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2010-10-02

てのひらのほくろ村

09:17 | てのひらのほくろ村 - 文庫野ばら を含むブックマーク はてなブックマーク - てのひらのほくろ村 - 文庫野ばら てのひらのほくろ村 - 文庫野ばら のブックマークコメント

てのひらのほくろ村    スズキコージ

ぼくは一九四八年二月二十八日夕方五時ごろ、静岡県浜名郡浜名町小野口村小松で生まれた。おやじは、中国重慶まで、二等兵から軍曹までなりながら軍隊にまじって、蒋介石をおっかけていって、敗戦を迎え、復員して、浜松で、おっかさんと見合いして結婚した。当時は、男性が、戦争のおかげで、非常に少なく、おっかさんも、ここぞチャンスと思って電光石火のように、一緒になったらしい。

そして、小松の町の長屋に住んで、とにかくミシンを踏めば、金になる時代だったので毎晩徹夜で、ぼくを柱にしばりつけて、はげんだらしい。

-以上本文より引用。

この本はスズキコージの子供の頃の思い出をつづった本だ。本人による挿し絵も付いている。絵本の挿し絵画家として知られる氏の思い出は、その絵から受ける印象を裏切らない。子供の感性をそのまま写し取ったその文章は、読んで楽しく、また言葉というものについて考えさせられる。

私たちは日常どんな言葉を使っているだろうか。誰かがどこかで口に出した言葉をそのまま使っていないか。最近ではマスメディアの影響を強く感じる。よく街頭インタビューで通行人の話を拾っている場面が放映されるが、自分の言葉を話している人がどれほどいるだろうか。言葉は極私的なものであり、内にある考えを表出するものだ。一方で、使う言葉によって気持ちや考えが影響を受ける、という側面も持つ。世界中どこでも同一の情報を得られるようなこの環境下にあっては、特にこのことに注意しなければならないと思う。情報の影響を受ける時間が少ない、まだ子供のうちの感性を十分に大切にしたいと思う。「小さな大人」にはなって欲しくないものだ。