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2010-10-28

人間臨終図鑑 I

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人間臨終図鑑 I

山田風太郎

少し前から気になっていた作家山田風太郎。何が気になっていたかといえば、風太郎という名前。本人は風太郎と読ませたかったらしいが、風太郎と読む人が多かったのでそうなった。

伝奇小説時代小説推理小説の分野で高名な、娯楽小説の大家らしい。私は初めて聞く名だ。そもそも娯楽小説とか大衆小説を私は読まない。が、この風太郎という名前には惹かれた。これは一所にとどまることのない、常に変化し続けて完成することがない、そういう状態に惹かれる私だからだと思う。

古くはクレオパトラから現代人まで、歴史上の人物から、作家、犯罪者、音楽家、などあらゆる分野の人物の最後の様子を描いた本だ。全部で300人ほどを取り上げて、生涯についてのごく簡単な解説を付した上で、その生涯をどのように終えたか記してある。また、その死にまつわる周囲の反応などが記されている場合もある。

「死を初めて想う。それを青春という。」-山田風太郎

十代で死んだ人、二十代で死んだ人、など、個々の項目の冒頭に上記のような一節が添えてあるが、この一節が、収められている生き様、死に様の描写に奥行きを与えている。

生まれてくる時は場所も時も選ぶことは出来ないが、どのように自分の生を終わらせるか、これはある程度自分の意志を働かせることが出来る。

2010-10-23

レキシントンの幽霊

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レキシントンの幽霊

村上春樹

村上春樹は始めて読んだ。作家に限らず、作品に限らず、あまり世間で流行っているものはほとんど読まない。が、先日図書館に行った折、いつものように題名に惹かれて借りた。

冒頭の作品は友人に頼まれて瀟洒な邸宅の留守番を頼まれた主人公が、その家の二階で夜を過ごすことになるが、夜になると階下から楽しそうなざわめきが聞こえてくる。不審に思って下に行くが誰もいない。

外にも「氷男」「緑の魔物」など収められており、いずれも作品の雰囲気には非常にスマートか感じが漂っている。文章も私は好きだ。簡潔で機能的。ヘミングウェイを少し思い出させる。

このような文章なら欧米の言葉に翻訳しても、作品の雰囲気は少しも乱される恐れがない、ふとそんなことを思った。

2010-10-20

イギリスとアイルランドの昔話

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イギリスとアイルランドの昔話

石井桃子 編、訳

J.D.バトン 画

我が家では抜群に人気のある本の一冊だ。よく知られている「ジャックと豆の木」もあるが、多くはあまり知られていない話が多い。「ちいちゃい、ちいちゃい」「ヘドレイのべこコ」「ミアッカどん」等30ほどの昔話が納められている。イギリスならではのナンセンスが十分満喫でき、しかも、石井桃子の訳がすばらしい。

子供たちが小さい頃、八時になると「一番好きな本を一冊とっていらっしゃい。」といって、それぞれが選んだ本を布団の中で読んで楽しんだ。夜は物語の力がもっともよく発揮される時間だ。

同じ物語を聞いても、娘たちの頭の中には、それぞれに物語の主人公や情景が存在するに違いない。自分だけのハイジが、モモが、オツベルが存在する。オツベルが食べた「雑巾ほどもあるオムレツ」も上の娘の頭の中にあるものと、下の娘の想像したそれとは異なる。二人がそれぞれに自分だけの「西根山の山男」と知り合いだ。

こんな風に、一つの物語を個人のものとすることができることは、幸せなことに違いないし、もともと物語はごくごく個人的なものではないだろうか。昔話もこんな風にして、世代を経るごとに、あるいは語られる地域ごとに、変化してきたのではないか。この不安定さ、脆弱さが、物語の世界の魅力の一つを成していると思う。どう変わってゆくか分からないという危うさを感じながら、しかし、不変かつ普遍性のある形式にはあえてしない。そんな姿勢を、物語に対して持ち続けてほしいとメディアに対して願う。

最近、赤ずきんちゃんがオオカミと仲良くなったり、桃太郎が鬼ヶ島の鬼を退治するのをやめて和解の道を選んだということを聞くが、本当だろうか。本当だとしたら、これはどういうことなのか、どんな背景があるのか、興味のあるところだ。グリムの昔話も採取された頃は、今伝えられているものより、よほどドラマチックだったらしい。