容の薄さ、改行の多さ、そしてエピローグで急にシリアスになってそのギャップが余計に涙を誘うシャープな言葉。一体、なんなんだこれは。格段に面白いという訳ではないけれど、何よりもその読みやすさからついつい手に取ってしまう。橋本紡、その人気の高さは侮れない。

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鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)

鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)

 見晴は夏休みが明けると同時に遠く離れた、友達のいない土地に転校しなければならない。残された僅かな猶予期間、彼は近所の鉄塔に「武蔵野線75-1」と書かれた番号札を見つける。――オレたちは鉄塔を辿っていけば、絶対に秘密の原子力発電所まで行けるんだ。二歳下の友人を誘い、彼は家を遠く離れ武蔵野線を遡っていく。

 第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。あらすじを読んでも絶対にファンタジィだと思えなかったが、読み終えたら分かる。なるほど、確かにアドベンチャしてるし、ファンタスティックな内容でもある。本書は素晴らしい。何が素晴らしいかと言うと、まず本書が少年時代を経て大人になった作者が、当時を回想して描き出しているという点にある。夏の終わりという、えたいのしれない焦燥感や、世界が大人向けに作られていることが如実に見てとれる子供の不自由感や疎外感が、実に客観的にそして自覚的に描かれているのだ。主人公たちが追い求めている鉄塔が、普通の人(大人だけでなく子供も含む)には見えていても認識しないものであるのも特筆すべきだろう。言わば、彼らは一般的にはどうでもいいものを、どうでもなくないものとして追い求めているのだ、それも夏の終わりと転校しなければならないという焦りに終われて。その上、鉄塔を追うごとに、日も暮れていく、相棒も疲れ果てていく、大人には拒絶される、なんて厳しい道のりだろう。そして結末。あるいは本書がファンタジィなのは、このエンディングが果てしもなく優れているからかもしれない。なんて鮮やか、なんて美しい、そしてなんて夢のある。最高だ。

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 結婚式を挙げるふたりに贈られるウエディングベアが誘拐――「花嫁盗難事件」。新人賞に送るつもりの小説インターネットを介して盗まれた――「電子盗作事件」。ハーブティーの専門店に送られてくる大量のケーキの謎――「晋一郎拉致事件」。三つの事件を話せない晋一郎とバイトの真理香が解き明かす、短編連作の形で描いたシリーズの第四作。

 毎回、三篇からなる日常の謎を取り扱っているこのシリーズだが、段々と時勢を読んだのか恋愛をテーマに取り扱ったものが多くなってきて、本書に至っては三篇とも恋愛のイザコザからなるトラブルだった。面白かったのは最後の「晋一郎拉致事件」だろうか。毎週、様々な種類のケーキを無料で送られる、というのはちょっと面白い謎だと思った。

[][][]第六大陸2 第六大陸2 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 第六大陸2 - 雲上読記 第六大陸2 - 雲上読記 のブックマークコメント

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

 月面に結婚式場を建てる――第六大陸建設計画の立て役者は揃い、月の永久凍土内に水が存在することがわかり、もはや第六大陸の前進を阻むものは何もない……そう思われた直後。NASAによる月面都市建設計画、国際法、ELE社の離反。様々な壁が第六大陸の前に立ちふさがる。果たして計画の命運は。

 夢が叶う瞬間というものが、まさかこれほどまでに涙を誘うものだとは。多くの犠牲を払い、困難に打ち勝ち、十二年という時の流れの最果てに待ち受ける結末。すべての確執に決着をつけ、ドラマを見せ、問題点に解決策を出す。見事なまでの完成度。素晴らしい作品だった。――が、正直を言うと、一巻ほど面白くなかったと言うのが残念なところ。物語上、仕方のない流れなのだろうけれど、最後の最後で登場するSF的要素がちょっと気に食わない。さすがにそこまでする必要はないんじゃないだろうかと言うか、物語としての完成度を落としていると言うか。小川一水の他の作品とのリンクなのか? と思わず疑ってしまうほど不自然。勿体無い。

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9S(ナインエス) III 〈3〉 (電撃文庫)

9S(ナインエス) III 〈3〉 (電撃文庫)

 真目家によって管理されている都市、《希望》。その地下深くに狂気の科学者、峰島勇次郎と真目家の合作【天国の門】が眠っている。研究所を脱出した峰島由宇、真目勝司とミネルヴァ、真目麻耶とアドバンスLC部隊、そして鳴神尊の継承者である坂上闘真。彼らが【天国の門】に集うとき――!

 上下巻構成の上巻となるシリーズ三巻。超能力バトル物は、概して堅実な組み立てと戦闘を分かりやすく描写する能力があって始めて作ることができると思うが、本書のそれは及第点を大きく上回っている。前二作を踏まえてなお意外性のある設定と、魅せられる物語、そして過不足のないキャラクタ配置。複数の組織に属する複数のキャラクタを、盤上の駒のように上手く操りまわしており、パズルピースがカチリと嵌まるようなラストは、見事であると同時に四巻への期待を高めるもの。相変わらず強すぎ&冗長、という感じはあるが充分に楽しめた。

[][]殺人切符はハート色 殺人切符はハート色 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 殺人切符はハート色 - 雲上読記 殺人切符はハート色 - 雲上読記 のブックマークコメント

 裏で大きな顔をしていた上級生に、目にものを見せてしまい、停学処分を食らってしまった流星子(ながれ・せいこ)。これを機にと思った彼女は、飼い猫のゴンベエをつれて、長崎へとひとり旅に出ることに。東京でバラバラに殺されたはずの男の復活、天草四郎呪い、そして恋の予感。

 表紙にはユーモアミステリーとあるけれど、実際には、いかにもコバルトな女主人公が、ご都合主義で切り抜ける冒険小説に近い。謎解きと言うほどの謎はなく、犯人の正体という謎でさえ中盤の時点でバレバレで、それでは一体何が読みどころなのかと言うと、これがさっぱり分からない。――どうしてこんな本を読んだのかと言うと、実はこのシリーズ、自分が小学生の頃に好きで読んでいたもので、おおよそ十年ぶりの再読となる。長いシリーズだし、ひょっとしたらこの後、面白くなってくるかもしれないのでもう少し読んでみようとは思うが、吉と出るか凶と出るか……。

[][]アプラクサスの夢 アプラクサスの夢 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - アプラクサスの夢 - 雲上読記 アプラクサスの夢 - 雲上読記 のブックマークコメント

アプラクサスの夢 (電撃文庫)

アプラクサスの夢 (電撃文庫)

 天使の輪(ハイロウ)の向こう側に広がる無限に近しいスペースを持つい空間ポケット〈ゾーン〉。〈ゾーン〉内の怪物、グレムリンの駆除を専門的に行っているディビジョン駆除商会はあるとき、〈ゾーン〉の中で白い化け物と出会う。そいつはまるで幽霊ファントム)のように微笑み消える、謎の存在。赤いパラソルの少女、トランクイロが放つ不死身のファントムの正体は、そしてアプラクサスとは――。

 ほぼ二年ぶりとなる高橋弥七郎のデビューシリーズの三作目。高橋弥七郎のもうひとつのシリーズ『灼眼のシャナ』では、あそこまで効果的に萌え要素を配置して、それらを巧みに動きまわさせてアクションを形成しているのに、こちらのシリーズでは萌えなんて微塵もなく、ただひたすらにアクションに徹している。本書からイラストレイターが凪良(nagi)に代わったのだが、魅力的な人型メカが数多く登場し、その筋の人にとっては興味深いだろう。小説としては、相変わらずその場のノリ重視で全体としては意味不明。細部の派手さで満足できる人向きと言える。

[][][]シャドウテイカー 黒の彼方 シャドウテイカー 黒の彼方 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - シャドウテイカー 黒の彼方 - 雲上読記 シャドウテイカー 黒の彼方 - 雲上読記 のブックマークコメント

シャドウテイカー―黒の彼方 (電撃文庫)

シャドウテイカー―黒の彼方 (電撃文庫)

 都立加賀見高校茶道部の部長、藤牧裕生は特にこれといった特徴のない、豪快な兄と、活動的な友人と口数の少ない幼馴染みの後輩を持っているだけの、ありふれた高校生だ。ある日、大学の近くで一人暮らしをしていた裕生の兄が実家に帰ってきた。カゲヌシ――という都市伝説を調べに……。

 うおおおおおお! 面白い! 四巻から七巻まで怒涛の盛り上がりを見せて、確実に読者を楽しませようと言う姿勢がうかがえた前作『ダーク・バイオレッツ』と比肩しうる完成度。ホラーあり、サスペンスあり、ミステリあり、青春あり。パーフェクト。素晴らしい。純珪一のイラストもいい味を出しているし、キャラクタもストーリィも魅力的だし、次回はダラダラと同じ面子で続けるのではなく、別の視点から切り込む様子。んー、楽しみだ。

[][][]銀盤カレイドスコープvol.2 フリー・プログラム:Winner takes all? 銀盤カレイドスコープvol.2 フリー・プログラム:Winner takes all? - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 銀盤カレイドスコープvol.2 フリー・プログラム:Winner takes all? - 雲上読記 銀盤カレイドスコープvol.2 フリー・プログラム:Winner takes all? - 雲上読記 のブックマークコメント

 ついにオリンピックへの切符を手に入れたフィギュアスケーターの桜野タズサ。しかし、史上最悪な性格に減らず口の毒舌は留まるところを知らず、世間からの逆風も吹き荒ぶ。マスコミと観客からの圧倒的なプレッシャーと、他の選手が見せつける超絶的なテクニック。タズサの運命は、そして彼女に取り付いたカナダ人の幽霊ピートの最後は。

 最高に面白い。ページを繰る手が止まらないと言うより、文字を追いページをめくるのがもはや当たり前だと感じるほどに熱中してしまった。特に後半のマスコミや観客から、タズサが受けるプレッシャは、読者にまで伝わってきて、痛いぐらい。そして手に入れる栄光、ピートの別れ、その後のエピソード、もう全てがとにかく熱いのだ。最高に白熱するスポーツ小説だった。

[][][]陽気なギャングが地球を回す 陽気なギャングが地球を回す - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 陽気なギャングが地球を回す - 雲上読記 陽気なギャングが地球を回す - 雲上読記 のブックマークコメント

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)

 人の嘘を必ず見抜くことができる成瀬、気付かれずにスリをすることができる久遠、嘘と演説が大得意の響野、そして精確な体内時計を有する雪子。四人は熟練した銀行強盗で、計算され尽くした計画は完璧だった。しかしある日、銀行強盗を成功させた四人は闘争途中に、現金輸送車襲撃犯と遭遇してしまいその売り上げを盗まれてしまう。……盗まれた金を盗み返すために奔走する四人。

 ときに手を組みながら、別行動を取ることになる四人を、順々に追っていく三人称形式の小説。四人の必殺技とも言える特徴を上手く使いながら、また四人を順々に描写するその間隙をついて放たれるトリックは見事の一言。最初の方にさりげなく敷かれた伏線の回収ぐあいも、どんでん返しに次ぐどんでん返しも、ただひたすらに面白かった。純粋に群像劇を楽しみたいという人に。

[][][]ななつのこ ななつのこ - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - ななつのこ - 雲上読記 ななつのこ - 雲上読記 のブックマークコメント

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ』という本を衝動買いした入江駒子は、その作者にファンレターを書こうと思いたつ。そのファンレターに彼女は、本の感想のおまけに、最近、身の回りで起こったちょっと不思議な出来事をつけたした。……返ってきた手紙には、なんとちょっとした事件に対する想像の“解決編”がつけられていた。

 第三回鮎川哲也賞受賞作。七篇の短編連作という形式を取っていながら、最後の一篇で、それまでの話が実はすべて関係しており、ひとつの長編小説だったと明かされる……と人から聞いていたのだけれど、実はそこまで完成度は高くなかった。とは言え、最後の一篇が明かす真相の存在感は大きい。ところで自分は本書が描いている人間の方をより重要視したい。主人公は十九歳の女子大生なのだが、その存在が非常にリアルで、とても親近感が持てる。各短編で扱われているテーマも、緻密で繊細なもので、読みながら何度も泣いてしまった。こういう本こそ大人は若者に紹介するべきではないだろうかと思う。

[][][]魔法飛行 魔法飛行 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 魔法飛行 - 雲上読記 魔法飛行 - 雲上読記 のブックマークコメント

魔法飛行 (創元推理文庫)

魔法飛行 (創元推理文庫)

 瀬尾という童話作家から「小説を書いてごらんよ」と言われた入江駒子は、現実にあった事件を小説風に描いてみることにする。瀬尾に向けた三つの事件の物語と、誰にも向けられていない物語と、発表されていない物語をまるで知っているかのように届く三通の手紙。

ななつのこ』に続く駒子シリーズの第二弾。主人公の駒子が遭遇した事件を探偵役に伝えて、探偵が“解決編”を空想するという点は前作と同じだけれど、今回はさらに駒子の小説の読者から、その事件の真相を知っているとしか思えない手紙が届く。謎の手紙は、最後の一篇によって全ての事件を繋ぐ一本の糸となり、その流麗なラインは前作のそれを凌ぐ。本書はそれほどエンターテインしていないので、作者から与えられるものをただ受けとって楽しみたいという人には不向き。作中に散りばめられた宝石を、拾い集めるようにして楽しむのが正解。

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クレヨン王国 月のたまご PART1 (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国 月のたまご PART1 (講談社青い鳥文庫)

 中学受験に失敗した、星村まゆみは合否発表の場で偶然会った青年、三郎の運転するトラックに乗りクレヨン王国に入ってしまった。霧を抜けた先、ふたりは家出中のストンストン(ブタ)とアラエッサ(ニワトリ)と出会う。家出四人組として結託した四人は、「月のたまご」を救出するために、生還の可能性が限りなくゼロに近い旅に出る……。

 クレヨン王国シリーズは、小学校に入った直後に出会い、中でも本書から始まる「月のたまごシリーズ」は初めてに読んだもの。ほぼ十年ぶりの再読となるのだが、少なからず楽しめてしまった。青い鳥文庫から出ていることから察せられるとおり本書は子ども向けの作品だが、けして大人も読めないわけではない。絵本と同じような感じだ。本当に優れた作品は、年齢の影響を受けない。とは言え、本書はそこまで――つまり、大人でも本当に楽しめるほどに面白いわけではない。このシリーズが面白いかどうかは、もう少し追ってみてから判じたいと思う。

[][]第三号 第三号 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 第三号 - 雲上読記 第三号 - 雲上読記 のブックマークコメント

 西尾維新新本格魔法少女りすか 敵の敵は天敵!」相変わらず、西尾維新は『ファウスト』における自分の役目をよく分かっていると思った。他の作品に比べ自己主張の度合いは格段に少なく、エンターテイメントに徹しているその姿勢は、作品を深読みするまでもなく単純に楽しめる。特に今回は、主人公の嫌味度がいくらか減じているので楽しく読めた。西尾維新「零崎軋識の人間ノック」りすかの出来が良かったのに対し、おざなりな感じがある。それほど本筋に重要とは思えないエピソードに、明かす必要があったとは思えない謎。キャラ萌えで読んでいる読者へのサービスか。奈須きのこ「DDD JtheE.」新伝綺三人組の中では一番、完成度が高いように思えた。延々と事実を遠回しに語るのには閉口したが、最後に連続して明かされる謎は面白かったと言える。原田宇陀児「サウスベリィの下で」まるっきり面白くなかった。肩は張り過ぎているし気取りすぎてもいる。数少ない登場人物でよくこれだけ書いたなと感嘆はするがそれだけ。元長柾木「ワールドミーツワールド」期待していたほどに面白くはなかった、と言うかこれは未完成。枚数を指定されていたのだろうか、仮に無制限であれば最後を駆け足でおろそかにすることもなかったと思う。舞城王太郎「駒月万紀子」後に刊行される奈津川シリーズ三作目の予告編だろうか。単体でも楽しめたが、早く本編が読みたいと思わせてくれた。滝本竜彦「ECCO」そういう展開で来るのか! と。下手に続かせないほうがいいと思っていたが、こういう方向性で来るのならば全くもって構わない。むしろ積極的に挑戦していってほしい。佐藤友哉「虹色のダイエットコカコーラレモン(短縮版)」この結末はいつかやるだろうと予測はしていた。単行本化の際に短縮版という言葉は除かれるのだろうか。

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「私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けてていいのかなあ。みんなと同じ教室で同じ授業受けて、毎日。だってあたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。きっと有名になるんだ。テレビに出たいわけじゃないけど。」登校拒否児となった朝子は、自分の部屋にあったもののすべてをゴミに出して捨ててしまう。そうして身軽になった彼女は、同じマンションに住む小学生の男の子と一緒に……。

 第38回文藝賞受賞作。最年少17歳。若い作家が書くのは大抵、その作家を取り囲む小さな世界観であるから、きっとこの作品では若い作家にしては広い世界観を持っているのだろうと思ったら全くの逆で、この作品は自己という小さな世界しか描いていない。しかも自分が存在している家の中の部屋の中の、そのさらに押入れの中。そんな狭い世界を描きながら、しかし全然、鬱屈としているわけでも葛藤しているわけでもなく、さらりと流している。スタイリッシュだ、とは思う。一時間ほどで読めるし、意図的に軽くされているテーマが心地よいと言えば心地よい。

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空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)

 あらゆるモノの死を視ることのできる“直死の魔眼”を持つ両儀式と、その相棒にしてただひたすら探すことに長けた黒桐幹也殺人鬼の式と幹也の出会い、二年間の昏睡に陥る式、目覚めそして魔眼を手に入れる式、式を狙う魔術師。現代を舞台として伝奇小説

 2001年末にコミックマーケット頒布された同人小説がノベルス化されたもの。出版にあたり不適切と思われた箇所が訂正されているだけで、基本は同人版と変わらない。内容に関して上巻は、実を言うとそれほど面白くない。奈須きのこが描く世界における魔術師の定義や、登場人物の説明や描写が殆どであり、ミステリ的な手法も取られてはいるが、それほどでもない。下巻を読むためにさらりと流すぐらいがちょうどいいかもしれない。

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空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

 三人の刺客を経て、ついに相対する魔術師――荒耶宗蓮と、日本刀を執ることで覚醒した両儀式黒桐幹也の妹、鮮花が通う女学院に発生した、自分でさえ忘れていた秘密が手紙という形で届けられるという小さな謎。そして、殺人鬼の再来。

 魔術師魔術師魔術師殺人鬼の対決。「5/矛盾螺旋」は、アクションライトノベルとしてはかなりレベル。そして「6/忘却録音」は外界から閉ざされた女学院を舞台に、謎めいた教師や生徒たちの秘密を探るというもの。これがかなり面白い。『空の境界』という物語全体から見たら、この章は外伝的な位置付けだが、この章のそれはミステリの構造が取り入れられていて、かなり面白い。殺人鬼の再来によって明かされる真実も、それまでの殺人鬼という概念を覆すもの。ライトノベル好きは、読んでおいて損がない本だろう。

[][]悪魔のミカタ13 It/MLN 悪魔のミカタ13 It/MLN - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 悪魔のミカタ13 It/MLN - 雲上読記 悪魔のミカタ13 It/MLN - 雲上読記 のブックマークコメント

 吸血鬼の魔手から逃れた舞原サクラと山本美里は、山の中に潜伏サバイバル中。一方、自ら敵の手に落ちることでサクラを救った鴨音木エレナと神名木唯は、吸血鬼たちを一掃する諸刃の策を手にとるが……。長らく出番のなかった主人公、堂島コウの選択は――。《It》編完結・一学期編完結。

 非常に残念なことだが、消化不良さや不完全燃焼さを感じた。11巻のライトノベル史に残っても不思議ではない素晴らしさと、それを引き継ぎつつ次巻への期待を否応なく高めてくれる12巻が良かっただけに、13巻のそれを片手落ちの感が拭えない。つまらくはないのだ。確かにサクラ美里の山中におけるサバイバル生活は、真に迫るものがあり、一般的なライトノベルのそれと比較しても、けしてつまらなくはないだろう。その後の展開も、今までの主要な人物に焦点を当てつつ、確実に物語を進行させ、きっちりと片をつけていた。しかし、今ひとつ、もう一歩、まだ何かが、何かが足りないまま終わってしまった。勿論、吸血鬼との燃えるけど論理的でない一騎打ちを望んでいないわけではない、本書に書かれたように変則的なそれしか展開的に不可能だろう、だがしかし。不満が残る、残念だ……。

[][]マリア様がみてる チャオ ソレッラ! マリア様がみてる チャオ ソレッラ! - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - マリア様がみてる チャオ ソレッラ! - 雲上読記 マリア様がみてる チャオ ソレッラ! - 雲上読記 のブックマークコメント

 リリアン女学園高等部二年生を待ち受ける次なるイベントは――修学旅行! お姉さまや妹たちに別れを告げ、祐巳由乃志摩子たちの向かった先はイタリアローマフィレンツェと旅行を続ける彼女たちの前に、懐かしいあの人も現れて……。

 完全に蛇足。イタリアへ行ってみた記念に書いてみましというような具合で、まるで面白くない。いや、イタリア好きな自分としては、面白くないわけでもないのだが、やはりこれは違う。物語的な進展も特になく、次の巻で語られるであろう学園祭の布石にもなっていない。「たまには、こういうお話があってもいいでしょう」という作者によるあとがきが全てを物語っている。

[][]ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリックROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック? - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック? - 雲上読記 ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック? - 雲上読記 のブックマークコメント

ROOM NO.1301〈2〉同居人は×××ホリック? (富士見ミステリー文庫)

ROOM NO.1301〈2〉同居人は×××ホリック? (富士見ミステリー文庫)

 自分は恋愛に向いてない――そう確信している絹川健一の前に現れた四人目の女性、有馬冴子。友人の彼氏を寝取ると噂されている彼女は、なぜか健一と同じ、1303号室の鍵を持っており、ふたりは同じ部屋で同じ時間を過ごすことに。「……わたし、しないと眠れないの」秘密を打ち明ける彼女に、健一の取った行動は――。

 基本的には一巻と同じ。相変わらず、現実に存在するとは到底思えないような高校生たち。直接的で直線的で直情的に過ぎる。本編よりも外伝的な位置付けにあるエピローグの方が気に入った。本編の主人公の姉、蛍子の高校生時代を描いたものなのだが、若き芸術家としての苦悩や葛藤、才能に対する確執などが実に巧みに描けていると思う。

[][]森博嗣の浮遊研究室3 宇宙森博嗣の浮遊研究室3 宇宙編 - 雲上読記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 森博嗣の浮遊研究室3 宇宙編 - 雲上読記 森博嗣の浮遊研究室3 宇宙編 - 雲上読記 のブックマークコメント

WEBダ・ヴィンチ』にて連載されているチャット風エッセイ風対談の単行本化。VOL.81からVOL.110までを収録。巻末には浮遊研究室のメンバによる名古屋撮影。

 三巻目となる森博嗣の浮遊研究室、すっかり板についた会話は今回もやっぱりいつもの調子。面白く読める人には面白く読め、つまらない人にはつまらなく、森博嗣好きには読まなくてはならないといういつもの一冊。毎回、ご案内の項がショートエッセイ風になっているので、少なくとも三十回は森博嗣をきちんと楽しめる。夜、寝る前であるとか、食事を終えた後の休憩であるとか、そういう生活の狭間に少しずつ読むと楽しい本だと思う。

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