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2005-10-31

[]今月の三冊200510

1. 銀河英雄伝説 田中芳樹

2. 屋根裏の姫君 香山暁子

3. 黒い家 貴志祐介

銀英伝を始め今月は当たりが多かったー! 銀英伝は多分今年ベスト確定。とっとと外伝も崩さなきゃ。

屋根裏の姫君は有名な童話をオマージュした良作。少女小説はあんまり読んでなかったけど、これから開拓ですね。黒い家は噂には聞いていたけどマジ怖くてガクブル

次点は、空ノ鐘の響く惑星で8巻、三月、七日。、隻腕のサスラ。

今月の読了本数:40冊。

[]カエルと殿下と森の魔女―緑竜亭繁盛記 (ファミ通文庫) 著:橘柑子 絵:堤利一郎

面白いってーか、楽しいですね。ドタバタコメディファンタジーなら文句なく及第点の面白さ。ちと気になるところもあるけど、新人でこれだけ書けるのなら十分じゃないかな。

魔物の巣くう森にある緑龍亭に、ある日古代お姫様(らしい)カエルを連れた美形の王子がやってくる――。第6回えんため大賞優秀賞受賞作。わりと手垢のついた設定・ストーリーを、話の中枢には関わらない傍観者の視点から書くことで捻りを利かせてみました、という感じ。実際、成功しているかどうかはともかくこういった観点から書く話というのは結構新鮮。ただ、仕方のないことだったとはいえ、本筋の話は最後ちょっと適当に投げちゃった感があったのは残念。リュン父(最後まで名前が出なかった)の正体をやるためには仕方なかったんだろうけど。それ以外は概ね良好。リュンの軽妙な一人称と漫画的なキャラの掛け合いですらすらと読ませる良作。個人的にはアンバーよりもブラック派ということでひとつ(何)

特に人を選ぶと言うこともないので、誰にでもお勧めできる作品。ああ、そういう作品が一番安牌でいいですよね。値段分の元は取れる、ということで。一年近く前に出てから続編が出てないみたいだけど、個人的には続いてほしいなぁ。

 評価:★★★☆

[]ゲームの名は誘拐 (光文社文庫) 著:東野圭吾

ネタバレ食らうんじゃなかったorz だって父さん、映画化もされた有名な作品(しかも主演が藤木直人仲間由紀恵)だから全くの予備知識なしで読むなんて無理なわけで。

自分が企画したプロジェクトを中止にされた主人公は、中止にした専務の娘を誘拐することに。誘拐事件のあとの樹里の顛末と、その後で主人公が抱いた疑問を事前に知っていたんだけど、誘拐ものは基本的に好きだし(大誘拐は当たりだった)東野圭吾ということで期待してたんだけど……まさか誘拐の過程が全く楽しめないとは思わなんだ。犯人側からしか語られてなく、その上誘拐自体がゲーム感覚なので緊迫感などあるはずもなく。おまけに人物が揃いも揃って書き割りという酷い罠。まさに長編推理小説。終盤の急展開&真相こそがこの作品の面白いところであり、そこが楽しめなければアウトという典型的なミステリー。私はアウトorz 真相そのものは知らなかったんだけどね……反転部分のネタバレを知ってると一番重要な謎が速攻で分かっちゃって。分からないところももちろんあったんだけど、いかんせんそこが核だからね……残念。最後まで楽しめず、謎解きが終わった後の感想この役を山田奈緒子がやるのは無理があると思うよ、という時点で私終わってるorz

予備知識なしだったら、平均くらいには楽しめたんじゃないかな。ミステリーネタバレは本当に鬼門ですね。よく分かりました。映画はちょっと見てみたくなったけど。

 評価:★☆

[]アクアリウムの夜 (角川スニーカー文庫) 著:稲生平太郎 絵:緒方剛志

 評価:★★★☆

2005-10-29

[]丘の家のミッキー 1 お嬢さまはつらいよの巻 (丘の家のミッキーシリーズ) (コバルト文庫) 著:久美沙織 絵:竹岡美穂

内容からてっきりマリみてみたいなのを想像していたもんだから、ずいぶん違っていてびっくり。マリみて完璧ファンタジーでふわふわとした世界だけど、こっちは割りと現実に根を張ってますね。

お嬢様学園に通っていた主人公は、親の引っ越しのせいで地元の女子校に転校することに――。丘ミキ1巻。この手の少女小説では主人公に共感できるかで評価が分かれると思うのですが……いやホント最初どうしようかと思った。純粋培養のお嬢様ゆえか、ひたすら心が狭くて思い込みが激しくて、共感どころか反発を覚えてしまって……。この心の狭さは主人公としては非常に珍しい種類だと思います。レア物を見られた(と無理やり褒めてみる)なんで外れかなー……と思っていたら、後半になるにつれて主人公がまともに。作中でも書かれているとおり、環境の変化によるものですが、その主人公の変化が実に自然で好感。おかげで第二部は割りと楽しく読めましたとさ。ただ、この話って10巻も続けるようなもんでもないと思うんだけど……どうやって続けたんだろ?

前半読んだときはもうダメかと思ったけど、後半は割りといい感じで安心。次からは主人公に反発することもないと思うので、問題なく継続決定。

 評価:★★★

[]トリニティ・ブラッド―フロム・ジ・エンパイア (角川スニーカー文庫) 著:吉田直 絵:THORES柴本

リバーズ・エンドの時も思ったけど、1巻読んであわなかったシリーズは続きを読んでもやっぱりダメですね。そうでないシリーズももちろんあるけど。

短編連作の形式を取る、トリブラRAM1巻。長編のROMは微妙だったから、もしかしたら短編向きなのかもと思って読んでみたわけですが……ごめんなさい思い違いでしたorz 展開がありきたりで、レギュラーはともかく、その回限りのキャラが味方・悪役問わず非常に薄っぺらいのはいかがなものか。そしてこの前読んだ長編が楽しめなかった真の理由がやっと分かった。私アベルが好きじゃないんだ。腹が立つとかそういうわけじゃないけど、なんか話を終わらせるための都合のいい存在でしかなくないですか? その悪印象を覆すほどの魅力もなく、主役のくせに随分薄っぺらいし。だから唯一彼が出て来ないユーグの話はなかなか楽しめたんだけど……いくらなんでも主役の出ない外伝だけが楽しめたってのはなあ。

結局、私にはこの話があわなかった、ということを再確認しただけでした。ユーグの話の続きは少し気になるけど、さすがに続きはいいです。

 評価:★★☆

2005-10-28

[]象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫) 著:恩田陸

図書館の海を読んだ時も思ったけど、恩田陸って短篇下手な気がする。長編を書くとほぼラストがぐだぐだになるんだけど(ならなかったのって夜のピクニックくらいじゃない?)、そこに至るまでの過程の面白さは長編の方が数枚も上。

関根ファミリーの父・関根多佳雄をメインに据えた短篇連作ミステリー。不安に思っていたミステリーの部分は、予想していたよりもまともで安心。まあその予想が酷かったから、というのもあるけど。だけどいいのもそこだけ。そもそも恩田陸ミステリーの面白さを期待していない身なので、ミステリーのまともさと引き替えに恩田陸の味とも言うべき酩酊感・幻惑感を失ったこの作品をあまり楽しめなかった。確かに推理しているんだけど、それだけなんです。他の部分が削られすぎて、その削られた部分が好きな人間としては微妙。そして謎もまともではあるけど別に素晴らしく魅力的なものばかりってわけじゃないので(ry ただ、いくつかの短篇は、ラストに嫌な曖昧さ・不安を孕んでいて、全ての作品がつまらなかったというわけでもないです。あと、乱歩好きな人間としてはD坂の話はちょっと嬉しかったです。

つまらなかったというほどでもないけど、総じて微妙推理小説というくくりに囚われすぎていたのでは? 今度はちゃんと長編を読もう。

 評価:★★☆

[]リバーズ・エンド〈2〉slash the heart (電撃文庫) 著:橋本紡 絵:高野音彦

1巻がかなりあれな終わり方だったので、続けたらもっとマシな物語になるんだろうと思っていたんだけど……うん、そもそもダメな終わり方だったのだから、それを続けてもやっぱりダメなものはダメだった。

リバーズ・エンド2巻。とりあえず突っ込ませてくれ。設定変わってないですか? 主人公が人体改造されたなんて設定がいつでてきた。いきなり出てきてものすごい混乱したんだけど……もしかして1巻に書かれていた? それ以外の設定も、作り込んでないんだろうなと言うのがありありと分かる甘さを露呈。雰囲気はいいのだから余計な設定つけなくても良いと思うんだけどね……電撃の売れ線狙い? 話も、前巻と同じく雰囲気はいい感じ。でも本当に雰囲気だけ。2巻に入って、舞台スクールなるところに変わって、新キャラが6人も出るのですが……捌ききれてないのが痛々しい。何人も新キャラを出して、その全員を1巻で掘り下げるというのはほとんど不可能だと分かるんだけど……。そのせいでせっかくのあのシーンやこのシーンがイマイチ感動できないという事態に。まったくもって惜しいことです。

特に設定を捻らない現代小説の方がこの人には向いてるんじゃないかな……と思ったり。雰囲気は本当に良いので。さすがに続きはいいです。

 評価:★★

2005-10-27

[]屋根裏の姫君*1 *2著:香山暁子 絵:楠本こすり

シンデレラといえば、昔立ち読みしたジェンダーについての本で取り上げられていたなあ。それにも書かれてたんだけど、シンデレラって結局容姿が可愛いから、ってだけで幸せなっちゃうんですよね。何の苦労もなく。私はそこら辺が気に食わなかったのですが……。

シンデレラベースにしたサクセスストーリー。確かにベースにしてます。前半の大筋はシンデレラストーリーとほぼ同じ。ただし後半は別物。でもすごくいい話でした。元になったシンデレラと大きく違うのは、只の敵役でしかなかった継母や姉たちをちゃんと掘り下げ、一人のキャラとして書いたところ。この継母・姉の「悪役ゆえの苦悩」の描写が実にいい。そして元が「幸せにしてもらう」話なら、こちらは「自ら幸せをつかみ取る」話。主人公たちがどん底に落ちてから、頑張ってはい上がって、そして迎えたハッピーエンドに思わず涙。シンデレラだけでなく、継母や姉も幸せになる、とてもいい話でした。

原作のシンデレラに納得がいかない人にこそ読んで欲しい話。ただし、シンデレラ王子恋愛より、家族の関係の方がウェイトを占めてるので、ラブストーリーを期待すると外れかも。

 評価:★★★★

2005-10-26

[]アルスラーン戦記〈1〉王都炎上 (角川文庫) 著:田中芳樹 絵:天野喜孝

か、書くことない……。だってまだまだ長編のプロローグという感じで、この時点で話にツッコミを入れるというのは野暮というもんでしょう。

アルスラーン戦記1巻。上に書いたとおり、話については本当に言うことないです。銀仮面の正体は見当ついたとかあるけど、滑り出しとしてはそこそこいい感じ。完膚無きまでの敗北を書くことで、これからの再起が際だつ、という感じかな? 世界観もルビの多さには驚いたけど、それ以外は普通の中世ファンタジーといった感じで意外性は特になし。その分、しっかりと構築しているところはさすが。キャラに関しては銀英伝よりもこなれてますね。ナルサスとダリューンの会話がすこぶるいい感じ。他のキャラに比べてアルスラーンがまだ立ってない気がするけど、これから確立することでしょう。

いつもより短めですが、とにかくまだ序盤なので……。まだ何とも言えないので、続きに期待。

 評価:★★★

[]ダレカガナカニイル… (新潮文庫) 著:井上夢人

おっかあさまー! 読んでいて思わずTRICKを思い出したよ。去年の文化祭クラス劇でTRICKの母の泉をやった人間には懐かしい限り。これで貧乳と巨根がいたら完璧だったんだけど。

宗教団体教祖殺害事件の時から、主人公の頭に謎の女の人格が住み始めた。著者デビュー作の多重人格ミステリ。650p近くもあるのに読んでいて全く疲れを感じさせない。これだけの厚さを気にさせないストーリーテリングの上手さと文体の軽妙さはさすが。主人公と頭の中の<声>との会話が実にテンポ良くて、すらすらと読めてしまう。もうストーリー云々抜きにして、その二人の会話を読んでいるだけでも楽しい罠。SFミステリとしては、殺人の謎が案外しょぼかったのが残念だけど、最後のあれには引っかけられた! 言われてみると推測できる材料はすでに仕込まれていたんだけど、あーでもこれは全く考えつかなかった。読んでいて思い出したんだけど、田代裕彦のキリサキってもしかしてこれからも影響受けてる? キリサキがハサミ男から影響受けまくってる、というのは良く聞くけど……。後味の悪いラストもいい感じ。

これだけ長い小説なのにほぼ疲れなかった、なんてのは初めてかも。読書って意外と労力使うからね。プラスティックも当たりだったし、井上夢人の他作品もコンプリートしたい所存。

 評価:★★★☆

2005-10-25

[]舞姫 (集英社文庫) 著:森鴎外

あー……うん、まあなんだ、私に古典文学はあんまり合わないのかも知れない。っていうか舞姫現代文の授業の時に一ヶ月みっちりとやってこそ面白いものであって、ざっと読んでもダメなんだ、ということがよく分かりました。

表題作の他に、普請中、妄想、雁を収録した4篇の短篇集。いやあ参った。舞姫が書かれたのは近代だからと油断していた。最初のページを開いてビックリ。どこの古典演習かと思ったよ。つーことで話の面白さ以前に古さを演出した文体がただひたすら合わない。内容は何となく分かったけど面白いとかいう気にはなれなかったな……。ということで舞姫でほぼリタイヤ状態になり、普請中を読み始めて第二のビックリ。文章読みやすいじゃないかよ! どうしてこれを一番にしないんだ。内容も、掌編故の鮮やかさが伺え、チラリズムだけど女の心情がよく分かるラストがいい良作。次の妄想は個人的には微妙。っていうか小説と言うよりは随筆ですよねこれ。最後の雁は一番長いし、お玉の描写はいいんだけど……いかんせん前ふりが長すぎる気が。その前振りの部分もまあまあ面白いんだけど、ラストが今までの周到さに比べるとあっさりしすぎて食い足りない。これにも深読みすれば色々と意味があるんだろうけど……さすがに何度も読む時間も気力もないです。

文学を愛する人にとってはいいんだろうけど……私にはもっとエンターテイメントしたやつでちょうど良いです。とりあえず森鴎外はもういいか。

 評価:★★☆

2005-10-23

[]東京S黄尾探偵団 少女たちは十字架を背負う (東京S黄尾探偵団シリーズ) (コバルト文庫) 著:響野夏菜 絵:藤馬かおり

予想通りの地雷。つまらなさ・出来の悪さで言えば核地雷級なんだけど、なんとなく読む前から地雷だろうな、と思っていたらそこまでのダメージはなかったです。

S黄尾1巻。保健室を探偵事務所とする探偵団は連続誘拐事件の解決に乗り出す。まず書き出しからしてあり得ない。小説を初めて書いたってくらいの素人が書いたような出だしにいきなりずっこける。そしてギャグが書きたいのかシリアスが書きたいのか、多分両方を書きたいんだろうけど、残念ながらどっちつかずの印象がぬぐえない。くすりともこないギャグでずっこけ、引き込まれるどころかツッコミたい所だらけでむしろ醒めるシリアスキャラクターも同等にひどい。立っているけど好きになれないorそもそも立ってない・いる意味が分からない、というキャラしかいない、ってなんだそれは。しかも揃いも揃ってどこの中学生が考えたキャラですか? と聞きたくなるくらい厨設定。というかみさおの過去自業自得だからシリアスにはなりえないよな……。これでシリアス、ってアホですかこいつら。キャラの書き分けも当然出来ているわけもなく。あ、あらすじを見るとミステリーっぽいけど、まかり間違ってもミステリーじゃないです。ミステリーだと思うと結末こけてますね。まあこけっぱなしのストーリーだから今更気にならないけど。

この作品の何が一番信じられないって、これが作者のデビュー作じゃないってこと。え、えーと、ファンタジーなら書けるとか昔はまだまともだった、とかそういうオチですか? まあ期待して読んでいたら核地雷級だったから、期待しないで良かったです。

 評価:★

[]宝はマのつく土の中! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

ヨザックーー!! このラストで続編が来年とかあり得ないですよマジで……。三月に出るらしいけど、遠いなぁ。

まるマ15巻。作者が苦労しているのがよく分かる展開でした。……で、その苦労が面白さに繋がっているかというとそうではなくて、……正直話が進まない・謎ほとんど解決していない、で煮え切らない。昔に比べるとスピードも面白さも落ちてるよなぁ……と懐古厨な気分に浸っていたら……う、うそぉ!? えーと、散々友達とかから聞いていたから覚悟はしていたけど何この鬼展開。まずヨザックで第一の鬱、そしてラストの陛下で鬱という二段構えの鬱展開にこっちもorz ラストの陛下に関しては私はそれほど深刻に考えてはいないですが(だってこの小説の基本はユーリの一人称だし)うわぁぁぁグリ江ちゃん、グーリー江ーちゃーんー……。でもこんなことやっちゃってこの後どうするんだろ? これであっさり戻って来ちゃったりしたらかなり興ざめだし、かといってこのまんま継続ってわけにもいかないだろうし。

ほんとこの引きありえないです。来年の新刊に色々期待。正直、次で謎を回収し始めないと、いい加減風呂敷畳めなくなると思うし。……ということで(まだ外伝が1冊残ってますが)まるマ既刊は読了。総括すると、当たりでした。初期~カロリア編までは(BLがちょっとでも駄目な人じゃなければ)文句なくオススメ。カロリア編終了以降は明らかに面白さもペースもダウンしてるし。……でもカロリア編読むと絶対その先も読みたくなるというひどい罠。角川の商法主義をかいま見た気がした。

 評価:★★☆

2005-10-22

[]銀河英雄伝説 落日篇*1 *2 著:田中芳樹 絵:道原かつみ

ああ、終わった。感慨のあまり何も言えない。……というのが本心なのですが、それでは感想にならないので少しだけ書くことにします。

銀英伝最終巻。もはや何を言っても既刊のネタバレになるので以下略。本当に素晴らしい物語でした。最後まで熱さ・重厚さを失わず、確固たる信念を持った者たちの迎えた結末に涙とため息が。ひとつの伝説は、終わりに急ぐことも迷走することもなく、しめやかに幕を下ろしました。物語を見届け、最後の一文の美しさにそっと目を閉じる。読後感慨のあまりしばらく呆然としていた、なんてことは久しぶりです。

本当に読めて良かった。素晴らしい物語でした。これ以上、言葉ははいらないでしょう。ということで、以上。

 評価:★★★★★

2005-10-21

[]蟲と眼球とテディベア (MF文庫J) 著:日日日 絵:三月まうす

本当に分かりやすいくらい西尾の影響受けてるなぁw 良い悪いとかじゃないけど、もろ出すぎ。当時17歳……私と同年代かよ! 上手いなぁ。秋田禎信ほどの衝撃はなかったですが。

エデンの林檎なるものを食べてしまった恋人と、彼女を狙う蟲と戦う少女・眼球抉子をめぐる話。……ジャンル分け出来ない。とりあえず導入部から読者置いてけぼりでホントどうしようかと思った。書き割りのような薄っぺらい主人公とその彼女のラブラブっぷりを見せつけられても萌えられませんよ。特に主人公の書き割りっぷりは酷すぎ。そしてこんなどうでもいい二人が迎えた結末も簡単に予想できて、やっぱりどうでもいい。つか、適当に悩ませてその結末は安易すぎると思った。そしてページ数の都合か適当にすっ飛ばされた夢界獣の死に方に南無。……と叩きましたが、もちろんいい点もあります。それはグリコ。書き割りのようなキャラたちの中では彼女は唯一といっていいほど突き抜けて立っているキャラであり、境遇から心を閉ざしていた彼女が他人に心を許すまでの物語はベッタベタだけど素直に良い物です。他のキャラに比べると彼女への気の入れようは段違い。多分、作者も途中から彼女主人公シフトして書いたんじゃないかな。

ということで、グリコの物語としてみれば良作。グリコに関すること以外はおざなりすぎてダメ。後者がどうにかなればもっと上の賞狙えたんじゃないかな、と思わないでもなく。彼の作品ではこれが一番微妙らしいので、機会があれば他の作品も読んでみます。

 評価:★★★

[]BLOODLINK―獣と神と人 (ファミ通文庫) 著:山下卓 絵:HACCAN

さすがに刹那ほどの衝撃はなかったにせよ、期待通り面白い。ページ数上、仕方がないところもいくつかあるにせよ、総合的に見ると当たり。ただ一ヶ所だけ声を大にして突っ込みたいところが。

ブラリ1巻目。この巻だと後半の部分は何言ってもネタバレに成りますね。とはいっても、私は去年出た外伝・刹那を先に読んでいたので何となく知ってましたが。内容はというと、上記の通り満足できる出来でした。最初のラブコメ具合にちょっとつまづきかけたけど、終盤の非日常への戸惑いを書くためにあったのだと思えば納得。日常の崩壊というのは、それが起こるまでに日常をちゃんと書いた上でこそ成り立つものです。友達三人のキャラ立ちが微妙だったのが少し残念だけど、ページ数を考えると仕方ないかな。シリーズの導入部としては十分すぎる出来で、本当に面白かったんだけど……やっぱり言わせて下さい。フィクションだから、倫理観がとかとやかく言う気はないけど、……主人公よ、ちょっとは葛藤しようぜ? 君が好きになってるのは9歳の小学生だよ? ロリコンじゃないって否定しているならそんな簡単に恋心を受け入れるんじゃなくて、ちょっとは悩もうぜ? 君は普通の男子高校生だろ? ……以上、ツッコミ終了。

何度も言うようですがもちろん面白かったですよ? でもやっぱり主人公カップルが受け入れられない罠。カンナは可愛いけどさー。これは私にロリ属性がないからなのでしょうか? でも面白かったので、続きも見つけたら読みます。

 評価:★★★☆

2005-10-20

[]獅子の胎動―デルフィニア戦記〈6〉 (C・NOVELSファンタジア) 著:茅田砂胡 絵:沖麻実也

よーし、順当に面白くなってきたぞー。もはや安定シリーズとなっていて、こんなふうに最初微妙でも後々面白くなってくるシリーズがある者だから、最初の1巻で判断しちゃダメなんですよね。

デル戦6巻。前回少し危惧していたマグダネルとのケリの付け方は存外良かったです。あと1巻くらい引き延ばすんじゃないかなーと思ってたけど、ここで終わらせてしまうのも潔くて良いかな。本筋ではないわけだし。また、キャラの掛け合いもこなれてきたのか最初の頃に比べると随分テンポ良く楽しくなってるのも好感。こうした掛け合いを入れることでバランスを取り、基本はシリアスなのに重くなりすぎてていないのも作者の力と言うべきか。前回初登場のシェラも、背景にあるファロットの一族も含めて今回でかなり掘り下げられてましたね。思った以上の良キャラになるかもしれない。リィの特別扱いについてはもはや慣れたのか言うことないですが、リィ自体も最初に比べるとかなりいいキャラになってきているし。ということで、今回もテンポ良く盛り上がる展開に楽しませていただきました。その分、引きが弱かったのがちょっと残念

ところで第二部は次で終わりらしいけど、一体どうやって終わらせる気だろ? どんな区切りをつけるのか、全く見えてこないので、不安半分期待半分。

 評価:★★★☆

[]三月、七日。―その後のハナシ (ファミ通文庫) 著:森橋ビンゴ 絵:世良シンヤ

真っ当な完結編。前回のあのラストを引き継いで、三月の迷いや七日の想いにしっかりと結論を出した。もうそれだけで評価できる。青春小説では出色の出来映え。

タイトルで分かるとおり三月七日続編。前回のラストが、続きが考えられないってくらい綺麗に終わっていて、少々不安だったのですが……良い意味で裏切られました。真希がいながらいまだにくすぶり続ける三月としこりが残っていても今の状態を素直に受け入れている七日の対比が非常にいいです。思春期微妙な心の揺れ動きを、その繊細さを損なうことなく書けているのは素敵。中盤以降、二人の想いが逆転してからの描写も良好。そして、二人の出した結論に思わずため息。挿絵も含め、ラストシーンは泣きたくなるほど綺麗でした。真希や新キャラ赤坂の描写も、本人視点は作中にないのによく掘り下げられています。七日の友達の映子と岬の扱いが中途半端だったのが難点だけど、それ以外に不満はなし。終わってみると、この続編なしだなんてありえないと思えてしまうから不思議。それくらい綺麗なラストでした。

ネタ的には私の苦手とするところなんだけど、それもほとんど気にならないくらい良い小説でした。青臭い恋愛ものを読みたい方は是非。オススメ

 評価:★★★★

2005-10-19

[]隻腕のサスラ―神話の子供たち (講談社X文庫―ホワイトハート) 著:榎田尤利 絵:北畠あけ乃

1巻読んだ時はそこまでは思わなかったんだけど、これは予想以上の良シリーズになりそうな予感。っていうかこの展開でどうして続編を買わなかったんだ私はorz

神を喰らう狼の続編、神話子供たち2巻目。主人公事故によって11歳以前の記憶と左腕をなくした女サラ。サラがこの先メインで話が進むと言うことは、神を喰らう狼はいわば外伝的な存在だったということで良いのかしら。彼はまだ出てきそうにないし。それはおいといて、いやあ面白かった! ストーリーそのものは割と正当派だけど、見せ方が上手い上手い。事件は起こっても比較的緩やかに進む前半とジェットコースター的な展開を見せる後半という構成もメリハリが利いていい感じ。神を喰らう狼でも思ったけど、心理描写が実に丁寧なので読んでいるうちに自然に引き込まれていく。表情に乏しいサラの描写も非常によく、そのおかげで彼女が感情を爆発させるラストは胸が熱くなった。他のキャラもおおむねいい感じ。ただ、どのキャラも行動目的が『運命』という言葉で説明されているきらいがあるのがやや難。まあ、これはその後にちゃんとその運命と向き合ってくれる、ということで。

サラの物語はまだ始まったばかり。導入部でこれだけ面白いのだから、これから先の物語に期待したくなるのも必然。次への期待票も込めて。3巻どこかに売ってないかな……。

 評価:★★★★

[]レクイエム (文春文庫) 著:篠田節子

直木賞を受賞した女たちのジハードは未読だから決めつけるのは悪い気がするけど、篠田節子は基本的に短篇に向いていない人なのかも知れない。

太平洋戦争の時にニューギニアへ行き、帰還後法華経にのめりこんだ叔父の願いを聞く表題作を始めとした6編の短篇集。正直に言うけど、篠田節子って短篇の書き方が身に付いてないような気がした。最初の話と表題作以外、もうちょっとページ数かけて書きなよと言いたくなるくらい描写が圧倒的に足りない。説明そのものは上手なんだけど、ほぼそれだけですましちゃうものだから、話に厚みが出てこないんだよなぁ。特にニライカナイはあと3倍は必要な容をたった40Pばかりに無理矢理まとめているものだから盛り上がりも感情移入もあったもんじゃないよ。ダイジェスト読まされているような気がした。もったいない。そんな中、表題作は短い中に戦争の悲惨さをぎゅっと詰めこみ、それを押しつけがましいところなく読者に伝えている佳作。短いなりに上手くまとまっていたし、表題になるだけのことはある。テーマの伝え方や雰囲気ならコンクリートの巣もいい感じなんだけど、あれはオチが唐突なのがなぁ……。そこだけ残念

全体的に低調な短篇集。表題作は光っていたけど、6編中1編だけがよかった、っていうのもなぁ。同じく短篇である(ただしこちらは連作だけど)女たちのジハードはどうなのかしら。

 評価:★★☆

2005-10-18

[]毒笑小説 (集英社文庫) 著:東野圭吾

うむぅ、つまらないってわけじゃないんだけど、いかんせん笑いのツボからことごとく外れている……。名探偵の掟での自虐・痛烈な皮肉が消え去ると、ただのブラックジョークになってしまった、ということかな。

孫と遊ぶために孫を誘拐しようとする金持ち老人の話『誘拐天国』を始めとする10篇の短篇集。すごーく星新一の匂いがする。星新一一年くらい前にいくつか読んだんだけど、毒を内包している感じが特に似ている。星新一SF=この作品、という感じ。誘拐天国誘拐連絡網なんて特にそんな感じ。10編どれもそれなりに良くできてますが、タイトルにある『笑』を期待していた身としてはちょっと肩すかし。うーん、イマイチ笑いのツボではなかったです。くすりとくるのがいくつかあったくらい。個人的に好きなのは、つぐないと本格推理グッズ鑑定ショー。前者はどこかおかしくて切ない雰囲気がこの中では際だっていますね。後者は、東野圭吾初読みが名探偵の掟である人間にとっては非常に楽しかったです。過去の作品を利用し、それをこねくり回すやり方は本来好きじゃないんだけど、これはギャグオチになっていて許容範囲名探偵の掟自体がパロコメディだったしね

個人的には、10編のどの短篇よりも巻末の対談が笑えました。東野圭吾京極夏彦ってそれはお笑いを語るメンツじゃないだろう。そのギャップが楽しい。京極のコメディは怖いもの見たさで見てみたい。

 評価:★★★

[]我が家のお稲荷さま。〈5〉 (電撃文庫) 著:柴村仁 絵:放電映像

うーん、前作読んだ時は、また前のまったり路線に戻ってくれるだろうと思ったんだけどなー……。私はこの作品ののんべんだらりとしたところが好きなわけであって、それがなくなると辛いものがあります。

稲荷様5巻目。今回のメインは三巻で出てきた宮部さんのこと。なんか話が期待していたのとは違う方向に行っちゃって、放電映像の絵の変わり具合にはもはや突っ込む気力もないです(放電映像の絵好きですけど)4巻で作者の中で何か変わったのでしょうか、ほぼ事件についての描写で占められていて、キャラの掛け合いなどの無駄なところがほとんど省かれています。故にこの薄さ。普通なら内容が凝縮されてる! と喜ぶところなのですが……私はその余分なキャラの掛け合いシーンが好きなのであって……。事件の結末は読んですぐに分かる上にいかんせん盛り上がりに欠けるので、正直読んでいてもあまり楽しくないと言うのが本音。あと今回のメインであるはずの宮部さんの描写が明らかに足りてないです。ぽっと出てすぐに消えちゃうので、キャラへの愛着がどうにもわきません。

2巻連続アクションメインの本が出ちゃったってことは、このシリーズはこれ以降もその路線でいくのかしら? うーん、それならもう切りで良いかな。

 評価:★★

[]やがてマのつく歌になる! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

アニシナ>>>>(越えられない壁)>>グレタ>>>>グウェンダル確定。哀れグウェンダル。

まるマ14巻。私はイラストにはあまり何も言わない質なのですが、今回ばかりは言わせて下さい。P171のイラストの手! 手! あれですか、上半身だけというのはつまり腐女子の妄想の糧にしろと(ry とにかく手がテラエロス。他にもアニシナ馬乗りイラストもあって満足。そんなところで満足してちゃダメ人間ですね。いいんですもうダメ人間だから。え? 話? とりあえず前巻での停滞っぷりからすると少しは進んだと思いますよ? それでも前半は多角的展開があだとなってかなりの停滞ぶりでしたが、後半はサラの正体発覚もあって盛り返してきました。サラの正体やその後の行動は今までの展開から十分に予想できるもので正直そこまで驚かなかったですが……ラストに唖然。詳しい事情は多分次で話されると思うので私もまだよく分かりませんが、とにかく先にお嬢様読んでいて良かったです。言えるのはそれだけ。よかった、あれにもちゃんと意味があったのね。

今までの展開で語られてない謎がかなり積まれているので、いい加減そちらの解決にも手をつけなくちゃ駄目なんじゃないかな……と思いつつも次巻に期待。文化祭で色々な人がヨザックがヨザックがと言っていてめっちゃ怖いですが。

 評価:★★★

2005-10-17

[]アシャワンの乙女たち (ソノラマ文庫) 著:牧野修 絵:山本ヤマト

ジョグレス進化!! もしくは、念心! 合体! GO! アクエリオン!! 電車で読んでいたから笑い堪えるのに必死だったよw

主人公達が通っている女子学園は実は悪・ドゥルジと戦うためのアシャワンの乙女を育てるための学園だった! 特撮っぽいアクションストーリー。後書きにあった、この作品のモチーフにした特撮がなんなのかはさっぱり分かりませんが、それ抜きにしても面白かった! 普通だったらこの三倍はかけるだろう内容を350Pに凝縮していて、どう考えても詰め込みすぎなんだけど何故かそれが気にならない。ダイジェストに陥りそうなところもなし。ストーリーはというと、今時こんなのありか? というくらいに分かりやすい勧善懲悪正義を愛し悪を断つ! やっぱり根本的にこういう分かりやすいのが好きみたいです、私(王道とかベタとか割と好き)百合っぽい女の子の掛け合いに和み、合体バトルに燃え、全力疾走した物語は、最後まで息切れすることなく駆け抜けました。特撮らしくぶっとんでいて、突っ込みたいところは色々あるけど、それは野暮というものでしょう。

勧善懲悪とかベタとかアクションとか特撮とかが好きな人は是非。冒頭に書いた奴はどうしても突っ込みたかったところですw いやーぶっとんでいた。

 評価:★★★☆

[]あなたは虚人と星に舞う (徳間デュアル文庫) 著:上遠野浩平 絵:中澤一登

約2年振りに氏の作品で面白いと断言できるものを読んだ。2年前というと……確か僕らは虚空に夜を視るを読んでた頃ですね。

ナイトウォッチ三部作の三つ目。女の子が、自分を殺そうとする敵と戦う、という基本的にはそれだけのストーリーなんだけど、そこは設定の妙で読ませてくれる良作。氏の作品でも随一のオリジナリティを持つ設定で、それを上手くいかしているのはさすが上遠野浩平といったところ。設定・ストーリー曖昧なところもあるけど、そこらへんは氏特有のごまかしの上手さで気にならない。しかもごまかしまくっていてもはや何を話しているのかよく分からない会話も今回は少ないのが嬉しいところ。そして何よりバトルシーンが面白い! ブギーの特殊能力バトルはそこまでいいとは思わなかったけど、なんだバトルシーン書けるじゃん! 設定を上手くいかしているので白熱することしきり。ヴルムンゼストの登場も独創的で良好。終盤のあれの登場は唐突だったけど、ナイトウォッチシリーズである以上仕方のないことでしょう。ラストの苦みと諦めと少しの希望が残るラストも◎。キョウとセンチの交流をもっと書いてくれたら言うことなかったんだけど、まあイイや。

氏の作品で久々に内容の濃い物を読みました。もうそれだけで満足。この作品が最後を飾るにふさわしいものというとなんとなく違う気もするけど、ここで終わるのが潔くていいと思います。え? 蛇奇使い? なんですかそれは?

 評価:★★★☆

2005-10-16

[]ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA) 著:桜庭一樹

………うーん………。なんだかよく分からないままに読了桜庭一樹は基本的に感覚で小説を書く人だと思っているけど、これはその極み。合う人にはかなりいいんだろうけど……。

魔女裁判の世界での話<第一の箱庭>、近未来グラフィックデザイナーの話<第二の箱庭>、そして主となる少女の話、という三部構成。第一の箱庭での緊迫感・異様な雰囲気に、これはかなりレベルの高い作品なんじゃないかと思った。第二の箱庭は、話はそれほどでもなかったけどゴシックバーチャル世界の雰囲気はやはり良かった。そして軸となる三番目の話は……。うん、一言で言うと合わなかった。今時の女子高生の一人称で綴られる話なんだけど、正直いまいち彼女とふれ合わない。んで、ふれ合うことのないまま突っ走られてしまって、置いてけぼりのまま読み終わってしまった。そして軸となる話が合わない以上、第一の箱庭も第二の箱庭も相対的に合わないものとなってしまう。なぜなら、どちらの話も、結局は軸となる話を語るためにある、準備期間のようなものだから。青井ソラは携帯を通して世界と繋がれたけど、私はこの小説の世界とは繋がれなかった。ただ、それだけのこと。

……とまあ色々言ったけど、私には合わなかった、の一言で終わっちゃうのが事実桜庭一樹の少女一人称の小説で合わないという時がくるとはなぁ。あと、一つだけ。村上春樹チルドレンの匂いがした。

 評価:★★☆

2005-10-15

[]食卓にビールを〈3〉 (富士見ミステリー文庫) 著:小林めぐみ 絵:剣康之

前巻に比べてSF増量しているけど、基本的にはいつものビールと同じノリ。ゆるーっと笑って、ぬるーく楽しむ読み方をすれば良し。まあ、いつも通りです。

ビール3巻。いつも通りよく分からない短篇ばっかりな短篇集。このシリーズはこの妙なノリをなんとなく楽しめばリラックスできていい感じなので、それ以上のものは求めてません。個人的には前巻よりもSF分が増えているのが嬉しかったかな。一巻のシュレディンガーの猫篇とかを思い出した。SFを非常にわかりやすくかみ砕いて話に使っているところには好感。あと、未来人とか出てくる人外キャラ未来人は人間だけど)のバリエーションが増えましたね。………ごめんなさい。これ以上書くことないです。

基本的にいつものノリなので、既刊が楽しめた人は間違いなく楽しめるでしょう。リラックス本としては最適です。そして感想を書く時に困るのも事実

 評価:★★★

2005-10-14

[]お嬢様とは仮の姿! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

まるマ読んでいたころから薄々感じていたけど……やっぱりこの人はまるマだけの一発屋ということでいいのかしら。いや、別作品一冊(外伝だけど)読んだだけでそう判断するのは早計だと思うけど。

まるマ外伝で舞台ナチスが活動していたころの地球。まさに本編のストーリーを補完するためだけにある外伝という感じで、この巻単体で面白かったかと訊かれると否。出てくるキャラクターは最後の某人を除いて全員初出のキャラなのですが、出てくるキャラ出てくるキャラことごとく立ってません。厚みがあるわけでもなし、かといって突き抜けているわけでもなし、当然魅力があるわけない。そして別にストーリーテリングの上手い人というわけではないからキャラでつまずいた以上ストーリーでも突っかかってしまい、結果最後まで乗り切れずに終了。このライトノベル作家がすごい! では一人称が苦手、と答えていたけど、これを読む限りむしろ三人称には向いてないんじゃないかと思った。あんまりテンポが良くないんですよね。それと、せっかくの男女ものなのに全く萌えない。どうして萌えないかというと、上でも書いたようにキャラが立ってないことにつながるのですが……。三人称と同じく、もしかして男女の恋愛にもあんまり向いてない? なんで最後ラブオチになるのかイマイチ分からなかった。

うーん、この人がまるマだけの一発屋なのか、それとも三人称で男女ものという向いてないものオンパレードだったのか。どちらかは分からないけど、結局イマイチだったということで。

 評価:★★

[]黒い家 (角川ホラー文庫) 著:貴志祐介

どうして今まで積んでいたんだ、私。ページ数が割りと多いし読んだらかなり疲れそうだしでなんとなく後回しにしていたのですが、……ホント反省。

保険詐欺テーマにした、人間の怖さを書いたホラー。めっちゃ面白かった! 読むのに熱中しすぎて昼寝する時間なくなったよw最初の書き出しでなんとなく敬遠していたんだけど、読んでいくと保険金をめぐる様々な事象の説明の上手さが分かる。しかもそれをちゃんと機能させているところがなお上手い。ホラーとしては、中盤までは特筆するほどではないんだけど、真犯人が明らかになると加速度的に怖くなる。犯人の底の見えないところ・得体の知れなさが、犯人をさらに化け物にさせていて、その存在感は絶大。そこら辺を過ぎると、あまりの怖さ・不安に先を読まずにはいられなくなくなり、結果一気読み。話の先が気になってとか、熱くなって一気読みとかはあるけど、怖すぎて一気読みは初めてです。ただ、終盤の恐怖を鑑みると、エピローグは蛇足感が否めないかな。いや、あのヒロインもあれはあれで狂っていたけど。どうしてあの子は擁護するんだ主人公。

ともあれ、非常に面白くて満足。積読していたのは本当に勿体なかったなぁ。そういえば黒い家って映画化されてますよね? 次は同じく映画化されている青の炎に挑戦します。

 評価:★★★★

2005-10-13

[]銀河英雄伝説 回天*1 *2 著:田中芳樹 絵:道原かつみ

ああぁぁぁぁぁぁぁぁ……。・゚・(ノД`)・゚・。前編は割と泣くだろうなと覚悟していたけど、まさかこの巻でここまで泣くとは思わなかった。涙と鼻水で小説が読めないよママン。・゚・(ノД`)・゚・。

銀英伝17・18巻目。徳間書店版だと9巻目。ラインハルトとヒルダの、おまえらいくつだ! と言いたくなるくらいぎこちない関係とか、やっとスポット当たりそうなユリアンとか、他にも見所はあるんだけど、今回はとにかく下巻の後半が……ベタではあるけど、親友同士が袂を分かって戦うというのはやっぱり盛り上がる。何より彼が死んでから下巻最後までの展開に涙腺崩壊。ヤンの時も思ったけどこのシリーズは本当に主要人物が死ぬときの描写・台詞が神ですね。・゚・(ノД`)・゚・。いやもうホント、あのシーンからずっと涙が止まらなくてどうしようかと思った。年取ると涙もろくなると言うけど、本当ですね。この展開に持っていくために野望篇から丁寧にキャラ描写していたのかと思うと、本当にすごいですね。構成が実に緻密。この展開になるとラスボスはやっぱり地球教でFA? 黒狐も叛乱以降は姿を見せなかったしなぁ。

しかし元から面白いシリーズだったけど、このごろは神がかってきてるなあ。長かったシリーズもあと2巻で終わり。正直終わりは全く見えてないですが、不安はなし。ただ、期待して待つ。

 評価:★★★★☆

2005-10-12

[]ターン (新潮文庫) 著:北村薫

あー……期待値が高過ぎたかも。なまじスキップがよかったものだからどうにも見劣りしちゃうんだよなあ。ひどい出来では決してないのですが。

事故がきっかけに誰もいない世界の一日をループし続ける事になった女性の話。二人称なんて文体が本当にあったのか! 噂には聞いていたけど実際に目にした驚きはまた格別。その上つっ掛かるところがないくらい読みやすいし。しかもそれをただのインパクト目的なだけでなく、ちゃんと意味を持たせているのもすごい。ただ、肝心の物語はというと、決してつまらなくはないですが、かといって面白いかったかというとそうでもない。全体的に冗長な感じが否めないんですよね。このくらいならあと50Pくらい削れたような。舞台設定から考えると、ともすれば飽きそうになる話になりそうなのを、視点を変えたりすることでなんとか回避しているな、とは思いましたが。ターンの謎については納得の出来るものだったけど、ターンからの脱出に関してはあっさりしすぎちゃっていて、そこが残念。しかし、話そのものはタイムループというSF設定を上手く使った良作。ただ、ラブストーリーとしてはツボからはちょっと外れてました。

私はスキップレベルのを期待していたのでそれほどではなかったけど(スキップが私の中で美化されているという可能性もありますが)、良作なのは確か。さて、三部作最後のリセットはどうなのかしら。

 評価:★★★

2005-10-11

[]空ノ鐘の響く惑星で〈8〉 (電撃文庫) 著:渡瀬草一郎 絵:岩崎美奈子

いつもより100Pほど増量されてるけど、中身は期待通り。ぎゅっと内容が濃縮されていて、400Pなのに全くだれることなく一気に読了。もはや鉄板の面白さ。

空鐘8巻。今回のメインはVSタートムの国境防衛戦。4巻の時は内乱の決着があっさりしすぎていてそこが不満だった。なので今回はちょっと不安だったんだけど……いやはや全くの杞憂でした。敵・味方ともに重厚なキャラ描写はもはや職人技。普通だったらただの嫌みな端役・主人公たちの敵――つまり『悪』、くらいにしか書かないだろうキャラにもスポットを当てて、単なる書き割りに終わらせないのはさすが。また、ともすればアレとかアレとかアレとかデウスエクスマキナ的にとられかねないものを、前もって伏線をしいておくことで読者に自然に受け入れさせる構成も文句なし。緻密な構成と重厚で信念のあるキャラに支えられた戦いに燃えずにいられようか。完全には決着が付いていないけど、そもそも一つの戦いで戦争が終わるわけがないので全く無問題。ということで今回も何の文句もなく終わるのかと思ったら――ラストが……。いや、ああなったのはもちろんうれしいことですよ? ただ、前巻であれだけ引っ張ったのに、こうもあっさり解決させられるとかえって興ざめ。あと1巻くらいは放置プレイした方が良かったんじゃないかなあ。

なんにせよ、今回も期待を裏切らない面白さで大満足。まだ色々と問題が残っているので、何巻続いてもいいから綺麗に片づけて欲しいものです。最後までついていくので。次は12月だそうで。期待大。

 評価:★★★★

2005-10-10

[]世界が終わる場所へ君をつれていく (MF文庫J) 著:葛西新哉 絵:尾谷おさむ

この本のように途中から一気に面白くなるから読書というものは一端始めたら途中下車できないわけで。前半がどうにも合わなくて放棄しようと思ったけどいやはや止めなくて良かった。

突然飛来してきた謎の物体『銀の樹』を見に行こうとする主人公と、銀の樹に殺されに行く少女のボーイミーツガール。ボーイミーツガールというのは男女双方が魅力的であって初めて面白く感じるものだと思うのですが、最初この少女の方がさっぱり合わなかった。他は特に普通なのに銀の樹に関わること一点のみが突き抜けた電波という少女の設定が、銀の樹という要素以外は完全な現代物という雰囲気からすごく浮いているように思えて違和感がぬぐえない罠。まあこの設定がなかったら話成り立たないんだけど。ということでどうにものめり込めないまま読んでいったら中盤の熱が出るくだりからぐんぐん引き込まれていって、その勢いを落とさないまま読了。最初は電波少女に引きずられているようにしか見えなかった少年の意思が表れたあたりから良くなっていったような。少女を守りたいという少年の意志とか思春期ならではの心の揺れ動きとか、これこそボーイミーツガールの醍醐味! といえる面白さ。ラストも綺麗な終わり方で満足。銀の樹に関してはあれで仕方ないでしょう。UMAがそう簡単に正体判明したら興ざめじゃないですか。あれと同じ。

なんにせよ、評判通りの良作で満足。結局電波少女は最後まで合わなかったけど、まあ文句はなし。前半のイマイチさと後半の面白さを折半して、評価はこんなところ。

 評価:★★★☆

[]世界の中心、針山さん (電撃文庫) 著:成田良悟 絵:エナミカツミヤスダスズヒト

短編連作になっても成田成田でした。ということでいつもどおりヒャッハアなキャラが、ヒャッハアなノリで暴走しながら最後には綺麗にまとまる話。……自分でも訳が分からなくなってきた。

ベッドの下にいる殺人鬼、という都市伝説を元にした2サイドで物語が進行するとしれじぇ他、魔法少女脱獄する話などの3編の短編&書き下ろし中編。どの作品も微妙に絡み合ってます。イラストレーターが2人と妙に豪華。面白かった! 一言で言うと『イカレた話』。とにかく光の勇者様以降が最高にイカレちゃってます。とにかく世界観がヤバすぎる。上手く言えないけどとにかく普通じゃない。あひゃひゃひゃひゃ。こんな事書いてると勘違いされそうですが、面白さはやっぱりというかさすがというか。個人的に短編連作にしたのは正解だと思う。なぜかというと、今までの長編の多くは前半がキャラ紹介に終始していて盛り上がりが後手後手に回っちゃっていたのに対し、今回は短編一つにつき必ず盛り上がりがあるから。なので全く飽きないまま一気に読了。何キャラか埋没しちゃっている感があるけど、ほぼ文句なし。個人的にベストは魔法少女893号。銀島かっこいいよ銀島っていうか強すぎるよ銀島。

成田作品の中だとデュラララ!! に系統が一番近いかな? あれが楽しめた人なら文句なく楽しめます。次の巻はもっとおかしくなっちゃうのかしら。さて、次はようやくがるぐるだー!

 評価:★★★★

2005-10-08

[]ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫) 著:古橋秀之

え、これで白いの? 読んだ後2chスレに行ったら「かなり白い古橋」みたいな事が書かれてあって思わず首をひねってしまった。恋する死者の夜なんて普通に黒いと思うんだけど……。

自分は最新の爆弾だ、という少女とデートする表題作を始めとする7編の短編集。この人の本は初読みなんだけど、ずいぶん器用な人なんですね。どの作品も微妙テイストが違っていながら、どれもオリジナリティある設定で短編の分量にうまくまとめられている――ここらへんはさすがベテランっていったところ。個人的にベストはおおきくなあれ。幼馴染み! 幼馴染み! と幼馴染み分が凝縮されていて萌えていたらオチにあんぐり(いい意味で)なにせ無心で読んでたからまったく考えが及ばなかった。他、全編通して救いがなく黒さが際立っている恋する死者の夜、バッドエンドになりそうな雰囲気を綺麗に反転させた三時間目のまどかがよかったかな。逆にトトカミじゃと出席番号0番はオチが微妙。ほほえましくて癒されたのも事実だけど。表題作と書き下ろしは可もなく不可もなく。書き下ろしがこの中では一番SFだった。

表紙は分かりやすい萌え系だけど、中身は別に萌える話ばかりじゃないので注意。あと、あとがきの後にある解説もネタバレ含んでいます。自分は先に読んで凹みました。

 評価:★★★☆

hatikadukihatikaduki2005/10/12 04:21その人たちは『ブラックロッド』3部作が基準になってるので仕方が無いのです。死体も五体満足だし。

2005-10-07

[]てるてるあした 著:加納朋子

あー……、正直この本が学校図書館に入るから、その前にとささらさやを急いで読んだわけなのだけど……、こっちをささらさやより先に読むべきだったのかも。単品で考えると良作だけど、あれの続編と考えると納得できない。

借金地獄のために夜逃げして、遠い親戚のいる町・佐々良に行くことになった主人公が、町の人と触れあううちに成長していく話。ささらさやと同じく間違ってもミステリーなどではないですが、主人公の成長物語としてみると至極真っ当な出来映え。最初は主人公のかわいくないところにイライラすることもありますが、その後のカタルシスを考えるとこういう子を主人公にしたのは妥当な選択でしょう。ひねくれていた少女がいろいろな人と触れあうことで成長していく――その点では実に丁寧に書かれた良作と言えるのです。じゃあ何が不満かって言うと、終わり方。成長物語としては王道な展開なんだろうけど、続編を書くために最後に前作の登場人物を死なせるような真似はどうしても納得できない。ふつうに考えたら仕方ないし、いい終わり方だというのもわかります。だけどやっぱり許容できない。あと母親のこと。えーっと、あれで終わりですか? 昔に悲しい過去がありました。だからといってあれとかあれとか許されていいことじゃないでしょう。母親が特に何のおとがめもなしにラストに主人公と和解できて泣けるいい話風に終わって、それもすごく納得いかなかった。

全体としてみればいい作品だというのもわかります。実際(納得いかなかったけど)泣いたし。だけど自分には合わなかったと言うことで評価はこんな感じ。ささらさやの前に読むべきだったなぁ……失敗した。

 評価:★★☆

2005-10-05

[]リビスの翼 (電撃文庫) 著:円山夢久 絵:絵楽ナオキ

非常にジブリっぽいファンタジー。読んでいてラピュタ思い出したよw 別に出来が悪いわけじゃない(むしろ結構面白かった)けど、これが売れなかったのも分かるなあ。

島一番の名家と島の原住民ウィーズルの謎と疫病の原因をめぐるファンタジー。上でも言っているとおり、なんだかジブリ臭がします。悪い意味ではなく、どちらかといえばいい意味で。ということで、しごくまっとうなジュブナイルファンタジー。300P弱できっちりまとまる世界観に、盛り上がるべきところでしっかり盛り上げる構成、適度に立ったキャラと非常に手堅い作品。良作というよりも佳作という言葉がしっくりくる。実際、最後の謎ときはなかなか盛り上がりました。ただ、よくいえば手堅いんだけど、悪く言うとやっぱり地味。華がない、って言うのかな。面白いことには変わりないけど。あ、それでも不満はあります。なんでエピローグでシャアンに触れてないんですか? 最後ああなってしまったのだから、彼女後日談は語るべきだったんじゃないかと。そこが残念

地味ではあるけど面白い作品なので、ファンタジー、もしくはジブリ好きは手を出して損はないかと。まあ、電撃の色ではないから売れなかったのも分かるけどね。

 評価:★★★

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