Easy Reading

(非)日常(通常の日記)へ
鴉とオレンジ(HP)へ
2005 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 10 |
 | 

2005-8-31

[]今月の三冊200508

1.恋愛中毒*1 感想

2.Dクラッカー*2 *3 感想

3.フルメタル・パニック! つづくオン・マイ・オウン*4 感想

1位と2位はほぼ僅差。恋愛中毒はとにかく読み終わった後の衝撃が強すぎて……。ここ2,3年で読んだ中では一番怖くて精密な小説

Dクラッカーズシリーズ合わせてオススメ。1巻読んで回避……したりしないで、巻数を重ねるごとに面白くなるんで。

3位はフルメタ最新刊。これからダラダラとやれそうな内容をすぱっと新展開に持ち込むところを評価。続編が本当に楽しみ。

次点は、銀英伝、スキップ。他にもオススメは色々あり。

とにかく今月は豊作すぎて大満足。

今月の読了本数:43冊。

……受験生の読む本数とは思えない。

[]今度はマのつく最終兵器! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

グウェンダル! グウェンダル!

まるマ2巻目。前巻と同じくコメディで押してシリアスで締める、安定した構成。んで、話の面白さも相変わらず。ラストはご都合主義な気もするけど、まあこの作品らしいってことで。ストーリーテリングがうまいってわけじゃないんだけど、とりあえずギャグに流され、そのまま一気に読めるからそれでいいや。陛下ラブラブ日記w キャラはというと、グウェンダルがヤバすぎです。前巻大して目立たなかったのが嘘のようなキャラ立ちっぷり。プー同盟といい、イラスト付きのあのシーンといい、あみぐるみといい、インパクトは今回最強。話のメインには全く絡んでないですががが。メインで動いているキャラも良好。初登場のヨザックのキャラ立ちはまあ及第点といったところ。

良い意味キャラ小説で、かるーく読めて満足。さくさく楽しめるシリーズは貴重だと思います。

 評価:★★★☆

[]今夜はマのつく大脱走! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

安定した面白さで満足。なんだけど……こう安定して面白いと書くことが特にない罠。読書感想の落とし穴。

まるマ三巻。いつものごとく面白く、怒濤のギャグに流されてシリアスできっちり盛り上げて締める、という構成は安定していいなぁ。ただ、基本的に構成がワンパタなので連続して読むとどうしても飽きがくるなぁ………と思ったらラストで変化キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 個人的にこれは歓迎。ワンパタだけど勢いが一向に落ちないのも偉い偉い。キャラの魅力による部分も多いのだけど。前回インパクト抜群だったグウェンダルは今回もいい味出してました。主にシリアス面で。渋いなぁ。あと、今さら言うのも何だけど、主人公ユーリに好感が持てて、ある程度感情移入できるのも大きいかな。ツッコミに無理がない範囲で楽しめるので。……野球ネタとかはどう考えても高校生が知っている範囲じゃないような気がするけど。正直分からないネタがちらほらと。

ともあれ、今回も面白くて満足満足。ワンパタに陥ってる? というのは気になりますが、面白いので評価は落とさない方向で。安牌シリーズ認定でいいかな。

 評価:★★★☆

2005-8-30

[]王の眠る丘 (ハヤカワ文庫JA) 著:牧野修 絵:小菅久美

まんまスティール・ボール・ランファンタジー。うはー、これで自分の足で走るキャラとかいたらもっと完璧だったのにw これのが発行先なので全くのオリジナルなのよね。

ということで、スティール・ボール・ラン十二国記が3:1の比率でブレンドされた世界観ファンタジー。いや、スティール・ボール・ランは三章であらかた終わっちゃったけど。順当に面白かったです。第一章の虐殺で掴みはOK。つねに緊迫感があるため、だれることなく最後まで楽しめた! キャラはこの分量の割に多いけど、どのキャラも立っているので全く無問題。鉄輪格好いいよ鉄輪。少し強引なところがあったものの、全体でみるとたいして気にならないかな。ただ、最後のあれは正直うーん……といったところ。確かにタイトル通りではあるんだけど、それまでが王道な展開だっただけに、捻られてもなぁ……。個人的にクライマックスは神皇のもとに辿り着く前に終わっちゃっていた気が。しかも戌児側よりも鉄輪達の方が燃えたかな。

ともあれ、なかなか面白くて満足。この人の作風とは違うらしいけど(話を聞く限り小林泰三に近いらしい。この本からは考えられない)、とりあえずまたなにか読んでみるかな。

 評価:★★★☆

[]今日からマのつく自由業! (角川ビーンズ文庫) 著:喬林知 絵:松本テマリ

おー予想以上に面白い。っていうか「美形揃いのBLっぽいファンタジー」だと思ってナメてたかもしれない。萌えとかいう以前に面白いですよーこれ。

アニメも放送されているまるマ一巻。主人公が洋式便器に吸い込まれて異世界に行くとのっけからコメディ色が前面に出たファンタジー。なかなかどーして面白かったです。コメディ元ネタは分からないのもありましたが、ハイテンションでテンポよく繰り出されるギャグの数々に思わず吹き出し、終盤はシリアスで締める構成が光る。シリアスは、強引かなーとかちょっと綻びが目立ちますが、そこまで前面には出てないのでまあ平気。キャラは1巻ということもありまだ立ってないキャラも少しいるけど、それ以上に立っているキャラが多いので全く気にならない罠。個人的にはヴォルフラムツンデレ具合が非常によろしくて好み。てーか並のツンデレじゃ敵わないくらいやばい理想的なツンデレ。……と萌えを語ってるけど、BL臭さは(腐)女子がフィルターを通した眼で見ると感じるくらいで、思ったより濃くなかったかな。これも由緒正しいラノベだけど、ギャグで笑えてシリアス滑ることなく読ませる分、昨日読んだちょー美女と野獣より好み。読んでて楽しい、っていうのはラノベに求めるべき理想型のひとつだよなー。

私が腐女子だからかもしれないですけど、面白かったです。気を抜いて読めるラノベということで、個人的には気に入った。売れるのも分かるなーこれは。

 評価:★★★☆

2005-8-29

[]ちょー美女と野獣 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫) 著:野梨原花南 絵:宮城とおこ

由緒正しきライトノベルライトノベルという言葉から喚起されるイメージそのまんまの小説。いいところも悪いところもひっくるめて、これぞライトノベルという感じ。半分くらいは褒めてます。

ちょーシリーズ1巻。上でも書いたとおり、まさにライトノベルらしいライトノベル。かるーくさくさくと頭使わずに読めるところも、読んだ後さっぱり印象に残らないところも、非常にラノベらしいところ。ともあれ、ラノベらしくキャラは立っているし、展開にしてもあれー? と思うところはいくつかあるものの、まあ頭使わないでそれなりに面白く読めるのでこれはこれで良し。文章も改行多用で、ときどき誰が喋ってるのか分からなくなるところを除けばさくさく読めます。ただ、コメディなノリなわりに笑い所が分からないのと、心理描写が上手くないからシリアスシーンが今ひとつ盛り上がらないのは……んー……。そこらへんの上手くなさが結局この作品を悪い意味でもラノベらしくしちゃっている気が。無味ってわけじゃないんだけど、食べてから後味にいたるまでさっぱりしすぎて、食べたという気がイマイチしない感じ。

重い本を読んだ後、リラックスするために読むぶんにはちょうどいいんだけど、決して心に残るタイプじゃないなぁ。綺麗に終わっているから続きはどうしようかしら。

 評価:★★★

2005-8-27

[]風の白猿神(ハヌマーン)―神々の砂漠 (富士見ファンタジア文庫) 著:滝川羊 絵:いのまたむつみ

ああぁぁぁぁぁこれで続きが出てないってマジですかorz いやこれで続きが出てないとか嘘でしょ? なんかひどい詐欺にあった気分だ。

富士見ファンタジア大賞受賞作。いや、噂には聞いていたけど……本当に全く終わっていないです。謎がたくさん残ってるし、この巻だけだとシータの存在意義不明だし、なんだか壮大なシリーズのプロローグを読んだ感じ。それでもこの作品が魅力的なのは、その世界観古代の神々が戦うという傍から聞けばただのトンデモにしか思えない設定を、神格筐体という装置を突き詰めて練ることで非常に魅力的な舞台として読者に認識させた時点でこの作品は勝ち。文章も上手いからビジュアルイメージもすぐに頭に浮かぶ。ホントだからこのスケールでかすぎる戦闘シーンは結構読んでいて楽しいです。ファンタジア大賞を受賞した、翻訳ファンタジー系の趣がある他二作とは違って、この作品は完全にラノベらしいラノベで、個人的には堅苦しさのないこっちの方が好みなんだけど……いかんせん話が終わっていないという最大の欠点が。解説の火浦功じゃないけど、早く続きを読ませろ。

富士見ファンタジア大賞受賞作はこれで制覇。どれも良作で外れなくて大変よろしかったです。次はいつ受賞作がでるか分からないけれど、でたら買います。でも、それよりも早くこの作品の続きを……。

 評価:★★★☆

2005-8-26

[]恋愛中毒 (角川文庫) 著:山本文緒

紛れもない傑作。私はあまり恋愛小説を読む人間じゃないからこんな事を言うのはおこがましいけど、あらすじに書かれてあるとおり間違いなく恋愛小説最高峰に位置する作品でしょう。評判がいいのもうなずける。これは凄い。

山本文緒は結構前に群青の夜の羽毛布を読んだことがあって、その時は、怖かった、という恋愛小説にあるまじき感想を抱いたんだけど……この本はその比じゃない。正直前半は、ドロドロさが見え隠れしながら妙にさらさらとしている、色々な意味で"上手い"小説ぐらいにしか思っていなかったんだけど……いやはやこれは凄いわ。創路や愛人たちといった登場人物の立て方・配置も他の作品にはないオリジナリティがあって上手く、水無月過去を何の違和感なく話に織り交ぜる構成の妙もさることながら、とにかく終盤(具体的に何処かというのはネタバレになるので秘密)がすさまじい。恐怖なんてもんじゃない戦慄。この2文字が似合う恋愛小説は本当に稀でしょう。終盤以降は水無月の語りにずるずると引き込まれるままに読了。あの水無月の行動を納得させられるだけの巧妙な心理描写に脱帽。読み終わった後、あまりにも夢中になりすぎていたため、読後惚けてしまった。衝撃がでかすぎて、ちょっと何も考えられなくなった。

読み終わってしばらくたって冷静になった今、思えることは、この小説がいかに緻密に計算された物語かということ。人物配置も心理描写も構成も何もかもがお見事。素晴らしい。評価は★★★★☆だけど、かなり★★★★★に近いです。

 評価:★★★★☆

[]マリア様がみてる 2 黄薔薇革命 (コバルト文庫) 著:今野緒雪 絵:ひびき玲音

ごきげんよう。……はっ、リリアン女学園の挨拶が! しかし、本当に『ごきげんよう』というフレーズが似合う物語だよなぁ。女の子だけという(実際女だけだったら非常にドロドロすると思うけど)優しい雰囲気がなんか心地良い。

マリみて2巻。正直、世間では百合イメージがかなり浸透していると思うけど、別にそこまで百合は前面に出ていないと思うんだけどなぁ。非常にソフト百合女の子でも普通に読める出来。今回は、黄薔薇姉妹の話で、前回では書き割り並に印象に残らなかった黄薔薇達にスポットが。話自体は普通に良いお話レベルで、起承転結が割としっかりしているので特につっかかったりせずに面白く読める出来。ただ、前回も気になったんだけど、あっちを立たせばこっちが立たずといった風に、志摩子さんと蓉子さまがイマイチ立って無いなぁ、今回は。あと、この話なのに黄薔薇さまがあんまり表に出てこないのは! うぅ、前回も目立ってなかったのに、今回も目立つのはラストだけだなんて……。でもまぁ、このゆるゆるとした優しい雰囲気はいい感じです。

本当に、由緒正しい少女小説なので、雰囲気を楽しむのが吉。まあ、絶賛するほど面白いわけではないけど、つまらないとは全く思わない程度には面白いので無問題。次回は聖さまがメインということで楽しみ。

 評価:★★★

2005-8-25

[]空漠の玉座―デルフィニア戦記〈4〉 (C・NOVELSファンタジア) 著:茅田砂胡 絵:沖麻実也

良かった! ホント、1、2巻が微妙だったのが嘘のような面白さ。王国を主体としたファンタジーとして、真っ当な面白さを見せつけてくれた。3巻の感想でも言ったけど、こんなに面白いシリーズだったのね。

デル戦4巻目にして第一部最後の巻。3巻が面白かったので4巻も続けて読み。前半こそ盛り上がりに欠け、停滞した感じがありましたが、中盤のカリンの追い詰められっぷりに引き込まれ、ウォルの出生をめぐる対峙に燃えまくり、ペールゼンとの決着、そして大団円のラストに拍手喝采。中盤からは息をつく間もなく読了。正直、展開はかなり力技だったけど(特にラスト)読んでいる最中はとにかく面白くて全く気にならない。ここら辺は作者の腕の強さと言うべきか。また、今までぐちぐちと言っていたリィの完璧さに関しては、今回は気にならなかったかな。ウォルにスポットが当たっていてリィはちゃんと主張し過ぎずに脇に回っていたのと、あのラストのおかげで。作者はあとがきで「このシリーズのどこが笑えるのか分からない」と書いていたけど、半分同意で半分否定。今までは別に笑えなかったし、シリアスな時の方が断然面白いんだけど、ちょっと今回のラストのバルロ虐められっぷりとリィには笑えた。特に前者。

何にせよ、かなり微妙だった1巻で読むのを止めなくて本当に良かった。これで第一部完結ということで、非常に綺麗に終わっているんだけど、どうやって続けたのかが楽しみ。飛由嬢にはいつ会えるかしら。

 評価:★★★★

2005-8-24

[]白亜宮の陰影―デルフィニア戦記〈3〉 (C・NOVELSファンタジア) 著:茅田砂胡 絵:沖麻実也

化ーけーたー! 今まで色々と文句言ってたけど、今回ばかりは文句の付けようもなし。前巻終盤の盛り上がりが一巻全部で楽しめるんだから面白いに決まっている。

デル戦3巻。今回は合間に閑話やら緩い感じの場面やらがなく、全編通して激シリアス。相変わらずリィの超人さに頼っている感は否めないんだけど、この巻においては他のキャラにもちゃんとスポットを当てているのでそんなに気にならなかったかな。北の塔に侵入しているときはそうでもなかったけど、フェルナン伯爵を見つけた後は急展開の連続で目が離せない。一つのイベントが終わった後、その余韻に甘んじて停滞したりせず、テンポよく次のイベントへつなげる手腕が発揮されている。何よりそれほど枚数を割かずに各キャラの心理を実に上手く読者に伝える筆力に脱帽。かなり多いキャラを上手く立たせる力は申し分ないです。今まで斜に構えていたけど、こんなに面白かったのね。出番が多かったのにどうもキャラが掴めなかったウォルが今回のMVP。終盤の感情の吐露とラストの引きは震えがきた。

こうまで鮮やかに化けてくれるとケチはつけられない。降参。面白かった。すごく気になるところで終わっているのですぐに次読みます。

 評価:★★★★

2005-8-23

[]そのとき翼は舞い降りた (角川ビーンズ文庫) 著:高殿円 絵:小田切ほたる

あー、さすがにジャック・ザ・ルビーとか初期に比べると文章は非常に読みやすくなっているんだけど、それ以外の部分がイマイチ。私はこの人のシリアスな部分が好きなのであって、こうもギャグ入りまくりだとなぁ……。

パルメニアシリーズで、遠征王アイオリアより更に昔、隻眼王ミルドレッドの時代の話。お金を愛する主人公や変態ヘスペリアンなどキャラ立てに関しては(変人ばっかな気がするけど)文句ないですが、話そのものが微妙。これもうちょっと描写を足して300Pくらいでやるとちょうどいいよなぁ、という内容を250Pでやっていて、その上ギャグが全般にふんだんにちりばめられているから駆け足・書き込み不足の感が否めないです。十分に書き込んでいたら面白そうな話なのに……。ビーンズって300P越えの作品がなかなかないけど、もしかしてMFみたいにページ制限でもかかってるのかな? ただ、そのギャグに関してはテンポがいいのでそれなりに面白いのが救いですが。他にも、あの継承者の設定が話に都合のいい物と化している気がしてならなかったり。なんか、非常に都合良く忘れたり覚えてたりしてないですか?

うーん、なんか非常に勿体ない話。お金第一で芯の強い主人公のキャラは結構好きだけど、続きはちゃんと書き込まれているのかしら。

 評価:★★☆

2005-8-22

[]スカイワード〈2〉 (電撃文庫) 著:マサト真希 絵:橘由宇

あれー? 前巻で綺麗に終わってたからどう続けるんだろうと思ってたんだけど、そういう方向に行っちゃうの? 話には聞いていたけど、なんだか随分と違うものになっちゃった気が。

スカイワード2巻目。もともとこの話は一巻で綺麗に終わっていたわけで、それを無理に続けようとしたものだから設定にツッコミどころが。マリンは次で出てきそうだからともかくとしても、美々香が出てくる意味は一体どこに。一巻では気にならなかったけどちょっとでしゃばりすぎ。ギャグの腕は上がってないので一巻同様に滑っているし。正直前半はイマイチ。で、後半で一気に急展開にはいるわけですが……非常に書き込みが足りて無いという罠。母親とか母親とか母親とかその他諸々、前半のいらないギャグを削って足りない分の描写に回してその上100ページくらい増量してやっと足りてくるという位の量をこれだけでやってしまっていて、展開そのものは面白いのにはまれないという罠orz というか前回で非常に良かったラストの爽快感とかカタルシスとかほとんど皆無ですよ……、この先増えそうにもないしなぁ。貧しい貧しいといわれている国がいきなり戦闘用リュージュをいくつも造れるとは思えないし……。中性体に関しても、設定を増やしすぎなような。

うーん、個人的に一巻の感じが好きだったので今回で作品が別ベクトルに向いてしまったことは残念至極。気になる引きで終わってるけど、3巻以降続きも出てないし、多分読まないかなぁ。

 評価:★★★

2005-8-21

[]空色勾玉(そらいろまがたま) (〈勾玉〉三部作第一巻) 著:荻原規子

壮大な少女漫画ファンタジー。そりゃもうコバルト・ビーンズもびっくりなくらい。デビュー作からこういう作風の方だったんですね。納得。

やっと手を出しました勾玉三部作、その一作目。評判がいいだけあって、その世界観は非常に良いです。古代日本独特の雰囲気を保ち細かいところまで手が行き届いていて、この世界観だけでも一読の価値はあり。んでその世界観に惑わされそうになるんだけど、ストーリーの本質は間違いなく少女漫画。世界はヒロインとその相手を中心に回ってると言わんばかりのメロドラマっぷりですよ! 西魔女少女漫画的だったけどデビュー作のこれはそれ以上。話そのものは安定していて割と面白いです。ラストも力技ではあるけど設定まわりがしっかりしていたから許容範囲。ただ、私やっぱりこの人の書くヒロインが好きになれない。作中でも言われてるけど周り見えてなさ過ぎですよ。あと、ストーリー少女漫画ファンタジーなのに心理描写が足りてないしそれほど上手くないから二人が惹かれあうところがイマイチ世界観の描写はすごくいいだけに、余計に心理描写のイマイチ感が目立ってしまう罠。

日本ファンタジーというとこの前読んだ『ひとつ火の粉の雪の中』もそうだったけど、あれとは全く別物。比べる必要なかった。少女漫画的な展開やファンタジー好きな人なら抑えといて損はないかと。面白かったので次も読みます。

 評価:★★★☆

2005-8-20

[]ラグナロク―黒き獣 (角川スニーカー文庫) 著:安井健太郎 絵:TASA

久々の核地雷(’A`)7月、8月と面白いつまらないの差はあれど地雷レベルの作品はなく、総じて良作が多かったから油断していた(’A`)っていうか本当にこれが大賞レベルですか?

いやもうホントこれだけ褒めどころの見あたらない作品も珍しい。喋る剣の一人称という設定自体は他に類を見ないオリジナリティ溢れるものだと思うんだけど、その文体がひたすらかったるい。とにかく一々ツッコミを入れてくれるものだからその度に話のテンポが中断する罠。というか、基本的にアクション・ノベルとはいってもストーリーの合間に戦闘があり、その回数が多い物だと思っていたんだけど、これは逆で戦闘の合間にストーリーがある。私が読みたいのは物語であって決して戦闘シーンじゃないし、何しろ文体がかったるいので戦闘シーンもスピード感がなく見ていて退屈なだけ。主人公キャラはともかくとしても、どんどん出てくるキャラクターは立つ前に戦闘シーンに入るしレナはキャラ変わっているしでもう無理。ストーリーそのものはどう考えてもこの3倍はかけてやるだろって内容を無理矢理(戦闘シーン以外は)端折ってやってるるもんだから盛り上がりもへったくれもない。本当に何でこれが受賞できたの?

スニーカー大賞は大賞自体が富士見ファンタジアと同じく三作品しか出てないんだけど、富士見とは違って大賞が地雷ってどういうこっちゃ。続編もこんな感じで戦闘ばっかりなんですか? 全力で回避。

 評価:☆

2005-8-19

[]ディバイデッド・フロント〈2〉僕らが戦う、その理由 (角川スニーカー文庫) 著:高瀬彼方 絵:山田秀樹

1巻の時も思ったんだけどこのキャラ立ちまくりの文体がどうしても肌に合わない(’A`)話そのものは正直かなり面白いだけに非常に勿体ない。

ディバフロ2巻。今回は敵にも知能の高い奴が出てきたりあの人が×××なことになっちゃったりと緊迫感や燃えは抜群で非常に引き込まれるんだけど……やっぱりこの文体が先に引っかかっちゃってどうにも馴染めない。英次とか男性キャラの文体は割と気にならないんだけど、女性キャラになると非常に丹念な心理描写に共感を覚えつつも一々苛立っている自分がいる。心理描写の丹念さは長所だと思うし、それが話の面白さにも繋がって居るんだけど、あんまりにも女性キャラの一人称が漫画漫画していて感情移入できない(´・ω・`)一人称小説感情移入できないって結構痛い。何より一番心が震えたシーンが桐島秋の敬礼って時点で自分ダメだ(’A`)いや、他のシーンもシリアスで面白かったですよ? この文体で緊迫感を上手く出しながら話に引き込む筆力は凄いんだけど……。他にも彩のキャラは立ったというか変わりすぎとか(いや十分立っていて格好良かったんである意味逆にピンポンだけど)、あの展開に持ち込むならもっと一流と生駒隊長のラブラブを書くべきだろー! とか色々と不満が。

しっかし、これあと1巻で終わるのかー。そもそも話がどこら辺まで進んでいるのか全く見えないんだけど……どうやって終わらせたんだろう? 興味津々になりつつ次巻買うのは金に余裕ができ次第。

 評価:★★★☆

[]翼はいつまでも (集英社文庫) 著:川上健一

おぉ、意外にも当たり。古い時代の知識は誰でも分かる程度に留めておき、一人の中学生の真っ当な青春にスポットを当てて書いた良書。嬉しい裏切り。面白かったー!

あらすじ通り、中学生男子が子供らしく一生懸命バカやって一生懸命楽しむ小説。全編通して青臭さ溢れる雰囲気。特に一章目は大人に対抗する僕ら、といったベタで一歩間違えれば双方に腹が立ちそうなテーマなんだけど、大人を当然のごとく理不尽に書いている反面、主人公達に非常に好感が持てるように書かれているからそこら辺のバランスがとれて面白く読める。主人公達が無茶苦茶じゃなくて、子供なりに筋を通して一生懸命頑張っている姿に肩入れせずにはいられない。ラストのカタルシスなんてもう最高。二章目は中学生らしい恋愛小説。主人公とふれ合っていく内に変わっていく斉藤多恵の姿とそれと同時に変わっていく主人公自身の姿に感動。鬱々とした前半から爽快な気分にさせる後半と、構成は王道だけれどそこまでの過程をおろそかにせずに書いているので面白くないわけがない。エピローグはあのままじゃちょっと切なすぎるという配慮かな? まあ物語を締めるには十分でしょう。

痛さと甘さと青臭さと爽快さが同居した真っ当な青春小説。本当に面白かった! 地雷かも……と思って読んでみたから嬉しい限り。

 評価:★★★★

2005-8-18

[]夏の災厄 (文春文庫) 著:篠田節子

あー疲れたー。ここんとこそんなに長くて重厚な本を読んでなかったからもの凄い疲労感。いや決してつまらない訳じゃなかったんだけど、求める方向は違ってたみたい。

ハルモニアの時も思ったんだけど、一歩間違えればただのファンタジーに陥りそうな設定を重厚に現実に肉迫させる筆力には脱帽。しばらく蚊が怖くなるなぁ。パニック小説として、最初の100ページで掴みはバッチリ。この危機感・緊張感溢れる雰囲気に心を奪われて読んでいたら……あらー? 個人的には人々を襲うバイオハザードの恐怖を書いたパニックホラーとして読んでいたんだけど、話が進むに連れてウイルスの対策を求め、そもそもどうしてこうなったのかの原因に迫る壮大なミステリーに。風呂敷を目一杯広げてちゃんと畳めるのは偉いと思うんだけど、……最初のつかみはどこへやら。ひたすら真実を探るだけの話になって恐怖も吹っ飛んでしまった。後半もシリアスではあるんだけど、前半に比べるとやっぱりずいぶん劣ってしまう。おまけに登場人物にこれといった個性がなく、人間ドラマに魅力がないのが更にマイナス。最後の〆はよかったけど、ああなるとオチそのものが弱い気がする。

前半のノリのままパニックホラーとして突き進んでくれたら傑作だったんだけどなぁ……。求めていたものとは違うと人はわがままになってしまう典型ですね(人って言うか自分が)

 評価:★★★

[]食卓にビールを〈2〉 (富士見ミステリー文庫) 著:小林めぐみ 絵:剣康之

相変わらず変な話だなぁ。脱力系のコメディで笑いのツボではないんだけど、変な話に流されるままに流されて特に何も考えずに面白いなーと思えるからそれでいいか。ある意味癒し系

一巻もずいぶん変な話だと思ってたけど、今回はもっと変。作中でも言及されているけど、コメディなのにツッコミがほとんどないのが最大の要因なんだと思う。夫が出てるとそこら辺が中和されて普通のコメディになるんだけど、出てないとひたすらツッコミ不在のまま変な方向へ進んでしまうので何が何やら。まあ1巻読んでいたから割と分かっていたことだけど。基本的にコメディであって話の内容に意味を求めずに脱力系のノリにこっちも脱力してちょこちょこ出てくるSF(っていうか物理系の)蘊蓄にへぇ~と思いながら何となく楽しめたからそれでいい、というのが本音。実際文章は読みやすいし分かりやすいしなんか妙に面白いし。ただその脱力系のノリも中編くらいの長さになってしまうとやっぱり疲れる。頭使わないんだけど、脱力系のノリにのり続けるのはさすがにきついなぁ。やっぱり短篇集でのんべんだらりとやってくれた方がいいな。いや中編でものんべんだらりなテンションなんだけど。

今はまだ面白いから良いけど、このノリでやっていたらマンネリになりそうだよなぁとか思いつつ。夏の災厄の後に読んだのでずいぶん肩がほぐれました。

 評価:★★★

2005-8-17

[]しずるさんと偏屈な死者たち (富士見ミステリー文庫) 著:上遠野浩平 絵:椋本夏夜

だーかーらー、上遠野氏にミステリーなんて期待しちゃダメなんだって……。1冊で決めるのはダメかもしれないけど、氏のシリーズ物では1番出来が悪い気が。

殺竜事件の経験から覚悟はしていたけど、やっぱりこの人ミステリーに向いてないと思う。普通にロジックのよさに期待するにはあまりにもガタガタで脆く、当然美しくない。かといってバカミスとして読むにはしょぼすぎて笑えない。結局どっちにいっても中途半端なんだよね。特に最初の二つは本当にひどい出来。無理矢理過ぎるだろそれは……と言いたくなるレベル。後の2つはそれに比べるとまだマシだけど、決して良いものではないです。ならばこれはソフト百合ものとして読むべきなんだろうと読み方をシフトしてみたんだけど……萌えるには二人とも無個性で魅力がない罠。しずるさんはミステリアスなだけで探偵役以上の個性はなく、よーちゃんは本当にストーリーを進める聞き役でしかない。ゆえに会話もつまらない。一々「あなたは優しい人ね」とか言って褒める前に行動でよーちゃんの優しさとやらを見せてくれ。つーか合間にあるはりねずみチクタのぼうけんって何……? 面白くもないしそもそもなんであるのかも分からないんだけど……。

ミステリーキャラクターも全てが低水準。少なくとも百合ものとして無理してでも楽しもう! と思えばまあ読めなくもないです。つまらないだろうなと思って買ってやっぱりつまらなかったんだからある意味で正当か。

 評価:★☆

2005-8-16

[]銀河英雄伝説 怒濤篇*1 *2 著:田中芳樹 絵:道原かつみ

ビュコック、チュン・ウー・チェン両名の散り様に最大限の花束を! 本当、非常に良かった……! 

これにて帝国VS同盟という形は終了かな? 上巻は割と停滞していた感がありましたが、いやはや下巻が非常に熱くて今回もやはり超鉄板の面白さ。上でも書いたけど、あのシーンは本当に良かった、泣きそうっていうか泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。他のシーンもまずまずの良さ。カリンはこれから出番多くなりそうですね。書き足した部分かも知れないけど、今後の展開をほのめかす描写が多数出てきてかなり先行きが不安。いえもちろんつまらなくなるとかいう意味ではなくて。同盟側も帝国側も主要メンツに死亡フラグが成立しているのが怖い怖い。ってーかあの人とあの人はもうあの展開・あの描写がある以上生き残るとはとても思えないよママン……。黒狐もそろそろ復活しそうだし、地球教団もあのまま退場とは思えないし、全く予断を許さない展開。新展開になっても面白さをキープできる(というかより面白くなっている)のはやっぱり凄いなぁ。

泣いても笑ってもあと6巻。この壮大な物語の終着点が未だ見えないのが気になるところですが、つまらなくなることもないでしょうし。

 評価:★★★★

2005-8-15

[]ブルータワー 著:石田衣良

あとがきにもある通り、現在の主流が恋愛小説である今、主流ではないSFファンタジーを書いた……というのは非常に気概が感じられていいと思うのですが……、まあ石田衣良ファンタジー作家ではないからね……。

作者初のファンタジー……なんじゃないかな? ファンタジーと言うよりはSFに近いけど。私が好きなツインワールドファンタジーなんだけど……未来のパートに比べると現代パートが明らかに面白くないです。いや、現代のパートが必要不可欠なのも、恋愛要素が必須なのも分かっているんですが……でも盛り上がらないのも事実な訳で。未来のパートはそこそこ面白いです。正直、登場人物の死が物語の一過程でしかなく、心理描写も含め表面的すぎるきらいがあるけど、設定と展開がともによく練られているので安心して読める出来なのは確かです。ただ、先ほども書いたとおり現代のパートが面白くなく、正直感動するべきはずのラストのあのシーン(あれです。数字覚えようとして……)が感動するよりも先にあまりのメロドラマ臭のため笑ってしまった……。あのために恋愛要素を入れていたのかーとは思ったけど、それにしてもあれで感動して良いのかどうか……。あと最後がちょっと無理にハッピーエンドに持っていった感があるのと、現代と未来の相似性などが語られていなくて偶然性が高いところはマイナス。とことん突き詰めて設定・展開を作ってこそのファンタジーなのに。

ベテランらしく、よく出来たファンタジーではあるのだけど、個人的にそれ以上の出来ではなく。やっぱり石田衣良IWGPが一番好きかな。

 評価:★★★

2005-8-14

[] ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫) 著:滝本竜彦

あー……期待していたより面白くない。というかイマイチ電波系に見せかけた青春路線で、こういうタイプは好みのはずなんだけど……。

話題の引きこもり作家デビュー作。正直に言います。私この主人公好きになれない。ただのダメ人間じゃなくて、むかつくレベルのダメ人間。確実に自分がダメなのに正当化しているところが好きになれない。同族嫌悪……かもしれないけど。あーでもこういう奴はリアルにいそう。逆にヒロインツンデレ&悲劇&不思議系などといった記号から具現化されたような、絶対リアルにこんな女いないだろってキャラなので座りが悪い。なんだろう、他のキャラは(好き嫌いはともかく)リアリティもあるからちぐはぐな感じが。話の展開はまあまあ。デビュー作にしてはかなり上手いし、最後の展開と主人公の台詞の熱くて青臭いところは結構好み。なんだけど、一人称小説で主人公が好きになれないし共感できない(というか、むしろ反発してしまう)のは致命的なんだよなぁ……。チェーンソー男の正体をうやむやにしたまんまなのは良かったんじゃないかな。語るだけ野暮って感じだし。

ようは、合わない読書だったということ。NHKにようこそ!は興味あったけど、あちらはもっとダメ人間の話らしいのでいいや。個人的に、これは別にわざわざ単行本にしないで、ラノベで出しても良かったんじゃないかな。

 評価:★★☆

[]ウォーターソング (コバルト文庫) 著:竹岡葉月 絵:竹岡美穂

表紙とタイトルから癒し系かと思って読んでみたら……orz 読後かなり凹んだ。でも鬱とまでいかないのは基盤となる雰囲気が優しさに溢れているから……な気が。

デビュー作らしい「僕らに降る雨」と表題作の中編2本仕立て。「僕らに降る雨」はままならない現実に対し子供子供らしく拙くも一生懸命に頑張る話。ラストの大人と対立する雨乞いのシーンなんかはちょっと青臭すぎるくらいなんだけど、大人の意見子供意見ををはっきり通して書いている分好感が持てます。ストーリーの大本はベタですが、上手く処理している良作。表題作は途中まではたまに荒波こそあったもののまったりした良い話だったんだけど……かなりやるせない。最後の救いが足りないですorz これはちょっと凹むなぁ……。どちらの話も、痛さ辛さや青臭さでコーティングされているものの、内実はどうしようもない優しさに溢れている雰囲気がすごく好み。SF設定をしっかり話に組み込んでいるのも好感。惜しいのは、どちらもラストの展開が駆け足なんですよね……もうちょっとページ数増やして書いて欲しかったな。

期待していたものとは少し違ったけど、それでも良作だったのは確か。イラストも非常に良いです。多分もう絶版だと思いますが、古本屋で見かけたら是非。

 評価:★★★★

2005-8-13

[]黄金の戦女神―デルフィニア戦記〈2〉 (C・NOVELSファンタジア) 著:茅田砂胡 絵:沖麻実也

さすがに大化けとまではいかなかったものの、前巻に比べるとずいぶん面白くなった。前巻で感じた欠点のうちいくつかは諦めて慣れることにしようと考えたからでしょうか。

デル戦2巻。今回から本格的に戦が始まり、実際戦のシーンはなかなか面白いです。前回気になったリィ、ウォルを『少女』『男』と表記する文体と、リィの口調の定まらなさに関してはこの先改善されることもなさそうなので諦めて慣れることに決定。特に前者は慣れるとさっぱり気にならない罠。あと味方に比べて敵が馬鹿すぎるという点に関しては、味方に頭の固いキャラを入れることと敵の頭を良く見せるシーン挿入によって今回はそれほど気にならなかったかな。ただ、ただ……それでも非常にリィが完璧超人過ぎるのはいかがなものか。そのせいで展開がある程度読めてしまって、どんなに危険な場面でも「どうせ助かるんでしょ?」とイマイチ緊迫感に欠ける。馬のシーン然り、城に乗り込むシーン然り。凄いですねー欠点無いですねー……書いててBLEACHの織姫を思い出した。さすがにあれよりは何十倍もマシなんだけど、それでもここまで完璧で周りから驚かれたりするともにょるのも事実な訳で。正直話の魅力を削いている気がする。あと勧善懲悪なのはいいんですけど、その構図がややわかりやすすぎる気が。

慣れると平気なところとどうしても慣れないところがあるシリーズ。でも戦のシーンは面白かったです。ただラストのあれはいくらなんでも唐突すぎる気が……。とりあえず次巻に期待。

 評価:★★★

2005-8-12

[]三月、七日。 (ファミ通文庫) 著:森橋ビンゴ 絵:世良シンヤ

評判通りで、非常に丁寧に紡がれた良現代小説なんだけど……なんだか奇妙な感じ。こんだけ私が苦手&嫌いとする要素が結構あるのに、路線そのものはめっちゃ好み。

正直に言うと、最初はそれほど面白く感じなかった。心理描写は非常に丁寧なんだけどそれがいきすぎていてちょっとくどく感じるし、それに七日は割と好きなのに対し三月の尖っていて少しだけ傲慢で心というか、世界が狭い感じが全く合わなくて、ああこれ駄目かも……と思っていたのに気づいたら物語にはまりこんでいてページをめくる手が止まらない。メインの一人が好きじゃない青春小説なんて絶対に好きになれないだろうな……と思っていたのにあら不思議。(最後で評価が上向きになったけど)三月のキャラは基本的に好きじゃないし、何より双子の兄妹で恋に落ちるという設定なんてもう本気で私が苦手とする範囲なのに、何故か気づいたら拙さと一生懸命さに溢れた物語に引き込まれ目頭が熱くなっている。……ああ、もう駄目、降参。面白かったです。認めるさ、認めるさ! 展開が読めるとか、そんなことはこの作品には些細なこと。不器用な二人が、不器用ながらに一生懸命な話。この路線で私が好きじゃないはずがない。最初意地はってすみませんでした。

ということで結論を言うと間違いなく良作。ひとつ気になるんだけど、この作品って続編出てるのよね、確か。ラストが綺麗なだけに、続編は蛇足な気がするんだけど……。

 評価:★★★★

[]ひとつ火の粉の雪の中 (富士見ファンタジア文庫) 著:秋田禎信 絵:若菜等+ki

ちょっと待って下さい、これ本当に17歳(改稿されたと考えると19歳)の時に書いた本ですか? うわぁぁ、面白さはともかくとしてそれだけの若さでこれだけの表現を書いたというのはちょっと信じられない。

著者デビュー作。『幻想味あふれるジャパネスクファンタジー』という触れ込みの通り、日本神話ベースによく練られた設定と物語を幻想たらしめる描写が非常に良い。特に後者は凄いとしか。これ本当に17歳の作品ですか? 私騙されてますか? 文章の使い方、詩の入れ方など非常に巧み。タイトルにもなった数え歌は非常に好み。この表現は凄いし、この幻想的な雰囲気は本当に良いんだけど……惜しいかな、話しそのものがぼかされすぎて思うように世界観キャラクターに入り込めないです。この住み分けもきちんと出来ていたら文句ないファンタジーなのに。その上に幻想的な雰囲気、ぼかされた世界観につられるようにして物語も後半は何がなんだか分からず迷走。十六夜とか何のために出てきたんですか? 何が何でも一冊に纏めようとして最後は駆け足過ぎる気が。ラストは割と納得がいくんだけど……。

話もこの幻想的な雰囲気に見合う物だったら傑作だったのに。ちょっと私には難しすぎました。しかし、前に読んだオーフェン1巻とは随分と作風が違いますね。芸風が広いってうらやましい。

 評価:★★★

2005-8-11

[]奇蹟の表現〈2〉雨の役割 (電撃文庫) 著:結城允孝 絵:KEI

一巻に輪をかけて地味。ただでさえ主人公オッサン・アクション盛り上がりに欠ける・萌え要素微妙三拍子揃った地味さだったのに、それに磨きがかかっていますよ。……長所と取るべきなのか欠点と取るべきなのか。

受賞後第一作という事で、確かに受賞作に比べるとレベルアップしているんですよ、地味さが。敵を縮小化することによって地味さがパワーアップしています。いや、あれはあれで良かったと思うんですが。っていうか前回にはなかった恋愛要素まで入っているというのにこの地味さは何ですか。勿体ないと言うべきかそれがこの作品の長所だと言うべきか。ショタ(年齢的には微妙だけど)とツンデレ気味幼女恋愛で雰囲気的には可愛いんだけどなぁ、もっと上手く丁寧に書いてくれれば地味から脱出も可能なのに。あと展開が割と予想できたけど、これについては前回も同様だし読めていても面白さが落ちることはなかったからいいか。ただ、オズの介入によってシマとナツの交流が減っていたのはマイナス。シマにしても、前回以上の心の変化は望めないわけで。いや相変わらず親父は格好良いんだけどさ。あとイルマはレギュラーになりそうな予感。

よく言えば堅実だけど、やっぱり地味なんだよなぁ。前作が好きなら損はしないと思うけど……しかし売れる気はしない。電撃は確か3巻がうち切りラインなんだっけ? 次回が勝負かな。

 評価:★★★

[]宇宙のみなしご 著:森絵都

期待通りの良書。三作目だけど、やっぱり上手いです。思春期の少女の書き方もこのころから巧みだし、あとこの作品に関しては設定勝ちの面も強いかも。

昔の作品と言うことで、どうなんだろう……? と思ってはいたのですが(リズムゴールドフィッシュはあんまり面白くはなかったし)良い意味で裏切られた。前半はさらりとしているのに後半はぐっと重くなる。展開は割と予想できるんだけど、そこから救いに持っていくやり方が何とも見事。っていうか手紙は反則だと思った。つきのふねでも感じたけど。泣かないわけないじゃないですか! つきのふね&カラフル路線の森絵都だー! 好みじゃないわけがない。真夜中に屋根の上を歩くというなんて事のない設定が使い方も含め非常に良いですね。文章の上手さはこのころから健在で。ただ、主人公には共感は出来るんだけど、好きかと言われると微妙だな……。作中でも言われているけど、基本的に気が強いというか早くて尖りすぎてるんですよね。つきのふね&カラフルの源流といった雰囲気なので、主人公の雰囲気も源流らしく一番ツンツンしているなぁ。

これで森絵都はショート・トリップ以外はコンプリート。本当に外れのない作家ですね。貸してくれてありがとうございました。手に入りにくい作品だろうけど、図書館などで見かけたら是非。

 評価:★★★★

2005-8-09

[]つづくオン・マイ・オウン―フルメタル・パニック! (富士見ファンタジア文庫) 著:賀東招二 絵:四季童子

シリーズ転換期にして最高傑作。いやもうホント凄かった! 今までのぬるいギャグ短篇も全てはこの話のためにあったのだ、と思えるほど。

何せ踊るベリーメリークリスマスがいつものフルメタ長編に比べると少し落ちる出来で、それに三角関係に片が付いたからそろそろマンネリズムに陥るんじゃないかと危惧していたんだけど……全くの杞憂でした。怒涛のごとき危機の連続に魅せられ、キャラ達の決断に心が震える。ページをめくる手を止められないまま、一気に読了。宗介側もトゥアハー・デ・ダナン側も文句なく面白かった! ここ最近は恋する少女の面が強かったテッサが上司としての格好良さを取り戻していたのも良かったし、何より今まで積み上げてきたものを潔く、そして容赦なくぶち壊した作者の英断に感服。間違いなくシリーズ最高傑作。

今のラノベを代表する人気シリーズ(三回もアニメ化されたシリーズってなかなかない)で、だらだら続けていくことも出来たはずなのにそれをしなかったことに完敗。あの極悪な引きからどう続けていくのか。次の長編が本当に待ち遠しい。

 評価:★★★★☆

[]わが王に告ぐ―エヴァリオットの剣 (角川ビーンズ文庫) 著:高殿円 絵:椋本夏夜

単発モノ……と見せ掛けたマグダミリアの続編。なのでマグダミリアを非常に面白く読めた私がこれがつまらなく思うはずもなく。

最初に断っておくと、マグダミリアを読んでない人にはおそらく地雷です。ストーリーキャラ出しすぎて筋が絞れてなく、決着の付け方もめちゃめちゃ強引で、ちょっとどうかと思わないでもなく。けどそれはそれとおいといて、アルフォンスやらキースやらといったキャラのその後を楽しむのが吉。キャラが魅力的じゃなくなってるとかそういうことはないので。アンナマリアもあれはあれで可愛いし。そう思って読むと割と楽しめました。キースの超常現象(中盤のあれ)もマグダミリアの某シーンに比べたらまだ説得力あったし、エピローグの『グランドフィナーレ』はその名の通りで読めて良かったと心から思えるシーン。ただ、何度も言っているとおり前作であるマグダミリアを読んでいないと全く楽しめないです。ストーリーの穴が多すぎるorz

まあ、ファンサービスとしては順当なんじゃないですか? マグダミリアには遠く及ばないものの、楽しめたことは本当なので。ああ、でもこれでもうアル達の時代は完結なのか……。

 評価:★★★

2005-8-08

[]ディバイデッド・フロント〈1〉隔離戦区の空の下 (角川スニーカー文庫) 著:高瀬彼方 絵:山田秀樹

2chのラ板大賞を見て買い。作者は浅井ラボへの誕生日プレゼントを見てから何となく気になってはいたのですが。評判ほどではないけどまずまず面白かったです。まあ、まだ出だしだしね。

人間VSバケモノという戦場モノ。最初、のっけから舞台が戦場であることを忘れてしまいそうなコメディ的雰囲気(しかもあんまり笑えない)とバリバリ話口調の一人称にのれず、まさか外れ? と思ったけど戦闘シーンになってから盛り返してきました(最近こんなのばっかな気が)度重なる苦難に緊迫しているのは抜群に感じられます。主体が変わりながら話を進めている一人称文体に関しては、心理描写という点においては抜きん出て秀逸(特に香奈の一人称は真に迫っていて読んでいるこっちも鬱々とするほど)なんだけど、基本的に話し口調の文体であまりにもキャラが立ちすぎていて感情移入という点においては正直しづらいです。けど前述の通り心理描写は凄いの一言なもんだからシリアスな場面を上手く燃えて盛り立てている。もう畳みかけるような危機の嵐に燃えずにはいられない。半身同化とかまだ説明されてない設定もあるけど、それらは次巻に持ち越しかしらん。

まだ他のキャラに比べて生駒隊長と筒井彩がイマイチ立ってないんだけど、まあそこら辺は次巻に期待。コメディ微妙さを入れて評価はこんな所。積んでる二巻もさっさと崩します。

 評価:★★★☆

[]放浪の戦士―デルフィニア戦記〈1〉 (C・NOVELSファンタジア) 著:茅田砂胡 絵:沖麻実也

んー、これがまだ序章だということを差し引いても期待値からは随分低め。ちっと主人公達が完璧すぎて魅力を感じられないのは痛いな。

有名な大河ファンタジー戦記、デル戦の1巻。話としては大きな物語の序章で、盛り上がりはほとんどないです。まあ、これは仕方がないとしよう。ただ、最初からイベントで始まるので上手く状況が把握できず、世界観に入り込むのに凄く戸惑った。ウォルやリィの名前が明かされてからも彼らを「男」、「少女」と表記する文体はどうにかならないものか。他のキャラはちゃんと名前で呼ばれているのに、読みづらいことこの上ないですよ。キャラに関しては上に書いたとおり。それとリィの口調が定まってないのが凄く気になる。心は男、身体は女って設定なのに、70ページくらいから既に一人称だけ「ぼく」で口調はもろ女の子になっていて、あらー? と思っていたら150ページくらいで唐突に一人称「おれ」で口調ももろ男の子に変化。んで終盤はまた一人称「ぼく」の女の子口調に戻る。何がしたいんだ。どうしてかを理解しようにもリィの心理描写なんてろくにないので理解できるはずもなく。っていうかこんなミスは編集者が注意しろよ! こんな定まらないキャラを好きになれるわけが当然ない。他の味方キャラもちょっと完璧すぎです。人間は欠点があるからこそ魅力的なんですよ。

話としてはまだ始まったばかりだし、4巻まで借りているから読む予定だけど……。あと第一部を引っ張るには味方に比べて敵が愚かすぎる気がしなくもなく。まあ、空鐘のように2巻で化けるシリーズもあるので、そうなることを期待。

 評価:★★☆

2005-8-07

[]西の善き魔女〈4〉 世界のかなたの森 (中公文庫) 著:荻原規子

樹上のゆりかご*1の悪夢再びになりそうな悪寒。もともと手堅く安定しているのが良いシリーズなだけに、バランスが崩れるとそれをフォローできるだけのものがほぼないわけで。

今までに比べると話の出来が二、三枚落ちる。全6、7巻の予定だったのを打ち切りくらった? と思うくらい今までに比べると展開が早急で強引。結末に向けて一気に伏線を敷いたようで雑さが隠し切れない。何より今まで築いた世界観を壊しかねない勢いでユニコーンやら見えない結界やら出てきて読者としては容易に受け入れられるはずもなく。これ本当にあの西魔女? キャラの名前だけ同じな別物かと思った。話そのものにしても前半は良かったのに第三章から迷走している感が拭えず。フィリエルもよく分かっていないみたいだけど読者はもっと訳が分かりません。ってかイグレインキャラ変わった? というわけでフィリエルとルーンのラブラブ以外に良いところを見つけられず。本編は次巻で完結らしいけど……ラストシーンからして終わりそうな気配がしないよママン。

なんにせよ、最終巻(文庫だと次は外伝なんだけど)手前でこけたのはかなり手痛い。それ以前にこの人は樹上のゆりかごという前科(後科か? あれはホント酷かった……)があるので、とってつけたような無理矢理ラストになりそうな予感がひしひしと。不安を裏切ってちゃんと綺麗にまとまるといいんだけど……。

 評価:★★

2005-8-06

[]Dクラッカーズ7 王国*1 *2 著:あざの耕平 絵:村崎久都

7-1と7-2一緒くたに感想をば。一気に読んだし、何より二つで一つの巻なので。これにてシリーズ完結。

素晴らしかった! と声を大にして胸はって言える出来映え。6巻の期待を裏切らないどころかそれ以上のものですよ。王国という設定のため、今までよりもファンタジー要素が増しているのも良い。あの幻想的なイメージが非常に良いです。そのうえ、ストーリーは7-1の絶望的な状況下でのためを7-2で一気に昇華! 7-1は読んでいる身にとってはひたすら痛く切ない状況の中、孤立無援で奮闘する千絵がひたすら燃える。いやほんとよく頑張ったよ。主役の二人はもちろん千絵だけでなく、兄貴とのケリを付けた水原、力もないのに全く屈しなかった茜も良かったし、甲斐はやっぱり最後に美味しいところを持っていった。女王もBBBも非常に良い敵役でした。7-2の決着はどれも満足、拍手喝采。ただ燃え燃え燃えて突っ走って突っ走って、熱くて切なくて本当に良い巻でした。グッドエンドともトゥルーエンドでもない、ベストエンドと言うべき結末。綺麗すぎて余韻が残らないのが少し惜しいけど、参った、非常に満足。

綺麗にすっきりさっぱり完結した傑作シリーズ。読めて本当に良かったです。未読の方は是非。1巻で諦めた方も是非続きを読んで下さい。

 評価:★★★★☆

[]いとしい (幻冬舎文庫) 著:川上弘美

 ………………??? なんだろう、私に読解力がないのが原因なのかな? 茫洋としていて、ひたすらによく分からない。

あらすじに『恋愛小説』と書いてあって、実際主人公もその姉も彼氏がいて、その二人とも物語に深く関わっているし、恋愛感情を物語の軸に取り入れてはいるのだけれど……それでもこの小説恋愛小説? なのかな? 恋愛小説と言うにはあまりにも淡泊すぎて(淡泊な恋愛小説が悪いと言うわけではないのですが)それでいてひたすらに茫洋としていて、何が何だったのかが分からないまま、結局これは何にスポットを当てた物語だったんだろう? と読了後考えてしまった。淡泊な主人公に感情移入する前に、そこで起こっている事柄を上手く理解できていない自分がいる。作中に何回も「とりとめのない」という言葉が出るけど、この作品自体がまさに「とりとめのない」ものなのだと思う。いや終わり方はどんな物語だったのかよく分からない自分の目にも綺麗に映ったけど。結局誰の物語だったんだろう? 私? 姉? それともミドリ子? 書きたいことを入れすぎて散漫になってしまっている気が。茫洋とした幻想に支配された雰囲気は割と好きなんだけど、いかんせん文体が淡泊すぎて酩酊感や牽引力を感じられない。

角田光代の「まどろむ夜のUFO」もどちらかと言えばよく分からない部類だったけど、こちらの方が私には断然理解不能。阿修羅ガールみたいに全く理解不能でも何故か楽しめる小説もあるけど、これはそうではなかった。多分現代文テストでこの小説が取り上げられたらきっと私はろくに点数取れないと思う。そんな感じ。

 評価:★★☆

2005-8-05

[]平井骸惚此中ニ有リ〈其2〉 (富士見ミステリー文庫) 著:田代裕彦 絵:睦月ムンク

 一巻の長所を残しつつ、ミステリの面白さを増大させた感じ。何より富士ミスで真っ当なミステリをやろうという気概が素晴らしいです。今のところこれとGOSICKくらいじゃないか? あそこでまともにミステリーしてるのって。

 今回は定番というべき密閉環境での連続殺人。一巻はトリックに重きを置いた面があり、フーダニットに関してはもう出た瞬間に勘で分かるくらいのやさしさだったのですが、今回はフーダニットに重きを置きつつトリックもないがしろにしない、とミステリとしても真っ当に楽しめる面白さ。涼嬢・潑子嬢がいながらメイド裸の写真にどきまぎする太一は……ですが、平井姉妹の可愛さは相変わらずだし夫婦の会話も前回より良くなっているし。女は可愛く強く、男はヘタレ(骸惚先生クールを装ったヘタレだと思われ)という私好みなキャラ配置。ただ、潑子嬢のあの言葉とそれを受けての骸惚先生の言葉は少々やりすぎだったんじゃないかと。あそこをもっとぼかした方が分かりづらくなったのに。あんなに大っぴらに入れたらピンと来ちゃいます。

 ミステリもあるし、LOVE寄せされてるし、富士ミスの看板にもなりえそうな安牌シリーズ(次で完結らしいけど)続刊も楽しみ。

 評価:★★★☆

[]スキップ (新潮文庫) 著:北村薫

 あーたーりー! 今まで読んだ北村薫は普通以上でもそれ以下でもなかったからかなり不意打ち。評判がいいのも分かります。

 最初、全く分からない昭和50年代の知識続発で、ああ外れか……、と危惧したものの、25年後に意識が移動してからは一気に面白くなる。主人公の感情が分かりやすく、それでいて十分納得できるように書かれているから非常に感情移入しやすいです。北村薫の平易で温かみの感じられる文体が非常に心地良い。その分盛り上がりに欠ける文章で、ともすれば退屈になりそうな物語を、上手い具合にイベントを起こしテンポ良く展開させていくストーリーテリングも素晴らしい。個人的に最大の盛り上がりはバレーボールの決勝と文化祭ダンスシーン。生徒にまできっちりスポットを当てている姿勢には好感。ただ、唯一はやせ、というか演劇部関連は切っても良かったんじゃないかなぁ。はやせだけ疑問が提示されているのに何の解決もなかったんだよね。それ以外は概ね素晴らしい出来映え。前向きで優しい情景で終わる、その暖かさにほれぼれ。

 ファンタジー要素の入った優しい現代小説北村薫に苦手意識出さずに手を出して良かった。三部作なので、次も素直に期待。

 評価:★★★★

2005-8-04

[]ジャック・ザ・ルビー―遠征王と双刀の騎士 (角川ビーンズ文庫) 著:高殿円 絵:麻々原絵里

うわあぁ、すごく浮き沈みが激しい。良いシーンはすごく良いのに悪いシーンはかなり盛り下がる。プラスも多いけどマイナスも多いです。

古本屋偶然見つけたので手を出しました。マグダミリアの時も思ったんだけど、この人はここぞというシリアスな時の心理描写が突出して上手い。ゆえに、思わず目頭が熱くなるシーンもあるんだけど……、惜しいかな、シリアスシーンの良さと同じくらいマイナス面が目立つorz デビュー間もないからとはいえ、文章に妙にひらがなが多くて読みづらいことこの上ないです。いくらラノベが中高生向きとはいえ「じぶん」とか「いっしょう」とかまでひらがなにする必要はないかと。コメディ(?)シーンはほぼ滑っているというか笑えないというか。唯一コック集団のかけ声は面白かったけど。あと戦闘シーン端折りすぎです。タイトルの由来それだけかよー! と激しく突っ込みたくなった。反対に、すごく良かったのは生まれてくる子供とその幸せに関するシーン。ジャックがエティエンヌの側で自分の罪を告白する場面は挿絵も相まって非常に感動的。それと主人公のアイオリアがかなり好み。格好良いなぁ女王様! 陽子とかとは違って何か間違った格好良さだけど。

次巻(いつ買えるかわからないけど)はもちっとシリアスシーンが増えること希望。この巻はプラス面とマイナス面を足して普通と言うことで。

 評価:★★★

[]アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫) 著:森絵都

長編はいいけど短篇は駄目な作家短篇は良いけど長編は駄目な作家はいるけど、とりあえず森絵都短篇もまずまず良くて安心。いやこれだけ読んで決めるのはアレだけど。

児童書時代の作品ということもあり、非常にさらっとしていて読みやすい。心理描写の上手さは健在で、どの話も気づいたら主人公に感情移入しているから不思議。三つとも「終末」や「別れ」をテーマにしている割にはそれほどじめじめしていないところも好感。どれも途中まで嫌な状況に追い込んでからそれをラストでくるりと良い方向に反転させる構成は上手の一言。ただ、読み終わった後強烈に残ったり、茫洋とした安堵感に包まれたりとか、とにかく心に残ったりするタイプではないかなぁ。さらさらした感じ。どれも佳作揃いの中、個人的には『彼女のアリア』が頭一つ抜き出ていて好み。優しく暖かなラストにどれだけ救われることか。角田光代の解説にはほぼ同意。

短篇集だし森絵都作品で初の文庫だし、今まで森絵都作品を読んでいなかったという人にオススメ

 評価:★★★☆

2005-8-03

[]12月のベロニカ (富士見ファンタジア文庫) 著:貴子潤一郎 絵:ともぞ

うわぁぁぁやられたやられた。元々ツボど真ん中な設定である上にこんな隠し球があるとは。解説の『二度泣いた』は言い過ぎだと思うけど、泣ける話であることに間違いはないです。

とにかく構成の妙、完成度の高さに舌を巻く。半分くらいまでは騎士とそれに守られるお姫様という王道ファンタジーだと思っていて、特に深く考えたりせずに読んでいたから衝撃大。ハキュリー=先代のベロニカを敵国に売った『恥ずべき騎士』と伝えられている存在だというのは見当付いてましたが。ネタそのものは簡単だけどはっきりとは見抜けず、巧妙に張り巡らされた伏線には脱帽。鮮やかに騙されました。そのうえ、この話がトリックをメインに据えたものではなく、あくまでもメインは王道のファンタジーであり、仕掛けが白日の下に晒された後でも面白さを落とさず、それどころかより感動的に仕上げているのは凄いとしか。駄目だこういう話すごいツボなんだよ私は……。・゚・(つД`)・゚・。ただ、難点を挙げるとすると、無情でやるせなくてひたすら泣ける50年前のパートに比べて、現代のパートがずいぶん見劣りしちゃってるんだよなぁ……。こちらのパートも50年前と同じくらいのレベルだったら言うこと無かったのに。あとこういう文体はあんまり好みではないです。もっと平易にした方が入り込みやすいと思うんだけど。キャラも、ハキュリー以外が書き割りのように存在感や個性がないのは……。

されど大賞の看板に偽り無し。良書でした。それだけに上で挙げたところが良くなっていたら傑作だったのが惜しいなぁ。

 評価:★★★★

2005-8-02

[]トリニティ・ブラッド―Reborn on the Mars 嘆きの星 (角川スニーカー文庫) 著:吉田直 絵:THORES柴本

んー……ごめんなさい、正直期待外れ。話そのものは悪くないと思うんだけど、いかんせん主要キャラと見せ方が良くない気が。

あらすじに書いてあるとおり、ノイエ・バロックというかゴシックというか、キリスト教ルーツの荘厳で様式美な雰囲気は出せてるしそういうのは好きなのですよ。中世ヨーロッパの貴族的な匂いは。ただ設定上仕方ないといってもモジュールやら衛星やら出されたらその雰囲気も少し色あせてしまう。んで、前述の通り話そのものは悪くないんですよ、というよりは(王道中の王道で展開は読めるんだけど)むしろ割合いい方。なのに魅せ方というか、演出の仕方がよろしくないです。悪い意味ベタベタで、盛り上がるべき場面でどこか冷めちゃう。そこまでベタベタにしちゃったらまずいでしょー……。唯一、ガンスリンガーの正体が明らかになる場面は良かったのですが(正体自体はかなり前から見当が付いていたとはいえ)キャラに関しては、まだ一巻だから、というのもあると思いますが、ジュラとエステル以外薄い気が。ガンスリンガー枢機卿が薄いのは仕方ないとしても、主人公格のアベルが薄いっていうのはさすがに駄目な気が。ディートリッヒも微妙だし。

一言でいうと、勿体ない作品。良作になりそうで決してなれなかった作品。次巻から良くなってるのかしら?

 評価:★★☆

2005-8-01

[]12月の銃と少女―BAD×BUDDY (富士見ミステリー文庫) 著:吉田茄矢 絵:深山和香

これまた随分と巧い新人さん。単純に完成度だけで見たら、今年デビューしたラノベの新人(私が読んだ中)では一番上手です。イラストも上手。

350ページと新人にしては妙に長いんだけど、主人公ホンダ愚痴混じりの一人称が軽快でさくさく読めます。この作品で一番の長所はこのホンダキャラと一人称なんじゃないかと思うくらい語り口が良い。キャラの掛け合いが実に軽妙で楽しいこと楽しいこと。話は割合オーソドックスで展開は読めるんだけど、テンポ良く読めるのには好感。牽引力もあったし。ただ、目覚めたら全部終わってました、という展開は仕方ないとしてもあまり好みじゃないし、ラストのいかにも続きそうな感じで終わらせたのはマイナス。明らかに蛇足だよなぁ。別に普通に墓参りで静かに終わらせても良いじゃないですか。今までそれほど出てきてなかったシルビアがいきなり出てきてもこちらとしては微妙な感じ。あと、愛すべきヘタレ刑事ホンダ幼女爆弾魔ヴィスコに比べるとウォルター存在感薄め。せっかく年下上司&童顔でチビ&ツンデレという美味しく頂ける設定なのに! 勿体ない、ホント勿体ない。

ともあれ、レベルの高い新人であるというのは確か。ラノベらしいラノベを読みたい方におすすめ。あ、ただ表紙の幼女幼女らしい萌えを期待すると地雷です。

 評価:★★★☆

[]イエスタディ・ワンス・モア Yesterday Once More(新潮文庫) 著:小林信彦

自分にこの手の昭和を懐かしむような小説が全く合わないことを確信昭和の末に生まれた人間には昭和中期の知識なんて全くないし、興味もありません。

というわけで、好みが別れる読書。半パン・デイズの時も微妙に感じたのですが、別に分からなくても楽しく読めるあれとは違い、こちらはその匂いがもろに出ているので。このノスタルジーな雰囲気を楽しめた方は勝ち組。私は間違いなく負け組。あらすじに「愛と冒険のファンタジー」と書いてありますが、愛はともかく冒険は絶対に違うと思った。どこら辺を冒険したのですか? 主人公が基本的にあらゆる出来事を甘受するタイプの人間なので、冒険したとはとても思えないのですが……。タイムトラベルした理由・原理についてもろくに説明されてないので、酔歩する男のような論理をしっかり組み立てたガチに読ませるSFを期待していた人間には全くの肩すかし。っていうか主人公30年前の世界に馴染むの早すぎ。その上に現代('89年の事)の世界に対して主人公がどう思っていたのか、それがほとんど書かれてなかったので決着の付け方にも納得がいかず。

ようは、求めていたモノとは違った、という話。自分に全く合わない話がどういうものなのかが分かっただけでも良しとします。

 評価:★☆

 |