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2005-05-22性遍歴

性遍歴

■性遍歴(松本侑子)


松本侑子さんのことは名前しか知らなかったのですが、

『性の目覚めと好奇心、体の変化、初恋、セックス、別れ、結婚妊娠…一人の女の性にまつわる心身の成長、ヰタ・セクスアリスの「性遍歴」』

という裏表紙のうたい文句に誘われて図書館で借りました。短編集です。

●性遍歴

結局最後は即物的な性描写で落ち着いてしまっています。本家「ヰタ・セクスアリス」(森鴎外)のスカートの下を覗き見するドキドキワクワク感、焦燥感、喪失感には遠く及びません。駄作です。

女装夢変化

こっそり女装するサラリーマンの話。これは「性遍歴」とは打って変わって実に面白かったです。女装者の自伝をパクったかのような緻密かつ(女装しない私にも)リアリティある心理描写で、ああ可哀想に女装者はこんなに苦労をしていたんだ、と思わせるしみじみした短編です。

通常、性的嗜好はヘテロホモの二つに分けられますが、これはいかにも我関せずの鳥瞰的な分類方法です。自分の性同一性なんてあやふやなことがこの分類からは抜け落ちています。そこを見事に突いているのが個人的に嬉しい。

●初恋

説教臭い。以上。

●ナツメの実

少女マンガのようなお話です。主人公は冴えない田舎の女の子で、フランス育ちの裕福ですばらしく綺麗な女の子と友達になります。しかしすばらしく綺麗な女の子は家庭の事情で愛に飢えています。友達も主人公ただ一人です。こういう設定、嫌いじゃないですが、なにしろ文章短すぎます。

●新しい扉

レズビアンの按摩師と、ノンケだがリベラルな女社長の交流を描いています。ちょっと都合がいいんじゃない?という設定がなきにしもあらずでしたが、とてもいい話でした。本書の中では一番の出来です。二人とも相手を思いやることのできるいい人です。二人は相手に惹かれ、自分を見つめ直し、足りない点を補い、自分の中の壁を徐々に乗り越え近づいていきます。性的描写はないけれど、なぜかその過程がたまらなくエロティックでした。

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