Easy Reading

(非)日常(通常の日記)へ
鴉とオレンジ(HP)へ
2005 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 10 |
 | 

2006-2-28

[]荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫) 著:桜庭一樹 絵:ミギー

ああもう、どうしてこんなに桜庭一樹の少女セカイ小説は面白いんだろう。1巻の出来から期待値は高かったのだけど、それすらも飛び越えてしまった。恋に直面しておびえる荒野の繊細かつ多感な様子を、無駄に文章を積み重ねることなく見事に書ききっている。前に、桜庭一樹は感性で小説を書いている……というような事を言った気がするのだけど、この作品はまさにそれ。だけど、感性そのものが昔(多分、赤×ピンクくらいの頃)よりずっと研ぎ澄まされているし、感性に頼り切って話が崩壊してしまうギリギリのラインを完全に見切っている。ここら辺、桜庭一樹は本当に上手いなぁ。

1巻が面白かった人には文句なくオススメだし、他にも純粋少女小説を読みたい人にも是非読んで欲しい作品。完結編となる次巻は15歳の話だそうで。またずいぶん間が空くのだろうけど超期待。

 評価:★★★★

2006-2-25

[]13階段 (講談社文庫) 著:高野和明

第47回江戸川乱歩賞受賞作。評判が良かったから期待してたけど……傑作キタコレ 人物の書き分けの上手さといい、読者をぐいぐいと物語の中へ引っ張っていく力と良い、とてもこれが処女作とは思えないほどストーリーテリングが上手い。特にラストの怒濤の展開は一瞬の気のゆるみも許さないほどに引き込まれた。メインテーマである『死刑制度』を多角的に、その上自分の主張を押しつけがましくなく書いているのも良好。それを軸にした人物達の苦悩の描写も重厚でシンクロしてしまう。エピローグで、重く苦いトーンの中、たったひとかけらの救いを提示して締めくくる形も憎い。

読後、死刑制度について考えさせられました。……こう書くとお堅くて手を出しづらくなりそうだけど、物語としては一級品なので満を持してオススメ。これがデビュー作っていうのは凄いとしか。他の作品も読んでみるか。

 評価:★★★★☆

2006-2-23

[]The MANZAI 1 (ピュアフル文庫) 著:あさのあつこ

ピュアフル文庫第一号はあさのあつこ文庫化。……あー、踏んだ。まさかあさのあつこで踏むとは思わなかった。タイトルにもなっている漫才がすごく寒いのは、中学生メインだから……、ということを考えればまだ良い。問題なのは何もかもが中途半端だと言うこと。主人公の内面の問題といい、他の人との青春といい、そして漫才といい、どれも書き方が好きになれないし結局どれをやりたかったの? と言いたくなる。多分、中学生青春が書きたかったんだろうけど、それだと一々挟む腐的なノリがうっとうしい。いやこれ別にそういうノリいらないよね? ってところで挟まれるから読んでいてイライラ。っていうかあさのあつこって別に『少年』の書き方が上手いわけじゃなくて、腐女子妄想する、現実にはいないような少年を書いて、それが読者に受けているだけだと思った。私も腐女子だけど、……ごめん中学生ストライクゾーンから外れます。それ以前にうじうじして反発してばかりの主人公萌えとか共感とか無理だ。

そもそも題材の漫才自体、リズムやら雰囲気やらが大事なものなので小説にするのはほとんど無理なんだなということが分かった。中学生男子二人の狙いまくりな関係に萌えられる人なら面白いんじゃないかな? 私は全く肌に合いませんでした。

 評価:★

[]ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J) 著:熊谷雅人 絵:えれっと

第1回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。評判通り、文句なく面白かった! タイトル通り、主人公の『ネクラ』さは結構リアルに書けているんだけど、心理描写がコミカルなので読んでいて暗くならない、その絶妙なさじ加減にまず引き込まれる。そして主人公の変化を丁寧に書いているところもポイント高し。周りのキャラもイキイキしていてなかなか。演劇部の面々はもちろん大河内といい妹といい良キャラ揃い。タイトルはイロモノっぽいけど、至極真っ当な青春小説だよね、これ。そしてそんな真っ当な小説らしく展開は先読みできる……と思ってたらオチは予想外でびっくり。でも捻りは利いているし綺麗に終わっているしでこれは逆に嬉しい。後書きにシリーズ化するみたいなこと書いてあったけど、ここからどう続けていくの……? そもそも悪魔はもういなくなっちゃってるわけだし

とまれ、青春小説の良作なのは間違いなし。ただ、発行はMF文庫Jだけど、どちらかっていうとコバルト系だと思った。少女小説っぽいかな。初々しい初恋にドキドキしたり、一人の少女の変化に爽快さを感じたい人は是非。そうでなくてもオススメ

 評価:★★★★

2006-2-21

[]息子はマのつく自由業!? (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

ずいぶん間があいたけど、まるマ短篇集を読了。これの一つ前の短篇集みたいなコミカルなノリだろうなと思って読んでみたら……うはは、何だコレ。いや確かにコミカルなノリではあるんだけど、閣下マに比べると数倍キレちゃってます。何が凄いってママンが凄いまるマキャラの中でも格別に突き抜けちゃった萌えママジェニファーを中心に、ガンダムネタやらいい話ノリやらをぶち込んで、できあがったのは超カオス短篇。特に2話の突っ走りっぷりときたら! これに比べると1話・3話はまだ普通。個人的には、この頃はすでにマのギャグの勢いは衰えていたので、この短篇集はちょっと盛り返した感がみられて良かった。まあ、初期マに比べるとやっぱり冴えがないんだけど。というかギャグの方向性が変わってますね。

マもこれで全部読了。まとめに関しては前にやっちゃっているので今更何も言いませんが。しかし小ネタの多いシリーズですね! 多分メインの読者層にはネタの半分が分からないんじゃないのだろうか。私? もちろん分かりません。

 評価:★★★

2006-2-20

[]火目の巫女 (電撃文庫) 著:杉井光 絵:かわぎしけいたろう

第12回電撃大賞銀賞受賞作。おっ、これもなかなか面白い。キャラが悪い意味でありきたりだとか、三人の関係の描写の分量が少ないとか、設定ばらしの後の展開が急で雑だとか細部を見るとボロが出てくるけど、読んでいる最中はストーリーテリングの上手さでそれほど気にならない。文章も今回の受賞者の中では一番使い方が上手いし、展開も穏やかなシーンと盛り上がるシーンのメリハリが利いているので退屈することが全くない。ただ、上にも書いているとおり細部が雑なのが足を引っ張ってラストイマイチ鬱になれなかった。多分作者は読者を鬱に叩き落とすのが狙いだろうと思うんだけど、特にキャラに何の思い入れもなかったので別に鬱だとは思わなかった。ストーリー上必要だしね。

あとがきネタはあえて触れないでおくとして、脇の甘さがなくなればもっといい本を書けるんじゃないかな? 今のままでも面白いけど。とまれ今年の電撃大賞新人はおおむね当たりで嬉しい限り。

 評価:★★★☆

2006-2-18

[]狼と香辛料 (電撃文庫) 著:支倉凍砂 絵:文倉十

第12回電撃大賞銀賞受賞作。個人的な面白さとかお気に入り度とは別なんだけど、正直これが大賞でもいいんじゃない? 貨幣経済メインにしたファンタジーってだけで独創性は十分にあるし、地味ながら読ませる牽引力はあるし、キャラも人数絞っているせいか十分魅力的だし。評判が高かったから期待していたけど、うん、裏切られなかった。上に書いたとおり、貨幣経済を扱ったラノベはこれが初めてだし、経済に疎い読者(=私)にも分かりやすいように書いてあるのも嬉しい。ただ、虚剣の時にも書いたんだけど、こういう優等生的作品にはイマイチ惹き付けられないと言う罠。良作なのは確かだけど。

経済をほとんど知らない人でも楽しめると思いますが、経済をよく知っている人ならもっと楽しめるんじゃないかなと。あと獣耳好きな人もね! ホロかわいいよホロ。

 評価:★★★☆

2006-2-16

[]レインレイン・ボウ 著:加納朋子

月曜日は水玉模様の姉妹編。月曜日~の時からイマイチ好きになれなかったけど、やっぱりこのシリーズは私には合わないみたい。その最たる原因は登場人物。どのキャラもいやに刺々しい上に悪い意味グダグダで、新境地を開拓しようとしているのかも知れないけど、それが成功しているとは言い難い。むしろマイナス。その上各ストーリー短篇サイズなせいか、ドロドロした部分を見せつけてくるくせに最後の救いが足りないから、読み終わった後今ひとつ気持ちが晴れない。ドロドロをメインにしたいのなら救いゼロでもいいわけだし、ドロドロではなくいつものような心温まる感じのを持っていきたいなら、もう少しドロドロとハートウォーミングのバランス配分を考えるべきだと思った。持ち味を殺してどうする。あ、ただ唯一栄養士のエピソードは面白かったな。どの話もあれくらい爽快感があればよかったんだけど。

月曜日は水玉模様が面白かった人なら楽しめるかも知れません。私は合わないんだなということでFAアリスシリーズはどんなもんなのかしら。

 評価:★★☆

2006-2-13

[]哀しみキメラ (電撃文庫) 著:来楽零 絵:柳原澪

第12回電撃大賞金賞受賞作。あらすじを読んだ時はまさか退魔師ものだとは思わなかった。根幹となるストーリーは面白く、後半はその展開に目が離せず、多分作者もストーリーメインにして書きたかったんだろうな、というのは伝わってくる。でもそのストーリーを他の要素がダメにしている。最たるものはキャラぶっちゃけ言う男三人もいらないよね? それくらいキャラの書き分けが出来てない。最初のエレベーターのシーンなんか誰が誰だか分からなかったもの。そして全体的に描写端折りすぎ。そのせいで、四人(特に綾佳)の言う家族』が非常に薄っぺらく思えて仕方なかった。もっと重厚に書けていたら傑作になれただろうに。

一言でいうと、すごくもったいない作品。でも、地力はありそうだし、まだ伸びる余地は十分にあると思うので、こなれてきたら傑作を書きそうな予感。しかし、これをシリーズ化するのは無理あると思いますよ。

 評価:★★★

2006-2-12

[]となり町戦争 著:三崎亜記

話題の作品を今更読了。世間にものすごい勢いで取り残されている気がします。……冗談はさておき。非常に上手い作品だと思います。現実味のまるでない戦争を、妙に批判的に、悲観的に取り扱ったりせず最後まで『実感のないもの』として一貫させた書き方も、それを俯瞰する主人公スタンスも、何から何まで巧み。これで新人だというから大した物です。……でも、気に入ったかと言われるとNO。非常に上手い人ではあるんだけど、その技術だけで一作書きました、というふうに感じた。要は魂がこもってない。そのせいで、結局読んだ後に何も残らない。個人的には荒削りでも「俺はこういうのが書きたいんだ!」という気概が感じられる作品の方が断然好み。

戦争という題材を新しい見解で書いた、という意味では意欲作ではあるけど、好きになれなかったです。世間で評価されるのも分かるし、実際実力はあると思うので、地雷ということは全くないんだけど。

 評価:★★☆

[]お留守バンシー (電撃文庫) 著:小河正岳 絵:戸部淑

第12回電撃大賞受賞作。大賞ということもあって、さすがに上手いですね。定番の展開を飽きさせることなく読ませる力あり。ただ、正直一風変わっているように造形されたキャラ達が、逆に作品全体のありがちさを強調しているという皮肉。面白いんだけど、大賞取れるほどかなぁ……と思ってたら後半キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! うはぁ、途中まで普通のほのぼのコメディだと思っていたのにその展開はなんだw 平坦なコンクリートの上を歩いていたら途中でいきなり落とし穴にはまったような驚き。でも嬉しい驚きですねこれは。このあたりの展開の突き抜けっぷりに比べるとラストのいい話オチは上手くまとめてはいるけど、ちっちゃく見えますね。そしてどうしてあのシーンに挿絵がないのかと小一時間(ry

最後まで読んで印象に残ったのがあのシーンというのは自分でもどうかと思うけど、良作良作。コンスタントに面白い作品を輩出してくれそうな作家ではあるので、次回作も期待。しかし、シリーズ化しそうだけど、このシーンを越えるインパクトが得られるかしら。

 評価:★★★☆

2006-2-06

[]容疑者Xの献身 著:東野圭吾

直木賞受賞おめでとうございます。評判どおりの良作。『泣けるミステリー』というと、感動できるストーリーでもミステリーとしてはダメだったり、その逆だったり、最悪両方ともダメだったりということがよくあるんだけど、この作品は感動ミステリーが両立した稀有な代物。予想もしなかった方向から解き明かされた真相に感嘆する一方で、予断を許さぬ展開の末に彼が出した結論が涙を誘う。設定や序盤からはものすごい二時間サスペンス臭がするんだけど、そこから先のストーリーにそんな安っぽさは微塵もない。なるほど、これは確かに純愛だ。それにしても天才を天才としてキャラ立ちさせられる東野圭吾の筆力はやっぱり凄い。

今まで東野圭吾感動ものというイメージが私の中にはなかったんだけど、この方面でも良作が書けるのね。多才な人だ。秘密白夜行も早い内に読みたいなぁ。

 評価:★★★★

 |