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2004-06-01368-396

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第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 サハラ砂漠南極大陸、ヒマラヤ山脈、海中――数々の極限環境下で建設を物にしてきた御鳥羽総合建設に、月面開発計画が依頼される。2025年、御鳥羽総合建設・天竜ギャラクシートランス社・エデンレジャーエンターテイメント社、幾つもの人々が協力しあい、人類の、月への架け橋を築く。

 SFを根底にライトノベルの手法を取り入れており、セカイ系ではない。本書を一言で説明するとそうなるだろう。最初から説明しよう。まず2025年という近未来を取り扱っているのだが、世界観が非常に緻密で現実的。しっかりと社会の情勢――日本は勿論、日本以外の国家もその特徴を抑え不自然にならない程度に――を捉えており、さらに金銭面も考えられている。場所によってはやや不自然に思わないでもないが、検証が多く、全体に隙がないと言えるだろう。次にライトノベルの手法を取り入れていると言うのは、登場する人物がちょうどいい具合にキャラクタライズされているのだ。努力屋で理想を高く掲げているものの冷静な主人公、幼くして天才と呼ばれる美少女、孫のよき理解者であり理想的な会長、部下思いで夢を現実にすることにひたすら熱い社長、現実的で損得勘定に有能な美女、その他大勢。もうこれ以上は無理というぐらいなまでに有能な人物が揃いに揃っている、しかしこれだけ魅力的な人物を揃えておいてなお、月の環境は苛烈を極め、発生確率数パーセントの異常事態が発生し、世間からバッシングを食らい、他国に参入され、もうとにかく泣きっ面に蜂なのだ。しかしそれでも彼らは諦めず前へと進み、月に人が住める建物を建てようと努力する。読みながら、どんどん作中に引きずり込まれ、終盤にあった大きな企画が成功したときには思わず泣きそうになった。今すぐに後編を、そして他の著作を可及的速やかに読みたいと思わせる、間違いなく傑作。

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