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2004-11-06金融ウンチク小説
■ [金融ミステリ]渡辺房男「ゲルマン紙幣一億円」
お勧め度:BBB+

明治の始め、「円」誕生前夜の幣制混乱を背景に通貨相場で一儲け企む話。ちょうどユーロの通貨統合前に裁定取引が流行ったのと同じことを120年余り昔にも やってたんですね。ネタが面白いので、とにかく一気に読めてしまう。通貨の価値を支える信用が直接試される状況というのはテーマとして魅力的で、むしろ ソ連邦が崩壊した後の新興独立諸国での経済混乱とかを引合いに出した方が適当かな。
結局やってることは相場操縦とインサイダー取引なんだけど、筋の展開とか話の構成は特にもたつくとこもないし、読みやすい。ただ、文章はちょっと難あり。 説明が多いし、描写は紋切り型。登場人物も、「お上と庶民の対決」とか「時代の流れに 取り残されたあぶれ者の意地」とかの類型に落とし込んで事足れりという感じなんで、どうにも平板でいけない。こういうのを俗に「人間が描けてない」という んだろうか。シーンごとにキャラクタの印象が、賢かったり間抜けだったり、強面だったり弱腰だったりと意味もなく変わるんで、最後まで読んでもなんか親しめないのよ。 ヒロインなんて動かし方次第でいくらでもキャラが立つと思うんだけどなあ。まあテレビドラマとかにすれば、役者の魅力というか説得力で、気にならなくなるのでは。
■ [金融ミステリ]橘玲「マネーロンダリング」

この小説のリアリティとは、細かく書き込まれたオフショア・バンクの描写や、マネーロンダリングの手口だけではない。そうした裏技的ハウツーは飾りで、むしろこの小説を支えているのはかかわってくるあらゆる人間の行動の、それぞれの立場から見た合理性だ。例えば、それぞれの取引きが違法か合法か、リーガルリスクに対する登場人物ごとの感覚の違いが効果的に使われている。各々の価値観に従って、目先の小金に拘泥ったり、他を優先したりする。それが人物を際立たせる描写になっている。投資家が資本を取り引きするように、暴力「を」取り引きするヤクザ、男を破滅させるなぞの美女、そして過去に囚われている探偵役の主人公と、典型的なハードボイルドの骨組みをつかって、新しい金融犯罪小説を作っている。