2004-05-28
■ [エッセイ] 倉阪鬼一郎 『活字狂想曲』 幻冬舎文庫
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★★★☆☆
印刷すべき原稿があって、印刷という作業を行うわけだから、当然、元の原稿と刷り上った印刷物をチェックする 校正という仕事は書籍をはじめとする印刷に携わる業界では重要な仕事だと思う、しかし、本書の中でも言及されているとおり、校正の仕事は地味でありクリエイティブなものではない、それは、仕事の名前がカタカナにならない、どこに行っても校正という昔ながらの呼び方をされることにあわられている。
作者は実際に1989年から1996年までの間、この校正という仕事に就いており、その間に同人誌に掲載されたものは元になっている。この作品での社内の描写はその後の印刷会社の校正者を主人公にした『首のない鳥』の中で活かされている。
登場する同僚や言及されているエピソードは多分、多少の脚色はあるが事実が元になっていると思うと、今自分の職場の周りでも同じような笑えない話が結構あることに気がついたりする。そういう意味では素直に笑えない本である、最後に切れて退職する作者がすこしうらやましく思えてくる。
2004-05-27
■ [ミステリー] 田中啓文 『蓬莱洞の研究』 講談社ノベルズ
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★★★☆☆
設定が少々乱暴な部分もあるし、最後は駄洒落だし、シリーズ全体のネタが1作目ですでに想像がつくしとこれだけを書いてしまうと、面白みにかけるようであるが、この作品というよりこの作者の場合には、この広げた大風呂敷をいったいどのようにして手仕舞いしてゆくのかが注目点になる、ネタは日本神話の世界とUMA(未確認生物)と作者の得意分野なだけに注目
■ [今日の平積]福屋書店新宿サブナード店
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場所は新宿地下街のはずれ西武新宿駅のそばになる地下街の店舗、新宿には多くの大型書店があるが、西武線利用者なもので結構お世話になっています、すぐ隣にコミック店を分離しているので、こちらには、コミックはなし、比較的文庫の棚が広いのが特徴で文庫の調達には便利、ただノベルズ系と新刊本のミステリーものの棚が小さいのが残念
今日の平積としては、文庫は真保裕一『黄金の島』がドンとめだっていました。真保さんの本はしばらく読んでいないなぁ、前の小役人シリーズは結構好きだったのだが、新刊本の方は『とんでも本の世界S』『とんでも本の世界T』と2冊、帯を見たら3年ぶりの新刊で2冊同時刊行ということで購入、あんまり長居をすると財布のピンチなのでこの辺で切り上げる。
2004-05-26
■ [ミステリー][図書館] 紀田順一郎 『第三閲覧室』 創元推理文庫
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★★★☆☆(本好きならもう一つ)
本が好きというのは、当然本を読むことが好きであるというほかに本そのものが好きな人たちがいる、神田の古書店などには、1冊、数十万もする希購本が並べられている、この本の舞台もそんな、本に見せられた人たちの話である。私も結構本は購入して読むほうで、神田などの古本街にもかつてはよく足を運んだ、しかし本そのものは家の中で無造作に積んであるだけで、本としての愛着はさほどあるほうではない、でも、この話の中で語られる本を取り巻く人たちの本に対する思いはある部分共感できるものがある、やっぱり本という魔物に私も取り込まれた一人なのだろうか
2004-05-25
■ [ミステリー][妖] 畠中恵 『しゃばけ』 新潮文庫
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2001年度第13回日本ファンタジーノベル大賞最優秀賞
★★★☆☆
舞台は江戸、病弱な大店の若だんなとなぜか店の手代に収まっている妖怪が、主人公の出くわした、殺人事件を解決してゆくミステリー仕立ての作品
作品の途中で若だんなの過去や手代となった妖怪たちのいきさつがほのめかされているが、詳細は今後の作品に持ち越しか、続編の『ぬしさまへ』もすでに刊行されている。
病弱な大店の若だんなとしてなに不自由なくすごしながらも、周りの気遣いに少々辟易している主人公は今の時代の閉塞感となぜが似ている。物語は今後、主人公の生い立ちに関係して話が広がりそうな雰囲気を残して終わる、伝奇物に特有な重苦しさを前面に出すことなく妖怪たちの活躍を今後の作品にも期待
主人公の店は回船問屋と薬種問屋をかねているが、そういえば、高里椎名の薬屋妖怪探偵シリーズも部代は薬屋、妖怪と薬屋は相性がよいのだろうか。
2004-05-24
■ [ミステリー] 荻原浩 『ハードボイルド・エッグ』 双葉文庫
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★★★★☆(泣けます)[最高☆5]
チャンドラーに心酔し、ハードボイルドに生きては見てみるも、仕事の大半は脱走した動物の捕獲、雇った秘書は80すぎのおばあさん、なじみのバーはいつの間にかおでんやカラオケがあるしまつ、そんな中で巻き込まれる殺人事件
前半コメディタッチでストーリーは進んでゆくが、中盤からはしっかり謎とアクションが展開、文庫版の帯にあるように、探偵をはじめみな不器用に生きている登場人物達、その不器用さゆえに一線を踏み越えてしまった者、不器用なまま去っていく者、前半に登場する捨てられた犬のチビと秘書の綾ばあさんの最後は泣けました。
今回は中身を書くと感動が半減するので、紹介のみ
yukatti2004/05/28 23:55「荻原浩」が正しいのでは…と思ってキーワード内容をうつす形で作成しておきます。
jinc2004/05/31 11:29まちがっている、申し訳ない、そそっかしいですね 間違ったほうは削除します。
2004-05-22
2004-05-21
■ [ミステリー] 火浦功 『俺に撃たせろ』 徳間デュアル文庫
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★★★☆☆(お昼なに食べたっけ?)
俺の名は、アルツ・ハマー。
この都市の正義と平和を、一手に引き受けている男だ
たぶん、そのはずだ
ハードボイルドである。
雑誌掲載時のタイトルは「アルツ・ハマーへ伝言」であった、アルツ・ハイマーじゃなかった、ハマーへ伝言である、そう、まるで意味がないのである。
なにしろ聞いちゃて覚えていないのだから、
しかし、ハードボイルドが男の生き様を語るという一点においてこの作品は立派にハードボイルドになっているのである。
冒頭で発生する真夏のサンタクロースが死んでいる事件、ハマーの勝手な思い込みで全く関係のない死体と瓦礫の山を築いてゆく、
当然サンタクロースの事件は未解決のまま、番外編で作者の気が引けたのか、一緒にいたトナカイの証言で事件は解決させている。
2004-05-20
■ 矢崎存美 「冬になる前の雨」

★★☆☆☆(大切な人の大好きなもの知っていますか)
世の中には 取り返しのつかないこと というのが確かに存在する。
この話は、待ち合わせてデートをする2人の描写で進められていく、しかし、デートの相手の女性は、確かに主人公の恋人であったのだが、今はこの世のものではない。
ストーリーは、デートの描写と、いわゆるストーカーであった彼女と彼女に振り回された親族を含めた証言で進められていく、エスカレートしてゆく彼女に対して主人公は取り返しのつかないことを実行してしまう。
多分誰かが、どこかでボタンを掛け違えてしまったのだろう、今思えば、彼女の求めていたもに答えられたのではないか、誰のそんなことは指摘してはいないのだけれど
物語は、最後に穏やかに満足げにさってゆく彼女で終わる。
■ [gook-g] bookグループ企画室

やっぱりベストや順番ってつけてみたくなりますよね、「今月の私の3冊」
それと「今年のベスト10」はできたらグループで決め見たいですね(まだ大分先の話ですけど。
2004-05-19
■ [ミステリー] 宮部みゆき 『長い長い殺人』 光文社文庫
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★★★☆☆(発想と構成力の勝利)
世の中には、数多くのミステリーがあり、その中では、幽霊や犬やら猫やらが探偵役などの重要な位置をしめている作品が多く存在する、しかし、だれが一体 生き物ですらない 財布に物語を語らせようと思いつくだろうか、この作品では、ある事件(実際にあったとある事件を下敷きにしています)を取り巻く登場人物たち、当然、刑事、目撃者、探偵、被害者そして最後に犯人の財布が物語を進めていきます。
財布たちは結構雄弁で、主人(持ち主)の行動や考え方語ってくれます、たしかに、財布は日常的に持ち歩き、現金以外のもちょっとした大切なものを保管していたり、そもそも財布そのものとの出会(手に入れた時のことね)自体が、大切な人に送られたり(そういえば、プレゼントの定番かもしれない)ということで主人の家族や友人たちの関係まで財布は知っているです。
その発想と実際に連作短編集として物語を構成する、作者の力量に関心するばかりです、すこし古い作品ですが、この事件そのものではなく、周辺に存在するものから事件や犯人の本質を照らし出す手法はその後の代表作である『火車』や『理由』にも通じる部分があります。
なんか今回は単なる紹介になってしまった。
2004-05-18
■ [ファンタジー] 加納朋子 『ささら さや』 幻冬舎文庫
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★★★☆☆(一級のファンダジー)
不慮の事故でなくなってしまった夫、残された妻と子を思う気持ちから、ゴーストになって登場する。ただしミステリーというよりは、一級のファンダジーと云うべき作品
失った者への想いと残された者への想いが、死んでしまった自分の姿が見えることを条件に、その体を一度だけ借りることができる、人を想う心だけが見せる物語になっている。
この作品すばらしい作品なのだが、だからこそ気なってしまう部分がある、それは、サヤの暮らす佐々良の町がユートピアとして描かれているように見える点である、なくなった夫が姿を借りた人間はサヤに対してその後も好意的な人物としてその後描かれていく、そのためストリーの展開とともに、サヤの周りには彼女をサポートする人物あつまってくる、また後半に登場する夫の実家のユウ坊を養子とするための行動が何度か繰り返されるがゆえに、しだいにそのリアリティーを失っていくように見える、こんな風にこの作品の視点をずらしてみると、この作品全体が事故で死んでしまった夫自身が描いた夢のように、残していってしまった、サヤとユウ坊のためだけに描かれた作り出された世界がそこに見えてくる。
しかし、そのことはこの作品の評価を決して貶めることではないし、残された家族を想う夫の想いがよりせつなく心に響いてくる。
さて、すでに死んだ人間が登場するミステリー系の作品としては、近いところでは、有栖川有栖の『幽霊刑事』たしか一度呼んでいるはずなので、本棚を探してみよう、またコミックですが、岡崎二郎の『アフター0』というシリーズの中にも同様のモチーフで書かれた「大いなる眠り子」があります、こちらの作品では、夫は子供が生まれる前の死んでしまい、生まれてきた子供の体を借りて登場するという形をとっています、こちらも作品も『ささら さや』とは違った視点で家族への想いと、この世界に生きる(残された者にとっての)ことについてが描かれています。さきにこっちの方を読んでいたので『ささら さや』の評価の方がちょっと辛いのかもしれませんが
2004-05-17
■ [ミステリー] 青井夏海 『陽だまりの迷宮』 ハルキ文庫
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★★☆☆☆(も少し登場人物が少なくでもよっかたのでは)
プロローグとエピローグをはさんで3つの話で構成される短編集
2男9女総勢11兄弟の末っ子 生夫の子供の頃の不思議なはなし、謎が提示され、それに合理的に回答が与えられている、ミステリーの形はとっているけれど、全編をとおして語られるのは、兄弟、友人、夫婦、親子、人と人の想いについての話です。
「届かない声」で登場する電話、今では各人が個人の電話をもっているのがあたりまえになってしまい、家に電話をかけるということも少なくなってきていることを、あらためて思いだした、そういえば、かつて友人との長電話と家族の視線って結構つらいものがあったよなって、そんなことをちょっと想ってしまった。
2004-05-16
■ [歴史] 井沢元彦 『逆説の日本史』8中世混沌編 小学館文庫
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副題:「室町文化と一揆の謎」
★★☆☆☆(現在の政治に関する言及がすこし多くなってきたかも)
逆説の日本史文庫版のようやく室町時代にはいりました、(週刊誌連載のほうはそろそろ江戸時代あたりかと)
このあたりの歴史は、はっきりいってあまり馴染がない、もう少し後の戦国時代になれば、信長の野望(byコーエー)で、もっと前の平安時代ころは、陰陽師(安部清明)あたりでそれなりに読んだりしているのだが
この時代なぜか、戦乱の時代でありながら、室町文化の華が咲き誇ったいわば矛盾した時代、京都の人のいう先の戦である、応仁の乱により京都が壊滅的な打撃をうけたにもかかわらず、茶、能といった文化が日本に根付いた時期でもあった。
井沢元彦はミステリーで作家として登場したころより歴史に題材をもとめた作品が多かったし、そもそもミステリー作家で歴史に関心のある方は多いかもしれない、歴史の謎というのは、ミステリーに共通するものがかるのかもしれない。いまや井沢史観ともいうべきレベルまで達している、文献主義ではない井沢の歴史の見方がここでも発揮されているし、この歴史観は他の作家にも影響をあたえているように思える。
2004-05-15
■ [ミステリー] 倉知淳 『幻獣遁走曲』 創元推理文庫
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副題 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
★★★☆☆
30才をとうに過ぎているのに定職をもたず、小柄で童顔、もちまえの明るさと人なつっこさを持ち、行動の基準がおもしろそうか、そうでないか 考えてみればこれほど探偵役にふさわしい人物もいないだろう、今回はワトソン役の後輩八木沢くんは登場せず、猫丸先輩の数々のアルバイト先での事件が題材
ミステリーの謎ときとしては今回そんな、そもそも事件と呼べるようなものでではないものまで含まれているが、そこはご愛嬌
倉知淳は『壷中の天国』でも描いているように、人の持つこだわりの部分の描写が非常にうまいと思う、この作品でも、幻の珍獣 アカマダラタガマモドキの捜索に総勢8名のアルバイトを繰り出してしまう、鬼軍曹、マイナーなテレビの戦隊ヒーローを信じている純真な子供、マイホーム資金のために節約に精を出している夫婦など、本人はいったてまじめなんだろうが、はたからみるとなんとも滑稽な登場人物が作品に色を添えている。
現在、不平不満を持ちながら毎日の仕事をしていたりすると、時間や世間体をわすれて何かに打ち込んでいる、彼らの姿をみると、なにか新しいこと、夢中になれるなにかを持ち合わせていない、自分のほうが、すこし寂しくも感じたりする。
2004-05-14
■ [ミステリー] 芦原すなお 『嫁洗い池』 創元推理文庫
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★★★☆☆(謎ときはあっさりしていますが、お食事まえに)
『ミミズクとオリーブ』の続編
解説が喜国雅彦、なんでとおもったら、同郷なんだって
前作に引き続き八王子郊外に住む作家とその友人の刑事、作家の奥さんという設定、庭のオリーブの木とそこにやってくるミミズクの夫婦も登場します。
ミステリーの謎を解くという点に関しては、軽めで、はじめの段階で判明してしまう作品もありますが、魅力のひとつである探偵役の作家の奥さんの手料理のかずかずはこの作品でも健在です。今回は「九寸五分」のなかで、作家みづから牛筋をつかった関東炊も登場します。
喜国さんの解説でも言及されているように、犯罪や事件に対して、追及したり憎んだりというより、なんで馬鹿なことをするのだとうという、スタンスが作品全体の雰囲気をつくりだしています。
2004-05-13
■ [エッセイ] 内田百閒 『第一阿房列車』 『第二阿房列車』 新潮文庫
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戦争が終わり漸く世の中の落ち着き始めた頃、なんの用事のないのに、ただ列車に乗って出かける、最初は特別急行で大阪へ、その後も、九州、東北、新潟へと、ただ出かけていく、とにかく、列車に乗ってでかけて、飲んでいるだけなのである。
ただそれだけなのに、引き込まれる文章である、今回の改定では、仮名つかいを一部改めたようだか(前の版を見ていないのでよくわからない)、随筆という言葉がよく似合う。
特に一等車を連結していた頃の列車の描写は鉄道好きにはうらやましいかぎりだろう。
評価は古典というとこで別格
そもそもレビューなんぞをしようものなら、本を読むのに目的なんぞを持つのは嘆かわしいことだと百閒先生にしかられてしまいそうである。